著者
鶴田 燃海 王 成 加藤 珠理 向井 譲
出版者
日本森林学会
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.210-213, 2017 (Released:2018-04-20)

‘染井吉野’は日本で最も親しまれているサクラの品種で,エドヒガンとオオシマザクラとの雑種といわれている。本研究はエドヒガン,オオシマザクラそれぞれ3集団で‘染井吉野’の連鎖地図に座乗するSSRマーカー27座の遺伝子型を決定し,この野生種における対立遺伝子頻度を基に‘染井吉野’のそれぞれの対立遺伝子の起源を推定した。54個の‘染井吉野’対立遺伝子のうち,44.4%がエドヒガン由来,33.3%がオオシマザクラ由来と推定された。残りの22.2%は,どちらの種でも頻繁にみられるまたは両種ともに稀な対立遺伝子のため,由来は不明とした。染色体ごとにみると,複数の染色体でエドヒガンとオオシマザクラに由来する領域とが混在していた。この結果は,‘染井吉野’の染色体が乗り換えを経て形成されたことを意味し,‘染井吉野’が1回の種間交雑による雑種ではなく,より複雑な交雑に由来することが示唆された。
著者
鶴田 燃海 王 成 加藤 珠理 向井 譲
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.210-213, 2017
被引用文献数
1

<p> '染井吉野' は日本で最も親しまれているサクラの品種で,エドヒガンとオオシマザクラとの雑種といわれている。本研究はエドヒガン,オオシマザクラそれぞれ3 集団で '染井吉野' の連鎖地図に座乗するSSR マーカー 27 座の遺伝子型を決定し,この野生種における対立遺伝子頻度を基に '染井吉野' のそれぞれの対立遺伝子の起源を推定した。54 個の '染井吉野' 対立遺伝子のうち,44.4% がエドヒガン由来,33.3% がオオシマザクラ由来と推定された。残りの22.2% は,どちらの種でも頻繁にみられるまたは両種ともに稀な対立遺伝子のため,由来は不明とした。染色体ごとにみると,複数の染色体でエドヒガンとオオシマザクラに由来する領域とが混在していた。この結果は, '染井吉野' の染色体が乗り換えを経て形成されたことを意味し, '染井吉野' が1回の種間交雑による雑種ではなく,より複雑な交雑に由来することが示唆された。</p>
著者
親泊 素子
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.9-13, 2008-06-01 (Released:2017-07-10)
被引用文献数
1
著者
網田 克明 柿内 久弥
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.34-35, 2019-06-01 (Released:2019-07-09)
参考文献数
7
著者
井出 雄二
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>昭和39年に東京営林局から発行された、「伊豆林政史」は、後北条時代から明治時代までの天城山の森林管理について、資料に基づき幅広く紹介したもので、森林史を考究する上で重要な文献である。この論考の基礎とされた資料が資料編として保存されている。これらは、昭和34年から二か年、弓削俊昭が公務として収集した伊豆各地の旧家所蔵の古文書の書き写しなど約1,200点からなり、これまで天城山の森林管理や利用に関する論文に引用されてきた。収集から60年が経ち、古文書原本へのアクセスが困難になる中、資料編の文書群の価値はますます高まっている。しかし、具体的記述については、資料編を直接参照する以外にその内容を知ることができない。ところが、資料編には、ページが振られていないうえ、目次、索引も存在せず、必要な資料を探し出すことは大変困難である。そこで、筆者は、資料編の活用を期し、その画像ファイル(PDF)を作成するとともに、詳細な目録を調製した。なお、資料編は、その学術的価値から、日本森林学会の「林業遺産」(2016年度)に選定されており、令和元年9月現在、関東森林管理局伊豆森林管理署に保管されている。</p>
著者
伊高 静 吉本 敦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第128回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.71, 2017-05-26 (Released:2017-06-20)

太陽パネル設置による発電は、二酸化炭素の排出量が非常に少ない自然エネルギーとして注目を集めている。一方、山林を伐採して太陽パネルを設置する地上型メガソーラーの急増については、景観の損失や、森林喪失による生態系への悪影響・土砂流出等が懸念されている。本研究は、山間地における太陽パネル設置の総合的な評価を可能にする判断材料を提供するため、それぞれの炭素量収支を明らかにする事を目的とした。具体的には、太陽パネル生産・運搬・設置・メンテナンス・パネル解体・廃棄にまつわる炭素収支を先行研究とメーカーからの聞き取り調査から明らかにした。さらに、太陽光発電に相当する電力を、化石燃料による発電に置き換え、その炭素量を明らかにした。また、仮想林分における施業による炭素収支を、数理最適化の手法を用いて算出した。収穫量・収穫頻度を制約条件に、樹齢に応じた炭素収支が、最小~最大になる解を、様々な施業パターンを想定して算出した。現実には、山間地利用における森林経営とソーラーパネル設置を総合的に判断することの難しさは、比較のための「物差し」が1つではないことにある。発表では、「炭素収支」という見地から議論したい。
著者
小野 賢二 野口 宏典
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>東日本大震災では、津波により青森~千葉県にわたる太平洋沿岸の海岸防災林で、林帯地盤の損壊・沈下・流出、樹木の倒伏・流失など壊滅的被害が発生した。特に、地盤高が低く地下水位が高い箇所では根張りが十分でなく、津波により樹木が根返りして流木化した。林野庁が諮問した「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討委員会」は「今後の海岸防災林の再生について」とする提言を取り纏めた。現在は、この方針を踏まえ、海岸防災林の復旧・再生が取り組まれている。本企画シンポジウムでは、海岸防災林の復旧・再生現場から、現在の状況を紹介し、顕在化してきた課題を概説して、樹木の生育基盤として用意された造成土に関わる問題点を整理する。併せて、1990年代から低湿地対策として盛土工を伴う海岸防災林を造成してきた千葉県の事例や、埋立地に公園造成を進めてきた東京都海の森公園予定地(2020年東京オリンピック会場)の事例を紹介する。前述の提言には「広葉樹の植栽等についても考慮することが望ましい」とも言及されている。ここでは四国海岸林に成林する広葉樹林とクロマツ林の状況を紹介し、海岸林での広葉樹の活用のあり方についても議論する。</p>
著者
木村 恵 中村 千賀 林部 直樹 小山 泰弘 津村 義彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.173-181, 2013-06-01 (Released:2013-07-25)
参考文献数
34
被引用文献数
6 4

多面的機能が注目される社叢林の保護と管理を行うには, その成立要因を理解する必要がある。本研究では長野県戸隠神社奥社参道のスギ並木を対象に林分構造と遺伝的多様性・特性を調べた。二山型を示す直径階分布から多くの個体は限られた時期の植林によって成立しており, 現在の樹高成長量は低く今後は補植が必要になると考えられた。核マイクロサテライトマーカー8遺伝子座での遺伝解析から多くのクローンが検出され, 挿し木による植林の可能性が示された。また奥社参道における遺伝的多様性の指数は天然林と同程度だが, 遺伝距離に基づく主座標分析では天然林とは異なる特異な遺伝的特性を示した。さらに周囲の社叢林のスギ, 在来挿し木品種クマスギを加えた解析では血縁関係 (親子, 兄弟) が検出された。天然林との特異な遺伝的関係も検出され, 限られた母樹からの苗木による創始者効果の可能性が示された。現在の遺伝的多様性・特性を維持するには, 挿し木や血縁関係にある幹の重複を避けて母樹を選定し, 苗木を生産することが有効である。また信仰的な理由で挿し木されたと考えられる個体もみられており, 戸隠神社の歴史を反映するこれらの遺伝子型の保存も重要である。
著者
木村 恵
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.32-33, 2012-10-01 (Released:2017-07-07)
著者
下川 真季 上條 隆志 加藤 拓 樋口 広芳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.P5036, 2004

2000年7月の噴火以降、亜硫酸ガスの噴出が続く三宅島ではスギの枯死が顕著であり、今後、島内の多くのスギ植林地に何らかの植生回復・緑化手段が講じられる可能性がある。そこで本研究では、三宅島におけるスギ人工林の土壌中に含まれる埋土種子集団について、発芽可能な種子数および種組成を明らかにし、その植生回復・緑化利用に対する可能性を検討した。2002年12月、島内のスギ人工林において噴火により堆積した火山灰(以下、火山灰)と噴火前の埋没土壌(以下、表土)を採取した。2003年4月、表土と火山灰、および表土と火山灰の混合物(以下、混合)を用いて、播き出し実験を開始した。定期的に発芽数の測定を行い、さらに出現個体を同定した。表土試料から平均2776±90個体/_m2_(値は現地換算したもの)が発芽し、28種が同定できた。一方、火山灰試料からは85±37個体/_m2_が発芽し、6種が同定できた。また、混合試料からは 1912±638個体/_m2_が発芽し、31種が同定できた。主な出現種は、草本ではダンドボロギク・ハシカグサ・コナスビ・シマナガバヤブマオ・ドクダミ・カヤツリグサ類、木本ではカジイチゴ・ヤナギイチゴなどであり、三宅島の二次遷移初期にみられる種が多く見られた。三宅島での一次遷移初期にみられるハチジョウイタドリやハチジョウススキ、オオバヤシャブシなどの先駆種は全く出現しなかった。また、出現した種のうち、外来種はダンドボロギクの一種のみと少なく、在来種が多かった。以上のことから、三宅島のスギ人工林における埋土種子集団は、種子数・種組成ともに植生回復・緑化利用に対して大きな可能性をもつことが明らかとなった。
著者
林 雅秀
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.328-336, 2019-12-01 (Released:2020-02-01)
参考文献数
12

本研究は岩手県北部地方のウルシ所有者への聞き取り調査に基づいて,過去のウルシ植栽時にウルシとそれ以外の作物をどのように選択したかを,ウルシを植栽した際の収益性に着目して明らかにすることを目的とした。調査の結果,ウルシ植栽という選択は,雑穀・タバコ・果樹などの跡地になされる場合が多かったこと,ウルシとそれらの作物を比べると少ない労力で収益を得られる点でウルシが優れていたこと,ウルシとスギを比較した場合には収益までの期間が短い点でウルシが優れていたことなどから,土地所有者たちがウルシを選択してきたことが明らかとなった。また,ウルシ立木生産の収益性に関しては,下刈り回数が少ない場合には高い収益率を実現できることなどが明らかとなった。
著者
西川 祥子 久保 満佐子 尾崎 嘉信
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.1-6, 2020-02-01 (Released:2020-04-01)
参考文献数
29
被引用文献数
3

コナラ林におけるナラ枯れの進行過程とナラ類およびクリ(以下,ナラ類としてまとめる)の動態を明らかにするため,島根大学三瓶演習林の1 haのコナラ林で2001年から2018年の17年間のナラ類の生残および枯死,胸高直径の変化を調べた。ナラ枯れが確認された2012年から2014年の各年は枯死個体の分布も調べた。その結果,ナラ枯れ発生前は,ナラ類の小径木が枯死するものの胸高断面積合計は増加し,ナラ枯れの発生に伴い減少に転じた。ナラ枯れ発生初期の2012年と2013年はナラ枯れにより直径に関係なく枯死し,ナラ枯れが蔓延した2014年は小径木で枯死しやすく,ナラ枯れは谷で発生しやすかった。2013年と2014年は各1年でナラ枯れ発生前の5年分に近い本数が枯死した。2001年に426本あったナラ類は2018年に212本になり,ナラ枯れによる枯死率が18.1%,その他の要因による枯死率が32.2%と17年間ではナラ枯れによる枯死木の方が少なかった。しかしナラ枯れによって,短期間で枯死木が増加することに加え,大径木も枯死することで森林構造が大きく変化すると考えられた。
著者
斉藤 正一 柴田 銃江
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.223-228, 2012-10-01 (Released:2012-11-22)
参考文献数
30
被引用文献数
13 15

ナラ枯れ被害を受けやすい森林特性や, 被害林再生の見込み, ナラ枯れが農山村の生活基盤に及ぼす影響を検討するため, 山形県において, ナラ林のタイプや被害程度の異なる林分の森林構造や, 被害木の分解過程などを調べた。ナラ枯れが始まってから10年内には, ほとんどのミズナラ林冠木は枯死したが, コナラ林冠木は少なくとも4割程度が生存した。激害ミズナラ林の林冠層植被率は28%だったが, 激害コナラ林では47%だった。さらに, コナラ林の亜高木層には少数ながら高木性樹種もみられた。そのため, ミズナラ林では高木層を欠く状態が長く続くが, コナラ林ではある程度の林冠修復が期待できる。しかし, 実生稚樹による天然更新は, ユキツバキを主とする常緑広葉樹が低木層を占有し続けるため, どちらのナラ林タイプでも困難だろう。また, ナラ枯れ枯死木の多くが5年ほどで倒伏したことから, 被害激化地域では, 倒木による電線切断や道路閉鎖などのライフラインの障害が数年内に頻繁に発生することが危惧される。
著者
伊東 宏樹 五十嵐 哲也 衣浦 晴生
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.15-20, 2009 (Released:2009-03-24)
参考文献数
30
被引用文献数
11 12

京都市北部の京北地域の広葉樹二次林においてナラ類集団枯損被害により林分構造がどのように変化したのかを調査した。毎木調査の結果, 胸高断面積合計でもっとも優占していたのはソヨゴで, 以下, イヌブナ・ミズナラ・コシアブラ・タムシバの順だった。ミズナラは半数を超える個体が枯死していたが, その枯損木を含めると, ミズナラの胸高断面積合計がもっとも多くなり, ナラ類集団枯損発生以前にはミズナラがもっとも優占していたことが推定された。個体位置が枯損被害発生源に近いほど, また個体サイズが大きいほどミズナラの死亡率が高かった。ミズナラの枯損により発生したギャップで更新し, 今後少なくとも短期的には林冠層で優占することが期待された樹種は, タムシバ・コシアブラ・イヌブナだった。マルバマンサク・ソヨゴも中層から下層で優占度が高まる可能性のあることが予想された。
著者
久保山 裕史 古俣 寛隆 柳田 高志
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.226-232, 2017-12-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
38
被引用文献数
3 9

我が国の未利用木質バイオマス発電施設は,発電効率は25%前後と低く,設備コストや燃料コストが高いため,高い経済性を確保するのは容易ではない。一方,電力だけでなく熱も利用可能な熱電併給 (CHP) は,小中規模でも経済性を高められると考えられる。これを定量的に明らかにするため,評価モデルを開発し,四つの発電規模 (1,200,1,600,1,999,5,700 kW) を対象に,1) 発電のみ,2) 蒸気利用のCHP,3) 温水利用のCHPの三つの事業について内部収益率等を推計した。売熱単価は,A重油価格を参考に7.7円/kWhと5.2円/kWhの2通りとした。推計の結果,a) 発電事業よりも,総合効率を確保してCHP事業を行う方が経済性は高くなる,b) 1,200 kWの場合,発電効率が低下するため,売熱単価が低い場合には,CHP事業を行っても採算が取れない,c) CHP事業では,発電量が大きく低下する蒸気利用よりも,発電量の低下が少ない温水利用の方が経済性が高い,d) 熱電併給事業の経済性を高めるためには,大きな熱需要の確保が必要であることが明らかとなった。
著者
峰尾 恵人 松下 幸司
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

「木の文化」は近年注目を集めているが、従来林学分野で考慮されることは少なかった。人工林長伐期化や広葉樹林化が課題となっている現在、「木の文化」を一つの視角として導入してはどうかというのが本報告の提案である。わが国の伝統的な「木の文化」から森林利用の歴史を見ると、多様な樹種・寸法の植物性資材が持続的に活用されてきたことが浮かび上がる。<br> 「木の文化」は持続可能であるという言説がしばしばあるがこれは誤りで、枯渇性資源的性質の強い長大材は近世に枯渇の危機を迎え、近代には外材に供給を依存するようになり、近年では違法伐採材まで利用されるようになっている。その他の再生可能資源も、社会経済の近代化の過程で林野利用の様式や需要のあり方が変化し、近年では生産の最終局面を迎えている資材があることも報告されている。これらの原因には、選好の変化や不完全情報などの市場の失敗が挙げられ、公的な介入の必要がある。<br> かつて林学は高齢林・広葉樹林を林相「改良」の対象とみなしてきたが、ポスト産業社会における森林科学にとって、「木の文化」という概念は生態系・経済・文化や川上・川下の関係を再構築する鍵となりうるのではないか。

1 0 0 0 OA 夏の強剪定

著者
二階堂 太郎
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.29, 2015-10-01 (Released:2017-07-07)
著者
佐々木 理沙 泉 桂子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p> 1960年頃まで、山村ではまつたけが身近な食材であったことが既往研究で指摘されている。本研究の目的はまつたけ高級化の過程を戦後の料理書から明らかにすることである。研究方法は文献調査とまつたけ採取者へのヒアリングによった。第1に、1960年代までまつたけは都市の人々にとって身近な食材であった。1958~2019年の『きょうの料理』から抽出したまつたけレシピの分析(N=149)では、1960年代以前と比較して1970年代になるとレシピ数は減少し、レシピの内容は単純化した。1960年代までは節約料理や洋風料理・中華料理にまつたけが用いられていた。一方、1946~1974年に連載された『サザエさん』では、6,761話中14話にまつたけが登場し、初登場は1951年9月であった。同書では1951年から高級品として扱われていた。両者でまつたけ高級化の年代が異なる要因は、まつたけの出荷時期によって、産地や価格の大幅な変動があったことによる。岩手県内のまつたけ採取者3名に対するヒアリングから、高級化の時期に地域差があり、採取者にはまつたけの採取・贈与・共食・環境整備の楽しみが存在した。</p>