著者
村田 由美
出版者
日本女子大学
雑誌
会誌
巻号頁・発行日
no.36, pp.161-168, 2019-10-25

2016年12月、岩波書店が『定本 漱石全集』を刊行するにあたって、1996年版『漱石全集』第17巻に新たに収録された黒川漱石の俳句2句の削除、欠落の多かった俳句掲載紙の出典の再調査、熊本時代、地元紙「九州日日新聞」に掲載された俳句の出典の追加と全集未収録俳句の収録を岩波書店に申し入れた。しかし、刊行された『定本 漱石全集』第17巻には熊本時代の未収録俳句は掲載されず、故意に出典も省かれた。この巻について問題点を論じた。
著者
佐久間 まゆみ 藤村 知子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

日本人大学生と外国人留学生による2種の尾括型の論説文による要約文の表現類型と、日本語教師・国語教師・日本人大学生各5名による3種の評価調査の結果を比較して、両者の異同とその要因を明らかにした。その結果、日本語の論説文の「要約規則」を導き出し、要約文の作成方法と評価基準に関する以下のような結論を得た。(1)日本人と留学生による要約文の原文残存必須単位の組み合わせに基づく表現類型には、日本人の要約文は原文と同じ尾括型の類型が多いが、留学生の方は、内容・表現ともに問題のある異質の類型がある。(2)要約文の表現類型と教師と学生による評価には、関連性があり、各集団において、原文に近い類型のものほど偏差値平均は、日本語教師の留学生要約文の評価平均による評価が高く、原文と異なる類型は低いという傾向がある。(3)国語教師の日本人要約文の評価平均よりも高く、大学生の評価もこれに準ずる。(4)要約文の表現類型は、教師の要約文の評価の平均偏差値や評価項目と関連があり、一般に、「結論・要点」を備え、「具体例・要約者の意見・原文以外の内容」を含まず、「文章構成・文のつながり・まとまり・簡潔さ」を満たす要約文ほど評価が高い。これらは、論説文の「要約規則」や「要約技法」と見なすことができる。(5)国語教師は日本人要約文を、文章構成や簡潔さ等の表現面の巧拙を重視して評価するが、日本語教師は留学生要約文を、内容理解や「語句・文法・表記」等の正確さに主眼を置いて評価する。(6)日本語教師の留学生要約文の評価において、評価の高い要約文の偏差値平均は国語教師よりも高く、評価の低い要約文の偏差値平均は国語教師より低い。今後の課題として、より多くの資料を用いて、本研究で得られた結果の妥当性をさらに検証する必要があるが、要約文の表現類型の分類基準の精度を高め、情報伝達の手段としての要約技法を解明することが残されている。
著者
矢野 立子
出版者
日本女子大学
雑誌
日本女子大学紀要 文学部 (ISSN:02883031)
巻号頁・発行日
no.66, pp.85-98, 2017-03-20
著者
岩田 正美 杉村 宏 岡部 卓 村上 英吾 圷 洋一 松本 一郎 岩永 理恵 鳥山 まどか
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は1)貧困の概念と最低生活費研究を理論的に整理し、2)現代の代表的な低所得層の家計調査からその生活実態を把握し、3)家計の抵抗点による最低生活費の試算と生活保護基準との比較を行った。この結果、1)最低生活費は複数のアプローチで確かめられる必要がある。2)単身者の生活費は、生活基盤費が固定費であり、その他の経費の高低で消費水準が決まる。3)その他の消費水準の抵抗点を利用して最低生活費を試算すると167,224円であった。生活保護基準と比較すると、約2万円強高くなることが分かった。
著者
小西 厚子
出版者
日本女子大学
雑誌
史艸 (ISSN:02883066)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-24, 1982-11-10
著者
金沢 創 山口 真美 和田 有史
出版者
日本女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、高砂香料と食品総合研究所の協力の下、乳児の視覚と嗅覚の連合学習について検討した。嗅覚刺激は日本でなじみの少ない香辛料のスターアニスを用い、嗅覚(オモチャのにおい)と視覚(オモチャの外形)の学習過程を検討した。被験者は5-8ヶ月の乳児であった。その結果、女児のみアニスのニオイとオモチャの連合が成立する結果が得られた。さらにこの視覚と嗅覚の連合学習を検討する目的で、1歳前後の乳児を対象に、同じオモチャを用いて、リーチング行動を指標にした実験を計画した。また、食物の選好を決定する過程に対して視覚が果たす役割も検討した。これらの結果を学会発表を経て論文化し、現在投稿中である。
著者
横内 由紀恵 (森 由紀恵)
出版者
日本女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は王家の御産・御悩の御祈を分析することで日本中世成立期の宗教の政治的機能の特色と変遷を明らかにすることにある。最終年度である平成24年度は2年目までのデータベース作成・史料調査を継続し(下記1)、その成果を研究報告や論文の形で発表し(下記2)、本研究課題の解明をめざした。1.データベース作成・史料調査:本研究課題の中心史料『覚禅鈔』の年号・書名索引は、前年度に入力作業が終了したため、本年度は校正作業を行い、精度を高めた。その過程で不明確な箇所は東京大学史料編纂所の写真帳・高野山大学図書館の原本などで追加調査を行い『大正新脩大蔵経』の底本である勧修寺本よりも情報量が多い諸本を確認した。これにより仏教史・政治史・外交史など多分野から注目されている『覚禅鈔』の情報を補填することができた。また御悩の御祈の対象ともなる内侍所神鏡について聖教類・日記史料の蒐集・調査を行った。2.調査結果の考察・発表:『覚禅鈔』データベースをもとに考察を進めた結果、『覚禅鈔』には真言宗・天台宗・大陸・神道関係の教義が反映されていること、その情報収集の方法には独特の傾向があることが判明し、論文執筆を進めた。また、1での史料蒐集・調査から、12世紀後半に政治と宗教の関係が変化する可能性があると考え、奈良女子大学古代学学術研究センター研究会「福原の時代」で「福原遷都と伊勢」と題して発表した。この研究発表の一部を論文「中世成立期の平安京と内侍所神鏡」と題して執筆し雑誌『奈良歴史研究』への掲載が許可された。拙稿では、アマテラスを正体とする内侍所神鏡・平安京・天皇との関係性の変化を整理して福原遷都を機に内侍所神鏡=アマテラスが平安京と空間的に結びつくことで「万代の都」平安京の言説化が進展することを明らかにし、中世成立期の宗教の政治的機能を都市史・政治史と関連させて説明することができた。