著者
小池 はるか 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.266-275, 2007 (Released:2007-07-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

本研究の主な目的は,共感性と特定の人物に対する対人的迷惑行為の認知との関連を検討することである。学生113名から質問紙((1) 共感性,(2) 顔見知りから受けた行為の迷惑認知,(3) 友人から受けた行為の迷惑認知,(4) 迷惑認知の評定の根拠)の回答を得た。その結果,共感性の低い者は,共感性の高い者に比べ,行為を迷惑と認知しやすいという仮説が部分的に支持された。また,状況依存的な共感性が高い者は,迷惑認知評定をする際に,自己の視点のみではなく,行為者の視点に立っている傾向が示された。さらに,友人からの行為より顔見知りからの行為を迷惑と認知したり,行為者が顔見知りの場合より友人の場合に状況依存的な共感性が高くなるといった結果が示され,行為者との関係性が対人的迷惑認知及び共感性に影響を与えていることが明らかとなった。
著者
横光 健吾 金井 嘉宏 佐藤 健二 杣取 恵太 坂野 雄二
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.87-90, 2019-07-01 (Released:2019-07-06)
参考文献数
20

The purpose of this cross-sectional study was to examine the relationship between happiness, satisfaction, and the psychological effects of consuming “shikohin” at social events on psychological health. Five hundred and thirty-two participants (270 men, 262 women; mean age=44.91 years, SD=13.81 years) from a community sample in Tokyo, Kanagawa, Saitama, and Chiba completed a set of questionnaires and the data were analyzed. The results of partial correlation analyses showed that when people experienced positive and negative social life events, the psychological effects of consuming “shikohin” showed a weak but positive correlation with happiness and satisfaction.
著者
高田 琢弘
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.82-84, 2023-08-29 (Released:2023-08-29)
参考文献数
9

This study investigated the relationship between gambling addiction and the Dark Triad among Japanese adult gamblers. The study participants were 360 Japanese adult gamblers. They were asked to complete an online questionnaire measuring their Dark Triad traits and the level or degree of their gambling addiction.The results showed that Machiavellianism and narcissism were correlated with gambling addiction among men, whereas psychopathy was correlated with gambling addiction among both men and women. These results are partially consistent with those of previous studies conducted with Western samples.
著者
山形 伸二 菅原 ますみ 酒井 厚 眞榮城 和美 松浦 素子 木島 伸彦 菅原 健介 詫摩 武俊 天羽 幸子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.103-119, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
65
被引用文献数
13 6

本研究は,人間行動遺伝学と双生児研究の方法,とりわけ多変量遺伝分析について紹介し,その適用例として4–6歳児の気質と問題行動の関連性を検討した。双生児の母親142名に対し質問紙調査を行い,子どものエフォートフル・コントロール (EC) および外在化問題,内在化問題についての評定を得た。表現型の相関を検討した結果,外在化問題と内在化問題は中程度の正の相関を示し (r=.55),またECは外在化 (r=−.42),内在化 (r=−.18) のいずれの問題行動とも負の相関を示した。多変量遺伝分析の結果,ECを低めるような遺伝的影響は同時に両方の問題行動のリスクを高めるような働きをすることがわかり,ECの低さが両問題行動の共通の遺伝的素因である可能性が示唆された。また,外在化問題と内在化問題の相関関係には遺伝 (22.8%),共有環境 (53.4%),非共有環境 (23.8%) のいずれもが寄与していた。問題行動間の相関関係への遺伝要因の寄与は相対的に小さかったが,これはECに関わる遺伝要因が両問題行動を正に相関させるように働くのに対し,ECとは関連しない遺伝要因が両問題行動を負に相関させるように働くため,互いに相殺しあった結果である可能性が示唆された。
著者
菅沼 麻理子 岸 俊行 野嶋 栄一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.220-228, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
18

本研究の目的は,クラシックバレエにおける初心者の内的意識の変化を検討することであった。具体的には,練習後の内省報告を元に,3つのカテゴリーを作成し,練習時期による意識の変化を検討した。さらに,「わざ」の習得の認知構造の自己を客観視する段階である調査協力者の認知面に注目し,どのような特質を持つのかについても検討した。その結果,新しい意識が生じ,それまでの意識は対照的に減っていくことが明らかとなった。また,道具や動きのある技を離れた広い視野での認知や,元々認知していた全体的な身体部位からより具体的な部位に意識が生まれるというような細分化された認知が生じていることが示唆された。
著者
解良 優基
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.24-35, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)
参考文献数
23

本研究は,親子間における知能観の伝達過程について,両親の間の知能観の一致度が調整する可能性について検討した。中学生の子をもつ父親と母親,そしてその子ども211世帯を対象に,両親および子どもの知能観を測定したほか,子どもには両親がどのような知能観をもつかという認知についても尋ねた。調整媒介分析の結果,父親では,両親の間で知能観が一致しているとき,父親の知能観は子どもが認知する父親の知能観を媒介し,子ども自身の知能観に影響を及ぼした。一方,両親の知能観の一致度が低いとき,父親がもつ知能観は,子どもが認知する父親の知能観を予測しなかった。母親においては,父親との知能観の一致度にかかわらず,母親の知能観は子どもが認知する母親の知能観を媒介し,子ども自身の知能観に影響した。なお,それぞれ親の知能観から子どもの知能観への直接効果は一致度にかかわらず有意であった。子どもの増大的知能観への支援のために,両親の知能観へと介入する必要性が示された。
著者
守谷 順 佐々木 淳 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.171-182, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
36
被引用文献数
4 3

本研究は,対人不安の維持要因として考えられている判断・解釈バイアスと自己注目との関連についての検討を行った。研究1では被調査者の大学生194名から対人不安高群53名,対人不安低群48名を対象に質問紙調査を行い,対人・非対人状況での判断バイアスと自己注目との関連について検討した。その結果,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群は対人不安低群に比べて否定的な判断バイアスが働くことを示した。研究2では,研究1と同様の被調査者を対象に肯定的とも否定的とも考えられる曖昧な対人・非対人状況での解釈バイアスについて質問紙調査を行った結果,判断バイアス同様,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群に顕著な否定的解釈バイアスが認められた。以上のことから,否定的な判断・解釈バイアスが対人不安高群に働くときは,対人場面であり,かつ自己注目状況であることが明らかにされた。
著者
齊藤 彩 松本 聡子 菅原 ますみ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.74-85, 2016-07-01 (Released:2016-06-04)
参考文献数
48
被引用文献数
4 2

本研究は,児童期後期の子どもの不注意,多動性・衝動性を含む注意欠陥/多動傾向が,母親ならびに父親の養育要因,自尊感情を媒介して抑うつへと関連するかどうかを検討することを目的として実施された。210世帯の子ども(小学校5年生)とその母親,父親を対象に質問紙調査を行い,母親の評定により子どもの注意欠陥/多動傾向,両親の評定により養育のあたたかさと親子間の葛藤,子どもの自己評定により自尊感情,抑うつを測定した。母親については,注意欠陥/多動傾向と養育のあたたかさ,母子間の葛藤との関連が見られ,さらに養育のあたたかさは自尊感情を媒介して抑うつへと関連を示した。一方,父親については,注意欠陥/多動傾向と養育のあたたかさ,父子間の葛藤との関連は見られたものの,養育要因から自尊感情への関連は見られず,注意欠陥/多動傾向が直接自尊感情を媒介して抑うつへと関連することが示された。
著者
服部 陽介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.244-252, 2018-03-01 (Released:2018-03-06)
参考文献数
25
被引用文献数
5 1

先行研究において,思考抑制傾向とストレスフルな出来事の経験の組み合わせが反すう傾向を促す可能性が指摘されており,その背景には即時的増強効果の影響があると考えられてきた。本研究では,反すう傾向を考え込みと反省的熟考という2側面に分割し,思考抑制傾向,ストレス経験,反すう傾向の関係について検討を行った。大学生212名に対し,約3カ月の間隔で2回の調査を実施した。その結果,思考抑制傾向とストレス経験が,それぞれ独立に,考え込みを強めることが示された。この結果は,即時的増強効果とは異なる要因が,思考抑制傾向と反すう傾向を関係づける働きを担っている可能性を示している。思考抑制傾向と反すう傾向の関係を検討するうえでの今後の方向性について議論した。
著者
石川 武 敷島 千鶴
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.14-16, 2020-04-27 (Released:2020-04-27)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2

Dichotomous thinking relates to the propensity to think of things in terms of binary opposition. In this study, we examined the relationship between dichotomous thinking and response style to a questionnaire using different scoring methods. The following results were obtained. There is tendency for individuals with high dichotomous thinking to rate their responses to the items in the questionnaire at an extreme of 1 or 5 on a five-point scale. In other words, an individual with strong dichotomous thinking does not merely avoid the neutral response but has an extreme response style.
著者
向井 秀文 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.137-147, 2022-11-25 (Released:2022-11-25)
参考文献数
43

近年,不安や抑うつといった内在化問題の低減に有効な治療アプローチの一つとして,メタ認知療法が注目されている。本研究では,考え続ける義務感といった内在化問題に対して強い予測力を有するメタ認知的信念に着目して,考え続ける義務感の低減をターゲットとしたメタ認知療法の効果検証を行った。大学生34名を統制群と介入群に振り分けて,各群のプレからフォローにかけての指標得点の変化を検討した。対応のあるt検定を実施した結果,統制群のすべての指標得点間に有意な差は認められなかった。一方で,介入群においては,摂食症状以外のすべての指標得点間に有意な差が認められた。また,効果量を算出したところ,統制群よりも介入群において,大きな効果量が認められた。以上から,考え続ける義務感の低減をターゲットとしたメタ認知療法の有効性が示唆された。
著者
古賀 佳樹 川島 大輔
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.175-177, 2018-11-01 (Released:2018-11-08)
参考文献数
8
被引用文献数
5 6

The aim of this study was to develop a Japanese version of the Game Addiction Scale (GAS7-J) and investigate its validity and reliability. The GAS7-J was translated using back translation. In the study, 352 Japanese adolescents responded to a questionnaire which included the GAS7-J. Factor analysis revealed a factor structure similar to the original scale, with higher internal consistency. Additionally, the GAS7-J correlated with both time spent on games and loneliness to a similar degree as in a previous study. In conclusion, the GAS7-J has an acceptable level of validity and reliability.
著者
大西 将史
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.171-184, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
13 8

本研究の目的は,第1に従来の罪悪感尺度を取り上げ,それらの測定している概念を整理することである。その上で第2に,特性罪悪感を測定する多次元からなる尺度 (TGS) を作成し,その信頼性および妥当性を確認することである。精神分析理論に依拠し,特性罪悪感の下位概念として「精神内的罪悪感」,「利得過剰の罪悪感」,「屈折的甘えによる罪悪感」,「関係維持のための罪悪感」の4つを設定し項目を収集した。合計793名の大学生に質問紙調査を行った。探索的因子分析および確認的因子分析の結果から,仮定した4因子モデルの妥当性が確認された。α係数,再検査信頼性係数は十分な値を示し,信頼性が確認された。また,PFQ-2-guilt scaleとの関連から併存的妥当性が確認され,PFQ-2-shame scale,心理的負債感尺度,自己評価式抑うつ性尺度との関連から収束的妥当性が,罪悪感喚起状況尺度との関連から弁別的妥当性が確認された。