著者
祖父江 勇気 堀内 孝次 大場 伸哉 森 健司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部会報
巻号頁・発行日
no.129, pp.45-48, 2000-06
被引用文献数
1

本研究は連作障害が最も起こりやすい作物のひとつであるエンドウを用いて, ポット栽培における栽培後土壌の湛水処理が作物の連作障害抑制を可能とするかどうかについて検討した.実験は岐阜大学農学部付属農場のビニールハウス内で行った.具体的には1作終了後に短期間湛水処理【実験1】および長期間湛水処理【実験2】を行い, 2作目のエンドウの生育をそれぞれ無湛水処理区と比較した.
著者
瀬古 秀生 阿部 新一 波津久 文芳 和田 学
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.14, pp.9-12, 1959-12-08

米作日本一表彰会の昭和33隼度競作において,九州ブロックの全州審査で反当収量5石以上のもものが2点あつたが,このようなことは同会始って以来(昭和2毎年)初めてのことである。両者とも山間部から出品されたものである。平坦部農家でも5石を夢みて努力を重ねて来た人が多数あったと考えられるが,何れも収穫顛かなり前から稲を倒したようである。.この年の秋の如く,台風も強雨もないのに倒伏の甚だしかった年次は珍らしい。この現象は全国的であったようである。従ってこれは農家の施肥,管理の失敗のみではなく,共通的な遠因があるものと考えられる。昭和32年度はこれに反して倒伏した水稲はほとんで見られなかった珍らしい年である。33,32,31年度の稲作と倒伏に関して簡単な考察を加えて今後の参考としたい。
著者
内村 要介 佐藤 大和 松江 勇次
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.393-399, 2001-09-05
参考文献数
20
被引用文献数
2

さらなる省力, 低コストの水稲直播栽培に適する品種育成のため, 酸素供給剤を粉衣しない種籾の出芽苗立ち安定化についての基礎的知見を得る目的で, 72品種を供試して湛水土壌表面直播栽培を行い, 出芽苗立ち特性の優れる品種の評価および圃場中の水温と溶存酸素濃度の測定を行った.播種後14日間の圃場中の水中の溶存酸素濃度は約4.7〜11.6mgL^<-1>(飽和量の約50%〜過飽和), 水温は日平均21.8〜29.0℃で推移し, 水稲種子の発芽, 根の伸長に問題はほとんどなかった.供試した72品種はすべて発芽率が80%以上あったにもかかわらず, 播種14日後の出芽率は0〜89%の変異幅が認められた.出芽率が80%以上と出芽能力が優れた11品種が認められ, そのうち8品種の譜系図に旭または朝日が認められた.転び苗および浮き苗の発生率については4%〜61%の変異幅が認められた.出芽能力が優れた11品種において, 出芽率と転び苗および浮き苗の発生率との間には相関関係は認められず, 出芽率が80%以上で転び苗および浮き苗の発生率が10%以下の苗立ちが優れた品種, 神力, はえぬき, どまんなかが認められた.出芽率の高い品種は, 千粒重が重く, 比重1.1以上の割合が高く, 初期生育が優れた.転び苗および浮き苗の発生が少ない品種は, 種子の比重が1.1以上の割合が高く, 種子根の平均伸長速度が遅かった.これらの知見は, 酸素供給剤を用いない省力, 低コスト直播栽培で出芽苗立ちを安定化させる水稲品種育成のための交配母本選定に当たり有効な情報になるものであった.
著者
ゴツシュ ナビンアナンダ 後藤 寛治 中世古 公男 森 義雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.624-629, 1976-12-30

ダイズ矮化病ウイルスの生育・収量に及ぼす影響を明らかにするため, 品種アダムス, ゆうづるおよびそのF_3系統13系統を供試し, 接種区および防除区における生育・収量の差異について比較, 検討した。1) 接種区における全乾物重および葉面積は, ウイルス接種約1ケ月後の7月17日において, すでに防除区に比し劣り, その差は生育とともに拡大した。2) 生育期間中の個体当乾物増加速度および葉面積は接種区が劣ったが, 純同化率は8月6日を中心に前期では防除区が, 後期では接種区がまさった。また, 接種区では比葉面積および葉身の窒素含有率が低く, 乾物率は逆に高い傾向を示し, ウイルス感染による葉の肥厚, 転流の阻害が認められた。3) 接種区における個体当平均子実重は防除区に比べ約70%減少した。また, 接種区では子実重と各生育時期における葉面積との間に有意な正の相関関係が認められ, 子実収量の系統間差異は葉面積の差によることが明らかとなった。4) 相対葉面積生長率が純同化率および比葉面積と有意な正の相関を示すことから, 接種区における葉面積の減少は, ウイルス感染による光合成率の低下と葉の肥厚に起因するものと考えられる。
著者
松崎 守夫 高橋 智紀 細川 寿
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.13-22, 2006-01-31
参考文献数
26
被引用文献数
2

北陸地方のダイズは主に重粘土転換畑で栽培されているが, それらの圃場は排水性が悪いため, 湿害が懸念される.北陸地方の梅雨は6月下旬〜7月中旬となるが, その時期は, ダイズが湿害を受けやすい生育初期や花芽分化期に相当する.ここでは, 北陸地方の重粘土転換畑で栽培したダイズにおいて, 梅雨時の過湿条件の影響と被覆尿素の湿害軽減効果を検討した.6m幅の圃場外周に明きょを施工し, 梅雨時に地表面まで湛水する圃場と, 湛水しない圃場を設けた.また, 営農試験地において, 転換初年目の暗渠敷設圃場, 未敷設圃場を供試した.各圃場に対し, 被覆尿素を施用しない対照区, 40日, 70日, 100日, 100日シグモイド, 140日タイプの被覆尿素10gN/m^2を, 基肥として全面施肥する区を設けた.過湿条件によって, 窒素集積量, 収量は減少し, 窒素集積量の減少は主にウレイド態窒素集積量に, 収量の減少は主に莢数の減少に由来した.被覆尿素の効果は, 湿害が発生した圃場で見られ, 梅雨明けまでに溶出量が多い40日, 70日, 100日タイプで効果が見られる場合が多かった.40日, 100日タイプは収量, 70日タイプはウレイド態窒素集積量を増加させる傾向があった.以上のように, 北陸地方の重粘土転換畑では, 梅雨時の過湿条件によってダイズの窒素集積量, 収量が減少したが, 過湿時に溶出量が多い被覆尿素によって, それらの減少は軽減される傾向があった.
著者
角 明夫 片山 忠夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.418-424, 2001-09-05
参考文献数
21
被引用文献数
2

稈(茎)長において異なる同質遺伝子系統, ソルガム2系統;Plainsman tall typeとPlainsman short type, ダイズ2系統;ヒュウガとヒュウガ矮性系統, 水稲2系統;銀坊主と短銀をポット栽培し, 正常系統と矮性系統の消費水量(CU)と乾物増加量(ΔW)および収量との関係を比較検討した.CUとΔWの間にはそれぞれ作物について直線関係が認められた.ΔW=0におけるCUは, ダイズ2系統を除いて, 蒸発量(E_s)にほぼ等しかった.蒸散効率(ΔW/(CU-E_s))は矮性遺伝子の有無によってほとんど影響されなかった.ΔWが大きくかつ蒸散効率(TE)の低かったヒュウガは, 供試作物中最も多量の水を消費した.またこれにはソルガム系統や水稲系統と異なり, 開花期以降ΔW=0におけるCUが蒸発量を上回る傾向を示したことも関係した.ソルガム2系統はダイズおよび水稲の2系統よりTEにおいて勝ったもののΔWが大きく, 結果的に水稲2系統と匹敵するCUを示した.これに対して矮性系統は, 供試した作物の全てで, 正常系統より常にCUが小さかった.加えて, 矮性系統は絶対収量において正常系統に劣るものの, 同一の蒸散量をより効率的に収量生産へと結びつけることが示された.このような矮性系統の特性は干害回避性と水利用の効率化という両面からも有用であろう.
著者
志水 勝好 小村 繭子 曹 衛東 石川 尚人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.314-320, 2003-09-05
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

ケナフ2品種(粤豊1号および農研センター維持系統)を1999年と2001年に圃場で栽培し,1999年は1回(10月18日〜11月5日),2001年は生育時期別に4回(粤豊1号:茎葉生長初期(7月3日,播種後57日目),茎葉生長中期(8月9日,播種後94日目),茎葉生長後期(9月7日,播種後123日目),開花初期(10月11日,播種後157日目),農研センター維持系統:茎葉生長初期(7月3日,播種後57日目),茎葉生長中期(7月25日,播種後79日目),開花期(9月7日,播種後123日目),種子登熟期(10月11日,播種後157日目),部位別の生体重と乾物重を調査した.また,2001年には主茎上位葉の光合成速度および全葉の粗蛋白質含有率と無機成分含有率を測定した.さらに,両年とも栽培期間中の地上部形態の推移を測定した.農研センター維持系統では両年とも播種後120日頃から主茎の節数と草高の増加が緩慢となり,主茎残存葉数は減少した.しかし粤豊1号では,4回目の調査期まで節数,主茎残存葉数とも増加した.光強度1600μmolm^<-2>s^<-1>下で測定した光合成速度は両品種とも第3回の調査期まではC_3植物としては高い値を示し,農研センター維持系統の最高値(第2回目の調査時期)は平均39.4μmol CO_2 m^<-2> s^<-1>であった.粗蛋白質含有率は両品種とも生育が進むにつれて減少する傾向を示したが,農研センター維持系統では播種後約80日目の開花後に急減した.Ca含有率は,Na,KおよびMg含有率に比較し,生育が進むにつれて著しく高くなった.これは葉を飼料に利用する場合に有利な特性と考えられる.
著者
板谷 至 宮田 喜次郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部研究発表梗概
巻号頁・発行日
no.64, pp.9-12, 1972-07-31

水稲の登熟に関する研究は多く、気温との関係について相見らは酵素活性の面から、長戸らは主として品質の面から検討を行なつている。それらの結果によると、高温条件下では初期の乾物の増加はすみやかであるが、早く停止するために粒型は長さや巾の割に厚みがなく、千粒重も軽くなるといわれている。一般に暖地では登熟期の気温は高すぎるように思われるが、中山によると北陸においても登熟期が高温で、同一品種でも山形や長野で栽培されたものより登熟日数が短かいことを報告している。静岡県においても年々作期が早まり高温条件下で登熟するため、地力の低い秋落田が多いことと相まつて、登熟向上は益々重要な問題になつてきている。一方、高温登熟性の品種間差異に関する研究は、インド型品種と日本型品種の比較研究の中などにみられるが、概して少ないようである。そこで、以上のような観点に立つて、主として品種生態の面から高温適応性について検討を進めていきたい。
著者
永松 土巳 山本 正雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.16, pp.12-15, 1961-04

栽培地を異にした水稲の生育相の差違を明らかにするとともに,暖地の早期栽培における収監構成の機椛を解明せんがために若干の調査研究を行なったのその概要を報告する。
著者
倉井 耕
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
no.5, pp.45-46, 1990-12-06

栃木県において、小麦は成熟期が梅雨期にあたり、低アミロの発生がしばしば問題になっている。低アミロは降水との関係が大きいが、今回は降水の時期とその程度について検討した。なお本研究は水田農業確立試験研究の中で行った。また、アミログラム値は農業研究センターの機器を使用して算出した。
著者
佐藤 亨 杉本 秀樹 堀内 悦夫 川合 通資
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.21, pp.6-11, 1984-12-25

直播水稲(やや晩播)の生育相を普通期移植のそれと比較し,とくに根の発達の様相と関連させて明らかにしようとした。移植・乾田直播・湛水直播の3区を設け,それぞれ5月16日(6月23日移植)・6月14日・6月17日に播種し,生育と根群(モノリス法による)の様相を調べた。1.地上部の生育(草丈・茎数)は移植区が大であるが,直播区の初期生長は旺盛で,移植区に対し播種期のおくれをとり戻すような形をとる。2.直播区の根数は生育初期から急速に増加し,その速度は移植区よりはるかに大である。3.乾田直播では初期の根の生長は湛水直播に劣るが、濯水すると旺盛になる。直播区の根群の発達は良好で,土壌の表層に分布が密になる。4.生育後期になると,直播とくに湛水直播区の根および地上部の生育が鈍化し,秋落的な傾向をとる。この生育を旺盛に保つには根の活力を維持することが肝要である。
著者
冨森 聡子 長屋 祐一 谷山 鉄郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.442-451, 1994-09-05
被引用文献数
3

ゴルフ場で使用される農薬および肥料について1991年6月から1992年5月までの1年間, 降雨直後, 3ゴルフ場6箇所の排水を採水し, 15種類の農薬と窒素, リン, カリウムの分析をした. 結果は次の通りであった. 除草剤のプロピザミド, シマジン, ナプロパミド, 殺菌剤のフルトラニル, イソプロチオラン, キャプタン, トルクロホスメチル, 殺虫剤のダイアジノン, フェニトロチオンの9種農薬が検出された. 検出頻度は各ゴルフ場で差があり, 同一ゴルフ場でも採水地点間で異なった. フルトラニル, イソプロチオラン, キャプタンが高頻度に検出された. 検出された農薬は, 調査期間中では9月が他の月に比べ全般的に高く, また, 高濃度に検出された農薬は, プロピザミド, シマジンであった. 検出された農薬の濃度は約半数が0.1〜1.0μgL^<-1>の範囲であった. ゴルフ場排水の肥料成分は, 周辺の河川水に比べ, 窒素, リン, カリウム共に高濃度であった. その濃度変化は, ゴルフ場の芝草管理のための施肥時期と密接に関係していた.
著者
片野 學 真鍋 孝 難波 正孝
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.218-223, 2005-06-05
参考文献数
8

昭和61年度, 収量停滞打破を目指す一方策として, 熊本県菊池郡市に第6葉抽出成苗(不完全葉を1とする)ポット苗移植機が導入された.本機導入に伴う栽培管理方法は, 導入先進地である山形県からもたらされたものであり, その特殊個別技術として6ないし8条を1つの単位(複条)とし, それらの間に2条間分に相当する60cmを空ける栽植方法(以下, 複条並木植, 複条と複条との条間を複条間と呼ぶ, また, 複条内の条間は30ないし33cmである)があった.調査を行った水田は品種コシヒカリおよびミナミニシキが複条並木植されていた9水田であり, 両品種とも成熟期に, 複条並木植の各条から連続した15株を収穫し, 15株の占有面積を測定後, 常法に従って収穫物調査を行った.まず, 6月5日に移植し, 9月20日に収穫した複条間が約60cmであったコシヒカリ2水田における最外列(各複条の最外列2条をいう, 以下同様)単位面積当たり収量は中央列(最外列2条以外の条, 以下同様)の82%と87%であった.次に, 6月下旬に移植し10月末から11月上旬に収穫したミナミニシキ7水田における複条数は6, 8および12, 複条間も45と60cmなど様々であった.中央列に対する最外列単位面積当たり収量は, 複条間が約45cmであった2水田ではほぼ同じであったが, 60cmの場合, 毎年2〜5t/10a相当の完熟豚糞が施用された1水田を除く4水田の場合には78%〜91%にとどまっていた.両品種ともに複条の最外列では, 占有面積拡大分に見合う穂数と1穂収量の補償効果が認められなかったためであった.以上のように, 複条間を60cmとする移植法については減収する場合が多いことが明らかになり, 昭和62年度にはこの複条間距離で栽培する農家はいなくなった.