著者
陣野 久好 木崎原 千秋 田中 甫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.19, pp.7-9, 1962-11-01
被引用文献数
5

9月15〜16日に本土を襲った第2室戸台風は,長崎県においては,松浦市,平戸市,北松浦郡,南松浦郡の北部島喚および壱岐,対馬の水稲に甚大な潮風害を与えたので,特に被害の甚しかった北松浦郡田平町を選び,被害の様相を調査したものである。
著者
Koichi Futakuchi Moussa Sié Kazuki Saito
出版者
日本作物学会
雑誌
Plant Production Science (ISSN:1343943X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.151-163, 2012 (Released:2012-06-29)
参考文献数
80
被引用文献数
23 3

Oryza glaberrima has mostly been used as a source to improve stress resistance of Oryza sativa. Improvement of this species could be an approach to use its adaptability to local environments in Africa such as multiple resistance to several indigenous constraints. The yield of O. glaberrima was inferior to that of O. sativa under favorable growth conditions but not under unfavorable conditions. Moreover, spikelet number before grain shattering was no less in O. glaberrima than in O. sativa at any fertilizer input levels, suggesting that the yield potential of O. glaberrima is as high as that of O. sativa. Inferior yield of O. glaberrima reported in favorable environments could result from grain shattering enhanced by such growth environments where higher incidence of lodging, which is another undesirable character of O. glaberrima, can occur. Regarding characteristics associated to yield generation, O. glaberrima seemed to possess: higher dry matter production and greater leaf area than O. sativa at least until heading; a lower photosynthetic rate per leaf area but a higher rate against the same leaf nitrogen content in a low content range; higher responsiveness of dry matter, leaf area and leaf photosynthesis to increases in nitrogen inputs; lower water-use efficiency on dry matter accumulation and gas exchange bases; faster progress of leaf senescence during maturity; and faster completion of grain filling during maturity than O. sativa.
著者
福見 良平 堀内 悦夫 福山 寿雄 秋好 広明 天野 勝司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.12-14, 1976-12-25

第2報において,牛ふんの多量施用がナス・甘藷の生育.収量に及ばす影響について報告したが,本報ではダイコン・トマトについて試験を行ったので,その結果の概要を報告する。
著者
高橋 行継 佐藤 泰史 前原 宏 阿部 邑美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.253-260, 2004-09-05
被引用文献数
10

群馬県では水稲の出芽方法として無加温積み重ね出芽法,その後の育苗にプール育苗法が広く用いられている.この出芽方法は,播種作業から出芽後の育苗箱展開までに育苗箱の移動が数回必要となり,多くの労力が必要である.栃木県で開発された平置き出芽法は,播種作業を育苗場所で実施し,積み重ねを行わずにそのまま出芽,育苗する方法である.このため大幅な労力軽減が可能である.しかし,本技術は主として栃木県における4月播種のハウス内育苗条件で開発されたものであり,プール育苗もほとんど取り入れられていない.そこで,群馬県での水稲の普通期栽培(6月中下旬移植)の露地プール育苗における平置き出芽法の適用性について検討を行った.平置き出芽法における出芽時の被覆資材について7種類の材料を供試した.標準の無加温積み重ね出芽法に対し,いずれの資材も0〜3日程度の遅れで出芽させることが可能であった.無被覆では夜間の低温と覆土乾燥のため出芽が遅れやすく,被覆資材が必要であった.供試した7資材のうち,生育むらや高温障害,覆土の乾燥が少なく,緑化作業の省略も可能な3資材(パスライト,健苗シート,ダイオラッセル1600黒)が優れていることが明らかとなった.草丈の伸長や葉齢の進展がみられる場合もあるが,育苗完了時の生育は標準に対してほぼ同等で,実用可能であると判断した.
著者
崔 晶 趙 居生 楠谷 彰人 諸隅 正裕 豊田 正範 浅沼 興一郎 丹野 久
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.314-319, 2000-09-05
被引用文献数
2

中国華北地域における良食味品種育成のための基礎的知見を得るために, 天津市近辺で栽培されている品種10(天津品種)と日本の新旧品種10(日本品種)を供試し, 食味特性を比較した.官能検査における総合評価は日本品種コシヒカリが最も高く, 天津品種津優9701が最も低かった.総合評価の平均値は, 天津品種は-0.42, 日本品種は-0.04であった.総合評価の判定値によって, 供試品種を+0.35以上の食味良品種群(H群), +0.35〜-0.35の食味並品種群(M群), -0.35以下の食味不良品種群(L群)に分類した.日本品種では, コシヒカリ, キヌヒカリ, おくひかりがH群, 神力, 愛国, 農林18号がL群に属し, 他はM群に属した.天津品種では唯一花育13がH群に属し, 金珠1, 津稲779および津優29はM群, 他の品種は全てL群に分類された.理化学的特性のアミロース含有率, タンパク質含有率および最高粘度に有意な品種群間差は認められなかった.津稲779と花育13のアミロース含有率とタンパク質含有率はコシヒカリやキヌヒカリに近い水準にあった.以上より, 天津品種の理化学的特性はそれ程悪くないものの, 官能検査では劣ることが知られた.この理由は, 天津品種には低アミロース含有率, 低タンパク質含有率, 高最高粘度を兼備した品種が少ないためと考えられた.しかし, これらの中にあって, 津稲779と花育13は総合的に優れた食味特性を備えており, 今後の華北地域における良食味品種育成のための有用な育種素材になると期待される.
著者
佐藤 徳雄 渋谷 暁一 三枝 正彦 阿部 篤郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.408-413, 1993-09-05
被引用文献数
5

速効性の硫安を基肥および追肥に用いる慣行栽培を対照区として, 肥効調節型被覆尿素を用いた水稲 (品種チヨホナミ) の全量基肥不耕起栽培 (LP区) を試み, 次の結果を得た. 1) LP区の水稲は生育のごく初期に対照区よりやや劣るものの, 6月初旬以降は草丈, 葉色, 茎数および乾物重のいずれにおいても対照区より優った. 2) 対照区では, 湛水直後に急激な土壌無機態窒素の消失が起こり, 稲体は窒素欠乏状態 (クロロシス) を追肥時期まで示した. これに対してLP区の水稲は, 栽培期間中正常な生育を示した. 3) LP区の玄米収量は, 登熟期が高温・多照で経過した1990年が57.1kg/a, 低温・寡照で経過した1991年が51.2kg/aで, 対照区よりもそれぞれ55%および33%優った. 対照区の低収量の原因は, 施肥窒素が湛水とともに消失し, 主としてm^2当たり穂数が少なくなり, 籾数の確保が不充分であったためと考えられる. 4) LP区の窒素吸収量は, 対照区に比べて分げつ盛期以降は著しく優り, 成熟期には対照区の1.57倍に達した. 施肥窒素の利用率は, 全量基肥区のLPが63.2%, 対照区の基肥硫安が8.5%, 幼穂形成期の追肥硫安が52.8%, 穂揃期の追肥硫安が41.5%であった. 5) 以上の結果から, 水稲の不耕起直播栽培に対する肥効調節型被覆尿素の全量基肥施用効果が大きいことが明らかになった.
著者
奥西 元一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.288-298, 2008-07-05

房総半島北部の下総地方で,近世から昭和戦前期までみられた湿田農法について検討した.江戸期の下総地方の湿田では,唐籾とよばれたインド型赤米が広範に摘田(つみた)という湛水直播法により栽培された.栽培された水田は,たいとう土とよばれた黒泥・泥炭土壌の強湿田であった.この強湿田で日本型水稲を移植栽培すると,夏・秋落ちして生育が著しく抑制された.湛水直播栽培は,わずかに広がる土壌表層の酸化的条件を利用した栽培法であり,これに唐籾の草型特性が結びついた.これより湿田の程度がやや軽い下総地方の夏・秋落ち田では,昭和戦前期まで小苗・密植栽培が行われた.小苗・密植栽培は排水不良・生育制御が困難な湿田で穂数を確保するための栽培法であった.土地改良の遅れた下総地方では戦前まで湿田農法が残った.
著者
内田 敏夫 山本 雄慈
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.24, pp.28-29, 1982-07-15

ハトムギは、昭和56年度から転作作物に認定され、契約栽培などで作付けが増加しているが、その特性が十分に判明していないために生産が不安定である。そこで、契約対象品種の岡山在来について作期と生育量について試験をして若干の知見を得たのでその概要を報告する。
著者
氏平 洋二 石田 喜久男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.24, pp.24-26, 1982-07-15

ハトムギは転作田における重点作物の一つとして、再び注目されている。従来の茎葉を収穫目的とした栽培に比べて、ハトムギ栽培を殻実生産の立場でみると、早生、短稈、難脱粒性、多収良質品種の育成が望まれる。そこでまず、国内外からハトムギ品種系統を導入して特性調査を実施した。その結果を報告する。
著者
原 貴洋 手塚 隆久 松井 勝弘
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.459-463, 2007-07-05
被引用文献数
1 2

中国30点,韓国30点,日本7点の計67点のハトムギ遺伝資源を熊本県の九州沖縄農業研究センター圃場で5月下旬に播種,栽培し,成熟期に形態的形質を調査した.韓国品種の形態的形質は日本品種に似ていたが,韓国品種の着粒層は日本品種より狭く,韓国品種には草丈が小さい品種が認められ,機械収穫適性を改良する素材として期待できた.中国品種は,草丈,主稈葉数,稈径,着粒層,葉長,葉幅で大きな値を示し,飼料用ハトムギの改良に有望と考えられた.各形質値の間の相関関係が高かったことから主成分分析を行った.第1主成分は草丈,稈径,主稈葉数,着粒層,葉長,葉幅の植物体の大きさを表す形質との相関が高かった.第2主成分は着粒層との相関が高く,植物体の形を表していると考えられ,中国品種,韓国品種は日本品種より分布域が広かった.以上のことから,韓国,中国品種はともに,わが国ハトムギの草型の変異拡大に寄与すると考えられた.
著者
林 健一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.205-211, 1966-12-25

光利用効率を, 群落が光をまず受けとめる効率(Ei)と, 受けとめた光を利用して光合成により乾物として固定する効率(Eu)とに分解すると, 乾物生産量=投下エネルギー×Ei×Eu という関係が成り立つ. 水稲中生5品種を, 粗・中・密の栽植密度で圃場栽培し, 一方, 群落内外の光の強さを連続測定して, これらの効率と乾物生産, 収量との関係をしらべて次の結果を得た. 1) 繁茂度の低い生育前期の乾物生産は主としてEiにより, 繁茂度の高い中後期は主としてEuにより決定され, 特に出穂後の乾物生産とEuとは密接な直線的関係を示した. 2) 全生育期間の平均Eiは45〜66%, 平均Euは1.5〜2.1%, 投下全エネルギーに対する乾物生産平均効率 (Ec=Ei×Eu) は0.7〜1.4%であつた. 3) 栽植密度増加とともにEi, Euも相伴つて上昇すれば乾物生産も増加したが, Eiの上昇がEuの下降によつて相殺されると, 乾物生産も増加しなかつた. 4) Euは生育後半期の(乾物増加量)/(葉積)と密接な直線的関係を示し, Euが群落の光合成能率により規定されることを示唆した. 5) 収量=全乾物重×収穫指数(harvest index)とすると, 栽植密度増加による収穫指数の低下程度には品種間差異があつた. 6) 栽植密度増加とともに, Euが低下して大巾な乾物生産増加の可能性は低いが, 収穫指数が比較的に安定しているために多収な農林29号型と, Euがさらに増加して乾物生産が大巾に増加し, 収穫指数の低下を補うために多収な金南風型との, ニつの型を類別できた.
著者
戴 陸園 刈屋 国男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本育種学会・日本作物学会北海道談話会会報
巻号頁・発行日
no.35, pp.50-51, 1994-12

中国雲南省と日本との共同研究プロジェクトで穂孕期耐冷性については研究が進み、その結果として数種の改良品種が育成され、雲南省内の日本型水稲(約53万ha)の約15%の割合で普及している。ところが、中日交配品種の障害型冷害の中で開花期耐冷性の強弱は全く不明である。そこで、中日交配品種の開花期耐冷性の評価を行った。
著者
杉浦 和彦 坂 紀邦 工藤 悟
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.30-35, 2005-03-05
被引用文献数
2 3

糯米は切り餅, 米菓に加工されることが多いため, 食味及び加工適性が重視されている.加工適性のうち餅硬化性は, 製造時間の短縮につながる品質要因として重要視されている.そこで, 良品質な糯品種を簡易に育種選抜するために餅硬化性及び食味の簡易評価法を検討した.餅硬化性の評価法にはラピッド・ビスコ・アナライザーを用いた方法がある.しかし糯米の場合, 内生α-アミラーゼ活性を抑えるため, 劇物である硫酸銅が主に使用されている.そこで, 劇物を用いない方法として塩化ナトリウムの添加を検討したところ, 硫酸銅水溶液と塩化ナトリウム水溶液の各糊化特性値に相関が認められた.一方, 糊化開始温度及びピーク温度と餅硬化性との間に相関が認められたため, 両温度は餅硬化性の選抜指標となると考えられた.玄米タンパク質含量は食味総合評価, 滑らかさ, うま味及び粘りとの間に有意な負の相関が認められた.このことから, 玄米タンパク質含量が低い品種・系統ほど切り餅食味が優れることが示唆された.玄米タンパク質含量は, 近赤外分析計により少量で推定が可能であるため, 切り餅食味の優れる糯品種育成の一次選抜の指標となると考えられた.
著者
沢口 敦史 佐藤 導謙
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.505-509, 2001-12-05
被引用文献数
6

春播コムギの初冬播において,根雪前20-25日に播種すれば越冬が良好であることを既報で示した.本報では初冬播栽培において春播栽培よりも安定的に多収を確保する技術として,発芽抑制剤と播種量について検討した.発芽抑制剤試験では,薬剤により越冬後の出芽個体数を増加させ,早期播種においても多収のコムギを生産することが可能な剤が認められた.また試験結果から,最大収量の95%以上を得るためには,178個体m^<-2>以上の生存個体が必要であると判断された.播種量試験では,播種量を春播栽培の標準量(340粒m^<-2>),1.5倍あるいは2倍量を検討した.播種量を増やしても穂数は増えるが穂長と千粒重がやや低下し,収量は標準量播種量とほぼ同じであった.越冬率は越冬可能な播種時期においても40%〜89%であった.これらより,最大収量の95%を得るためには,必要生存個体数178粒を最低の越冬率である40%で除して得られたm^2当たり445粒が播種量として適正であり,これ以上は収量増加に効果的でないと判断された.