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著者
渡邊 正富
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.91-101, 1943-02-10 (Released:2008-12-19)
参考文献数
1
著者
横田 康裕
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.241-250, 2017-12-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

発電用木材の安定供給の要点を明らかにするため,全国的にみてもその流通が活発な宮崎県中北部の状況について,発電事業者,集荷者,出荷者,支援者に対して聞き取り調査を実施した。発電事業者・集荷者は,安定調達に向けて,集荷網の構築・維持・強化,価格の引き上げや手数料の引き下げ等による出荷者の利益増大,山土場での引き取りやA材~発電用木材の仕分け作業の引き受け等による出荷者の利便性の向上,発電用木材の自社生産,末木・枝条等の使用部位の拡大に取り組んでいた。行政・業界団体等の支援者は,発電事業者・集荷者と出荷者との間での情報・意見交換の促進および安定供給のための協議会の設立に取り組んでいた。一方,出荷者は,生産・出荷に際して,利益,利便性,所属団体の意向,発電事業者・集荷者の熱心な営業,発電事業者・集荷者との信頼関係,事業活動の安定性,取引の自由度等を考慮していた。需要者・支援者の取り組みと出荷者が重視する項目は現時点では,概ね一致していた。今後も,現在の取り組みを継続・強化すると共に,長期的な安定性確保のために出荷者の連携が重要と考えられた。
著者
重永 英年 長倉 淳子 高橋 正通 赤間 亮夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第114回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.444, 2003 (Released:2003-03-31)

高CO2濃度は植物の成長を促進するが、その程度は栄養状態に左右され、特に窒素が十分でない場合には高CO2の効果が低減することが知られている。CO2濃度上昇が植物の生育におよぼす影響を評価する際には、窒素と高CO2濃度との相互作用を実験的に明らかにするとともに、自然環境下では、植物がどのような窒素の栄養状態にあるのかを把握する必要がある。また、温暖化にともなう気温の上昇は、土壌の養分環境を変化させ、植物の栄養状態に影響をおよぼす可能性が予想される。 葉の窒素含有率は、植物の生育にとって窒素の過不足を表す指標として利用され、光合成速度と密接な関係があることから、モデルのパラメータとして用いられることも多い。本研究では、全国から採取されたスギ針葉の窒素含有率を調べ、平均値とその度数分布を明らかにし、窒素栄養の状態を評価すること、温度環境と針葉窒素含有率との関係を検討することを目的とした。 窒素含有率の測定には、1990年から1994年にかけて林野庁によって行われた「酸性雨等森林被害モニタリング事業」で採取されたサンプルを用いた。上記事業では、全国を20km×20kmのメッシュに区分し、陸地が全体の4分の1未満の場合等を除いた1,033の地理区画ごとに調査地が設定され、林分調査、雨水、土壌の成分分析等が実施された。各地点では、原則として、調査地内の優勢木を対象とし、8月から10月の期間に樹冠上部の当年葉が採取されている。スギ針葉は、香川県と沖縄県を除く45都道府県の500以上の地点から採取された。調査林分の林齢は20から40年生が約8割を占める。針葉の窒素含有率は、CNコーダを用いて定量した。 各調査地の表層土壌の窒素含有率、同C-N比については上記事業のデータを、年平均気温についてはメッシュ統計値(気象庁監修 (財)気象業務支援センター,1996)を利用した。531地点の針葉窒素含有率の度数分布は、正規分布型を示し、平均値は14.0mg gDW-1、標準偏差は2.4mg gDW-1であった。スギ壮齢林の場合には、針葉の窒素含有率が12mg gDW-1未満で成長不良、15mg gDW-1以上で成長良との報告がなされている。本結果では、針葉の窒素含有率が15mg gDW-1以上の地点は全体の3割以上を占め、12mg gDW-1未満の地点は2割に満たない。調査地の設定にあたり、生育不良な林分は選定されていない可能性があるが、針葉の窒素含有率から判断すれば、窒素が大きく不足しているスギ林は多くはないと考えられる。また、スギ苗木では、針葉の窒素含有率が約15mg gDW-1までは光合成速度は増加するが、それ以上では飽和することが知られている。針葉窒素含有率のモードは14から15mg gDW-1にみられ、この値は光合成にとって過不足の無い最適な窒素含有率に近かった。 表層土壌のC-N比を4水準に区分し、各区の針葉窒素含有率を比較すると、C-N比が高い区では針葉の窒素含有率が低い値をとった。年平均気温によって区分した場合は、針葉の窒素含有率は、9.5℃未満の地点では13.6mg gDW-1、14.5℃以上の地点では14.2mg gDW-1と、年平均気温が低い区で値が低い傾向がみられた。低温環境では、表層土壌の窒素含有率、同C-N比が高い値を示しており、土壌有機物の分解が抑制され、窒素の可給性が低いことが、上記の結果と関係していると考えられる。このように、温度環境に対して針葉の窒素含有率は変化する傾向があるものの、その変化量自体は非常に少なかった。温暖化による気温の上昇により土壌の養分環境が変化したとしても、スギ針葉の窒素含有率は大きくは変化しないことが予想される。
著者
寺下 太郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.59, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

オーストリアで林業に従事する際には、それぞれの業務に応じていくつかの資格があり、そのための研修・学習のルートも細分化されている。現場で林業作業に従事するための基本的な資格はForstfacharbeiter(林業専門作業者)というものであり、その上にForstwirtschaftsmeister(林業マイスター)という資格がある。研修機関は主にOrt, Ossiach, Pichlの3カ所が担っている。他方、林業経営に関わる場合、その経営規模に応じて取得すべき資格が複数ある。それは、森林法上で一定の規模以上の事業体は有資格者を雇用しなければならないことが明確に規定されているためであり、規模の小さい順にForstwart(1,000ha以上)・Förster(3,600ha以下)・Forstwirt(3,600ha以上)となる。これらの資格は認定機関が異なり、対応する学校そのものが各地に分かれている。すなわち、ForstwartのためにはForstfachschule (Waidhofen)、FörsterのためにはFörsterschule (Bruck)、ForstwirtのためにはUniversität für Bodenkultur (Wien)である。
著者
孫 鵬程 柴田 昌三 貫名 涼
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.257-265, 2019-12-01 (Released:2020-02-01)
参考文献数
45
被引用文献数
1

近年,日本では竹資源の持続的利用が重要な課題となっている。本研究は鹿児島県内の竹材とタケノコ関連業者を対象に,アンケートによって竹資源利用の現状を明らかにし,竹産業の構造変化および影響要因について検討したものである。調査は2018年9月に,県内全地域の合計45の関連会社に調査票を配布して行った。回収率は64.4%,有効回答は23枚であった。解析の結果,竹製輸入品の増加,職人の高齢化などの影響が見られ,業者数が1974年から2018年にかけて大幅に減少し,多くの伝統的竹工芸品を生産してきた業者が消失していた。一方,現在も操業している業者では,竹材製品の生産は便利さや実用性を持つ現代生活にマッチした多様な製品の量産化に主たる内容が変化していた。すなわち,これらの業者は製品の改良,高付加価値化および販路の開拓を通じて経営を維持していた。今後,伝統的竹工芸品生産業者がさらに減少することが懸念される。竹産業の維持には,良質な竹材生産ができる竹林の確保,および地元特有の竹材加工技術や知恵を継承していくこと,中国などの竹製品輸出国における竹製品の生産・流通の実情を把握することが重要であると考えられた。
著者
香坂 玲 内山 愉太
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.246-252, 2019-10-01 (Released:2019-12-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 7

2024年の森林環境税導入に先駆け,2019年度から森林環境譲与税の自治体に対する交付が開始される。国と市町村が主軸となる森林環境譲与税だが,実際には都道府県にも影響を及ぼす。第一に,森林環境譲与税は都道府県にも配分され,市町村の支援を促すよう制度設計されている。第二に,森林等の保全を目的とした37の府県の既存の超過課税との関係性が問われる。そこで本研究では,37府県を対象とし,質問票および聞き取り調査の結果を基に,森林環境譲与税導入の影響を分析する。特に導入前後での市町村への支援政策と組織形態の変化に着眼した。結果,市町村支援に関しては,「森林所有者の意向調査の支援」等に重点が置かれ,組織的な変化については,環境譲与税(と関連する経営管理制度等)の名目で担当者を増加させた府県が5割程度存在した。既存組織の名称の変更や,環境譲与税担当部署の新設も把握された。また,1県では条例レベルで県・環境税の使途の中身を改定していた。
著者
小林 郁奈 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.425, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

堅い殻に包まれたオニグルミ種子は、一般にアカネズミには採食されるが、より小型のヒメネズミには採食されない。しかし、アカネズミの分布しない新潟県粟島ではオニグルミ種子がヒメネズミに採食されると言われている(林ら、私信)。私たちの予備的観察では、佐渡島や粟島で小型のオニグルミ核果が多く観察されたため、オニグルミとヒメネズミの共進化が起こっているのではないかと予測した。そこで本研究では、島嶼3集団(粟島、佐渡島、金華山)および本州の7集団でオニグルミ核果を採取してサイズを計測し、さらに各集団から採取したオニグルミ計80個体を対象として、MIG-seq法を用いた集団遺伝学的解析を行うことで、島嶼と本州間での遺伝的分化と核果サイズ変異との関係を調査した。その結果、島嶼ではオニグルミの核果サイズが多様で、本州集団と比較すると小型だった。一方で島嶼と本州のオニグルミは遺伝的に分化しておらず、核果サイズ変異と遺伝的変異との関係は確認できなかった。また、野外にセンサーカメラを設置しヒメネズミがオニグルミ核果を持ち去るかどうかを撮影したところ、粟島では持ち去りが確認されたが、佐渡島では確認できなかった。
著者
稲垣 善之 酒井 寿夫 野口 亨太郎 森下 智陽 藤井 一至
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.143, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

森林生態系の物質循環において、カルシウム、マグネシウムなどの交換性塩基類は、樹木にとっての養分として重要なだけでなく、プロトンの生成、消費にも関わる。交換性塩基の主な供給源は、降水と土壌母材の風化である。これらの寄与は、降水と渓流水の物質収支から評価することができる。本研究は、高知県四万十川流域の鷹取山試験地のモミ天然林において交換性塩基の動態を明らかにした。2011―2015年において主要な物質の降水による負荷量と渓流水による流出量を算出した。樹木の養分吸収量速度は、隣接する流域における過去の調査(Ando et al 1977)から推定した。カリウム、マグネシウム、カリウムの母材からの風化速度はそれぞれ27 kg/ha/yr、36 kg/ha/yr、106 kg/ha/yrであった。これらの物質の降水による供給速度は風化による供給速度の10%以下であった。また、日本の17流域における年流出量と交換性塩基流出量の関係をRMAで解析した結果、マグネシウム、カルシウムは、年流出量が大きいほど濃度が増加する傾向を示した。年流出量の多い地域では、樹木の吸収量に対して相対的に母材からの風化速度が大きいため、渓流水においてこれらの濃度が増加すると考えられた。
著者
松岡 佑典 林 宇一 有賀 一広 白澤 紘明 當山 啓介 守口 海
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.416-423, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
34
被引用文献数
2

本研究では,まず都道府県が管理する民有林の森林GISと林野庁が管理する国有林の森林GISを取得し,地域森林計画を基に施業条件を設定,傾斜や起伏量といった地形量から作業システムを設定した。次に,GISを用いて収穫コストの算出,スギ・ヒノキ・マツ・カラマツの木材売上,山元立木価格,造林費を用いて収支を算出した。最後に,FITで未利用木質バイオマス発電設備に認定され,2020年6月時点で稼働している日本全国の発電所を対象に,経済的に利益が得られる小班からの供給ポテンシャルを利用可能量として推計した。その結果,供給ポテンシャルは用材65,490,336 m3/年,未利用材13,098,067 m3/年と推計された。利用可能量は用材31,080,672 m3/年,未利用材6,216,134 m3/年と推計され,供給ポテンシャルの47.5%との結果を得た。また,未利用材利用可能量と需要量を比較した結果,需要量に対する利用可能量の割合は71.6%であった。ただし,再造林を担保するために造林補助率を100%として推計したところ,全国での需要量を満たす未利用材供給が可能になると推計された。
著者
広嶋 卓也 中島 徹 鹿又 秀聡 堀田 紀文
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.409-415, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
19

再生可能エネルギー固定価格買取(FIT)制度において,間伐材や林地残材からなる未利用木材による木質バイオマス発電に対して,調達価格が高値に設定されたことを受け,未利用木材の利用量は年々増加している。そして未利用木材の中で,間伐由来の原材料割合は約4割を占めることから,間伐材生産量の増減が未利用木材に与える影響は無視できない。以上を踏まえ,本研究では,既往モデルを利用して,FIT制度の電源調達期間である20年間にわたる,都道府県別・間伐材生産量のシミュレーションを行った。シミュレーションでは,47都道府県を,間伐量に応じて3グループに分類しグループごとに,モデルの主要パラメータである,間伐面積,間伐材搬出率について,2012年(実績値)から2032年にかけての変化の傾向を3通り作成した。一つは,2012年以降の時系列変化の傾向を延長した「すう勢シナリオ」で他は,パラメータの変化の増減傾向に仮定をおいた「間伐減退シナリオ」および「間伐増進シナリオ」である。これら三つのシナリオに従い,都道府県別の間伐材生産量がどのように変化するか調べた。各都道府県に共通して見られた傾向として,間伐材生産量は,間伐増進シナリオ>すう勢>間伐減退の順に大きく,2012年から2032年にかけて間伐増進シナリオは増加,すう勢は減少,間伐減退は大きく減少する結果となった。都道府県別に見ると,北海道,静岡,大分,鹿児島の4道県は,間伐材生産量が大きく,かつ今後さらに生産量を増やす余地があるという点で,今後の未利用木材の需要増に応える上で,重要度が高いと考えられた。
著者
國崎 貴嗣 白旗 学 松木 佐和子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.401-404, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
26

過密なスギ若齢,壮齢林計5林分を対象に,樹冠長と直近5年間の平均胸高直径成長量との対応関係を調べた。林木の胸高直径成長がほぼ停止する胸高直径の閾値は林分で異なるのに対し,樹冠長の閾値はいずれの林分でも4.0 mとなり,樹冠長4.0 m未満の平均胸高直径成長量は0~0.04 cm/年と,全く,あるいはほとんど成長していなかった。樹冠長が4.0 m以上の林木を対象に,樹冠長から4.0 mを減じた差引き樹冠長と直近5年間の平均胸高直径成長量との関係を共分散分析で解析し,胸高直径を共変量とした共分散分析モデルと比較した。その結果,後者の自由度調整済み決定係数は前者のそれより明らかに高かった。スギ過密林での間伐木選定にあたっては,樹冠長4.0 m未満の林木を胸高直径成長停止木,樹冠長4.0 m以上の林木については胸高直径が大きいほど活力のある林木として判断すれば良いと考えられる。
著者
千葉 翔
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.391-394, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
30

オオシラビソ種子の発芽に対する乾燥の影響を調べ,4℃および-20℃で貯蔵した種子の発芽率の推移を観察した。種子の含水率を4段階(無処理,9.9%;弱乾燥,7.1%;中乾燥,6.3%;強乾燥,5.1%)に調整して発芽実験を行ったところ,乾燥強度に応じて発芽率が低下する傾向はなく,どの処理でも7割以上の種子が発芽した。4℃で冷蔵貯蔵した種子の発芽率は,処理の違いに関わらず3年後に10%未満となった。一方,-20℃で冷凍した場合は貯蔵から3年が経過しても48.3~77.4%の種子が発芽した。以上の結果から,同種の種子は含水率を調節しての冷凍貯蔵が可能であり,2~3年とされる結実周期のカバーには氷点下での保存が有効と考えられる。
著者
井貝 紀幸
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.395-400, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
25
被引用文献数
2

森林内におけるRTK-GNSS測量の水平誤差およびその誤差の低減に受信機の設定が及ぼす影響を明らかにすることを目的として,愛知県にある豊田市市有林2カ所にて調査を行った。その結果,RTK-GNSS測量の水平誤差は中央値が0.878 m,最大値が4.011 mであり, DGNSS測量よりも小さかった。この誤差の低減に,SNRと測位時間はほとんど貢献しなかった。また,仰角25°未満の衛星を測位演算から除外した場合,誤差はわずかに小さくなったが,最大で4 mを超えることもあった。森林内の所有界の境界測量において,許容誤差は0.9 m以内と考えられることから,森林内におけるRTK-GNSS測量では,この精度を満たさない場合があると考えられた。
著者
渡辺 陽平 白濱 千紘 石田 清
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.379-390, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
参考文献数
49

北日本の多雪山地における環境条件の背腹性(冬季季節風の風上・風下斜面間の環境や植生の違い)に対応した,ブナとミズナラのすみ分けの実態とその生成要因を解明することを目的に,青森県八甲田連峰内の八幡岳山稜に,稜線をまたぐように東西方向に2調査区(高木林区,低木林区)を設置し,毎木調査と生育環境の評価を行った。その結果,両調査区ともに環境条件や両種の個体数の割合に背腹性が認められ,積雪と土壌水分の多い場所にはブナが,それらが少ない場所にはミズナラが多く分布していた。また,両種の個体密度と環境要因との間の因果関係を推定するためにパス解析を行った。その結果,最大積雪深と土壌含水率,斜度が両種の個体密度に大きな影響を与え,また斜度は地形が急峻な低木林区の方が大きな影響を与えると推定された。また高木林区において,ミズナラ個体密度はブナ以外の樹種から正の影響を受けていると推定された。以上より,多雪山地における両種の局所的なすみ分けには主に積雪や土壌水分の背腹性が関与し,地形が急峻な場所では斜度も大きく影響していることが示唆される。また,他樹種がミズナラの分布に正の作用を与えている可能性が示唆される。