著者
奥埜 博之 西島 勇 塚本 哲朗 河島 則天
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.241-246, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
11

【目的】すくみ足(以下,FOG)はパーキンソン病の主要な運動障害のひとつである。FOG の適切な評価はきわめて重要であるが, その程度を客観的に示し得る有効な評価方法が存在しない。本研究ではFOG を簡便かつ定量的に評価できる方法を考案することを目的とした。【方法】16 名のパーキンソン病患者に対し,間口を自身の快適歩行速度で通り抜ける歩行課題を実施した。間口幅は40 cm から10 cm 刻みで100 cm までの7段階で設定し,間口通過の所要時間とステップ数を計測した。【結果】間口幅の減少に伴ってステップ数が増加,所要時間が遅延する傾向が認められ,その関係性は一次直線回帰によって近似可能であった。また,UPDRS スコアのPart Ⅲとの関連は,所要時間との間に有意な相関(r = 0.56, p < 0.05)がみられた。【結論】今回提案した方法は,歩行時間とステップ数という簡便な計測変数であり,歩行評価に即時活用できるものと考えられる。
著者
生野 公貴 北別府 慎介 梛野 浩司 森本 茂 松尾 篤 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.485-491, 2010-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,脳卒中患者に対する1時間の末梢神経電気刺激(PSS)と課題指向型練習の組み合わせが上肢機能に与える影響を検討することである。【方法】脳卒中患者3名をベースライン日数を変化させた3種のABデザインプロトコルに無作為に割り付け,ベースライン期として偽刺激(Sham)治療,操作導入期としてPSS治療を実施した。1時間のSham治療およびPSS治療後に課題指向型練習としてBox and Block Test(BBT)を20回行い,練習時の平均BBTスコアの変化を調査した。さらに,PSS治療後24時間後にBBTを再評価した。【結果】全症例Sham治療後と比較して,PSS治療後に平均BBTスコアが改善傾向を示した {症例1:+4.9(p < ;0.05),症例2:+3.1,症例3:+5.7(p < 0.05)}。全症例の24時間後のBBTスコアが維持されていた。また,PSSによる有害事象はなく,PSSの受け入れは良好であった。【結論】1時間のPSSは課題指向型練習の効果を促進させ,24時間後もその効果が維持される可能性がある。
著者
粕渕 賢志 森友 寿夫 有光 小百合 行岡 正雄 菅本 一臣
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11578, (Released:2019-12-17)
参考文献数
26

【目的】手関節をリバース・ダーツスロー・モーション(以下,RDTM)方向に動かしたときの3 次元動態をCT を用いて解析すること。【方法】対象は健常成人12 名とした。3 次元動態の解析はCT を用いて,橈骨手根関節と手根中央関節の回転角度と運動方向を算出した。統計は外側列,中央列,内側列それぞれの橈骨手根関節と手根中央関節で対応のあるt 検定を用いて比較した。【結果】橈骨手根関節の回転角度は,手根中央関節より有意に大きかった。橈骨手根関節は,手根中央関節より掌背屈方向に大きく運動していた。外側列と中央列の手根中央関節は,橈骨手根関節より橈尺屈方向に大きく運動していた。【結論】手関節RDTM 時は,橈骨手根関節の回転角度は手根中央関節より大きく,特に掌背屈方向の運動のほぼすべてに寄与していた。一方,橈尺屈方向の運動は手根中央関節が大きく寄与していた。
著者
佐藤 弘樹 吉川 憲一 宮田 一弘 佐野 歩 水上 昌文
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11914, (Released:2021-02-16)
参考文献数
33

【目的】脊髄損傷者の体幹機能評価尺度(以下,TASS)を開発し,信頼性を検証すること。【方法】脊髄障害認定理学療法士9 名によって開発したTASS を用いて,理学療法士2 名が脊髄障害を有する10 例の評価を実施した。級内相関係数ICC(2,1),Cohen のκ 係数,Cronbach のα 係数を用いて,検者間信頼性,項目一致度,内的整合性を確認した。Bland-Altman 分析を用いて,系統誤差の有無を確認した。【結果】TASS は端座位課題7 項目で構成される尺度となった。ICC(2,1)は0.98,κ 係数は0.57 ~1.00,α 係数は0.94 であった。評価者2 名の差の平均値は95% 信頼区間が–2.58 ~1.18,散布図の回帰直線の傾きは0.19(p=0.61)であった。【結論】端座位課題7 項目で構成される体幹機能評価尺度が完成し,高い検者間信頼性,内的整合性を示し,系統誤差のない尺度であることが確認された。
著者
伊藤 将円 井川 達也 原 毅 丸山 仁司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.450-458, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
31

【目的】高齢者における歩行器・歩行車の種類の違いによる膝関節内反モーメント(以下,KAM)の変化を明らかにし,どの補助具が関節負担の軽減に有用か明らかにする。【方法】対象は65 歳以上の高齢者19 名とした。各対象者に独歩,車輪付き歩行器,椅子付き歩行車,前腕支持台付き歩行車の4 条件を計測した。KAM 最大値,膝関節内反角度,床反力を条件間で比較した。【結果】KAM は,補助具すべてで独歩と比較し有意に減少,椅子付き歩行車と前腕支持台付き歩行車が車輪付き歩行器と比べ有意に減少した。膝関節内反角度は椅子付き歩行車,前腕支持台付き歩行車が車輪付き歩行器と比較し有意に減少した。床反力鉛直方向成分は補助具すべてで独歩と比べ有意に減少,前腕支持台付き歩行車は車輪付き歩行器,椅子付き歩行車と比較し有意に減少した。【結論】椅子付き歩行車と前腕支持台付き歩行車は独歩や車輪付き歩行車と比較してKAM の減少を認めた。
著者
池添 冬芽 市橋 則明 森永 敏博
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.8-13, 2003-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
19
被引用文献数
6

本研究の目的は,スクワット肢位における前後方向の足圧中心位置の違いが下肢筋の筋活動量に及ぼす影響について明らかにすることである。対象は健常成人12名であった。筋電図の測定筋は大腿直筋,内側広筋,外側広筋,半膜様筋,大腿四頭筋,腓腹筋(内側頭),前脛骨筋の7筋とした。3種類の膝屈曲角度(漆屈曲30,60,90度位)での両脚スクワット肢位について,それぞれ足圧中心を前方位,中間位,後方位で3秒間保持させたときの筋活動を測定した。大腿直筋,内側広筋,外側広筋,および前脛骨筋の筋活動ではすべての角度で足圧中心位置の違いによる主効果が認められ,いずれも後方位で最も高い値を示した。半膜様筋と大腿四頭筋では膝屈曲30度位においてのみ,腓腹筋ではすべての角度で足圧中心位置の違いによる主効果が認められ,いずれも前方位で高くなる傾向を示したが,これらの筋の筋活動量は20%と低い値を示した。本研究の結果,大腿四頭筋や前脛骨筋においては,足圧中心位置を後方位にして大きい屈曲角度でスクワット肢位を保持することによって高い筋活動量が得られることが示唆された。
著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11783, (Released:2020-09-08)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。
著者
片岡 英樹 山下 潤一郎 吉武 孝敏 坂本 淳哉 沖田 実
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11677, (Released:2020-01-28)
参考文献数
45

【目的】慢性疼痛に対する介入戦略では,痛みを生物・心理・社会モデルで捉え,不活動を是正しADLやQOL の向上に努めることが重要とされている。今回,慢性疼痛の介入戦略により脳卒中片麻痺後の肩関節痛(以下,HSP)が改善した症例を経験したので報告する。【方法】症例は脳梗塞左片麻痺の60 代男性で,約半年間続く強いHSP を訴えており,認知・情動的側面の問題も強く,中枢感作の状態であった。その他の評価から,HSP には麻痺側上肢の不使用,身体活動量のペーシング不良,趣味活動の遂行度・満足度の低下が関与していることが疑われた。【結果】介入として,患部の不活動の是正と趣味活動の成績向上を目指した運動療法とともに,麻痺側上肢の使用の促進と身体活動量のペーシングに関する教育指導を実施した。介入6 ヵ月後にHSP は消失し,その後6 ヵ月間も再発しなかった。【結論】本症例が呈していたHSP に対しては慢性疼痛の介入戦略が有効であった。
著者
林 典雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.645-649, 2010-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
稲井 卓真 久保 雅義 江玉 睦明 高林 知也 小熊 雄二郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.404-411, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,3 次元上の股関節の動きが大腰筋の伸張率に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】先行研究によって報告されたパラメータから,筋骨格モデルを作成した。数理モデルを用いて,股関節の角度を変化させたときの大腰筋の伸張率を検討した。解剖学的肢位での大腰筋の筋線維長を100% とした。【結果】大腰筋の伸張率は,股関節の伸展20 度のみ(104.8%)より,股関節の伸展20 度に外転20 度・内旋30 度を加えることでより高くなった(106.5%)。【結論】股関節の伸展のみと比較して,股関節の伸展に外転と内旋を加えたとき,大腰筋はより伸張される可能性がある。
著者
儀間 裕貴 儀間 実保子 浅野 大喜
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11697, (Released:2020-04-08)
参考文献数
34

【目的】N 式幼児運動イメージテスト(以下,N 式テスト)と乳幼児発達スケールの各発達領域の関連性を検討する。【方法】対象は3~6 歳の幼児42 名および養育者とした。N 式テストからカード選択レベル(以下,絵カード課題)と姿勢変換レベル(以下,姿勢変換課題)の得点を算出した。養育者には乳幼児発達スケールの回答を依頼し,児の発達全般(運動,言語,社会性など)を得点化した。N 式テストの得点と月齢の相関,各発達領域の関連性を検討した。【結果】N 式テストを完遂できた児は32 名であった。N 式テスト得点と月齢は有意に相関した。絵カード課題得点には,運動,言語(理解・表出),姿勢変換課題得点には,月齢,運動,理解言語,社会性(対子ども・対成人)が有意に関連した。【結論】N 式テストの課題は,それぞれ異なる発達の側面と関連した。姿勢変換課題には対人的な社会性発達が関連し,対人的なやりとりの経験がN 式テストにおける運動イメージに関与する可能性を示唆した。
著者
藤本 修平 小林 資英 小向 佳奈子 杉田 翔
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.196-200, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
28

【目的】リハビリがかかわる医療機関Web サイトにおける医療広告ガイドラインの遵守実態を検証することとした。【方法】リハビリがかかわる医療機関のWeb サイトを抽出するため,国土数値情報(国土交通省)から東京都23 区内の医療機関を抽出し,医療機関名と住所を組み合わせWeb サイトの検索を行った(database: Google)。Web サイトの質を評価するために,医療広告ガイドラインを参考に6 項目評価した。【結果】診療科目で本来使用すべき「リハビリテーション科」という標榜以外の記載をしているWeb サイトは993 件中461 件(46.4%)であった。医療機関の名称の語尾に“センター”と標榜するもののうち,名称として認められていないものは47 件中38 件(80.9%)であった。【結論】本来医療機関の名称として認められていない標榜を採用している医療機関が多く,情報提供者は,医療機関に関する情報をより正確に説明する必要がある。