著者
小葉田 亨 高見 晋一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.212-216, 1989-06-05
被引用文献数
3 4

旱ばつに対して, 登熟期のイネがどのような葉身水ポテンシャル(LWP)および穀実生産反応を示すかは明らかにされていない. そこで, 日本型の陸稲5品種と水稲1品種(Oryza sativa L.)を用いて, 畑栽培し, 8月15日からひき続き灌漑する区と停止した区について, 出穂後における止葉葉身の日中LWPの推移と乾物生産, 穀実生産量を調べた. 断水後(8月15日), 12日以内に全ての品種が出穂した. LWPは, 在来陸稲2品種では-1.4MPaまで低下した後旱1.1MPaまで回復した. また, 改良陸稲2, 在来陸稲1品種では-1.4MPaまで低下したまま低いレベルで推移した. 水稲品種ではLWPは-1.7MPaまで低下して, その後大部分の葉身は枯死した. いずれの品種でも, 登熟期間中の日中平均LWPが低下すると, 主稈全体及び玄米の乾物増加が抑制され, 品種を込みにすると日中の平均LWPと両乾物増加量との間にはそれぞれ高い相関があった. また主稈の玄米増加量と個体当たりの粗玄米収量との間には高い相関関係があった. 従って, LWPを高く保つ能力は, 圃場における登熟期の乾物生産及び穀実生産にとって重要であり, 日本型イネの中では在来陸稲品種がそのような能力が高いとみなされる.
著者
市丸 喜久 牧山 繁生 水田 徳美 土橋 利則 釘本 忠人 岩田誠一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.59, pp.13-15, 1992-12-21
被引用文献数
5

水稲潮風害の実態調査を実施し,以下の事を明らかにした。1.NaCl付着は,海岸から8?地点まで広範囲に認められた。水稲に対する付着の様相は一定しており,穂に付着する割合は,10%であった。2.一穂当たりNaCl付着量は,海岸線付近で2.5?を超え,2.5?地点までは0.5?以上の値であった。3.収量調査の結果,0.3?が潮風害発生限界濃度と推察された。4.今回の水稲の生育ステージ(出穂後4〜15目)の範囲で,一穂当たりNaCl付着量および穂の損傷程度と,減収率の関係を明らかにした。5.4.の手法により,潮風害遭遇後5目以内に被害程度を推定することが可能である。
著者
松崎 守夫 豊田 政一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.569-574, 1996-12-05
被引用文献数
4

この報告では, 十勝地方における登熟期間の気象条件とコムギ粉のアミログラム最高粘度との関係を検討するために, 暦日にともなうアミログラム最高粘度, α-アミラーゼ活性の推移を検討した. 開花期が約2週間異なる品種のアミログラム最高粘度は, 同一年次内のほぼ同じ暦日に300BU以下に低下(低アミロ化)した. 低アミロ化は1992年には8月11日〜17日, 1993年には7月21日〜27日に観察され, 同じ暦日にα-アミラーゼ活性も約10 Abs/g以上の値を示した. 1992年には8月8日〜l0日に約60 mmの降水量が記録されており, 1992年の低アミロ化は降雨によって起こったと考えられた. しかし, 1993年の7月18日〜26日の降水量は3 mmであり, 1993年の低アミロ化には, 降雨以外の気象条件が大きく影響したと考えられた. その時期は低温寡照条件であったため, 低温寡照条件が子実の乾燥を阻害し, 低アミロ化に影響した可能性が考えられた. しかし, 登熟期間における降水遮断処理によって1993年のアミログラム最高粘度は高く維持されたため. 1mm以下の降雨や夜間の結露など, 降水量としては記録されない降水が低アミロ化に影響した可能性も考えられた. 1993年の低アミロ化においては, 低アミロ化後のα-アミラーゼ活性の増加がわずかであったこと, 最高粘度の推移に品種間差がみられたこと, 他の品質特性の劣化を伴わなかったことも特徴的であった. また, 1993年の低アミロ化の状況は1988年と類似していたことから, 1993年の低アミロ化は特殊な現象ではないと考えられ, 十勝地方においては降水量が少ない時期であっても低アミロ化が生じうることが示唆された.
著者
吉田 智彦 楠本 亮也
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.61, pp.70-71, 1995-05-15

1.キビを5月と8月の2回播種して二期作栽培し,その生長解析を行った。5月播きのCGR及び太陽エネルギー利用効率の最大値は20.5gm^-2d^-1と2.67%であり,それに対し8月10日播きは6.11gm^-2d^-1と0.81%であった。2.主稈の収量への寄与率は5月播きは60%,8月播きは72〜74%であった。主稈の寄与率の高い品種が多収であった。
著者
丸峯 正吉 坂井 健吉
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.16, pp.4-6, 1961-04

最近甘藷では原料用高殿紛多収品種の早期育成が望まれている。このため従来の品種間交配によるほか,野生種,近縁種との交雑による種属間雑種の利用や自殖系統の利用など新しい方法が取上げられているが,X線照射による突然変異の利用もまた注目すべきものと考えられる。X線照射による甘藷の突然変異に関する研究は真島,佐藤氏(1958)のものを除き余りないようであるが,甘藷の品種は遺伝的にはきわめてヘテロであって,変異が現われ易いこと及びその変異は栄養繁殖によって瞳ちに利用することができるので,目的とする品種の早期育成には好都合である。前記真島民等は甘藷農林1号を用い,X_1まで観察した結果,藷の皮色,茎の形状にかなり多くの変異が現われたことを報告しているが,蔓や藷の収量及び澱粉歩留等所謂ポリジーン形質に関しては詳細な圃場試験が必要であると述べている。われわれはポリジーン形質に関する変異の程度をみることを主とし,合せて既成品種の中にある不良形質をX線照射により除去することができれば,その品種の価値を一層高めるものでもあるので,早掘用品種フクワセの皮色の淡紅を鮮紅もしくは赤に,原料用品種ナガムラサキの肉色にある紫最を除去することを従として両品種にX線を照射し,1958年より2ケ年各種形質の変異の状態を観察したのでその結果を報告する。
著者
清沢 茂久
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-40, 1962-09-29

イネの障害型冷害の発生過程をさらに明らかにするために, 陸羽132号の花粉の発育におよびす3日間の15〜19℃処理と, 3日間の暗黒処理(25℃)の影響を見た. 開頴前10〜12日, および6〜11日に相当する時期に低温に遭遇した頴花に充実花粉歩合の低下が見られ, これらの時期はそれぞれ減数分裂期と花粉外膜形成期に相当するものと考えられた. 暗黒処埋ではこのような充実花粉歩合の低下は見られなかつた. この事実は再び障害型冷害は低温による光合成の低下によるものでなく, 穂に直接作用する低温の影響によるものであることを暗示している. その他, 強風もまた花粉の発育を害することが暗示された.
著者
宇賀神 七夕子 小山 豊 在原 克之
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
no.22, pp.48-49, 2007-12-07

低地水田においても,出穂期追肥を行うことにより,小麦の粗タンパク質含有率及び容積重が増加した.しかし,地下水位の高い圃場では,収量と品質を確保するには,地下水位を下げたうえで出穂期追肥を施用する必要があった.
著者
セリム ムハマッド 安藤 和雄 内田 晴夫 田中 耕司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.518-527, 1990-09-05

バングラデシュ低地に位置する2カ村でイネを基幹とする作付体系の調査を行った。一つはキショルゴンジ県の広大な低地, ハオール地帯縁辺部に位置するジョワール村で, もう一つはマイメンシン県に散在する凹地 (ビール) に面するタカルビティ村である。調査にあたっては, 両村のトポシークェンスと作付様式の分布との関係を詳しく分析するために, 村人による土地分類に依拠しつつ, 村の全域を標高に応じて細かい土地単位に区分した。また, ボロ, アウス, アマンの3作期に栽培される作物の全筆調査を実施し, あわせて1986年から88年にかけて水文条件の季節変化を観察・測定した。両村に共通して14タイプの作付様式が認められ, うち10タイプがイネ基幹の様式であった。作付様式の構成や分布は, 両村で大きな違いは認められず, その分布はトポシークェンス, 従って水文条件の季節変化に密接に関連して成立していることが明らかになった。ジョワール村では, アウスイネ 基幹およびアマンイネ基幹の作付様式はカンダイラ・ジョミと呼ばれる高位部の土地に分布し, ボロイネ単作はシャイル・ジョミあるいはボロ・ジョミと呼ばれる低位部の土地での優占的な作付様式であった。ボロイネ基幹の作付様式は, 浅管井戸などの近代的な灌漑方式の導入後, 高位部低地や低位部高地に拡大している。作付様式の同様な分布パターンは, タカルビティ村でも認められた。以上より, 現行の作付様式はバングラデシュ低地特有の条件に適合した, 村人の環境への適応の結果であることが明らかにされた。
著者
馬場 彰子 鄭 紹輝 松永 亮一 井上 眞理 古屋 忠彦 福山 正隆
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.384-389, 2003-12-05
被引用文献数
2

西南暖地向けに育成されたダイズ新品種サチユタカの生育特性を明らかにするため,フクユタカと比較しその乾物生産特性について調査を行った.両品種を2001年7月9日および2002年7月4日に播種し,生育,乾物生産,収量および収量構成要素を測定した.その結果,サチユタカはフクユタカに比べて開花期,成熟期ともに早く栄養成長量は小さかったが,収量には有意な差はなかったため,粒茎比が高くなった.葉面積指数(LAI),個体群成長速度(CGR),地上部全重,茎重については開花期まではサチユタカの方が高かったが,開花期以降サチユタカではあまり増加がみられず,最大値はフクユタカのほうが高かった.なお,両品種の光合成速度,純同化率(NAR)には差異はみられなかった.一方,莢実重は,サチユタカでは増加開始時期は早いが成長速度には両品種間に差はみられなかった.茎重は成熟期に近づくにつれて減少した.さらに,茎中の非構造性炭水化物含有率は開花期においては両品種に差がなかったが,成熟期に近づくにつれて大きく低下し,その低下率はサチユタカで65%,フクユタカで40%であった.これらのことから茎中に蓄積された炭水化物が子実肥大期に莢実に再転流されたことが考えられた.以上の結果から,栄養成長量の小さいサチユタカがフクユタカに匹敵する収量を得られたのは,開花までの成長速度がやや高く,栄養成長の停止が早いため栄養成長と生殖成長の間の同化産物の競合が弱く,さらに茎中の非構造性炭水化物の再転流が多いことで同化産物の利用効率が高まったためであると考えられた.
著者
ザイダン L. B. P. デイトリッチ S. M. C. フェリッペ G. M.
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.569-574, 1980-12-10

パラグアイから最近導入されたアマハステビアにおける日長の影響について研究した. それらは日長時間に対する反応によって,A) 8,10および12時間の日長で開花,B) 10および12時間の日長だけで開花,C) 8,10,12および14時間の日長で開花,の3グループに分けることができた. 開花中の植物の葉と花序の抽出物からステビオサイドが結晶化できることが示され,茎の抽出物中にも検出されたが,根には認められなかった.
著者
末沢 一男 小西 薫 西村 昭司郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会四国支部紀事 (ISSN:0915230X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.8-12, 1967-06

1.籾の乾燥効果 試験結果の乾燥効果は顕著で,立毛水稲の籾水分を16〜17%まで下げ得るのは容易に出来る。2.籾及び茎葉の乾燥状況 枯れ上りの熟位は籾,茎葉ともに灰白位となり,稍色状が不良である。3.刈取及び脱穀の難易 散布後日を経るに従い,穂首の垂れ込みを生じ刈取作業が困難となるが,籾水分16〜17%になるには3日程度であるからさほど困難を感じない。脱穀の難易については,一部では穂首の折損,調整に困難な点が見られたが大部分は特に問題は認めない様である。4.気象と乾燥効果 散布後の天候の良否は乾燥効果に影響が大きく,降雨がないか少ない場合は高温下であり効果が顕著であるが曇雨天が多ければ籾水分16〜17%程度になるのにも或る程度時日(4〜5)を要する。しかし降雨があった場合でも一旦水分を吸収して戻るが,天候が恢復した時の乾燥は無散布のものに比し遥かに早く戻る。5.収量に及ぼす影響 散布薬量が多ければ若干減収が認められる。又散布時期も早い場合は若干の減収が認められるが成熟期の2〜4日前処理では殆んど減収は認められたい様である。6.茎葉の利用について ワラの利用については,変色が見られるためワラ加工の利用は稍困難と思われる。又家畜飼料としての利用は今後検討することが必要である。7.薬臭の残存程度 本剤は人畜に対し無害と云われているが一種特有の臭気があり,収穫後も籾及び茎葉に悪臭が残る。しかし籾は玄米になると臭気が無くなり,茎葉も1週間〜10日位で殆んど無くなるようである。8.散布置と散布後の刈取適期 10アール当概ね2〜3kgの散布量で足りる。刈取は天候其の他によるが略々散布後3〜4日目に刈取るのが適当のようである。
著者
杉本 明 氏原 邦博 前田 秀樹 下田 聡
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.67, pp.52-54, 2001-05-15

琉球弧におけるサトウキビの安定多収栽培実現の主な障害は, 収穫後の萌芽が不良で株出しの生産力が低いこと, および, 台風, 干ばつ被害を受けやすいことである. 琉球弧の気象条件に適応性の高い栽培法を確立するために, 秋植え・秋収穫による1年1作株出し多収栽培法成立の可能性を検討した. 極早期型高糖性品種を用いた秋植えは, 気象災害に比較的強い夏植えと同様の生育経過を辿り, 1年後には収穫しうる糖度に達する可能性が高い. 秋収穫における萌芽時の地温は, 冬収穫時の地温に比べて萌芽適温に近く(宮里 1986, 杉本 2000), 既存の品種を10月に収穫すると, 株出し栽培の萌芽・初期生育が改善されて梅雨時期には生育旺盛期に達することが報告された(杉本 2000). 梅雨前に大きく生長したサトウキビは梅雨の降雨を最大限に利用して旺盛に生育し, 多収になるとともに, 土壌表面の植物被覆により, 土砂流出抑制への貢献も期待される. 本報告では, 収穫時期の異なる1年栽培の株出しサトウキビに認められる蔗茎収量および可製糖率に関連する特性の差異を報告する.
著者
安永 隆
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.358-361, 1964-07-30
被引用文献数
1

Three days wetting at 20-25℃ of wheat eals at "hard dough" stage resulted in the increases in the activity of proteolytic and amylolytic enzymes and in sulfhydril content, which were available for approximate estimation of the susceptibility of various wheat varieties to wet damage, if the test plants had not been wetted for some days preceding the treatment. By this procedure, some varietal differences in susceptibility to wet damage were shown. Among the nine varieties examined, Aoba-Komugi was more, and Norin No. 50 was less susceptible than the others. On varieties having stronger inclination to sprout under humid climate, more rapid increase in the activity of α-amylase occurred by the moist treatment than on those showing less sush characteristics, while such trend was not found in the activity of proteolytic enzyme.
著者
比屋根 真一 真境名 元次 比嘉 明美 儀間 靖 新里 良章 生駒 泰基
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.74, pp.39-42, 2008-05-15

沖縄本島南部地域のサトウキビ畑における曝気処理水の散布時期と量を求めるため,ジャーガルにおいてタンクモデルを適応した.本モデルによる土壌水分量のRMSEは2.5%であり,タンクモデルによる土壌水分量や水収支量の推定は可能であると判断した.過去30年間の降水量をタンクモデルに入力し,作土層からの浸透水の発生時期を検討すると,梅雨時期の5〜6月と台風等の豪雨が認められる8〜9月に多く認められた.月あたりの浸透水量と降水量の関係を検討すると,両者の間に統計的に有意な正の相関関係が認められ,浸透水量=0.8061×降雨量-71.776の関係式が得られた.この式から浸透水が認められない降水量は89mm/月となった.日あたりの降水量と浸透水量の関係から,土壌水分の違いによる作土層から浸透水が認められない降水量は,初期しおれ点付近では27.2mm/日,圃場容水量から数日後のそれは4.5mmとなった.以上より,タンクモデルを用いてジャーガルにおける曝気処理水の散布時期と量が明らかとなった.