著者
杉本 秀樹 佐藤 亨
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.189-193, 2000-06-05
参考文献数
13
被引用文献数
3

近年, ソバは転換畑で栽培されることが多くなったが, その栽培上の問題点の一つに湿害がある.ポット栽培した普通ソバ品種キタワセソバを供試して1葉期, 開花期および登熟期に, 畝間に水が溜まった状態を想定した湿潤区(地下水位5〜7cm), 圃場に水が溜まった状態を想定した湛水区(地上水位2〜3cm)ならびに対照区を設け, 処理日数を変えて土壌の過湿処理を行い, これらが収量, 収量構成要素および茎の諸形質に及ぼす影響について調査した.処理による子実重の低下は, 湿潤区, 湛水区とも生育段階が早いほど, 処理日数が長いほど著しかった.湿潤区においては, 1葉期および開花期では3日以内, 登熟期では6日以内の処理なら子実重の低下は10%以内にとどまった.一方, 湛水区においては, 1葉期では1日処理でも, 開花期および登熟期では3日以上で子実収量は顕著に低下した.湿潤区, 湛水区とも1葉期ならびに開花期における子実重の低下は粒数の減少に起因したが, これは植物体の矮小化, とくに分枝の発達不良, ならびに1分枝当たり開花数の不足による分枝開花数の減少が主因であった.湛水区・登熟期処理による子実重の低下は千粒重の低下に起因した.結実率は過湿条件下でも低下せず, 減収要因にはならなかった.
著者
平 将人 二瓶 直登 遠藤 あかり 谷口 義則 前島 秀和 中村 和弘 伊藤 裕之
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.173-182, 2012

タンパク質含有率の増加を目的とした出穂期の窒素追肥が,硬質コムギ品種ゆきちからの中華麺適性に及ぼす影響を検討した.出穂期における窒素追肥量の増加に比例してタンパク質含有率は高くなり,SDSセディメンテーション沈降量および湿グルテン含量は増加して生地物性は強くなった.一方,グルテンインデックスは低下したが,中華麺官能検査におけるゆであげ7分後の食感の評点は有意に高くなった.したがって,出穂期の窒素追肥によりグルテンインデックスは低下してグルテンの質は変化するが,生地物性が強くなることで中華麺のゆでのびを抑えられることが明らかとなった.また,福島県でゆきちからを喜多方ラーメン用として栽培する際に目標となるタンパク質含有率を明らかにするために,製粉工場でゆきちから100%で製造されたタンパク質含有率が9.1,9.8および10.8%の中華麺用粉を用いて中華麺官能検査を行い,タンパク質含有率と中華麺適性との関係を検討した.外国産硬質コムギを原料に用いたタンパク質含有率が11.8%の中華麺専用粉と比べて,ゆきちからの色相およびホシの程度の評点は10.8%でも有意に高かった.また,ゆであげ7分後の食感の評点はいずれのタンパク質含有率においても有意差は認められなかったが,総合評価の評点は9.8%および10.8%で有意に高かった.したがって,福島県で喜多方ラーメン用にゆきちからを栽培する際には,出穂期の窒素追肥により,タンパク質含有率を粉で10.0~11.0%程度にすることが望ましいと考えられた.
著者
野並 浩
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.151-163, 2001-06-05
被引用文献数
4

作物の水分状態を計測するために使われるサイクロメーター、プレッシャーチャンバー、プレッシャープローブの計測原理に触れ、計測器相互間で計測値の比較を行い、それぞれの計測法の違いについて検討した。また、土のマトリックポテンシャルを計測するために使用されているpF値と水ポテンシャルの関係について説明し、作物を取り囲む環境の水分状態計測と作物の水分状態計測について解説した。とくに、プレッシャーチャンバーを用いての水分状態計測の意義について詳しく説明し、生長に伴った水ポテンシャル勾配がアポプラストに働く張力に関連したマトリックポテンシャルに依存していることを説明した。また、養分欠乏、塩ストレス、低温ストレス、高温ストレス、植物ホルモン添加による生長阻害下における細胞伸長速度が、生長に伴った水ポテンシャル勾配の大きさと直接比例して関連していて、いかに伸長している細胞内へ水が流入することができるかが細胞伸長の速度を決定することを述べている。
著者
二瓶 直登 増田 さやか 田野井 慶太朗 頼 泰樹 中西 友子
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.194-200, 2012
被引用文献数
4 1

有機態窒素の作物生育に与える影響を解明するために,単一窒素源としてタンパク質を構成する20種類のアミノ酸を用いて5種類の作物を無菌栽培し,各アミノ酸に対する作物毎の生育への影響を検討した.作物別の比較をすると,イネ,チンゲンサイでは,アミノ酸間の生育差が大きく,コムギ,キュウリはイネ,チンゲンサイよりアミノ酸間の生育差は小さかった.ダイズでは,アミノ酸間の生育差はほとんどみられなかった.アミノ酸別の比較をすると,アスパラギン,グルタミンでは,無窒素区より地上部乾物重,地上部窒素含量の増加がみられ,一方,システイン,メチオニン,ロイシン,バリンでは地上部乾物重や地上部窒素含量が無窒素区より低下した.そこで,アミノ酸濃度を変えた時の影響を調べるため,生育への影響が異なる5種類のアミノ酸を単一窒素源に選び,イネ幼植物に対する影響について検討した.その結果,グルタミンで生育したイネは窒素濃度増加に伴い地上部乾物重,地上部窒素含量は増大した.セリン,バリンで生育したイネは,低濃度から生育阻害がみられた.グルタミンは無機態窒素を代謝する際に最初に同化されるアミノ酸でもあるので,植物体内で濃度が高くても障害をおこさず,窒素源として効率的に利用されていると考えられた.セリン,バリンはグルタミンに比べてアミノ酸生成経路の末端で生成されるアミノ酸であるため,植物に吸収されても代謝されず植物体内で濃度が上がり,生育を阻害したものと考えられた.
著者
森 静香 横山 克至 藤井 弘志
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.113-119, 2010
被引用文献数
1 5

共同籾調整乾燥貯蔵施設利用地域における産米の食味向上については,地域全体で産米のタンパク質含有率の制御を目的とした食味向上栽培技術の導入と同時に個別の産米に対する評価の方法を構築する必要がある.そこで,登熟期の葉色と玄米タンパク質含有率の関係,その年次間・地域間変動および登熟期の葉色による産米の仕分けについて検討した.乳熟期,糊熟期および成熟期における葉色と玄米タンパク質含有率の関係は,止葉および次葉とも,糊熟期での相関が最も高く(r=0.814<sup>***</sup>),次いで成熟期(r=0.727<sup>***</sup>),乳熟期(r=0.704<sup>***</sup>)であった.また,1999年から2001年での年次別および地域別の止葉の葉色と玄米タンパク質含有率の相関関係を比較すると,糊熟期>成熟期>乳熟期の順に高くなる傾向であった.糊熟期の葉色で玄米タンパク質含有率を推定した場合,乳熟期および成熟期と比較して,地域・年次による差が小さかった.1999年から2001年の八幡町・酒田市・鶴岡市において,玄米タンパク質含有率が75 g kg<sup>-1</sup>となる糊熟期の止葉の葉色値(10株の最長稈の平均値)32を境界値とした場合,葉色値32以上と32未満のグループにおける玄米タンパク質含有率の差が5.4~7.8 g kg<sup>-1</sup>での仕分けが可能であった.
著者
森 静香 横山 克至 藤井 弘志
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.113-119, 2010
被引用文献数
1 5

共同籾調整乾燥貯蔵施設利用地域における産米の食味向上については,地域全体で産米のタンパク質含有率の制御を目的とした食味向上栽培技術の導入と同時に個別の産米に対する評価の方法を構築する必要がある.そこで,登熟期の葉色と玄米タンパク質含有率の関係,その年次間・地域間変動および登熟期の葉色による産米の仕分けについて検討した.乳熟期,糊熟期および成熟期における葉色と玄米タンパク質含有率の関係は,止葉および次葉とも,糊熟期での相関が最も高く(r=0.814<sup>***</sup>),次いで成熟期(r=0.727<sup>***</sup>),乳熟期(r=0.704<sup>***</sup>)であった.また,1999年から2001年での年次別および地域別の止葉の葉色と玄米タンパク質含有率の相関関係を比較すると,糊熟期>成熟期>乳熟期の順に高くなる傾向であった.糊熟期の葉色で玄米タンパク質含有率を推定した場合,乳熟期および成熟期と比較して,地域・年次による差が小さかった.1999年から2001年の八幡町・酒田市・鶴岡市において,玄米タンパク質含有率が75 g kg<sup>-1</sup>となる糊熟期の止葉の葉色値(10株の最長稈の平均値)32を境界値とした場合,葉色値32以上と32未満のグループにおける玄米タンパク質含有率の差が5.4~7.8 g kg<sup>-1</sup>での仕分けが可能であった.
著者
玉置 雅彦 山本 由徳
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.29-34, 1997-03-05
被引用文献数
5

遮光および施用窒素量が, 水稲の出葉転換点とその前後の出葉速度ならびに分げつ発生数に及ぼす影響について検討した. 1/5000a ワグネルポットを用いて, 3レベルの遮光処理(0, 50, 95%)と3レベルの施用窒素量処理(移植時から10日毎に25, 100, 200 mgN/ポット施用)を組み合わせた計9区の処理区を設定し, 移植時から収穫時まで処理を行った. 主茎の葉齢の増加は, 95%遮光区を除き, 出葉転換点を境にして2本の直線で近似することができた. 95%遮光区は, 出葉転換点が存在せず1本の直線で近似された. 出葉転換点までの出葉速度は, 施用窒素量よりも光条件によって強く左右され, 強光下ほど出葉速度は早かった. しかし出葉転換点後は, 出葉速度に及ぼす光条件の影響は小さくなった. 無遮光区では, 出葉転換点前後とも施用窒素量が多くなるにつれて出葉速度は早くなったが, 遮光区では施用窒素量が出葉速度に及ぼす影響はほとんど無かった. 分げつ発生には, 出葉転換点前後とも光条件が影響し, 無遮光区で分げつ発生数は最も多かった. 無遮光区では, 施用窒素量が多くなるにつれて分げつ発生数は増加したが, 50%遮光区では窒素量の影響が小さくなり, 95%遮光区では影響は認められなかった. 出葉転換点がみられた無遮光区と50%遮光区について出葉速度と分げつ発生数との関係をみると, 出葉転換点前では有意な正の相関が認められたが, 出葉転換点後では有意な相関は認められなかった.
著者
黒田 俊郎 植高 智樹 郡 健次 熊野 誠一
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.p74-79, 1992-03
被引用文献数
5

ダイズにおける花器の脱落について, 花房の次位を同定しながら追跡調査を行った. 品種タチスズナリを1/2000 aワグナーポットに孤立状態で栽培したものを標準区とし, 別に開花期間中の遮光処理区も設けた. 開花から脱落まで日数の頻度分布は10日を境界として前後に大別できたので, 前者を落花, 後者を落莢とした. 標準区の落蕾・落花・落莢の割合はそれぞれ5%, 28%, 66%であった. 遮光によって花器脱落の総数は増加したが, 特に落花が顕著となった. 開花は20日あまりの期間に集中したが, 脱落は開花始期直後から成熟期まで長期に及んだ. 花房次位別の開花は低次位(0次・1次)から開始し, 順次高次位に及んだ. 脱落も次位別にこの順で始まったが, いずれの次位も成熟期まで継続的に脱落した. 開花期から成熟期までの花器脱落を花房次位別に検討した結果, I期;低次位の落花期, II期;高次位の落花期, IlI期;高次位の落花を伴った低次位落莢期, IV期;高次位の落花および低次位の落莢を伴った高次位落莢期, V期;低次位および高次位の落莢期, と推移することが明らかになった.
著者
丹野 久
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.16-25, 2010-01

1991〜2006年の16年間に北海道の15地域で、年次平均で42〜645地点の水稲品種「きらら397」の精米の蛋白質含有率とアミロース含有率を調査し、各地域の2〜3市町村での生育調査結果をまじえ、年次間と地域間の差異およびその発生要因を検討した。年次間と地域間には、それぞれ出穂期で7月29日〜8月16日、7月29日〜8月9日、不稔歩合で5.0〜61.0、8.9〜21.5%、千粒重で21.1〜23.5、22.0〜23.3g、玄米収量で205〜576、398〜593kg/10a、蛋白質含有率で7.2〜8.6、7.2〜8.2%、アミロース含有率で18.3〜22.2、19.8〜21.2%の差異が認められた。全形質とも年次間差異は地域間差異より大きく、変動係数の比で1.4〜3.2倍であった。年次間では、出穂期が早く、障害型冷害危険期の平均気温が高く、不稔歩合が低いこと、千粒重が大きく多収であることなどにより、蛋白質含有率が低下した。また、出穂後40日間の日平均積算気温が、年次間、年次と地域込みで843〜849℃において蛋白質含有率が最も低かった。しかし、地域間ではそれら生育特性と一定の関係は認められず、泥炭土の比率が低いこと、また分げつ期に当たる6月の平均風速が小さいことなどにより蛋白質含有率が低下した。一方、アミロース含有率は、年次間、地域間とも出穂後40日間の日平均積算気温が高いこと、とくに年次間では出穂期前の平均気温が高く出穂期が早いことにより低下した。本研究の結果、北海道における良食味米生産のための栽培指針の策定に有効な知見が得られた。
著者
宮野 法近 国分 牧衛
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.351-356, 2010-07-05
参考文献数
10

宮城県では南部の玄米品質等級が他地域に比べ低いことが指摘されている。前報では出穂後20日間の日最低気温、日照時間および出穂期までの気温が等級に影響を及ぼしている可能性を指摘したが、移植から出穂期における気象条件の詳細な解析には至らなかった。そこで本研究では過去28年間を、ササニシキが中心に作付けされた1977から1993年まで(以後1993年まで)と、ひとめぼれが中心に作付けされた1994から2005年(以後1994年以降)に分け、1等米比率とm2当たり籾数の関係および移植盛期から出穂期までの気象条件がm2当たり穂数へ及ぼす影響について、県内の仙南、仙台、大崎地域間で比較検討した。1993年までは、全ての地域で一定のm2当たり籾数以上で1等米比率との間に負の相関があった。1等米比率と相関が見られた年次の各地域のm2当たり籾数は、m2当たり穂数と正の相関があった。m2当たり穂数は仙南地域が7月の積算日照時間、仙台地域が幼穂形成期から減数分裂期の日最低気温、大崎地域が7月の日最低気温とそれぞれ負の相関が見られ、影響を受ける出穂期前の気象条件は地域によって異なった。1994年以降においても、仙南、仙台地域ではm2当たり籾数と1等米比率の間には負の相関、m2当たり籾数とm2当たり穂数の間には正の相関があった。m2当たり穂数と相関を示す気象要因は、仙南地域が6月の積算日照時間、仙台地域が移植盛期から夏至までの日最高気温と正の相関が見られた。また、ササニシキ、ひとめぼれでは出穂期前後の気象条件が1等米比率へ及ぼす影響が異なっていた。
著者
猪谷 富雄 小川 正巳
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.137-147, 2004-06-05
参考文献数
110
被引用文献数
6

赤米とは、糠層にタンニン系赤色色素を持つイネの種類であり、わが国においては日本型とインド型の2種の赤米が栽培されてきた。日本型の赤米は古くから日本に渡来し、7-8世紀には全国各地で栽培されたことが平城京跡などから出土する木簡から推測されている。14-15世紀には中国からインド型の赤米もわが国へ渡来し、「大唐米」などと呼ばれ、近世に至るまでかなりの規模で栽培されていた。早熟で不良環境や病害虫に強い大唐米は、最盛期の江戸時代には関東から北陸地方以西において広く栽培され、特に低湿地や新たに開発された新田などに適していた。明治時代に入るとこれらの赤米は徐々に駆除され、わが国の水田から姿を消す道を辿った。例外として、日本型の赤米の一部が神聖視され、神社の神田などで連綿と栽培されてきたもの、雑草化して栽培品種に混生してきたものなどがある。約20年前から、赤米は小規模ながら栽培が復活し、日本各地で歴史や環境を考える教育や地域起こしの素材として利用されている。また、赤米は抗酸化活性を持つポリフェノールを含むこ機能性食品としても注目されている。わが国における赤まい栽培の歴史と赤米を取り巻く最近の研究状況などについて、以下の順に概要を述べる。(1)赤米を含む有色米の定義と分類、(2)赤米の赤色系色素、(3)赤米の栽培の歴史、(4)残存した赤米、(5)赤米など有色米が有する新機能、(6)赤米の育種などに関する最近の情勢。
著者
津野 幸人 山口 武視 面地 理 甲斐 宏一
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.p475-483, 1991-12
被引用文献数
1

浸潤試薬で示される水稲葉の気孔開度(A)に関与する要因として, 葉色板示度(富士葉色カラースケール)による葉色(c), 日射強度(W), 飽差(d)の3要因を取り上げ, これらで圃場条件での気孔開度の日変化を総合的に説明しようとした. 1988年では慣行栽培の水稲(品種:ヤマビコ)の上位第1, 2葉の日変化を, 1989年には肥料条件を変えた試験区のヤマビコにつき上位第1〜4葉の日中の気孔開度と葉色との関係を, 幼穂形成期から登熟期にわたって調査した. 朝夕の日射強度が520Wm^<-2>以下の場合(d<6mmHg)は, AはWとcとの2要因の関数として示され, A=0.0108W (0.19c-0.40)という経験式を得た. 日中, 日射が520Wm^<-2>以上の条件下で飽差を一定にとれば, 全期間にわたってAとcとの間には高い正の相関関係が成立し, また, 葉色を一定にとれば, Aはdと負の相関関係が認められ, その回帰式の勾配は各葉色とも0.18で A=b-0.18d で示された. この式の切片(b)と葉色との関係はb=0.93cで近似できたので, 520Wm^<-2>以上の高日射条件下では, A=0.93c-0.18dの経験式が導かれた. これら2つの経験式より求めた計算値と実測値とは, 良好な適合を示し, Aの日変化とも合致した. 葉色示度3以下の葉身は, 日中ではわずかしか気孔が開かず, 光合成が著しく低下することが推察され, 葉色を濃く保つことの必要性を強調した. なお, 葉身N濃度が葉色に反映する程度は時期により異なり, 出穂後に高まる傾向を認めた.
著者
水田 一枝 阿部 薫 尾崎 保夫
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.568-572, 1998-12-01
参考文献数
9
被引用文献数
3

パピルス, マリーゴールド, アシ, ペパーミント, ソルガム, インパチェンス, ケナフの7種類の有用植物を, 富栄養化した溜池を想定した人工汚水を流入させた水路で育て, 各植物による窒素, リンの浄化能力や, 日射量の変化が浄化に及ぼす影響をみた.これらの植物は窒素, リンの浄化能力があり, 特にパピルス, ケナフ, ソルガムは, 窒素濃度約2.5mgL^<-1>, リン濃度約0.5mgL^<-1>の人工汚水(1日, 1m^2当たり500L供給.滞留時間は12時間)中の窒素, リンを最高70〜90%除去した.パピルス, ケナフ, ソルガムの除去速度は窒素が1.17, 1.07, 0.80gm^<-2>d^<-1>, リンが0.21, 0.16, 0.12gm^<-2>d^<-1>であった.また浄化能力は日射量の影響を受け, 遮光処理によって浄化能力は顕著に低下したが, 7日程度の遮光期間では, 浄化能力は遮光解除の1〜3日後に元の80〜90%に回復した.
著者
礒田 昭弘 Aboagye Lawrence Misa 野島 博 高崎 康夫
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.700-706, 1996-12-01
被引用文献数
2

ラッカセイの葉の調位運動の品種間差異について, 葉面受光量, 葉温及び蒸散速度の点から検討した. 5品種(千葉半立, タチマサリ, 関東56号, バレンシア, 金時)を圃場条件下で栽培し, 地上部最盛期に防雀網で群落最上層葉を抑え, 自由に調位運動を行っている無処理区の小葉面受光量と葉温の日変化を比較した. また, 熱赤外線画像測定機で各区の群落熱画像を撮影するとともに, 無処理区の個体を対象に蒸散速度, 気孔抵抗を測定した. タチマサリ, バレンシア, 金時の3品種では, 無処理区の葉温は気温とほぼ同様に推移したが, 処理区の葉温は気温より高く推移した. 千葉半立, 関東56号においては, 葉温は無処理区で気温と同様かやや高く推移したが, 処理区では午後から気温より低くなった. 受光量は曇天日には関東56号, バレンシア, 金時で, 晴天日ではタチマサリ, 関東56号で無処理区が有意に大きくなり, 両日とも関東56号が最大の受光量を示した. 蒸散速度は千葉半立が最大で, 次いでバレンシア, 関東56号, タチマサリ, 金時の順で, 気孔抵抗とは負の相関関係があった. 熱赤外線画像測定による群落の葉温はタチマサリ, 金時で高くなり, 千葉半立, 関東56号で低い値を示した. 以上のことから, 蒸散能力の高い品種は太陽光線を避ける運動の程度が小さいことから受光量が大きくなり, 蒸散能力の低い品種は太陽光線を避ける運動により葉温を下げ, 水分ストレスを回避している傾向がうかがえた.
著者
Valio I.F.M. Rocha Rosely F.
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.p243-248, 1977-06

ステビオサイド生産に対する基礎的知見を得るために, パラグアイ産の系統を用いて日長と数種の生長調節物質が栄養生長と生殖生長に及ぼす影響を調査した。ステビアは14時間より短い日長では開花するがそれ以上の日長では開花しない事から(第1・2図), 短日植物の一種であることが判った。なお詳細な分析結果からみて, 最少必要短日処理は2回である事(第3図)および4対葉の時期から日長に感応し始める事(第1表)が明らかとなった。生長調節物質の影響についてみると, CCCとステブイオールは栄養生長及び開花を抑制するがジベレリンはいづれも促進する事(第4・5・6図), 及びフシコシンはCCCの抑制作用を部分的に阻止する働きがある事(第2表)が確認された。
著者
磯部 勝孝 坪木 良雄
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.347-352, 1998-09-05
参考文献数
23
被引用文献数
1

種々のイネ科・マメ科作物のアーバスキュラー菌根菌接種による生育促進について比較検討を行うとともに, 根の形態およびリン吸収の関係について考察した.実験に供試した作物は, オカボ, コムギ, ソルゴー, オオムギ, シコクビエ, インゲンマメ, シロクローバー, ササゲ, アズキ, ダイズの10種である.調査項目は, 1.アーバスキュラー菌根菌の宿主作物への生育促進効果の違い, 2.根の形態, 3.生育に必要な土壌中の有効態リン含有量である.アーバスキュラー菌根菌の接種による宿主への生育促進効果は, イネ科作物よりマメ科作物のほうが顕著であった.また, イネ科作物はマメ科に作物に比べ, 土壌有効態リン含有量が低くても十分な生育を示した.これは, イネ科作物が, マメ科作物に比べ根毛が発達し, 地上部乾物重に対する根長が大きくリン吸収に有利な根系を有し, 低リン下でも高いリン吸収能を示すため, アーバスキュラー菌根菌の感染による宿主作物の生育促進が小さかったと考えられる.又, マメ科作物のほうがアーバスキュラー菌根菌による生育促進効果が著しいのは, アーバスキュラー菌根菌感染率が高いこともひとつの理由と推察された.これらのことから, イネ科作物とマメ科作物を比較した場合, マメ科作物のほうがアーバスキュラー菌根菌の利用価値が高いと言える.