著者
福田 航 横山 茂樹 山田 英司 片岡 悠介 濱野 由夏 池野 祐太郎 五味 徳之
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-31, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
19

【目的】本研究の目的は,ACL 再建術前後における片脚スクワットの運動学・運動力学データの変化と健患差を把握することである。【方法】対象はACL 再建術後患者11 名(年齢24.9 ± 6.9 歳,男性8名,女性3名)であった。方法は,床反力計と3 次元動作解析装置を用いて術前と術後9 週時の片脚スクワット下降相の膝屈伸モーメント変化量と体幹および下肢の関節角度変化量を測定し,健側と患側,術前と術後で比較した。【結果】ACL 再建術前後ともに患側は膝屈曲変化量が小さく,体幹前屈変化量は大きく,膝屈伸モーメント変化量は伸展方向に小さかった。患側の骨盤前傾変化量は術後に増加した。【結論】術後に膝屈伸モーメント変化量が小さかったことは膝伸展機能の回復が不十分であると示唆される。術後の膝屈伸モーメント変化量に関連する因子は体幹前屈変化量,膝屈曲変化量,骨盤前傾変化量が考えられ,スクワット動作を観察する視点になると示唆される。
著者
下井 俊典
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11347, (Released:2018-03-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

【目的】本研究は我々が絶対信頼性を検討した継ぎ足歩行テストについて,新しい妥当性観にもとづいて,構成概念妥当性を検討することを目的とした。【方法】対象は介護予防事業に参加した493 名の地域在住健常成人である。5 m の継ぎ足歩行テストの所用時間を継ぎ足歩行時間(以下,TGT)とし,所要時間とミス・ステップ数から算出する継ぎ足歩行指数(以下,TGI)の2 種類のテスト値について妥当性を検討した。年齢・性によるテスト結果を比較するとともに,測定後2 年間の転倒経験を追跡調査できた66 名についてロジスティック回帰分析を用いて転倒予測に対する各因子の影響度を検討した。【結果】TGT,TGI のいずれも年齢・性による差が認められた。転倒の予測因子としてTGI が選択され,オッズ比1.06 およびカットオフ値として24.0 が得られた。【結論】TGI はより運動能力の高い高齢者のバランス能力,特にその比較的長期的な将来の転倒を予測できる評価方法であることが明らかとなった。
著者
河上 敬介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.85-89, 1999-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
森山 英樹 増子 潤 金村 尚彦 木藤 伸宏 小澤 淳也 今北 英高 高栁 清美 伊藤 俊一 磯崎 弘司 出家 正隆
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-9, 2011-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
63
被引用文献数
5

【目的】本研究の目的は,理学療法分野での運動器疾患ならびに症状を対象としたストレッチング単独の有用性や効果を検証することである。【方法】関連する論文を文献データベースにて検索した。収集した論文の質的評価を行い,メタアナリシスあるいは効果量か95%信頼区間により検討した。【結果】研究選択の適格基準に合致した臨床試験25編が抽出された。足関節背屈制限,肩関節周囲炎,腰痛,変形性膝関節症,ハムストリングス損傷,足底筋膜炎,頸部痛,線維筋痛症に対するストレッチングの有効性が示され,膝関節屈曲拘縮と脳卒中後の上肢障害の改善効果は見出せなかった。【結論】現時点での運動器障害に対するストレッチングの適応のエビデンスを提供した。一方,本結果では理学療法分野でストレッチングの対象となる機能障害が十分に網羅されていない。ストレッチングは普遍的治療であるからこそ,その有用性や効果を今後実証する必要がある。
著者
樋口 隆志 井上 茂樹 川上 照彦 河村 顕治 横山 茂樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.383-389, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
29

【目的】2 種類の異なる小胸筋ストレッチ方法の効果の違いを明らかにすることである。【方法】対象は高校野球部員34 名とした。測定項目は小胸筋長,安静時の肩甲骨位置,上肢挙上時の肩甲骨回旋角度とした。ストレッチ方法はdoorway stretch(以下,DW-stretch 法)とretraction30° stretch(以下,R30-stretch 法)とした。【結果】二元配置分散分析の結果,小胸筋長の指標であるRib4-CP および肩甲骨位置の指標であるAD-R において交互作用が認められた。また,2 つのストレッチ法でRib4-CP およびAD-R の変化量に有意差が認められた。【結論】小胸筋を伸張させるとされるDW-stretch 法とR30-stretch 法のうち,DWstretch 法は安静時の小胸筋長や肩甲骨の位置をより変化させる可能性が示唆された。
著者
山本 実穂 野添 匡史 大西 晶 桝矢 璃央 大澤 摩純 久保 宏紀 山崎 允 間瀬 教史 島田 眞一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11639, (Released:2019-11-27)
参考文献数
34

【目的】慢性腎臓病(以下,CKD)を合併した心不全カヘキシア症例に対して,分岐鎖アミノ酸(以下,BCAA)を含むたんぱく質摂取を中心とした栄養療法と運動療法によって身体機能の大幅な改善が得られたので報告する。【症例紹介】心不全(CKD stage3b 合併)を発症後1 ヵ月間の中心静脈栄養管理となり20 kg の体重減少を招いた。身体機能の改善を目的に理学療法が処方されたが,第76 病日時点で疲労感が強く,運動耐容能(6 分間歩行距離150 m)も低下していることからカヘキシアの状態と考えられた。【経過】BCAA を含むたんぱく質の摂取量を1.2 g/kg/ 日まで漸増し,運動療法はレジスタンストレーニングを中心に行った。約3ヵ月間で体重は8.4 kg 増加し6 分間歩行距離は557 m まで改善した。【結論】CKD を合併した心不全カヘキシア例であっても,たんぱく質摂取量を増やした栄養療法と運動療法の併用は有効と考えられた。
著者
山口 正貴 高見沢 圭一 原 慶宏 後藤 美和 横田 一彦 芳賀 信彦
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11136, (Released:2016-06-01)
参考文献数
36
被引用文献数
2

【目的】6 ヵ月以上持続している慢性の非特異的腰痛患者に対するMcKenzie 法(以下,M 群)とストレッチング(以下,S 群),その両方(以下,M+S 群)の介入効果について検討する。【方法】directional preference(DP)を認めた症例98名をM群31名,S群35名,M+S 群32名に分類し,週1 回の介入と4週間のセルフエクササイズを指導した。【結果】3 群とも介入前後でVAS,ROM,SF-36,JOABPEQ,Oswestry Disability Index(以下,ODI)の全項目で有意な改善を認めた。さらにROM はM+S 群>M 群・S 群,VAS(腰痛)とODI はS 群・M+S 群>M 群で有意差を認めた。【結論】3 群とも疼痛,身体機能,精神機能すべてに有効性を認めた。群間比較ではM+S 群>S 群>M 群の順に高い効果を認めた。
著者
小栢 進也 建内 宏重 高島 慎吾 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.97-104, 2011
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】筋の作用は解剖学的肢位で考えられることが多いが,実際の運動では関節角度変化に伴い,筋の作用や発揮できる筋力が異なる。本研究では数学的モデルを用いて角度変化に伴う股関節周囲筋の屈伸トルクを検討した。【方法】股関節周囲筋を対象とし,生理学的断面積,羽状角,モーメントアーム,筋線維長から股関節屈曲角度を変化させた際に筋が発揮する屈伸トルクを求めた。なお,大殿筋下部線維,縫工筋,腸腰筋は走行変化点を考慮したモデルを用いた。【結果】大腿直筋は屈曲10〜30°で大きな屈曲トルクを有し,伸展域や深い屈曲域ではトルクが小さくなった。一方,腸腰筋は深い屈曲域で強い力を発揮し,伸展域でもトルクは維持された。また,ハムストリングスは屈曲域で大きな伸展トルクを発揮するが,伸展につれて急激に小さくなり,伸展域では大殿筋下部線維が主動筋となることがわかった。内転筋は伸展域で屈筋,屈曲域で伸筋になる筋が多かった。【結論】関節角度によって変化する筋の発揮トルク特性を考慮することで,弱化した筋の特定など筋力の詳細な評価が可能になると考えられる。
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 土井 剛彦 堤本 広大 堀田 亮 中窪 翔 牧野 圭太郎 鈴木 隆雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.197-206, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2

【目的】地域在住高齢者に適するようにShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)算出方法の修正を試みた。【方法】高齢者4,328 名をSPPB(0 ~12 点)で評価し,歩行速度と椅子立ち座りは対象者の測定値(四分位)を基に,立位バランスは立位保持の出来高によって配点した地域高齢者向けのSPPB community-based score(以下,SPPB-com)(0 ~10 点)を算出し,24 ヵ月の要介護発生との関連を調べた。【結果】対象者の78.7% でSPPB が,10.5% でSPPB-com が満点であった。SPPB-com が4 点以下で要支援・要介護発生率が高く(12.8%),SPPB-com,年齢,女性,MMSE が要支援・要介護発生と有意に関連していた。【結論】SPPB を再得点化したSPPB-com は地域在住高齢者の要支援・要介護リスクを把握する指標として有益となることが示唆された。
著者
森沢 知之 岩田 健太郎 上野 勝弘 北井 豪 福田 優子 高橋 哲也
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.10-17, 2016 (Released:2016-02-20)
参考文献数
14
被引用文献数
4

【目的】回復期リハビリテーション(リハ)病院における心臓リハ実施状況および実施にかかわる問題点を明らかにすること。【方法】全国の回復期リハ病院194施設に対し郵送法にてアンケート調査を実施した。【結果】アンケートの回収率は61.9%で,心臓リハ実施率は7.5%(9施設)であった。心臓リハ非実施の理由は「循環器専門医の不在」や「心臓リハ経験者の不在」など人的要因が半数以上を占めた。今後の心臓リハ拡大には「回復期リハ病棟入院対象者患者の基準緩和」,「心臓リハに関する卒後教育体制の充実」,「心臓リハ施設基準の緩和」が必要とする意見が多かった。【結論】回復期リハ病院での心臓リハ実施施設の増加のためには急性期-回復期病院の連携システムの構築,心臓リハにかかわるスタッフの教育体制の充実などが今後の課題であると思われた。
著者
国宗 翔 岡田 修一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.21-29, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
39

【目的】障害物への接近,Lead limb とTrail limb の跨ぎ越えという一連の動作を歩行中の障害物跨ぎ動作とし,3 軸加速度計を用いて若年者と高齢者を対象に側方の姿勢安定性について明らかにする。【方法】対象者は14 人の健常若年者と14 人の健常高齢者とした。対象者は自由歩行と歩行中の障害物跨ぎ動作を行った。得られた加速度データから,各区間における側方のRoot Mean Square(以下,RMSML),およびRMS Ratio(以下,RMSRML)を算出した。【結果】RMSRML は自由歩行より障害物跨ぎ歩行の方が有意に大きく,年齢の主効果は認められなかった。RMSML はTrail limb の跨ぎ区間で他の区間よりも有意に大きかった。【結論】年齢にかかわらず,自由歩行よりも歩行中の障害物跨ぎ動作で側方への身体動揺が大きくなり,Trail limb の跨ぎ区間でもっとも姿勢不安定になる可能性が示唆された。
著者
内田 智也 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 佃 美智留 土定 寛幸 大久保 吏司 藤田 健司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.105-112, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
26

【目的】投球動作におけるステップ脚膝関節動作と肘外反トルクとの関連から肘関節負荷を増大させる動作を検討する。【方法】中学生投手20 名のFoot Contact(以下,FC)以降のステップ膝動作を膝関節位置の変位が生じない固定群と投球方向へ変位する前方移動群の二群に群分けした。FC・肩関節最大外旋位(以下,MER)・ボールリリースのステップ膝屈曲角度,投球中の肘外反トルク(身長・体重での補正値)および投球効率(肘外反トルク/ 球速)を群間比較した。【結果】固定群は14 名,前方移動群は6 名であり,前方移動群のステップ膝屈曲角度はFC からMER にかけて増大することが示された。また,肘外反トルクおよび投球効率は固定群が前方移動群より有意に低値を示した。【結論】前方移動群はFC 以降に膝の縦割れが生じていることで,肘関節に過度な負荷が加わっていることから,ステップ膝動作の評価は野球肘の理学療法において重要であることが示唆された。