著者
清道 亜都子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.361-371, 2010-09-30
被引用文献数
4

本研究の目的は,高校生に対する意見文作成指導において,意見文の「型」(文章の構成及び要素)を提示することの効果を検討することである。高校2年生59名(実験群29名,対照群30名)が,教科書教材を読んで意見文を書く際,実験群には,意見文の「型」や例文を示して,書く練習をさせた。その結果,事後テストでは,実験群は対照群より文字数が多く,意見文の要素を満たした文章を書き,内容の評価も高まった。さらに,介入1ヶ月後においても効果が確認できた。また,対照群にも時期をずらして同一の介入指導を行ったところ,同様の効果が現れた。これらの結果から,意見文作成指導の際,意見文の「型」を提示することにより,高校生の書く文章は量的及び質的に充実したものになることが示された。
著者
大浦 容子 後藤 克彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-10, 1994-03-30
被引用文献数
1

In order to investigate how cognitive skills develop in the course of expertise in Japanese fencing, regular (expert) and substitute (junior expert) players of a men's university varsity team were compared on performances on (I) a paper-pencil test of rules and concepts (Test a), (II) convergent problem solving tasks such as to predict a scorer's winning trick from a video just before it occurs (Test c-2), and (III) divergent problem solving tasks such as to judge players' skill from their postures (Test b-1), and to detect defects in them (Test b-2). Unexperienced college students also participated in the experiment in part. Both the experts and junior experts knew the rules and concepts of Japanese fencing well, and their performances were much better than the estimated baseline. Their performances in convergent problem solving were also equally well. In divergent problem solving, however, the experts were better than either the junior experts or the unexperienced. These results suggest that divergent problem solving skills need a longer time to develop.
著者
森 二三男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.18-24, 1960-12-30
被引用文献数
1

この研究は,G.S.R.による情緒測定の応用的方法として,テレビドラマを心理的刺激条件と一したとき,被験者を集団的に測定して,その結果を考察したものであって,G.S.R.のgroup measurementのひとつの試みとして妥当な資料がえられるかどうかを検討したのである。みいだされた結果を要約すると次のようにたる。1テレビドラマ視聴時における個人被験著のG.S.Rを測定し,その記録を反応値によって整理した結果,このドラマ内容の刺激因子に対応する反応として,被験者の情緒表出をG.S.R.によってとらえることがでぎた。2個々の被験者の皮膚電気抵抗値を,直流電気抵抗とみて,これを並列に接続した回路構成によって,合成抵抗値を1人の被験者のそれと等しくし,集団的にG.S.R.を測定した場合, R値を指標として記録を分析するならば,妥当な資料として集団測定の記録を分析することができた。3テレビドラマを刺激因子として,上述の集団測定方式によって集団G.S.R.を測定し,その記録をR値によって集計整理した結果,刺激因子ヒ対応する被験グループの, 集団的情緒表出をとらえることができた。被験者個々の反応彼自体のパターン旦発現時点,反応時,潜時等にはそれぞれ個人差がおるが、R値による集計の結果,この指標が妥当かどうかを,実験後に,同時記録したテープを再生聴取させて再検討した結果ヨドラマの刺激因子と集団G.S.R.値には対応があると判断された。4Lたがって,テレビ,映画等の視聴時における感動を集団的に分析したり,宣伝、広告等の効果を集団的に判定する場合,集団G.S.R.測定の記録をRによって整理して,心理的な刺激因子を明らかにしようとする試みは,妥当な方法であると判断Lてよい。最後に,この実験研究に当たって,奥田教授,狩野教官の御指導御助言に導かれたことを感謝していると同時に, 教室の諸学兄の御協力を謝したいと考えます。
著者
遠藤 愛
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.224-235, 2010-06-30

本研究では,境界領域の知能と年齢に不相応な学力を有する中学生を対象に,算数文章題の課題解決を目指す学習支援方略を検討した。アセスメントの手続きとして,(a)WISC-IIIによる認知特性と,(b)つまずいている解決過程の分析を実施し,それらを踏まえ案出した2つの学習支援方略(具体物操作条件とキーワード提示条件)を適用した。その結果,対象生徒の課題への動機づけが具体物操作条件にて向上し,立式過程におけるつまずきがキーワード提示条件にて解消し,効果的に課題解決がなされた。しかし,計算過程でのケアレスミスが残る形となり,プロンプト提示を工夫する必要性が示唆された。以上から,算数文章題解決のための学習支援方略を組む上で踏まえるべきポイントとして,生徒が示す中核的なつまずきを解消する方略を選択すること,学習支援方略を適用したときのエラー内容をさらに分析して別の過程における課題解決状況を確認することの2点が示された。
著者
松田 文子 永瀬 美帆 小嶋 佳子 三宅 幹子 谷村 亮 森田 愛子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.109-119, 2000-06-30

本研究の主な目的は, 数と長さの関係概念としての「混みぐあい」概念の発達を調べることであった。実験には3種の混みぐあいの異なるチューリップの花壇, 3種の長さの異なるプランター, 3種の数の異なるチューリップの花束の絵が用いられた。参加者は5歳から10歳の子ども136名であった。主な結果は次のようであった。(a)5, 6歳児では, 混んでいる・すいているという意味の理解が, かなり難しかった。(b)数と長さの間の比例的関係は, 5歳児でも相当によく把握していた。しかし, この関係への固執が, 混みぐあい=数/長さという1つの3者関係の形成を, かえって妨げているのではないか, と思われた。(c)長さと混みぐあいの反比例的関係の把握が最も難しかったが, 8歳児は, 2つの比例的関係と1つの反比例的関係のすべてを, かなりよく把握しているようであった。(d)これら3つの2者関係を1つの3者関係に統合することは大変難しかった。8歳から10歳にかけて大きく進歩したが, 10歳でも約25%の子どもしか統合を完了していないようであった。このような結果は, 小学校5年算数「単位量あたり」が子どもにとって難しい理由を示唆した。