著者
張本 文昭
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>安田(あだ)集落は沖縄島の北端、国頭村の太平洋岸に位置する。琉球時代には各地の城や社寺、架橋や造船などのために材木需要が高まり、人々は林業を生業とした。材木は船で沖縄島南部に運び首里城に納められた。また国の重要無形民俗文化財に指定されているシヌグという祭祀では、無病息災や五穀豊穣、豊漁などが400年近く祈願されている。大シヌグ(うふしぬぐ)に執り行われる山ヌブイは、男のみが山に入り、山にある植物を身にまとい草装神となって集落に降り、豊年や女性、高齢者、子ども達の無病息災を祈願する。シヌグ小(しぬぐんくゎー)には臼太鼓(うしんでーく)が女性によって執り行われるが、極めて古典的な唄と舞踊で構成されている。わずか12名が在籍する集落の小学校では、総合的な学習の時間や生活科などの教科として、先述したシヌグに関する講話や祭祀への参加、また現在復元されている首里城の今後の改修のための植林事業を実施している。その他にもヤンバルクイナ保護活動、また稲作や漁業など、集落の環境について、人、文化と歴史、自然の総合的な観点から教育活動が長く展開されている。校長は、森を取り巻く環境そのものが生きた教材だと話す。</p>
著者
千賀 義博 横山 千佳 唐木 心優 清水 開 中西 唯稀 松村 竜誠 ワイズナーディラン 武蔵 榎本 浩実 黒河内 寛之
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>長野県伊那市にある、今年で開校70年を迎える伊那西小学校は、校舎を取り囲むように1.4haの「林間」と呼ばれる学校林を所有し、この林間を活用した教育活動に取り組んでいる。1950年の開校当時は、草原だった場所に、翌1952年に背丈より低いカラマツ500本をPTAの手で植樹した。現在は、これらカラマツは優に20mを越える高さに成長している。林間には、他にも、アカマツ、さくら、モミジ等が自然に生えたり、あるいは、卒業記念に植えられたりと、42種類600本以上の樹木が生育している。樹木の多くは、背丈が随分と大きくなり、子どもたちが、全身で触れたり、観察をしたりするには適しているとは言えない状況があり、"子どもたちの目の高さで利活用できる森"は、学校の願いとなっていた。そこで、この森を今後24年かけて、計画的に大規模伐採し、子どもたちの学びの森となるよう、平成31年4月から運用してきている。本研究は、①過去70年の森の成り立ち ②大規模伐採の計画と実施 ③4月からの林の成長を観察することにより、子どもたち及び職員が今後どのような林間をどのように残していくかを見出そうとした研究である。</p>
著者
杉本 壽
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.11, pp.637-644, 1938-11-10 (Released:2008-12-19)
著者
杉本 壽
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-26, 1939-01-10 (Released:2008-12-19)
著者
福田 夏子 下村 彰男
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

近年、岐阜県高山市周辺では、里地里山へニホンツキノワグマが出没し、人身被害や農業被害を招いている。このため、本研究では、クマの出没地の特性について、土地利用条件から考察することを目的とした。<br> 分析は、次の1)2)から、出没件数と土地利用条件との関係を把握した。1) 過去7年間(2008~2014年)の、岐阜県クママップ上の出没地点データについて、出没場所(居住地、山林、農地、その他)と出没年、季節/時期、時間、クマの頭数・幼/成獣との関係を把握した。2) 1)の出没地点のうち50地点をランダムに選び、各地点をQGIS(1.80 Lisboa)で地図化し、各地点から半径1kmの円を描いた。そして、円内の土地利用をモデル化し、各モデルと円内の出没件数との関係を分析した。
著者
八木 貴信
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>ここで扱う筋残し刈りとは,植栽列間を1列おきに刈り払うとともに,植栽木周囲を坪刈りして,刈筋間の刈残しからの植栽木への庇圧や物理的干渉を緩和する下刈り方法である。一部の篤林家の間で実施されてきたこの方法は諸特性に未解明な点が多いが,大きな可能性を持つ。まずこの方法は,植栽する人工更新エリアと刈残す天然更新エリアを水平分離しており,自然植生と共存的である。刈残し筋の適切な拡幅(=疎植化)と組み合わせれば,植栽で成林を担保しつつ,天然更新エリアで混交林化材料を蓄積できる。刈残し筋からの側圧は植栽木の幹形向上,ツル繁茂抑制に役立つ。雑草木を刈残すことはシカ害対策上も有利である。また低コストに下刈り回数を維持でき,植栽木へのアクセス路である刈筋の長期維持が容易なので,ツル切りなど形質不良対策に役立つ。本発表ではこの下刈り方法で不可避な植栽木の成長低下の程度について報告するが,熊本県人吉市の造林地での試験では,植栽3年後,幹形状比は「毎年全面刈り<隔年全面刈り<毎年筋残し刈り<無下刈り」だが,樹高は「毎年全面刈り≧隔年全面刈り=毎年筋残し刈り>無下刈り」で,今後の経過に期待が持てる結果となった。</p>
著者
松浦 純生
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.21-25, 2020-02-01 (Released:2020-03-02)
参考文献数
9
著者
佐々木 豊志
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>森林を通じて、学生が〝SDGs〟に取り組んだ事例の報告です 〝SDGs〟は、国連が2015年に193カ国の同意のもとに採択された2030年までに持続可能な社会を実現するために達成すべき17の目標です。その中で森林資源を循環する持続可能な地域資源として活用するために学生が取り組んだ具体的なアクションです。 青森山田学園は、青森県内に放置してきた広大な山林を所有しています。青森大学の学生が、この山林を有効に活用するための企画を提案し、昨年度朝日新聞社が主催した「大学SDGs ACTION AWARD ! 」にエントリーし、入賞しました。学生が山林の有効な活用を提案・実践する過程を通じて大学・行政・地元企業・地域住民がつながり、様々な取り組みを展開しました。SDGsの視点から取り組んだ活動が広がり、学生にとって、森と地域、森と産業、森と暮らしを学ぶ貴重な場となりました。次代を担う世代に森林に関心が増すことが、近代社会が抱える森林・林業の課題の解決につながる可能性もあります。そして、この事例から今後「森林資源と学生の学びや研究の場」ともなりうる可能性を考察します。</p>
著者
渡邉 敦史 磯田 圭哉 平尾 知士 近藤 禎二
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.A17, 2004

今回,2つの異なる方法によってアカマツのSSRマーカーを開発し,開発にかかる効率性や手法の簡便さといった観点から手法の比較を行なったので報告する。また,SSR分析を行なった際に1プライマー対から2領域以上の断片が検出され,解析に困難さが伴うことがある。スギを対象としたSSR分析の結果に基づいてその実例について報告する。まず,アカマツSSRの単離には2つの方法を利用した。一つはエンリッチメント法であり,Hamilton et al(1999)に従った。もう一つは,Lian and Hogetsu (2002)によって報告されたsuppression PCRを利用する方法である。エンリッチメント法では(AC)nを繰り返し単位とするSSRの単離を試みた。54プライマー対についてPCR増幅した結果,68.5%にあたる37プライマー対から期待されるサイズのフラグメントが得られた。アカマツ10個体を利用して,単一フラグメントの増幅と多型の有無について確認した結果,33プライマー対は単一な断片が増幅されることを確認した。このうち,3プライマー対は単型的であり,残る30プライマー対からは2_から_13個の対立遺伝子を確認した。エンリッチメント法と同様にアカマツ1個体を利用してLian and Hogetsu (2002)の方法に従ってSSRを単離した。63クローンについてプライマー設計し,増幅した36クローンについて二度目のシーケンシングを行なった。その結果,16クローンがSSRマーカー候補として選抜された。16クローンについてPCR増幅した結果,期待されるサイズの断片を増幅した14のうち,9プライマー対が単一の断片を増幅し,2_から_13の対立遺伝子を確認できた。 関東育種基本区のスギ精英樹936クローンのうち、765クローンをMoriguchiら(2003)が報告したスギSSR3プライマー対について実際にSSR分析した。使用したプライマーのうち,Cjgssr149では多くの個体で1領域に由来すると考えられる対立遺伝子を確認出来た一方で,2領域に由来すると考えられる断片が検出された。そこで,シーケンスしたところ,目的とした領域の一部が重複した類似領域であることが判明した。 Lian and Hogetsu (2002)の方法では,プライマー設計した63プライマーのうち,14.3%にあたる9プライマーのみを最終的にマーカーとすることが出来た。一方,エンリッチメント法ではプライマー設計し,PCR増幅した54プライマー対のうち,約60%にあたるプライマー対をマーカーとして考えることが出来た。しかし,この結果だけに基づいてエンリッチメント法が効率面で優れていると判断することは困難である。エンリッチメント法では,ポジティブクローンを選抜する段階でその3倍にあたるコロニー(768コロニー)を選抜しており,これらのコロニーにSSRが含まれているか確認する作業を行なう必要性がある上に,実験操作もハイブリダイゼーションなど熟練者以外には容易でない場合も多い。一方で,Lian and Hogetsu (2002)の方法は選抜したコロニーの90%以上がポジティブであり,操作もまたPCRを主体とした手法の連続であることから比較的容易にマーカー開発を進めることが出来る。但し,コスト面ではLian and Hogetsu (2002)の方法は,二度にわたるシーケンシングとプライマー設計を行なう必要性から,エンリッチメント法よりも負担は大きい。 SSRマーカーは開発に労力がかかる一方で,得られる情報量の大きさや再現性の高さから,きわめて有益なマーカーである。しかし,針葉樹は染色体倍加を伴わないゲノム重複が生じているとの報告もあり,類似する領域がゲノム中に散在している可能性も高い。実際,アカマツで増幅したプライマー対のうちマーカーとして選抜できなかった理由の多くは2領域以上と考えられる断片が検出されたことにあった。複数領域が検出されたとき,分離比検定やシーケンシングを行ない,領域間の関係を明確にすることで,初めて解析に利用できると考える。
著者
久保田 将之 吉岡 さんご 新井 一司 松下 範久
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

キイチゴ属4種の分布拡大において、種子繁殖と栄養繁殖がどの程度寄与しているのかを推測するために、マイクロサテライト(SSR)マーカーを用いた多型解析により各種のクローン構造を調査した。東京都奥多摩町(以下奥多摩)と東京大学秩父演習林(以下秩父)のスギ幼齢林内に、それぞれ8 m×13 mと5 m×10 mの調査区を設定し、調査区内の全ラメットの遺伝子型を、4遺伝子座のSSRマーカーを用いて決定した。その結果、奥多摩の調査区ではモミジイチゴ94ラメットが4ジェネットに、ニガイチゴ100ラメットが7ジェネットに、クマイチゴ53ラメットが13ジェネットに区別された。秩父の調査区ではモミジイチゴ29ラメットが7ジェネットに、ミヤマニガイチゴ115ラメットが6ジェネットに、クマイチゴ116ラメットが42ジェネットに区別された。ラメット数に対するジェネット数の比は、どちらの調査地でもクマイチゴが最も高かった。これらの結果から、クマイチゴは、他種よりも分布拡大への種子繁殖の寄与が大きいと推測された。クマイチゴは他種より埋土種子が多いか、実生の生存率が高い可能性があると考えられる。
著者
小西 伴尚 石井 智也 福永 真之 森田 健太郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p> 昨年度より、三重高校(中高一貫高校部)1年生140名全員で、目標とした『自分から行動をとる生徒を増やす』『地域への関心を高め、その魅力や課題を発見し、行動がとれる』に向けて、近隣の大台町旧宮川村にて、高校 1年生全員が学ぶことができるプログラムを計画・実施してきた。1年目は、できる限り生徒自身が何事も行うように仕向け、教員は大枠(実行委員会を組織すること、取組の途中に遠足を利用すること、対象地域を旧宮川村にすること、最低一年間地域のことを考え・課題をみつけ・自分(達)ができることを考え・行動にでること)のみを設定することとした。これにより、実行委員会の生徒は感化され、目的に合った生徒が育ってきたが、他の生徒の変容は少なかった。その後、引き続き旧宮川村や自分の地元、学校のある松阪市の課題を見つけ、行動に出る機会を作り、動き出す生徒を増やしている。</p><p> また、同様の企画を本年度の1年生にも引き継いで実施した。そこでは、一年目に組んだ教員が学年団におらず、さらに準備期間が短くなった中で、実施にこぎつけ、生徒が動く内容は少なくなったが、良い経験となった。発表では、引き継ぎの難しさも踏まえて報告する。</p>
著者
しもなぺんでぃ まりあ るでぃあ 増田 美砂 ぷらせちお りりく ぶでぃ だまやんち えりん
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

Community Forestry (CF) is a successful participatory approach to protect the forest in Nepal. However recently, uneven distribution of forest products among the members has been discovered. Therefore, this study aimed to re-examine the equality and equity of forest products consumption and community development.&nbsp;
著者
内野 彰裕
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>本園は1975年に八王子市に設立され、園庭の豊かな自然環境に力を入れてきたが、2014年、園庭の身近な自然と園外の深い自然とを日常的に往来できる環境を求め移転をした。2.2haの敷地には園児、保護者、教職員と、棚田、畑、小川、森の広場等を整備・再生し、里地里山における「自然との繋がりを大切にした保育」を展開している。隣接する47㏊の森は多様な生態系が維持され、園児は保育者と日常的に森に入る。こうした豊かな自然の中で、自然教育、環境教育、労作教育、食農教育を中心としたESD「里山教育」を通して、生きる力の基礎を培う保育を大切にしている。また園内外の森は「教育資源」と捉え、次の3段階のねらいで活用している。(1)遊び場としての森「森のようちえん」(2)ビオトープとしての森「動植物との触れ合い」(3)ESDとしての森「子どもの森づくり」。年少の頃から日常的に森で遊び、森に親しみ、動植物と触れあい、人間と生き物との関係を理解し、森林を大切にする気持ちが芽生え、考え、行動できるようになっていく。このように遊びを通して周囲の環境に関わり、考え、子どもなりの答えを導いていくプロセスは「主体的・対話的で深い学び」に繋がる。</p>
著者
劉 馨遥 石橋 整司 齋藤 暖生 藤原 章雄
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>江戸時代に制作された視覚的な情報である浮世絵に江戸の緑地環境がどのようにあつかわれているか分析した。今回用いた資料は歌川広重の晩年の作品である「名所江戸百景」である。江戸を中心とする地域の風景を描いた119点の絵の構図について「遠景」、「中景」、「近景」に分け、それぞれに描かれている樹木について特徴をまとめた。119点のうちまったく樹木が描かれていないものは9点のみであり110点には樹木が描かれていた。構図としては遠景、中景、近景のすべてに樹木が描かれたものが44点と最も多く遠景と中景に描かれたものが26点、遠景と近景に描かれたものが14点、遠景のみに描かれたものが12点で基本的には遠景に樹木を配する構図が中心であった。描かれた樹木の種類が推定できた作品を見るとマツが遠景、中景、近景のいずれでも最も多くみられ、特に遠景では87点にマツが描かれていた。次いで、サクラ、スギ、モミジ、ヤナギと推定される樹木が多かったが、サクラやヤナギが中景、近景に描かれることが多い一方で、スギやモミジは遠景から近景まで満遍なく見られるなど樹種による特徴が見られた。</p>
著者
大住 克博
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第124回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.345, 2013 (Released:2013-08-20)

田中壌(1887)の間帯提唱以来、中間温帯の認否については様々な議論がなされてきた。中間温帯論の分かりにくさの一つに、植生のイメージが二面的であることが挙げられる。一つは、モミ‐ツガ帯(鈴木 1952)に代表される温帯性針葉樹林であり、今一つは、ブナを欠いた暖帯落葉樹林帯(吉良 1949)である。前者は主として西日本の太平洋岸山岳地から、後者は東日本の太平洋側の丘陵地から報告されるが、日本植生誌附表の解析からも、東西の中間温帯の植生の乖離は裏付けられる。筆者らは、西日本低地の暖温帯は、かつて温帯性針葉樹を相当混交し、針広混交帯であったと考えるべきことを提唱してきたが、この仮説に立てば、東西の中間温帯の植生の違いは、以下のように説明できる。1)西日本低地では、古代以来の伐採利用により、温帯性針葉樹は消滅した。一方高標高の奥山では、比較的人為撹乱が少なかった暖温帯上部に温帯性針葉樹が多く残り、中間温帯=温帯性針葉樹林のイメージを作った。2)東日本の暖温帯と冷温帯の温度的境界域は低地にあたり、人為撹乱を強く受けてきた。その結果照葉樹や温帯性針葉樹は減少し、中間温帯域=落葉広葉樹林のイメージができた。
著者
青木 康真 勝山 正則
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>山地流域において基岩層に浸透する降水の割合が比較的高いことが近年研究によって明らかになっている一方で、これらの流出過程はまだ明らかになっていない。本研究では降雨の強度や継続時間に対する応答を明らかにするために滋賀県大津市の桐生試験地において赤外線サーモグラフィを設置し、基岩浸出水の定点観測を行った。2018年9月29,30日において、総雨量40mmの降雨開始30分後に浸出水と周囲の温度差が大きくなる現象が観測された。またその面積は降雨規模が大きい時間帯では広がりをみせることがあり、降雨に対して浸出水が比較的早い応答をしていることが示された。また同ポイントの付近の斜面土層内において、地中の温度変化として飽和側方流の発生が観測された。この飽和側方流の出現は同じく総雨量40mmの降雨イベントに対して降雨開始から20時間ほど時間遅れがあり、20時間ほど観測された後消えた。赤外線サーモグラフィは浸出水の面的な縮小拡大を明らかにする方法として有用である。また、時間・空間分解能の高いデータを得ることで基岩浸出水だけでなく飽和側方流など土壌層中の水の動きを検出できる可能性がある。</p>