著者
芝本 武夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.338-345, 1943

(1) 春日井博士水稻用水耕液の反應とヒノキ及びアカマツ苗木の生長との關係に就て實驗した。即ちPH 3.1~4.0區, PH 4.1~5.0區, PH 5.1~6.0區, PH 6.1~7.0區, PH 7.1~8 .0區の5 PH區を設定し,之に2年生苗木を138日間培養し,其の間に於ける苗木の生重量・根元直徑・全長・幹長・根長各増加量を測定した。<br> (2) ヒノキ苗木の生重増加量はPH 5.1~6.0區に最大にして,之に次いではPH 6.1~7.0區, PH 4.1~5.0區, PH 3.1~4.0區の順位になり, PH 7.1~8.0區に於て最小である。PH 4.1~5.0區はPH 5.1~6.0區に比し其の値可成り小にして兩區の間に相當の差が認められろ。<br> (3) ヒノキ苗木の各PH區に於ける根元直徑・全長・幹長・根長増加量は生重増加量程其の差異が顯著でない。根元直徑及び幹長増加量の各PH區間に於ける大小順位關係は生重増加量の場合と全く同様である。根の伸張は各PH區の間に大差なく,從つて全長増加の關係に於ても亦差が少い。<br> (4) アカマツ苗木の生重増加量はPH 5.1~6.0區に最大にして,之に次いではPH 4.1~5.0區, PH 6.1~7.0區, PH 3.1~4.0區の順位になり, PH 7.1~8.0區に於て最小である。其の最大及び最小の値を示すPH區はヒノキ苗木の場合と同様であるが,アカマツ苗木ではPH 5.1~6.0區,及びPH 4.1~5.0區並にPH 6.1~7.0區の3區の間の差は極めて小にして殆んど差異はないと言ふべきであり,又PH 3.1~4.0區及びPH 7.1~8.0區に於ては他PH區に比し極めて小となり,其の程度がヒノキ苗木の場合の比でない點に於て顯著に異る様である。<br> (5) アカマツ苗木の各PH區間に於ける根元直徑・全長・幹長増加量の關係はヒノキ苗木の場合に比し著しく不明瞭である。然し綜合的に考察すれば矢張りPH 5.1~6.0區に於て生長最も良好で,之に次いではPH 4.1~5.0區の様である。<br> (6) ヒノキ苗木に關する本實驗結果は實際にヒノキ人工林について得られた結果とよく一致する。<br> (7) アカマツ苗木に關する本實驗結果も亦アカマツ林について實際に得られる結果とよく一致する様に思はれる。
著者
芝本 武夫 中沢 春治
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.392-394, 1960

スギ苗を使つて,尿素の経時的な葉面吸収を追求し,つぎの結果を得た。<br> 1. スギ苗木に0.5%の尿素液を散布した場合, 24時間では十分に吸収が終つたとはいえないが, 48時間経過すれば最高の吸収率に達する。<br> 2. 散布液にK<sup>+</sup>, H<sub>2</sub>PO<sub>4</sub>が共存していても,尿素の吸収を阻害することはない。
著者
芝本 武夫 栗山 旭
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.43-46, 1950

The authors carried this study with woods of Quercus serrata Thunb.<br>containing various quantities of water, using iron retort of about 7 L. capacity. To obtain samples of various moisture contents, the woods were treated in three different ways, as follows;<br>(A) Woods were cut down and air-dried ud to such moisture contents as 40%, 30%, 25%, 10%, and less than 10% respectively.<br>(B) Air-dried wood of lower than 10% moisture content were dipped in water to absorb it fully and then air-dried again up to such moisture content as 40%, 30%, and 25%, respectively.<br>(C) Woods freschly cut down were soon dipped in water to absorb it fully.<br>The authors obtained the foollowing results in this study:<br>(1) In yields of the products of the destructive distillation on weight of the samples, charcoal, acids in distilled liquor (mostly acetic acid) and wood-gas (including loss) increased, and distilled liquor (including settled tar) decreased, according as moisture content of the samples decreased.<br>(2) But moisture content of the samples had not any effect on the yields of these products per weight of the absolutely dry samples.<br>(3) According as moisture content of the samples decreased, concentration of acids in distilled liquor increased.<br>(4) Volumetric gravity of charcoal was largest in the case of wood not air-dried after being cut down.(5) In the destructive distillation, water was distilled almost at 100&sim;150&deg;C in the retort, the wood was decomposed gradually at 150-250&deg;C and then temp-erature rised rapidly, much distilled liquor was run out, and much wood-gas was exhausted at 250-350&deg;C. The wood-gas was composed of CO<sub>2</sub> and CO for the most part at 150-300&deg;C, namely of about 60% CO<sub>2</sub> and 20-30 CO.
著者
芝本 武夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.261-269, 1943

(1) 河北省の臨楡縣北戴河に於ける花崗岩土壤・昌黍縣西關外新居に於ける〓岩土壤・〓縣馮家坎荘に於ける珪岩土壤・盧龍縣第一區第保五郷第49東菜園脇に於ける砂岩及び頁岩土壤の理化學的性質を明らかにし,夫等各土壤に生育せる造林木につき樹幹解析を行ひ其の生長状態を調べ,此の地方に於ける樹木の生長と土壤性質との關係を明らかにせんとした。<br> (2) 之等土壤の機械的組成は基岩の種類及び侵蝕等の關係により若干の差異が認められるが,多くは石礫及び粗砂並に細砂に比較的富み,微砂及び粘土の量は比較的少ない。(3) 腐植は著しく少く,從つて窒素も亦極端に缺乏してゐる。<br> (4) 粘土及び腐植の含量小なる爲,土壤は膠質性小にして,吸濕水分の量及び容水量共に小である。比重は腐植に乏しき爲比較的大である。<br> (5) 加里の含量は一般に大であるが,燐酸の含量は小なるものがある。即ち臨楡縣北戴河に於ける土壤は燐酸に乏しく,〓縣馮家坎荘に於ける土壤も亦比較的少ない。昌黎縣西關外新居に於ける土壤及燐酸含量最も大である。溶脱の程度の差によると考へられる。<br> (6) 土壤の反應は弱酸性乃至微アルカリ性である。<br> (7) 石灰含量は比較的小にして,一般に炭酸鹽としては存在しない。<br> (8) 之等土壤は非石灰質土壤で,アルカリ及びアルカリ土類溶脱せられ,殊に臨楡縣北戴河及び〓縣馮家坎荘の土壤に於て著しい。又土壤層全般に亙り燐酸が溶脱せられてゐる。即ち之等土壤は山東褐色土に屬するものと考へられる。<br> (9) 樹木の生育に對する關係から考察すれば,樹木の生長に對し制限因子として作用するものは水と窒素であると考へられ,窒素含量及び土壤の機械的組成が樹木の生長と最も密接な關係を示してゐる。尚時に燐酸が著しく過小なる場合がある様に考へられる。<br> (10) 之等土壤の肥培法としては先づ以て腐植の増加を圖り,土壤の膠質性を増大せしめることが肝要である。施肥の關係は其の後の問題である。<br> (11) 之等土壤が黄土に比し其の性質を異にする主要なる點は次の如くである。即ち機械的組成に於て之等は石礫・粗砂・細砂多く,微砂及ひ粘土少きに對し黄土では其の關係が逆であり,從て黄土に比し一層膠質性小である。燐酸及び加里の含量も比較的小である。更に又之等土壤の石灰含量は小で且つ炭酸鹽としては殆んど存在しないにも拘はらず,黄土では石灰含量著しく大で且つ炭酸鹽としても含有せられる。黄土は其の反應多くは微アルカリ性であるが,之等土壤には弱酸性を呈するものがある。
著者
芝本 武夫 南 享二 田島 俊雄
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.390-392, 1952

From the alcoholic extract of the fruit-body of Fomes pinicola Fr. fungus cere.brin, trehalosey, ergosterin were isolated.
著者
松永 孝治 大平 峰子 倉本 哲嗣
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.335-343, 2009-10-01
参考文献数
44
被引用文献数
1

効率的なクロマツさし木苗の生産方法を確立するため, 二つの実験を行った。まずさし木発根性に及ぼす穂のサイズの影響を調べるため, 5家系の5∼6年生クロマツ採穂台木各1個体から穂を採取してさし付けた。その結果, 穂が長いほど, また穂の直径が太いほど発根性が低下する傾向があった。次に, 採穂台木の剪定後に得られる萌芽枝数とそのサイズに影響する要因を明らかにするために, 5家系各3個体の4年生クロマツ採穂台木について, 剪定した枝とそこから発生した萌芽枝数とサイズの関係を調べた。その結果, 剪定枝あたりの萌芽枝数は剪定枝上で萌芽枝が発生している部位 (萌芽帯) の長さと剪定枝の直径, 萌芽枝のサイズは剪定枝の直径に強く影響された。また分散分析の結果, 萌芽枝数, 剪定枝の直径および萌芽帯の長さは家系間に有意差があった。これらの結果は家系の選抜により萌芽枝数の改良が可能であることを示唆した。
著者
陳 碧霞 草島 勇斗
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>フクギを主な樹種とする屋敷林は沖縄の独特な集落景観を形成し、約300年前の琉球王府時代に成立したと考えられているが、現在では減少の一途をたどっている。本報告は、フクギ屋敷林の老木に蓄積されている二酸化炭素の量を試算した。本研究の目的は、炭素貯蔵量から、フクギ屋敷林の生態学的機能とそれらの経済的価値を明らかにし、これからの有効的保全策を提案したい。</p><p>2009年から2018年まで、研究チームは沖縄県内の10個の集落における23,518本のフクギの胸高直径(DBH)と樹高を測定した。10個の集落でのフクギ屋敷林に貯蔵された炭素の総量は6089t-CO2であった。 この量は、日本の40年生のスギ(Cryptomeria japonica)人工林の森林の炭素固定昨日に換算すると、約20.9ヘクタールのスギ林の炭素蓄積量に相当する。 さらに、40年生のスギ林の植栽と管理のコストの観点から、フクギ屋敷林の推定経済価値は2497万円に相当する。 この研究により、整然としたフクギ並木は密度が高いため、それらの炭素の蓄積、および気候変動の緩和へ貢献の可能性が高い。</p>
著者
石田 真結子 岩川 奈生 足助 聡一郎 黒田 慶子 梶村 恒 升屋 勇人 亀山 統一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>近年、養菌性キクイムシ(Ambrosia beetle)とその共生菌あるいは随伴菌による樹木病害が世界各国で問題になっている。沖縄県では、デイゴの衰退枯死木から<i>Fusarium solani</i>種複合体に属する病原菌とともに、ナンヨウキクイムシ(<i>Euwallacea fornicatus</i>)を含む3種を検出したが(Takashina et al. 2020)、同県では<i>E. fornicatus</i>によるマンゴーへの加害が2000年以降に報告されている。2019年に石垣島のマンゴー圃場の枯れ枝で<i>Euwallacea</i>属のキクイムシ類と<i>Fusarium</i>属菌を検出したことから、本研究では、検出菌の分子系統解析および孔道付近の組織の解剖観察を通して、樹木とキクイムシ類および菌類との関係について検討を行った。孔道を含む木部組織および孔道内の<i>Euwallacea</i>属数種から菌分離を行い、それらのITSおよびEF-1α領域の塩基配列の解析から、デイゴの病原菌と近縁の菌類を確認した。さらにRPB1、RPB2領域の解析も加えて分類学的検討を進めている。</p>
著者
亀山 統一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>ホルトノキ萎黄病の病原<i>Candidatus</i> Phytoplasma Malaysianum は、九州・四国の全域でホルトノキ<i>Elaeocarpus zollingeri</i> var. <i>zollingeri</i> 植栽木・自生木のいずれにも高率で感染している。一方、沖縄島では、感染率が本土よりもかなり低い傾向にあり、島北部では感染木は見つからず、島中南部にも感染木が全くない植栽地や林分がある。沖縄島中南部には、本土の感染木同様に、その個体のいずれの葉からもファイトプラズマが容易に検出できる感染木がある一方、個体内の病原密度が明らかに低い感染木が相当数あることが明らかにされた。また、感染木周辺の非感染木について3-5年後に再検査すると、新たにファイトプラズマが検出された個体はわずかであった。一方、石垣島では感染木の分布や個体の感染密度について、沖縄島中南部と同様の傾向が見出されたが、一方で、沖縄島北部と同様に自然度が高い森林がある地域においても、感染木が見出されなかった調査地はなかった。以上の知見をふまえて、沖縄島、石垣島などの琉球諸島と本土における本病病原のファイトプラズマ感染について、地域や個体による相違、また宿主範囲などに着目して比較検討した。</p>
著者
松本 一穂 高野 涼 伊藤 幸男 山本 信次 原科 幸爾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>熊本県阿蘇地域の山地部は主に草原や人工林として利用されているが、景観や防災、水源かん養等の面からみた最適な土地利用のあり方について模索する動きが地域社会で進められている。草原は放牧・野焼きの有無や優占種の違い(ススキ,ネザサ)によって違いが見られ、人工林も管理(間伐)の程度や樹種(スギ,ヒノキ)によって林相に大きな違いが見られる。しかし、これらの植生の諸特性がその土地の多面的機能をどのように特徴づけているのかについては定量的な知見が限られている。そこで、本研究では熊本県阿蘇市・南阿蘇村内の複数の草原と人工林において土壌の透水性および保水性を調査し、植生の違いが阿蘇地域における山地斜面の水源かん養機能や防災機能に及ぼす影響について検討した。</p>
著者
深山 貴文 ⾼梨 聡 北村 兼三 松本 ⼀穂 Yamanoi Katsumi 溝⼝ 康⼦ 安田 幸⽣ 森下 智陽 Noguchi Hironori 岡野 通明 ⼩南 裕志 吉藤 奈津⼦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>森林の地球温暖化防止機能には炭素固定機能の他、森林が放出する揮発性有機化合物がエアロゾルを生成し地球を冷却する機能がある。森林起源の揮発性有機化合物の主要成分は、イソプレン(C5H8)とモノテルペン(C10H16)であり、主にイソプレンは広葉樹林、モノテルペンは針葉樹林から気温の上昇に伴って揮発性が高まる夏に集中的に放出されることが知られている。一方、世界各地の様々な植生の森林において夏に限らず低温の時期に、これらの濃度上昇が観測された事例が報告されている。本研究では日本国内の6か所の森林において概ね月1回の頻度で3年間にわたって観測されたデータを用いて、国内においても低温期に同様の濃度上昇現象が発生しているのかを確認すると共に、この現象が発生した際の気象要因についての検討を行った。その結果、20℃未満の低温期に20回の高濃度現象が発生していたことが確認された。また、その多くがイソプレンは春、モノテルペンは秋の降雨後に発生していたことから、この現象の発生に降雨が影響している可能性が示唆された。</p>
著者
Tadashi Ookami Kazuho Matsumoto Shingo Taniguchi Atsushi Takashima
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>現在、温室効果ガスである二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)の吸収源として森林の役割が期待されており、森林によるCO<sub>2</sub>吸収量の定量的評価が求められている。生態系が吸収した正味のCO<sub>2</sub>量である純生態系生産量(NEP)は、生態系が吸収したCO<sub>2</sub>の総量である総一次生産量(GPP)と生態系が排出したCO<sub>2</sub>の総量である生態系呼吸量(<i>R</i><sub>E</sub>)の収支として求められる。世界各地で森林生態系のNEP、GPP、<i>R</i><sub>E</sub>が調べられ、時空間的変動やその制御要因について解明されつつあるが、亜熱帯林における知見は未だ限られている。そのため、本研究では沖縄の亜熱帯常緑広葉樹林におけるNEP、GPP、<i>R</i><sub>E</sub>を求め、これらの年々変動や季節変動、環境応答について解明する。調査方法は2013~2020年に沖縄島北部の亜熱帯常緑広葉樹林(琉球大学与那フィールド)において、渦相関法を用いて森林―大気間のCO<sub>2</sub>フラックスを観測し、これに貯留CO<sub>2</sub>フラックスを加味することで純生態系交換量(NEE)を求め、NEE = ―NEPとしてNEPを求めた。また、<i>R</i><sub>E</sub>はGPP = 0となる夜間において気温と<i>R</i><sub>E</sub>( = ―NEP)との関係を調べ、日中の<i>R</i><sub>E</sub>はその関係に基づいて気温から推定した。そして、GPPはNEPから<i>R</i><sub>E</sub>を差し引くことで求めた。</p>
著者
深谷 肇一 楠本 聞太郎 塩野 貴之 藤沼 潤一 久保田 康裕
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>種の個体数量は重要な生態学的変数である。しかし、大きな空間スケールにおいては、種の個体数量のパターンについて未だ十分な理解が得られていない。本講演では、種類の異なる生態調査データを統合する階層モデルを用いて、木本植物の種個体数量を広域かつ分類群網羅的に推定した研究を紹介する。まず、多数の生物種の地理分布と、局所的な調査における群集レベルでの種検出の過程を説明する階層モデルを構築することで、個々の種の広域での個体数量の分布を統計的に推測することを可能とした。構築したモデルを日本国内の多数の植生調査データと植物の地理分布データに当てはめることで、1200種以上の木本種のそれぞれについて、自然林における個体数量を10km平方の解像度で推定した。推定された広域の種個体数量分布を用いて行われた、地域生物多様性のマクロ進化過程の検証と、国内レッドリストの定量的検証の例を紹介する。</p>
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios V. 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008 (Released:2011-04-05)

北海道北部の森林では、ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6〜8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に、9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ、それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド、ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は、周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし、シラカンバについては、施業後3〜5年目の時点では促進効果が認められていたものの、今回の結果では競争効果に転じていた。一方、生存率については、多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して、周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから、多様な樹種の定着を図るうえで、除伐や下刈りの実行は、少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios Victor 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008-12-01
参考文献数
14
被引用文献数
4

北海道北部の森林では, ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6&sim;8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に, 9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ, それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド, ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は, 周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし, シラカンバについては, 施業後3&sim;5年目の時点では促進効果が認められていたものの, 今回の結果では競争効果に転じていた。一方, 生存率については, 多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して, 周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから, 多様な樹種の定着を図るうえで, 除伐や下刈りの実行は, 少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
真宮 靖治
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.114, pp.123, 2003

マツノザイセンチュウのマツ樹体内における生息実態については、樹体の病状進展経過や枯死後の時間的経過との関連で、とくにその個体数変動が明らかにされてきた。マツの発病後30日前後で、樹体内の線虫個体数はピークに達したあと減少する。このような変動傾向について、マツノザイセンチュウのマツ樹体内における摂食行動との関連が予想された。また、個体数の変動には菌類の影響も考えられた。これらの視点に立って、マツ丸太に対するマツノザイセンチュウの接種実験を行った。伐倒直後丸太に対する接種、伐倒後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月をそれぞれ経過した丸太に対する接種、の4処理区を設定し、各区5本ずつの丸太を供試した。線虫接種後、経時的に各処理区丸太から材片を採取して線虫分離を行った。接種後、マツノザイセンチュウは丸太材内で増殖し、1ヵ月後に個体数増加のピークに達したあと減少していった。このような個体数変動の傾向は各処理区で共通していた。伐倒後の時間経過は線虫増殖に明らかな影響を及ぼした。伐倒直後に比べ、1ヶ月以上経過後、線虫接種した丸太では、線虫個体数は少なかった。とくに、3ヶ月経過後接種の処理区では、線虫はほとんど増殖しなかった。このような増殖経過から、マツノザイセンチュウはより新鮮なマツ材組織での増殖が有利であり、この場合、柔細胞などのマツ材組織を主要な食餌源としている可能性が示唆された。伐倒直後の丸太に線虫を接種したあと1ヶ月経過した丸太に対して、ヒラタケとシイタケをそれぞれ接種する区を設定し、丸太材内における線虫増殖経過を追った。ヒラタケを接種した丸太では、線虫個体数が減少した。シイタケ接種の影響は見られなかった。ヒラタケが示した線虫個体数抑制効果は、自然条件下、マツ枯死木材内での線虫個体数変動における、木材腐朽菌をはじめとする各種微生物の影響を示唆した。
著者
沼本 晋也 林 拙郎 西尾 陽介 近藤 観慈
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.114, pp.215, 2003

従来,復旧治山が主であったが近年は予防治山も重視されるようになった。そのため,事業に対する必要性の判断が重要となり,危険性が高いと判断される地区や支流域から順次事業を行う必要性が生じている。三重県では山地森林の適正な管理を目的とした森林GISデータベースが整備されており,治山分野に対してもこのデータベースを活用することが求められている。そこで,森林データベースを用いた山地流域の土砂災害に対する被災危険度を評価するための基準作りを目的として,崩壊との関連性の高い諸要因を設定し,数量化理論を用いて崩壊の発生・非発生事例を分析し,支流域単位での崩壊危険率の算定を行った。次に,求められた各支流域の崩壊因子と保全因子に基づき,対象地域における支流域ごとの被災危険度の評価を行った。