著者
高橋 清 大竹 博行
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.27-32, 1993-03-05

分げつが鉛直方向へ姿勢の抑制を行う仕組みを解析するために, 水稲品種ササニシキを用いて分げつ茎の各節の重力屈性反応の大きさについて検討を行った. 第1実験. 1/5000aワグネルポットにイネを1個体ずつ育て, 11葉期と出穂後10日目に地上部を採取し, 全分げつの各節位別の屈曲角度を調査した. 一本の茎の中で最大の屈曲角度を示したのは, 伸長茎部と非伸長茎部の境に位置する節 (0位節) の葉枕であった. 次いで, その1節下 (-1), 1節上 (+1), 2節下 (-2) の順であった. 1次分げつ茎では, 下位節に発生する分げつで屈曲角度が大きく, 上位分げつで小さかった. また, 屈曲する節数も下位分げつで多かった. 下位節からでる1次分げつは, 新しい分げつの出現と生長によって, より外側に押されたものと推定される. 第2実験. 3.5-4.0葉期の苗を水田に移植した. 栽植密度は, 30×30cmと30×15cmの2段階, 1株植え付け本数は1本と5本の2段階とした. 出穂後40日目に地上部を採取し, 全分げつの各節の屈曲角度を調査した. 1本の茎の中で屈曲角度が最大であったのは0位節であった. 次いで-1, +1, -2位節の順となり, 第1実験の孤立個体の結果と全く同一の傾向が得られた. これらの結果は, 水稲ササニシキでは特定の部位 (0位節とその付近の葉枕) が, 分げつ茎の鉛直方向への姿勢の制御において重要な働きをしていることを示唆している.
著者
後藤 雄佐 星川 清親
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.496-504, 1988-09-05
被引用文献数
8

水稲の孤立個体における主茎と分げつとの生長の相互関係を葉齢に着目して調べた. 個体の齢を表す「葉齢」を分げつの齢を表すのにも用い, 各分げつの葉位を, 主茎の同伸葉の葉位で表したものを各分げつの相対葉位と規定し, さらに, 相対葉位で表した各分げつの葉齢を相対葉齢と規定した. これにより, 主茎と各分げつ間の生長の比較が可能となった. また, 同伸分げつを位置づける相対分げつ位(RTP)を規定し, これにより相対葉位を算出した. ポットに1個体植えした水稲品種ササニシキ, トヨニシキ, アキヒカリに肥料を充分に与え, 湛水状態で育て, すべての葉に印をつけて観察した. 初期に出現した分げつには, 主茎同様に出葉転換期が認められ, 生理的な変化が個体全体でほぼ同時期に起きたことが示唆された. 栄養生長期後半の観察では, 同一日には分げつ次位が高いほど, 相対葉位の高い葉が出現し, それに伴いRTPの高い嬢分げつが出現した. 各分げつの相対葉齢から主茎の葉齢を差し引いた差を相対葉齢差(D)と規定すると, Dは生長とともに直線的に増加し, 播種後94日目, 止葉の抽出直前に最大となった. また, Dは分げつ次位が高いほど大きく, 各時期におけるDは, ほぼ分げつ次位に比例して増大した. Dの値の大きさには, 品種間で差が認められた.
著者
古谷 義人 坂田 公男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.17, pp.22-23, 1961-10-25

早期栽培陸稲の生育経過を明らかにして,早期栽培法確立の資料とするため,1957年から1959年の3年にわたり,比較として善通期栽培のものについても調査を行った。試験方法供試品種は農林15号,農林24号で,早期を4月10日,普通期を6月4日に播種した。作式は畦幅60cm,株間2cm×10cm千鳥播とし,10アール当り74惆潰播種した。
著者
高橋 肇 中世古 公男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.22-27, 1992-03-05
被引用文献数
7

北海道育成の新旧品種(ハルユタカ, ハルヒカリ)およびドイツ育成の品種(Selek)を供試し, 標準播種期(4月25日, 中播区)を中心に前後2週間間隔で播種し(早播区-4月11日, 晩播区-5月10日), 播種期による生育相の変動, 穂の形態形成ならびに登熟期間の乾物生産の差異から, 品種による収量性の違いについて検討した. 各品種とも播種期の遅れに伴い出芽から幼穂分化期に至る生育相Iに日数が短縮し, 全生育日数も短縮した. これに伴い, 小穂分化期間が短縮し, 小穂数が減少したことからシンク容量の減少がみられた. さらに, 登熟期後半のCGRおよびNARが著しく低下したことで, 全乾物重ならびに子実収量が減少した. ドイツ品種Selpekは, 北海道の2品種に比べ穂重型で播種期の遅れに伴う穂数の減少がみられなかった. また, 小穂分化期間が長く, 晩播に伴う小穂数の減少が小さく, さらに, 登熟期後半の老化の進行が遅く, 他の2品種よりもNAR, CGRを高く維持したことにより, 早播区に対する晩播区の子実収量の減少程度も小さく(ハルヒカリ-34%, ハルユタカ-36%, Selpek-14%), 晩播区ではSelpekが最も多収を示した(ハルヒカリ-418g・m^<-2>, ハルユタカ-523g・m^<-2>, Selpek-551g・m^<-2>). 以上のことから, 北海道の晩播用品種としては穂重型品種が適することが示唆された.
著者
小林 広美 川崎 勇 鷲尾 養
出版者
日本作物学会
雑誌
作物学研究集録
巻号頁・発行日
no.14, pp.35-37, 1971-08-02

不耕起直播栽培の安定普及を阻害する要因の一つに耐倒伏性の低下があげられている。そのため、著者らは不耕起直播栽培における倒伏防止対策の確立に関する研究を行なっているが、1969年に品種の草型と耐倒伏性の関係について検討した結果の概要を報告し参考に供する。6月2日にポンチ式播種機を用い、30cm×16cm(208株/m^2)の密度で、1株8〜10粒ずつ点播した。草型の異なる6品種・系統を供試し、施肥量はa当り成分量、窒素2.9kg、燐酸1.0kg、加里1.6kgとした。
著者
高橋 肇 千田 圭一 中世古 公男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.327-333, 1990-06-05

春播コムギ3品種 (長稈ハルヒカリ, 半矮性ハルユタカおよび長稈・晩生Selpek) の主稈3部位 (穂首節間, 第2節間および下位節間) における構成物質 (細胞壁構成物質, 純細胞内容物質および可溶性糖) の推移を開花期から成熟期まで調査した。開花後, 細胞壁構成物質と純細胞内容物質は穂首節間と第2節間で伸長生長に伴い増加したものの, 開花時に伸長の停止している下位節間ではほとんど増加しなかった (第2図) 。これに対し, 貯蔵物質と考えられている糖は, 各節間とも乳熟期まで増加した後穂への転流とともに減少し, 成熟期にはほぼ0の値を示した。糖は, 下位節間では開花前にかなりの量が蓄積していたのに対し, 穂首節間と第2節間では開花期に蓄積し始め, 下位節間では乳熟期の1週間ほど前に, 第2節間では乳熟期に, 穂首節間では乳熟期の数日後に最大値に達した。乳熟期の糖の含有率は全品種とも第2節間で高く, さらに含有量は下位節間で高いため, 第2節間と下位節間が主要な貯蔵器官であると考えられた。一方, 糖の含有率, 含有量ともに半矮性のハルユタカで長稈のハルヒカリ, Selpekよりも高かった。
著者
ウィーガンド クレイグ 芝山 道郎 山形 与志樹 秋山 侃
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.673-683, 1989-12-05
被引用文献数
6

作物の生育と収量に関する新しい推定手法として野外での分光反射測定がある。この測定により得られた作物の波長別反射係数間の相互演算結果 (VI) が, 葉面積指数, 光合成有効放射 (PAR) および同吸収率 (Fp), PAR日吸収量 (Sp), 地上部乾物量 (DM) および収量とどのように関係づけられるかを数式で提示し, これらを茨城県つくば市での実測データに適用してその有効性を検証した。植物材料としては, 15aの水田を13区に分割し, 2移植期 (5月21日, 6月11日), 6窒素施肥水準 (0, 2, 4, 6, 8, 12 g/m^2) を設けて3品種のイネ (日本晴, コシヒカリ, シナノモチ) を栽培したものを供し, 10日ないし2週間隔で分光反射測定を行った。移植期から登熟期において, 収量ならびに積算Sp (ΣSp) はともに積算PVI (ΣPVI) の1次式で推定されることがわかった。PVIは赤および近赤外反射係数から算出されるVIである。またΣSpからDMへの転換効率 (e_c) は移植期から出穂期20日までの期間で2.9 g DM/MJ, 移植期から収獲期までは2.5 g DM/MJだった。一方収量と出穂期のDM (DM_h) とはr_2=0.92の高い相関関係を示した。DM_hと1100, 1650 nm反射係数間の差との相関関係は, PVIとのそれよりも密接であった。(r^2=0.82および0.6 g) 。
著者
安部 秀雄 神前 芳信
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.7, pp.10-14, 1969-12-25

ウシオコムギを用いて播種量と追肥時期の差異が倒伏と玄麦収量にいかに影響するかを検討した。1)追肥時期と玄麦収量との関係は全量元肥と2月28日の早い追肥のものが多収を示した。2)追肥時期と倒伏との関係は2月28日〜3月20日の間の追肥が最も大であり,窒素の追肥量が4kgよりも8kgの多肥が倒伏に影響が大であつた。3)倒伏と節間長との関係は全量元肥区と4月20日追肥区は第5節間長が短くなり倒伏も少なくなるが,追肥量,追肥時期と節間長の関係は明らかでなかつた。4)倒伏と止葉葉面積との関係はr=0.73,r=0.83の有意な正の稲側か認められた。5)倒伏と止葉生葉重の関係は4月20日の調査ではr=0.77,5月20日ではr=0.79の有意な正の相関が認められ,止葉生葉重の重いものが倒伏が大であつた。以上総括すると小麦の全面全層播栽培では止葉の大きさが倒伏に影響するので,収量を増加させて止葉を小さくするには全量元肥の施肥方法が安全であると思われた。
著者
前田 忠信 石崎 昌洋 平井 英明 渡辺 和之
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
no.11, pp.32-33, 1996-12-06

堆肥を連年施用した水田の土壌に対する堆肥施用の影響を低農薬条件で栽培した水稲の生育収量について検討した。品種コシヒカリを用い1995年4月25日に播種し、慣行の稚苗育苗法で育苗した苗を1株3〜4本として5月19日に乗用側条・深層施肥田植機で移植した。堆肥は1991年から4年間、年間5tで計20tを施用し、1995年は2t/10aを施用した。いずれの試験区も低農薬(除草剤1回, 殺虫剤1回)で栽培した。
著者
尾形 武文 矢野 雅彦 田中 昇一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.55, pp.31-34, 1988-12-15

良食味品種「ミネアサヒ」の移植時期の移動による生育の特徴や収量性の変化は次のとおりである。1.「ミネアサヒ」の安定多収を得るための最適な移植期は6月初旬頃であった。2.移植期が5月6日〜6月20日の問では,主稈葉数は13葉前後でほとんどかわらない。3.出穂,成熟期は10日早植することにより,5〜6日早まった。4.5月.上旬植では,1種籾数の減少がみられた。5.6月20日植では,籾数の確保は容易であるが,穂満期の程の充実や受光態勢が劣るため,登熟歩合の変動が大きかった。以上の結果並びに施肥法試験の結果から,京築地域の平坦〜山麓地における「ミネアサヒ」の栽培において安定多収を得るためには,移植期が5月上旬植の場合10a当り収量500kgを目標に,m^2当り籾数は28,000〜30,000粒が適切であった。また,このための窒素施用量(10a当り)は基肥5〜7kg,1回目穂肥1.5〜2kg,2回目穂肥1.5kgが適当であった。さらに,6月上旬植の場合10a当り収量530kgを目標とすることが可能であり,その場合のm^2当り籾数は30,000〜32,000粒が適当であった。このための窒素施用量(10a当り)は,6月上旬植では基肥5〜6kg,1回目穂肥1.5kg,2回目穂肥1.5kgが適当と考えられた。なお,以上の2移植期ともに,1回目の穂肥を出穂前20日頃(幼穂長2〜3mm)にすることが効果的であった。
著者
細山 利雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会北陸支部会報 (ISSN:0388791X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.14-16, 1967-03-25

新潟県魚沼地域の根雪日数は平年で120日, 豪雪年は160日にも及ぶ。また, 最深積雪量は平年で230cm, 豪雪年には430cmを記録したことがある。消雪期は, 北魚沼郡堀之内町で平年4月15日前後であるが, 少雪年は3月20日, 豪雪年は5月4日に及び, 播種期に1m以上の積雪のあることもまれではない。また年による消雪期の差異につれて作季が移動し, 作柄を不安定にしている。本試験は昭和35年〜37年に山間豪雪地の堀之内試験地において, 主要品種について移植期と生育収量の関係を明らかにするために行なったものである。
著者
近藤 和彦 石井 康之 伊藤 浩司 沼口 寛次
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.60, pp.50-53, 1994-03-11
被引用文献数
1

春播き(4月5日播種)および秋播き(1O月1日播種)のベントグラスにおいて,冬期の乾物生長に対する生長調節剤処理の影響について検討した。生長抑制剤バウンティ散布区(B区),蒸散抑制剤ミドリテール散布区(M区)および対照区(C区)を設け,B区は11月中旬に1回のみ,M区は11月中旬より2週間間隔で,春播きは計8回,秋播きは計上0回処理した。地上部乾物重は,処理後4週間目ではB区が最も小さかったが,春播きでは2月11日以降,秋播きでは1月7日以降B区の地上部重が他の2区よりも大きくなった。秋播きの刈株乾物重および葉身重比率は,B区が一貫して他の2区よりも有意に大きかった。茎数は,生長抑制剤処理により増加し,その処理の影響は秋播きの方が大きいことが示された。これは処理開始時までの茎数が,秋播きでは少なく,茎数増加期に相当していたことによると推察された。したがって,地上部重の区間差は、主に茎数の差によっていた。クロロフィル濃度は宇B区の値が他の2区より高く維持された。M区の生長経過はC区に比べて優ることはなかった。以上により,冬期における生長の抑制と葉身の退色を緩和するには,秋における生長抑制剤の散布は有効であると推察された。
著者
飯田 幸彦 泉沢 直 石原 正敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-44, 1987-12-01

昭和62年4月1日、14日の寒波の襲来により場内の気温が氷点下に低下したため、麦類の幼穂及び出穂直前の穂が凍死した。そこで、場内の麦類について、早晩性の違いによる品種間差や収量への影響について調査した。
著者
Agarie Sakae Kawaguchi Akiko Kodera Akiko Sunagawa Haruki Kojima Hide Nose Akihiro Nakahara Teruhisa
出版者
日本作物学会
雑誌
Plant production science (ISSN:1343943X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-46, 2009-01

We measured the concentration of polyols (pinitol, ononitol, and myo-inositol), which are known to have health-promoting and/or disease-preventing functions, in the common ice plant (Mesembryanlhemum crystallinum L.) cultured under salt- and drought-stressed treatments. In NaCl-treated plant the concentration of pinitol/ononitol increased with increasing NaCl concentration in culture solution. The maximal concentration was 3.6mg g^<-1> FW, which was found in the shoot top, followed by small side shoots (2.1mg g_<-1> FW) of mature plants grown with 400mM NaCl for 35 ds. The drought stress also accelerated the accumulation of pinitol/ononitol. The maximal concentration was 1.2mg g^<-1> FW, which was found in the shoot top of plants under the stress for 25 ds. The myo-inositol increased in salt-stressed plants at 3 ds after the start of the treatment and then decreased with the lapse of time during stress. The concentration of polyols in the ice plant was comparable to that in the other species reported to accumulate polyols at high levels. Radical scavenging activity evaluated by DPPH assay was increased two-fold by 400mM NaCl treatment, which was twice as high as that in the leaves of lettuce (Lactuca sativa L.). These results indicated the high potential of the ice plant as a polyol-rich high-functional food.
著者
王 培武 礒田 昭弘 魏 国治
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.401-407, 1993-09-05

乾燥条件下でのダイズの葉の調位運動の実態と葉温との関係を調査するため, 乾燥地域である中国新疆ウイグル自治区石河子のコンクリート枠圃場で実験を行なった. 適宜かん水処理した区 (かん水区) と一定期間かん水を行なわなかった区 (無かん水区) を設け, 調位運動の活発な珍珠塔2号と不活発な黒農33号の2品種を栽培し, 登熟中期に, 葉群構造, 頂小葉の葉温を調査した. 黒農33号の無かん水区は茎長が小さくなり, 葉面積指数もかん水区の約半分になった. 珍珠塔2号の無かん水区は茎長は余り変わらないものの, 各層の葉面積指数が小さくなり, 全体の葉面積指数がかん水区の半分になった. 珍珠塔2号の無かん水区は早朝から葉身が立ち上がり, 日中は太陽光線と平行に近い状態となった. かん水区も調位運動を行なったが無かん水区ほど顕著ではなかった. 最上層の葉温はかん水区で午前中気温より少し高くなったが, 正午前から低く推移した. 無かん水区ではほとんどの時間気温より低く推移した. 黒農33号の無かん水区では葉身に萎れがみられた. かん水区では珍珠塔2号ほど活発ではなかったが, 昼間太陽光線と平行になろうとする調位運動を行なっていた. かん水区の最上層の葉温は正午前から気温より低く推移したが, 無かん水区では朝から気温よりかなり高く推移し日射量の変化に影響されていた. 珍珠塔2号の無かん水区に一時的にかん水を行なったところ, かん水5日後においても水分ストレス条件下と同様な太陽光線を避ける調位運動が認められた.
著者
佐藤 信之助 吉岡 昌二郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会北陸支部会報 (ISSN:0388791X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.11-14, 1972-03-25

1.13種の寒地型イネ科牧草類を用いて生育特性を比較し, 主として北陸の低標高地帯における季節生産性について検討した。2.2カ年合計収量はトールフェスク>オーチャードグラス>リードキャナリーグラスの順に上位を占めたが, 平衡的な季節生産性の点ではトールフェスク, リードキャナリーグラスがすぐれていた。3.上位3草種について検討した結果, 季節的な収量の変動は単位面積あたり茎数および一茎重の変動と関連しているが, それぞれ草種毎に違いが認められ, 特にリードキャナリーグラスの盛夏以降の収量が高い水準で維持されたのがいちじるしく特徴的であった。4.その他の草種では夏枯れの影響がいちじるしく, そのことが季節生産性および維持年限に大きく影響するものとみられた。5.各草種とも雪害による直接的な被害は軽るく, むしろ融雪後の急激な生育の点で季節生産性に大きく影響するものと思われる。