著者
小堀 修 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.34-43, 2004 (Released:2004-11-25)
参考文献数
33
被引用文献数
22 21

本研究は,完全主義の認知を「自己志向的完全主義がセルフ・スキーマとして活性化した結果,意識化された思考であり,できごとの解釈や注意に影響を与えるもの」と定義し,その認知を多次元で測定するための尺度(Multidimensional Perfectionism Cognition Inventory: MPCI)を作成した.研究1では,MPCIの因子構造が明らかとなり,高目標設置,ミスへのとらわれ,完全性の追求の下位次元が特定され,これらの下位次元は十分な信頼性を示した.研究2では,MPCIの構成概念妥当性と基準連関妥当性が明らかとなった.
著者
太幡 直也 佐藤 広英
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.26-34, 2016
被引用文献数
2

本研究の目的は,ソーシャル・ネットワーキング・サービス上での自己情報公開を規定する心理的要因を検討することであった。mixi利用者1,051名を対象にウェブ調査を実施し,プロフィール上での自己情報公開や,情報プライバシーなどの心理的要因に関する項目に回答するように求めた。その結果,自己の属性情報(e.g., 性別),識別情報(e.g., 本名)への情報プライバシーが低いほど,不特定他者への自己情報公開数が多く,また,プロフィール上の自己表出性が高かった。一方,人気希求,犯罪被害へのリスク認知が高いほど,プロフィール上の自己表出性が高かった。
著者
菅原 健介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.22-32, 1998-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
4 7

本研究はシャイネスの主要な2つの要素である対人不安傾向と対人消極傾向に注目し, これらを独立した特性次元として考えることができるのか, また, 両傾向は他のどのような心理特性と関連しているのかを検討した.大学生男女を対象とした2つの質問紙調査を行い次のような結果を得た.対人不安傾向と対人消極傾向とは因子構造上, 異なる特性として抽出可能であることが示された.前者は公的自意識, 拒否回避欲求と正の相関, 自尊感情と負の相関が見られ, 後者は社会的スキル, 賞賛獲得欲求と負の相関が認められた.これらから, 対人不安傾向は社会的拒否に対する過敏性の表れとして, 対人消極傾向は対人関係に対する無力感の表れとして解釈できると考えられた.以上の結果は, Leary(1983b)の自己呈示モデルとの関連から考察され, シャイネスのメカニズムに関して新たなモデルが提起された.
著者
向田 久美子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.82-94, 1998-03-31 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
1

本研究では, 大学生とその親の偏見の強さを比較することにより, 子どもの偏見に及ぼす親の影響について検討が行われた.偏見の強さを測定する独自の尺度を作成し, 227名の大学生には, 自分自身と自分の認知した親の偏見について, 父親150名と母親152名には, 自分自身の偏見について評定してもらった.親子の相関をとると, 子どもと認知された親との相関が高く, 子どもと実際の親の相関は低くなっていた.パス解析の結果から, 子どもの偏見は, 親自身から直接的に影響を受けているというよりも, 認知された親イメージを媒介として影響を受けていることが示唆された.親子の関連の強さに影響する要因として, (1)親との同居の有無, (2)母親の就業状況, (3)幼少期の親の養育態度の3点について検討が行われた.その結果, 子どもが親に対してポジティブなイメージをもっており, 親子のコミュニケーションがより充実している場合には, 親から子への影響力が強くなり, 偏見の強さというよりも偏見のなさのほうが伝わっている可能性のあることが示唆された.
著者
笹川 果央理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.112-123, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
26
被引用文献数
9 3

本研究では自己価値の随伴性について3種類の領域を想定し,それぞれの領域に随伴することで得られる自尊感情として優越感,他者評価,独自性を測定し,これらと主観的幸福感への関連を検討した。その際自尊感情と幸福感の間を媒介する変数として自己受容と賞賛欲求も検討した。大学生に質問紙調査を実施し,254名から有効回答を得た。その結果,優越感および他者評価は幸福感への正の直接効果があるが独自性にはないこと,一方で優越感は賞賛欲求を経由して間接的に負の影響を与えていることが示された。
著者
敷島 千鶴 木島 伸彦 安藤 寿康
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.197-200, 2012-11-30 (Released:2013-02-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Using a behavioral genetic approach, we examined the association between Cloninger’s Temperament and Character Inventory (TCI) and IQ in terms of underlying genetic and environmental etiological overlap. Using the TCI personality dimensions (4 temperaments and 3 character traits) and IQ data for 199 pairs of adolescent and young adult twins, we found a genetic negative correlation between one of the character traits (self-transcendence) and IQ. In contrast, we did not find significant environmental correlations between any of the personality dimensions and IQ. These results suggest that contributions from the same genetic factor operate on both self-transcendence and IQ.
著者
金井 嘉宏 入戸野 宏
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.131-141, 2015
被引用文献数
6

本研究の目的は,人間や動物の赤ちゃん,およびキャラクターやモノに対する“かわいい”感情を共感性や親和動機によって予測するモデルを構築することであった。582名の大学生に対して,多次元的共感性尺度,親和動機尺度,各対象に対する“かわいい”感情の評定尺度で構成される質問紙調査を行った。モデルに性差が見られるか検討するために多母集団同時分析を行った結果,人間や動物の赤ちゃんだけではなく,モノに対する“かわいい”感情も共感性が予測することが示された。モデルに性差はなく,共感性が高いほど,これらの対象に対しては“かわいい”感情を抱きやすいことがわかった。親和動機は人間の赤ちゃんに対する“かわいい”感情のみ予測した。一方,キャラクターに対する“かわいい”感情は共感性,親和動機のいずれによっても予測されなかった。社会的動機としての親和動機に加えて接近動機を測定し,共感性や“かわいい”感情との関係を調べる必要性が議論された。
著者
市川 玲子 村上 達也
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.112-122, 2016
被引用文献数
3

<p>パーソナリティ障害(PD)は対人関係機能の障害によって特徴づけられ,その根底にアタッチメント・スタイルの影響が指摘されてきた。先行研究において,境界性・自己愛性・演技性・依存性・回避性PDと不適応的なアタッチメント・スタイルとの関連や,これらの精神的健康への影響について明らかにされているが,媒介プロセスについては検討されていない。そこで本研究は,不安定的なアタッチメント・スタイルが,これと関連するPDを媒介して精神的健康に及ぼす影響について検討することを目的とした。調査対象者は298名の大学生であり,各PD傾向,2次元から構成されるアタッチメント・スタイル,抑うつに関する項目に回答した。共分散構造分析と媒介分析の結果,境界性・回避性PD傾向が2種のアタッチメント・スタイルと抑うつの間を媒介することと,演技性PD傾向は見捨てられ不安と抑うつの間を媒介して抑うつの低さに寄与することが示された。</p>
著者
下司 忠大 陶山 智 小塩 真司 大束 忠司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.263-265, 2019
被引用文献数
1

<p>This study aimed to investigate whether sadism is related to high competitive performance and whether this relationship is mediated by gamesmanship. Responses to sadism and gamesmanship scales of 339 university students majoring in physical education were analyzed. Results showed that sadism is significantly related to high competitive performance in relative competitions, and that this relationship is mediated by gamesmanship. Our findings suggest that sadism has positive aspects, despite its negative ones. This study contributes to the development of an accurate understanding of sadism.</p>
著者
内田 香奈子 山崎 勝之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.378-387, 2008
被引用文献数
1

本研究の目的は,情動焦点型コーピングの1つである感情表出と抑うつとの因果関係を,予測的研究方法を用いて検討することである。参加者は341名で,質問紙には,怒りと落胆感情に対する2タイプの感情表出(独立的/他者依存的)を測定する感情コーピング尺度 (ECQ) の状況版,問題焦点型コーピングの測定にはGeneral Coping Questionnaire (GCQ) の状況版,抑うつの測定にthe Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D) を用い,5週間をあけ (T1とT2),2度回答した。階層的重回帰分析の結果,女性においてT1の独立的感情表出がT2の抑うつと正に関連していた。また,女性において抑うつが高いほど問題解決を行わないことが示された。独立的感情表出を低め,同時に問題解決を高める介入の可能性について論議された。
著者
岐部 智恵子 平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.8-10, 2020
被引用文献数
4

<p>This study developed the Japanese version of the Highly Sensitive Child Scale for Childhood (HSCS-C) and tested its validity and reliability. Data were collected from 400 dyads of primary school children (third to sixth grades: <i>M<sub>age</sub></i> = 9.75 years, <i>SD</i> = 1.22; male = 48.5%) and their mothers (<i>M<sub>age</sub></i> = 41.00 years, <i>SD</i> = 5.05). Two factors were found: the first was the conjunction of Ease of Excitation and Low Sensory Threshold, and the second was Aesthetic Sensitivity. A bivariate correlation analysis indicated that children's sensory processing sensitivity, measured with HSCS-C, was associated with self-reported empathy and mother-reported temperaments, with both forms being distinct. The internal consistency was found to be satisfactory.</p>
著者
岐部 智恵子 平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.108-118, 2019
被引用文献数
6

<p>本研究の目的は日本語版青年前期用敏感性尺度(HSCS-A)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。本尺度の原版は感受性反応理論の枠組みに立脚し児童期から青年期の感覚処理感受性を測定するものとして開発されている。本研究では青年前期版作成を目的として中学1年生から高校1年生までの942名(女子44%,男子56%)を対象に研究を行った。探索的因子分析の結果,原版同様の易興奮性(EOE),美的感受性(AES),低感覚閾(LST)から成る3因子構造が見出され,直交する一般性因子を含むbifactorモデルが適していることが示された。さらに,パーソナリティ,情動性尺度との関連から構成概念妥当性を検討し弁別性を示す結果が得られ,内的一貫性も許容範囲であることが確認された。これらの結果から,HSCS-Aは感覚処理感受性を測定するおおむね妥当な尺度であることが示された。</p>
著者
池田 亜紗 磯崎 三喜年
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.23-32, 2021
被引用文献数
2

<p>本研究では,大学生を対象に,対人関係プロフィールテストの日本語版を作成し,過度に依存に偏る過剰依存,過度に自立にこだわる分離,自立と依存のバランスがとれたヘルシー・ディペンデンシー(healthy dependency,以下HDとする)の3つの下位尺度と,援助要請行動および援助要請スタイルとの関連を検討した。HDは援助要請行動と正の,分離は援助要請行動と負の関連を示した。過剰依存は援助要請過剰型と正の関連,分離は援助要請過剰型と負の,援助要請回避型および援助要請自立型と正の関連,HDは援助要請過剰型および援助要請自立型と正の,援助要請回避型と負の関連を示した。また,HDは援助要請行動を媒介して適応感を高めるという仮説モデルの検討も行ったが,媒介効果は示されず,HDから適応感への直接効果のみ示された。HD独自の効果が適応感を予測することが示唆された。</p>
著者
赤坂 瑠以 坂元 章
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.363-377, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
24
被引用文献数
6 2

本研究では,小学生から高校生までの450名を対象に2時点でのパネル調査を行い,携帯電話の使用が友人関係の深さと密着性に及ぼす影響について検討した。分析の結果,携帯電話の使用が友人関係の深さに及ぼす影響では,有意な効果が見られず,密着性に及ぼす影響では,いくつかの変数で有意な効果が見られたことから,携帯電話の使用が友人関係の深さに及ぼす影響は大きなものとは言えないが,密着性に及ぼす影響はある程度認められることが示唆された。校種別に見ると,高校生では,虚構の心理的一体感,情緒的依存が高いほど,密着性が増加すること,中学生では,インターネット量,真実の心理的一体感,情報伝達,情緒的依存が高いほど,密着性が低下することが示され,小学生では有意な結果は見られなかった。さらに,友人関係が携帯電話の使用に影響するという逆方向の関係を示す結果もいくつか得られ,密着性と虚構の心理的一体感や情緒的依存との間に,互いを高め合う循環的な関係があることが示唆された。
著者
神野 雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.140-153, 2017
被引用文献数
1

<p>本研究の目的は恋愛関係での葛藤時に予測される行動を測定する架空の浮気場面への予測行動尺度Anticipated Behavior Scale for Imaginary Infidelity (ABSII)の作成とその信頼性・妥当性の検討であった。ABSIIの浮気場面として恋人と第三者のデート場面を設定し,現在恋愛関係にある大学生112名に質問紙調査を行った。探索的・確認的因子分析の結果,想定通りABSIIは「攻撃志向」「沈黙志向」「別れ志向」「対話志向」「ライバル志向」の5因子構造を示した。ストレッサーへの認知的評価,ストレス反応,嫉妬深さ,投資モデルとの関連から妥当性を検討すると葛藤状況を重要視する傾向と「攻撃志向」「対話志向」の正の関連,「沈黙志向」の負の関連,ストレス反応と「攻撃志向」「別れ志向」の正の関連,全般的な嫉妬深さと「攻撃志向」「ライバル志向」の正の関連,関係満足感と「対話志向」の正の関連,「別れ志向」との負の関連などが示され,尺度の構成概念的妥当性がおおむね確認された。</p>