著者
赤木 功 西原 基樹 上田 重英 横山 明敏 佐伯 雄一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.250-254, 2009 (Released:2009-05-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1 4

九州南部の秋ダイズ栽培における晩播栽培がダイズ子実中のイソフラボン含有量に及ぼす影響について調査し,西南暖地に位置する当地域においてもイソフラボン含有量の向上に晩播栽培が有効であるか検証した.8月上・下旬播種の晩播栽培は,7月中旬播種の標播よりも登熟期後半(成熟期前30日間)にあたる平均気温が0.4~1.7℃低く経過し,成熟期は3~9日遅延した.イソフラボン含有量は晩播によって高まり,標播に対する増加率はアキセンゴクが16.1~34.9%,クロダマルが5.9~15.3%,ヒュウガが31.1~37.9%,フクユタカが44.4~58.0%であり,品種によって晩播に対する反応に差異が認められた.子実中のタンパク質,カリウム,マグネシウム含有量は晩播による影響は認められないものの,カルシウム含有量は晩播によって低下する傾向にあった.また,個体当たりの子実重は晩播によって最大で78%低下した.以上のことから,晩播栽培は収量低下を軽減できれば,西南暖地における高イソフラボン含有ダイズ生産のための栽培技術の一つとして有効であると考えられた.
著者
新田 洋司 伊能 康彦 松田 智明 飯田 幸彦 塚本 心一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.315-320, 2008-07-05
被引用文献数
2 3

茨城県産米は従来より,整粒歩合,千粒重,粒厚,1等米比率が低いことが指摘され,改善が要望されていた.そして,茨城県等では2004年から「買ってもらえる米づくり」運動(以下「運動」)を展開している.本研究では,茨城県の作付面積が新潟県についで全国第2位(2004年)である品種コシヒカリについて,千粒重・粒厚と食味関連形質を調査して「運動」目標値等と比較した.そして,それらの形質の相互関係について検討した.調査は,茨城県内各地で品種コシヒカリを化学肥料によって一般的に栽培している20水田を対象とした.育苗,移植,管理,収穫作業等は当該水田管理者の慣行法によった.収穫後,収量および収量構成要素,精玄米の大きさ,食味関連形質等を調査した.収量は330〜617kg/10aの範囲にあった.玄米の粒厚は1.93〜2.02mm の範囲にあり,平均は1.99mmであった.玄米千粒重(20.3〜22.7g)の平均は運動目標値と同じ21.5gであった.玄米の粒厚と千粒重との間には有意な相関関係は認められなかった.一方,精米のタンパク質含有率(乾物重換算で5.3〜7.4%)の平均は6.4%であり,運動目標値よりも低かった.精米のアミロース含有率(18.3〜19.8%)の平均は18.9%であった.精米のタンパク質含有率,アミロース含有率,食味値と玄米千粒重または粒厚との間には,有意な相関関係は認められなかった.以上の結果,比較的千粒重か大きく粒厚が厚い玄米では,精米のタンパク質含有率やアミロース含有率が玄米の大きさに規定されない場合のあることが明らかとなった.また,本研究で用いた2005年茨城県産コシヒカリの食味および食味関連形質は,おおむね良好であったと考えられた.
著者
伊藤 隆二
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
no.4, pp.5-8, 1989-12-07

ある特定のイネ品種の細胞を培養して植物体を再生させた場合、その植物体は原品種と同じものになると考えるのが常識であろう。ところがプロトプラストから植物体を再生させる過程において、おそらく突然変異が起こったのであろう、原品種と異なる変異体が生じ、その中から良いものを選び、悪いものを捨てるという、従来の育種の操作を進めることによって原品種と性質の異なる新品種を生むことができたのである。植工研では、わずか3年間でコシヒカリのプロトプラスト培養から新品種を作出し、平成元年2月3日「初夢」の名で農林水産省に品種登録の申請を行った。そこで、この奇妙な方法で新品種を作出した経緯、新品種「初夢」の特性、細胞培養利用のイネ育種の特徴等について述べることとする。
著者
中村 拓 坂 斉
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.707-714, 1978-12-30
被引用文献数
2

The experiments were made to determine the effect of photochemical oxidants on physiological activitics of rice plants. Rice plants were fumigated with ozone at concentration of 0.12-0.20 ppm for 2-3 hr to investigate the accute injury and at 0.05 and 0.09 ppm for daily exposure from 3.0 leaf stage to assess the effect of ozone on growth. 1. It was observed that malondialdehyde produced by disruption of the components of membrane increased in the leaves exposed to ozone. 2. Ozone reduced the RuBP-carboxylase activity in both of young and old leaves 12-24 hr after fumigation and then in the young leaves the activity of this enzyme recovered to some extent after 48 hr, but it did not show any recovery in the old leaves. On the otherhand, ozone remarkably increased the peroxidase activity and slightly increased acid phosphatase in any leaves. 3. Abnormally high ethylene evolution and oxygen uptake were detected in leaves soon after ozone fumigation. 4. In general, high molecular protein and chlorophyll contents in the detached leaves decreased with incubation in dark, particularly in the old ones. These phenomena were more accelerated by ozone fumigation. Kinetin and benzimidazole showed significant effect on chlorophyll retention in ozone-exposed leaves. 5. Reduction of plant growth and photosynthetic rate was recognized even low concentration of ozone in daily exposure at 0.05 and 0.09 ppm. From these results it was postulated that ozone may act the senescence of leaves in rice plants.
著者
原 貴洋 手塚 隆久 松井 勝弘
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.459-463, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

中国30点, 韓国30点, 日本7点の計67点のハトムギ遺伝資源を熊本県の九州沖縄農業研究センター圃場で5月下旬に播種, 栽培し, 成熟期に形態的形質を調査した. 韓国品種の形態的形質は日本品種に似ていたが, 韓国品種の着粒層は日本品種より狭く, 韓国品種には草丈が小さい品種が認められ, 機械収穫適性を改良する素材として期待できた. 中国品種は, 草丈, 主稈葉数, 稈径, 着粒層, 葉長, 葉幅で大きな値を示し, 飼料用ハトムギの改良に有望と考えられた. 各形質値の間の相関関係が高かったことから主成分分析を行った. 第1主成分は草丈, 稈径, 主稈葉数, 着粒層, 葉長, 葉幅の植物体の大きさを表す形質との相関が高かった. 第2主成分は着粒層との相関が高く, 植物体の形を表していると考えられ, 中国品種, 韓国品種は日本品種より分布域が広かった. 以上のことから, 韓国, 中国品種はともに, わが国ハトムギの草型の変異拡大に寄与すると考えられた.
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.12, pp.83-86, 1958-05-01

司会(瀬古)早期栽培で起るいろいろな問題について討論を願いたい。早期栽培を大きく二期作と普通早期作に分けて,先ず二期作についていろいろな問題が出てきている。今後,二期作は九州でどの程度行けるか,またどこを問題として研究を進めるか。北九州について森さんからお願いしたい。
著者
牧田 克巳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.32, pp.20-21, 1991-08-01

稲作に取り組んで10年になるが、この間、稲との対話に明け暮れして楽しい人生の一時を過ごすことができたことを感謝している。天地人の恵によって、近年は安定して単収800kg内外の収穫を得ることができるようになった。この経験に基づいて、私が稲作りの基本とするところと、稲作診断の要点について述べてみたい。稲作りの基本は、あくまでも土作りで、よい粘土(客土)と有効腐植を多くし、深い耕土と、排水のよい田を創るならば、あまり手をかけなくとも米はよくとれる。前年の秋に、生ワラ全量を施し、これを早く腐熟させるため10a当り乾燥鶏ふん200kgと熔燐60kgを施用。秋耕はしないで、春耕時に過石20kg、塩加15kgを全層施肥する。これらは、土作りと基肥施用を兼ねた作業である。
著者
中野 尚夫 氏平 洋二 石田 喜久男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.34, pp.16-23, 1993-08-02
被引用文献数
1

山陽地域の主要品種タマホマレを供試し, 1982年と1986年に6月上旬から7月下旬まで1週間隔で播種し, 播種期と分枝数・総節数・稔実莢数および収量の関係を検討した.播種期が早いと主茎節数が多かったが, 6月下旬から7月上旬の播種における差は小さかった.分枝数は, 播種期が遅いほど少なく, 特に7月にはいってからの播種ではその減少が大きかった.総節数, 稔実莢数とも分枝数の少ない遅播きで少なかった.収量は稔実莢数と高い相関関係にあり, 稔実莢数は総節数, 分枝数に支配された.このため収量は, 早播きほど多かった.しかし, 早い播種では下位節分枝の枯死率が高い, 結莢率が低いなどにみられるように過繁茂が懸念された.一方結実期間の短い遅播きでは百粒重の低下も懸念された.したがって, 当地域のタマホマレ栽培における播種適期は, 6月下旬から7月極上旬と判断された.
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.13, pp.56-61, 1958-12-08

これから討論会を始めますが(2時半から4時半迄)2時間の内に終りたいと思います。水陸稲の早期栽培は暫次増加していますが,予想し北面積が足ぶみの状態になり,水利の問題でひつかかり,或いは昨年の19号,20号台風による收穫期の籾の被害,品質等が足ぶみの原因にもなった所が多いようです。本年は干〓があり,水稲早期栽培は普通栽培より有利な面が多いので,明年は格段の普及が予想されます。燃しこの水陸早期栽培の後作に,何をもってくるか,これが問題になってくるわけです。これが今日の討論会の主体でありまして,飼料作物を主体に検討していただきたいと思います。飼料作物は家畜の飼育と,もちつもたれつの関係もあるわけですし,また水稲早期栽培が初まって以来3年おくれて飼料作物の導入の体型が研究されたのですが,その結果が各々出ているし,県においてはまだ検討される迄になっていないところもあるかと思いますけど,今後更に連絡試験等行う必要もある事と思います。今日は田中,井手迫両氏を中心に各県の事情や作付体型について討論をお願いします。
著者
梶木 慧一 高見 博 藤岡 正美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.29, pp.38-39, 1988-08-01

台風12号(昭和62年8月30日〜31日)が朝鮮海峡を北上し日本海へ通過したが, 風台風であったため光市室積地区の水稲へ多大な被害を及ぼし, 共済被害面積率は40.9%に達した。このため, 海岸からの距離と被害について調査, 検討した。
著者
岡 浩司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.29, pp.36-37, 1988-08-01

昭和62年8月30日〜31日にかけて東シナ海から日本海へ北上した台風12号は, 最大瞬間風速39.7m, 降雨量は4mm (防府自衛隊北基地調)と典型的な風台風で, 出穂期前後を迎えていた瀬戸内沿岸の水稲に潮風害等大きな被害を及ぼしました。特に, 大道干拓(防府市大道)は, 東と南が海に面しており, 暴風が海側から直接吹き込んだため水稲の被害は甚大であったので, 本調査により実態の把握を行った。
著者
金 漠龍 堀江 武 中川 博視 和田 晋征
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.634-643, 1996-12-05
被引用文献数
13

予測される地球規模の環境変化が水稲生産に及ぼす影響を明らかにするため, 温度傾斜型CO_2濃度処理装置(TGC)を用い, 水稲アキヒカリの群落を対象に異なる温度とCO_2濃度の複合処理を行い, 発育, 乾物生産および生育諸特性に及ぼす影響について検討した. TGCは長さ26m, 幅2.05m, 高さ1.7mのトンネル型のチャンバーであり, その長軸に沿って常に4での温度勾配が生じるように, 通気速度をコンピュータ制御により調節した. 実験には2つのTGCを用い, 1つのTGCは現行の大気CO_2濃度(&cong;350μLL^<-1>)を, 他方は690μLL^<-1>のCO_2濃度を維持させた. ポット(1/5000 a)植の水稲をTGC内に20株m^<-2>の密度で配置したポット植群落(1991年)とTGC内の枠水田に25株m^<-2>の密度で移植した枠水田群落(1992年)にそれぞれ肥料を十分あたえ, CO_2×温度の複合処理を全生育期間にわたり行った. CO_2濃度倍増処理は水稲の出穂に向けての発育を促進し, 出穂を早めた. その促進率は高温ほど大きく, 出穂までの平均気温が3O℃の場合のそれは11%にも及んだ. 草丈に対するCO_2濃度および温度の影響は小さかったが, 茎数はCO_2濃度に強く影響され, 全茎数と有効茎数ともCO_2濃度倍増処理によって顕著に増加した. CO_2濃度倍増処埋の葉面積への影響は, 幼穂分化期ごろまでの生育初期以降は極めて小さくなり, 過去の研究結果とよく一致した. 乾物生産はCO_2濃度倍増処埋によって顕著に高まったが, それに対する温度の影響は小さく, 2作期の全温度区を平均してみたCO_2濃度倍増処理による最終乾物重の増加率は約24%と推定された. なお, この乾物増加率の温度反応は過去の研究結果と異なったが, これは, 過去の研究は光が殆ど生育を制限しない孤立個体に基づいたものであるのに対し, 本実験の群落条件下では光が生育の制限要因となったためであると考えられる.
著者
上原 泰樹 手塚 隆久 伊藤 延男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.55, pp.42-45, 1988-12-15

筆考らは白葉枯病耐病性の遺伝資源として有効利用を図る目的で導入品種の白葉枯病低抗性を検定してきたが,その中のインド原産のDenaはI〜V群菌すべてに対して低抗性を示すことを見いだした。