著者
樋口 亮 斎藤 秀之
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第131回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.463, 2020-05-25 (Released:2020-07-27)

葉緑体ゲノムは葉緑体内に局在するオルガネラゲノムの一つで、遺伝子の発現調節を介して光合成の恒常性維持(ホメオスタシス)を司る。遺伝子の発現調節メカニズムの一つにDNAメチル化によるエピジェネティック制御がある。DNAメチル化は塩基配列の変異をともなわずDNA修飾のみで遺伝子発現調節の情報を記録する機能である。モデル生物では老化とDNAメチル化の関係が報告されている。葉緑体ゲノムにおいてもDNAメチル化の現象は植物で知られており、老化と光合成機能低下の関係にDNAメチル化の関与が予想される。しかし野外環境下に生育する樹木におけるDNAメチル化の実態や樹勢の衰退との関係について明らかでない。本報告は、 葉緑体ゲノムのDNAメチル化の実態解明のために、バイサルファイト法と次世代シーケンス解析を組み合わせたバイサルファイトシーケンス解析を行い、一塩基の解像度でシトシン塩基のDNAメチル化の遺伝子地図を作成して、DNAメチル化の影響を受けやすい遺伝子を明らかにした。続いて、ブナ健全木と老化による衰退木の葉の葉緑体ゲノムを対象にDNAメチル化と遺伝子発現の関係を比較して、衰退にともなう遺伝子発現のエピジェネティクス制御を検討した。
著者
大村 和也 澤田 晴雄 千嶋 武 五十嵐 勇治 斉藤 俊浩 井上 敬浩
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第115回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.P3032, 2004 (Released:2004-03-17)

渓畔林再生実験におけるシカ食害対策○大村和也・澤田晴雄・五十嵐勇治・齋藤俊浩・千嶋武(東大秩父演)、井上敬浩(東工コーセン(株)) _I_.はじめに 東京大学秩父演習林では人工構造物等の布設により失われた渓畔林を再生する実験を行っており2001年に自生種の植栽を試みた。しかし、ニホンジカ(以下、シカという。)の著しい食害を受け植栽木の大部分が枯損する結果となった。そこで、2002年にシカ対策を施したうえで再度植栽を行い、その後の成長経過を調査してきた。本報では2002年から2003年にかけての調査結果にについて報告する。なお、本研究は東工コーセン株式会社(以下、東工コーセンという。)との共同研究として行われた。 _II_.資料および方法埼玉県大滝村に位置する東京大学秩父演習林内の豆焼沢砂防堰堤右岸の土砂堆積地に4区画の植栽地を設けた。この場所に渓畔林の高木層を構成するシオジ、カツラ、ケヤキの植栽と、亜高木層および低木層を構成するバッコヤナギの挿木、フサザクラ、フジウツギの播種を行った。今回行ったシカ対策は植栽木を1本毎に囲うタイプのもので、東工コーセンのネット式のラクトロン幼齢木ネット(以下、ラクトロンという。)、樹皮ガード式のデュポン・ザバーン樹皮ガード(以下、ザバーンという。)とA社チューブ式の3種類を用いた。各区画内とも3種類のシカ対策を行った樹木(シカ対策木)と行わない樹木(対象木)をランダムに配置した。_III_.結果と考察被害レベルの分布によるシカ対策の違いを図-1、2に示す。被害レベルとは、シカが植栽木に与えた食害の状態を示すものであり、以下の4段階に分けた。レベル0は植栽木の芯、枝葉ともに食害無し、レベル1は一部の枝葉に食害を受けている、レベル2は芯食害や折れは無いが全体の枝葉に食害を受けている、レベル3は芯食害ならびに全体の枝葉が著しく食害されている、と定義した。2002年4月の植栽時、シカ対策は標準的な高さの130cm_から_150cm程度のものを用いたが、直後にネット等から露出している部位を食害され、すべてのシカ対策木にレベル1_から_3の被害が発生した。食害された部位の高さを測定したところ平均で143cmであった。そこで2002年6月に樹皮ガード式、A社チューブ式、は180cm程度になるように付け足し、ネット式は200cmのものに交換した。その結果、2002年6月以降シカの食害が減少した。2002年と2003年のシカ対策別の年間平均成長量を表-1に示す。2002年はラクトロン-2.2cm、ザバーン-15.7cm 、A社チューブ式-2.7cmと減少しており当初の食害の影響を受けたものと考えられる。一方、対象木は-52.8cmと大きく食害を受けている。2003年はラクトロン22.7cm、ザバーン-2.4cm 、A社チューブ式3.6cmで成長の回復がみられ、対象木はほとんどが枯死して残った3個体の平均成長量は4.3cmであった。ラクトロンとA社チューブ式は植栽木の梢端まで囲う場合が多いので食害が抑えられる割合が高くなっている。しかし、ラクトロンでは伸長枝がネットの中で丸まったり、A社チューブ式ではチューブ内の梢端枯れが発生した。ザバーンは本来樹皮をガードするものなので、今回のような広葉樹幼齢木のすべて枝葉を囲うのは困難かつ成長に与える影響が懸念されるため、ラクトンやA社チューブ式と比較すると食害が多く発生すると考えられる。_IV_.まとめ無防備な対象木は食害の割合が高くほとんどが枯死した。それに対してラクトロン、ザバーン、A社チューブ式はともに枯死木はなく概ね順調に成長をしている。これらのことからシカ対策は有効であったと言える。謝辞本実験の植栽は森林ボランティア団体「瀬音の森」(せおとのもり)の協力を得た。ここに記して、謝意を表する。
著者
杉田 典正
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.8-10, 2019-10-01 (Released:2019-10-25)
参考文献数
9
著者
東 巽
出版者
日本森林学会
雑誌
林學會雑誌 (ISSN:21858187)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.284-293, 1934-04-10 (Released:2009-02-13)
参考文献数
14
著者
伊藤 広記 大澤 直哉
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第124回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.69, 2013 (Released:2013-08-20)

オオゴキブリ(Panesthia angustipennis spadica)は大型の食材性ゴキブリで、本州北部から九州まで広く分布し、針葉樹及び広葉樹の朽木に穿孔することが知られている(朝比奈 1991)。しかし、野外における本種の生態に関しては不明な点が多く、生息環境を詳しく調べた例はほとんどない。特に生息場所兼食物である朽木の性質は明らかにされていない。演者らは、オオゴキブリが利用する朽木の性質を明らかにするため、京都市左京区の吉田山を調査地とし、2011年5月から2012年12月、林床の朽木(N=65)について、オオゴキブリ生息の有無、直径と長さ、樹種(針葉樹/広葉樹)、木材腐朽菌の種類(白色/褐色)、腐朽度を記録した。オオゴキブリが生息していた割合は、褐色腐朽が見られた朽木が白色腐朽が見られたものに比べ有意に高く、直径が大きい朽木が小さいものに比べ有意に高いことが示された。しかし、朽木の樹種、木材腐朽菌、腐朽度について、いずれの区分に属する朽木にもオオゴキブリの生息が確認され、本種が利用する朽木の種類や腐朽段階はかなり幅広いものと推測された。
著者
西口 満 二村 典宏 大宮 泰徳 遠藤 真咲 三上 雅史 土岐 精一 小長谷 賢一 七里 吉彦 谷口 亨 丸山 E. 毅
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.131, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

スギ(Cryptomeria japonica)花粉症は、日本国民の約3割に広がっているとの報告もあり、深刻な社会問題となっている。花粉症対策の一つとして、花粉の形成機構を解明し阻害することができれば、花粉の飛散量を減らすことが可能となる。本研究では、ゲノム編集技術の一つであるCRISPR/Cas9法を用いて、スギの花粉形成に関わる遺伝子に変異を導入し、花粉形成への影響を調べた。スギの花粉形成関連遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9ベクターを構築し、アグロバクテリウム法により遺伝子組換えスギを作出した。遺伝子組換えスギのゲノムDNA中の標的遺伝子には欠失変異が見つかり、スギでもゲノム編集による遺伝子変異が生じることが分かった。夏季にジベレリンを散布し、遺伝子組換えスギの花芽形成を誘導した。標的遺伝子の両対立遺伝子に欠失変異が生じた遺伝子組換えスギでは雄花中に花粉が検出されなかったが、非組換えスギでは花粉が作られていた。従って、スギの花粉形成関連遺伝子に変異が起こることにより、無花粉になることが示された。本研究は、内閣府SIP次世代農林水産業創造技術により実施されました。
著者
柴田 昌三
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.15-19, 2010-02-01 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
7
著者
片山 瑠衣 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.277, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

日本に自生するヤブツバキ(Camellia japonica)とユキツバキ(C. rusticana)は、ツバキ属ツバキ節(sect. Camellia)に属する。ヤブツバキは赤く大きな花弁を持つ鳥媒介植物であり、ユキツバキの花弁色や大きさは同様に鳥媒シンドロームに属するものである。しかし、先行研究によると、ユキツバキは昆虫が主要な花粉媒介者であることが報告されている。また、これらの在来種と比較して、アジア大陸に自生するツバキ属は、色や大きさにおいて、より多様な花形態を示す。これらの背景から、ツバキ節における系統解析は、花の進化過程の解明に大きく貢献できると考えられる。そこで本研究では、選択圧が大きく影響すると考えられる花形態に着目し、花形態の比較およびMIG-seq法を用いた分子系統解析を行うことで、日本産ツバキ節の種分化の要因と系統的な位置づけを探ることを目的とした。花形態の比較では、東アジアから東南アジアにかけて自生するCamellia属のうち、27種を対象に各3花ずつ採取して花形態の測定および解析を行った。その結果、花形態は節ごとに異なった傾向を示した。この結果をMIG-seqを用いた分子系統解析と合わせて考察する予定である。
著者
大場 真 戸川 卓哉 中村 省吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第131回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.315, 2020-05-25 (Released:2020-07-27)

中山間地におけるエネルギー目的のバイオマス利活用促進には、施業と燃料生産・配送、エネルギー生産と消費という流れの調整と共に、社会システムの課題解決として捉え直す必要があることを実例を踏まえ指摘する。かつての主要な産業が森林に関わるような地域では、人口減少や高齢化に起因する人的資源や地域経済の衰退という一律の課題を抱えている。歴史的文化的背景を踏まえつつ、豊かな森林とその恵みを受ける地域を創り出すためには、新しい潮流を取り入れる必要がある。国連の持続的開発目標(SDGs)は、様々な主体(官民)と様々な分野(経済、社会、環境など)に渡るマルチセクターでの目標の解決を促している。国内での類似した取り組みとしては林野庁の「地域内エコシステム」や環境省の「地域循環共生圏」等が挙げられる。本報告ではケーススタディ地域での取り組みを説明した後に、地域が必要とする社会システム(インフラ)として、主体的に再生可能エネルギーシステムを導入し、マルチセクターで取り組む体制づくりが必要であることを指摘する。また、森林やエネルギーだけでなく様々なセクターにおける事業を緩く結びつける方策について検討する。
著者
相原 隆貴 小林 慧人 髙野(竹中) 宏平 平田 晶子 尾関 雅章 松井 哲哉
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.286-294, 2022-10-01 (Released:2022-11-29)
参考文献数
85

近年,周辺の土地への竹林の拡大が日本各地で問題となっている。竹林の適切な管理計画立案のためには,その成立を規定する地形条件の解明が必要である。先行研究において,比較的限定された地域における地形条件の解明がなされてきた一方で,広域で竹林の成立可能な気候条件(潜在生育域)下を対象とし,地形条件を解明した事例はない。本研究は長野県を対象とし,竹林の位置情報を航空写真および現地踏査によって把握し,潜在生育域と竹林の成立する土地の地形条件を県全域で比較した。その結果,竹林の潜在生育域は斜面傾斜度0°付近と30°付近に二つのピークを持ち,全方位に一様に分布するのに対し,竹林(10,523カ所,総面積1,449.0 ha)は斜面傾斜度5~20°の緩傾斜地に55.7%が,南東,南,南西向き斜面に53.5%が成立していた。この竹林の地形条件の傾向は,県内5地域(北信地域,中信地域,東信地域,南信地域,木曽地域)いずれにおいても共通であった。これらの結果から長野県内の竹林は,南向きの緩斜面の条件に多く生育しているという傾向が明らかとなり,土地利用や竹林経営の観点から現在の地形条件に植栽され残存してきたと推察された。
著者
森下 義郎 大山 浪雄
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.382-386, 1952-12-25 (Released:2011-09-02)
参考文献数
7

This experiment was conducted to find out how to eliminate or make innoxious the substance inhibiting rooting, which is contained in the cuttings, and to raise the rooting percentage of the cuttings. We used the saw dust of chestnut (Castanea crenata SIEB. et ZUCC.) as the material for our experiment and studied how to treat it.The findings may be summarized as follows:1. None of the cuttings of Amorpha Fruticosa took root when they were put in the saw dust containing the substance inhibiting rooting. It came to our notice that the vessels in the cross section at the end of the cutting, 1m.m across, were clogged with a brown tannin-like substance.2. It was found out that the saw dust contained a substance which is soluble in water, is apt to oxidise and inhibits rooting. This is considered to be a substance similar to tannic acid.3. For eliminating the substance inhibiting rooting, the treatments in boiling water, lukewarm water, lime water, alcohol, etc. are all effective. Above all, the treatments in boiling. water and lukewarm water are considered to be most effective. The effect of the treatment in lime water is worthy of our notice.4. It is regarded as effective in eliminating the substance inhibiting rooting to dip the end of cutting in water, warm water, lime water, alcohol, etc. and cleanse it. This treatment is considered to be effective in eliminating the substance because the substance is removed when the cross section at the end of cutting is, dipped in the processing solution.