著者
川﨑 翼 荒巻 英文 兎澤 良輔 加藤 宗規
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.569-574, 2015 (Released:2015-12-20)
参考文献数
19
被引用文献数
4

【目的】短時間の運動観察における運動学習効果およびその効果とワーキング・メモリ能力の関連性を検討することである。【方法】若年健常人31名を対象とし,運動観察する群(以下,観察群)20名と,運動観察をしない群(以下,観察なし群)11名に割りつけた。参加者は全員TMT part A(以下,TMT-A)とpart B(以下,TMT-B)の時間を測定された。観察群は,手本の鉄球回し映像を観察する前後における鉄球回しの10回転に要する時間と落下回数を測定された。観察なし群は運動観察を行わず,10回転に要する時間と落下回数を測定された。【結果】観察群は,観察なし群より鉄球回し時間の改善率が有意に高かった。観察群の鉄球回し時間の改善率は,TMT-Bの時間やΔTMT(TMT-B–TMT-A)と有意な相関を認めた。【結論】運動観察は,短時間の介入でも効果を示し,その効果にTMT-Bに示されるワーキング・メモリ能力が関与している可能性を示唆した。
著者
石井 禎基 崎田 正博 笹井 宣昌 笠松 大輔 米井 信二 福田 智之 土屋 禎三
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.16-23, 2013-02-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
24

【目的】大腿部における筋間連結の機能的役割をあきらかにする。【方法】標本として,ウシガエル膝伸筋の大腿三頭筋のうち前大腿直筋を除いた内側広筋と外側広筋の2筋を用いた。標本の支配神経分枝以外をすべて切断した坐骨神経に電気刺激を与えて,様々に筋長を変えたときの等尺性強縮張力を測定した。張力測定は,生体そのままの条件(連結条件)と標本をハムストリングスおよび股関節内転筋群から切り離した条件(切離条件)で施行し,それぞれの長さ-張力関係を比較した。【結果】「連結条件」の長さ-張力関係は,「切離条件」のそれよりも上行脚と下行脚の傾きが急であり,「切離条件」の曲線は筋長のより長い方へ移動していた。跳躍直前の筋長における収縮張力は「切離条件」の方が「連結条件」よりも最大収縮張力の約10%減少した。【結論】筋間連結の機能的役割のひとつとして,筋収縮特性の異なる複数の筋をより効率的に働かせて,膝伸筋出力を十分に発揮させることが示唆された。
著者
三木 貴弘 藤田 直輝 竹林 庸雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11517, (Released:2019-02-09)
参考文献数
29

【目的】近年,症状ごとに患者を分類し,対応する特異的介入を行う方法が提言されており,頸部痛において,Treatment Based Classification(以下,TBC)と呼ばれる分類法が提唱されている。今回,頸部痛に対しTBC を基に臨床推理を行い,生物心理社会的モデルに基づいた介入を行ったので報告する。【症例と経過】安静時・夜間の頸部痛が主訴であり,些細なことでも頸部痛が増強するのではないかと不安になることが多い70 歳代男性であった。患者情報および客観的評価よりExercise and conditioning に分類し,「患者教育」「頸部筋および肩甲骨周囲筋の筋持久力および協調性改善」「有酸素運動」を中心とした介入を約5 週間行った。【結果】愁訴は軽減し,さらに痛みに対して前向きに捉える発言が多くなった。【結語】頸部痛をTBC を基に分類し,多面的な介入を行うことで効果を上げることが可能であった。
著者
新井 基洋
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.753-754, 2015 (Released:2016-01-15)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 西下 智 梅原 潤 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.124-130, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,ストレッチング方法の違いが大腿二頭筋の伸長程度や伸長部位に及ぼす影響を検討することである。【方法】若年男性15 名を対象に,超音波診断装置に装備されているせん断波エラストグラフィー機能を用いて,大腿二頭筋の近位・中間・遠位部の弾性率を測定した。安静時は股関節・膝関節90°屈曲位(Rest),ストレッチングとして股関節屈曲位での膝関節伸展方向へのストレッチング(KE),膝関節伸展位での股関節屈曲方向へのストレッチング(SLR)の3 条件での弾性率を測定した。【結果】多重比較の結果,すべての部位でRest と比較してKE とSLR の弾性率は有意に高値を示したが,KE とSLR 間では有意な差はなかった。Rest からの変化比は,有意な交互作用を認めなかった。【結論】本研究結果より,2 種類のストレッチング方法は大腿二頭筋を伸長することは可能だが,伸長程度や伸長部位に差がないことが明らかになった。
著者
徳田 光紀 唄 大輔 藤森 由貴 山田 祐嘉 杉森 信吾 奥田 博之 池本 大輝 森川 雄生 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11638, (Released:2019-12-18)
参考文献数
45

【目的】大腿骨近位部骨折術後症例を対象に,神経筋電気刺激療法(以下,NMES)を併用した膝伸展筋力増強運動を実施し,下肢機能および動作能力に与える影響を検討すること。【方法】大腿骨近位部骨折術後症例82 名を術式別に層別化してNMES 群とコントロール群(NMES なしでの筋力増強運動)に無作為に割り付け,術後翌日から各介入を実施した。評価は膝伸展筋力と日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下,股関節JOA スコア)を測定し,日常生活動作と歩行の獲得日数を記録した。【結果】NMES 群はコントロール群よりも膝伸展筋力と股関節JOA スコアの有意な向上を認め,日常生活動作や歩行の獲得が有意に早かった。また,NMES 群の方が退院時の歩行レベルが高かった。【結論】大腿骨近位部骨折術後症例に対する術後翌日からのNMES を併用した膝伸展筋力増強運動は,膝伸展筋力の早期改善および日常生活動作や歩行の早期獲得に寄与し,退院時歩行能力を向上させる。
著者
山口 正貴 高見沢 圭一 原 慶宏 後藤 美和 横田 一彦 芳賀 信彦
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.440-449, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
44

【目的】6 ヵ月以上持続している慢性の非特異的腰痛患者に対する4 種のストレッチングの介入効果を,初回評価におけるdirectional preference(以下,DP)の有無で比較することで,初回評価のDP がストレッチング治療におけるサブグループ化の指標になるかを検討すること。【方法】初回評価でDP を認めた症例41名,DP を認めなかった症例32 名に分類し,週1 回の介入と4 週間のセルフエクササイズを指導した。介入前後でVAS,ROM,SF-36,JOABPEQ,ODI を評価した。【結果】いずれの項目も群間には有意差を認めず,2 群とも介入前後で全項目に有意な改善を認めた。【結論】慢性の非特異的腰痛患者に本ストレッチングを施行する場合,初回評価のDP の有無にかかわらず,疼痛・身体機能・精神機能すべてに有効性を認めたことから,今回の一定の条件下では,本ストレッチングの成果にDP の有無は関与しない可能性が示唆された。
著者
松永 玄 山口 智史 鈴木 研 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11163, (Released:2016-06-04)
参考文献数
40

【目的】通所リハビリテーションを2 年間利用した脳卒中者の歩行能力と下肢筋力の変化を検討する。【方法】脳卒中者126 名(平均年齢64 歳)の利用開始時,利用後3,6,12,24 ヵ月の歩行能力と下肢筋力を,開始時の歩行速度によりHousehold 群(0.4 m/s 未満),Limited 群(0.4 m/s ~0.8 m/s),Full群(0.8 m/s 以上)に分類した。【結果】Household 群の歩行速度は,開始時と比較し,6 ヵ月以降で有意に向上し,麻痺側筋力は利用後12,24 ヵ月で有意な増加を認めた。Limited 群の歩行速度は,6 ヵ月以降で有意に向上し,麻痺側筋力は24 ヵ月で有意な増加を認めた。Full 群は有意な変化を認めなかった。【結語】2 年間の通所リハビリテーション利用により,生活期の脳卒中者においても歩行速度と下肢筋力は改善・維持することが示され,その傾向は開始時の歩行能力が低い群で特に得られることが示唆された。
著者
植木 琢也 平岡 俊也 大澤 美代子 黒川 理加 塚本 佐保 辻 恵子 矢野 実穂 横島 由紀 萩原 章由 松葉 好子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11585, (Released:2019-09-25)
参考文献数
47

【目的】回復期リハビリテーション(以下,回リハ)病棟における脳卒中患者の身体活動量を生活活動度計により定量的に評価し,入院時と退院時における変化や自立歩行の可否による相違を明らかにすること。【方法】当院回リハ病棟に入院した脳卒中患者169 名を対象とした。対象に生活活動度計を連続24 時間装着し,回リハ病棟入院時および退院時における身体活動量(歩行・立位・車椅子駆動・座位・臥位の各時間)を測定した。24 時間,日中,理学療法中,作業療法中の各時間帯別に入院時と退院時の比較,歩行介助群と自立群との比較を行った。【結果】退院時,歩行や立位の時間が増加する一方,臥位の時間は減少した。歩行や立位の時間は介助群で短い傾向にあった。【結論】回リハ病棟入院中の脳卒中患者の身体活動量は入院時と比べ退院時には増加する。一方で歩行自立に至らない患者の立位歩行時間は相対的に短く,身体活動量の確保に向けた方策の検討が必要である。
著者
松本 浩実 大坂 裕 井上 和興 朴 大昊 萩野 浩
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11657, (Released:2019-11-29)
参考文献数
22

【目的】地域高齢者におけるフレイルの進行度と運動および運動自己効力感の関連性を調査すること。【方法】地域の集団健診に参加した239 名中,1)65 歳以上,2)日常生活が自立しているもので,要介護認定者を除外した男性85 名,女性127 名,平均年齢76 歳を対象とした。自己記入式アンケートにて運動および運動自己効力感を評価し,日本版Cardiovascular Health Study Index 基準を用いたフレイル判別にてロバスト,プレフレイル,フレイルに群分けした。【結果】多項ロジスティック回帰分析を実施した結果,プレフレイルと散歩やウォーキングなし(Odds:11.521),筋力トレーニングなし(Odds:6.526),集団体操なし(Odds:10.089)が,フレイルと運動自己効力感(Odds:0.826)が関連した。【結論】フレイル予防には運動習慣とともに運動自己効力感を高める心理的,教育的なサポートが重要である。
著者
松村 葵 建内 宏重 中村 雅俊 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.81-87, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
38

【目的】運動前後の棘下筋の即時的な筋断面積の変化を比較し,低負荷・低速度での肩関節外旋運動によって棘下筋に対してトレーニングによる刺激を与えることができるかどうかを明らかにすること。【方法】健常男性10 名を対象とし,負荷と運動速度をそれぞれ0.5 kg・5 秒条件,0.5 kg・1 秒条件,2.5 kg・1 秒条件の3 条件で肩関節外旋運動を行い,運動前後に棘下筋の筋断面積を超音波画像診断装置によって撮影した。また表面筋電図を用いて運動中の棘下筋と三角筋後部の筋活動を測定した。【結果】運動後の棘下筋の筋断面積は0.5 kg・5 秒条件で他の2 条件よりも有意に大きく増加した。棘下筋の運動中の平均筋活動量には条件間に有意な差はみられなかったが,運動1 セット中の棘下筋の筋活動量積分値は0.5 kg・5 秒条件で有意に大きかった。【結論】低負荷であっても運動速度を遅くすることで,棘下筋にトレーニング刺激を与えられることが明らかとなった。
著者
藤本 修平 大高 洋平 高杉 潤 小向 佳奈子 中山 健夫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11351, (Released:2017-11-10)
参考文献数
27

【目的】理学療法士(以下,PT)の診療ガイドラインの利用,重要度の認識とエビデンスに基づいた実践(以下,EBP)への態度,知識,行動との関連性を明らかにすることとした。【方法】対象は千葉県のPT1,000 名としEBP や診療ガイドラインの利用,重要性の認識の項目を含む無記名自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。統計解析は診療ガイドラインの利用,重要性の認識に関連するEBP の関連項目を明らかにするために多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】診療ガイドラインの利用,診療ガイドラインの重要性の認識と関連が強いものは「EBP に関する必要な知識や技術を学びたいと思いますか」(OR = 10.32, 95%CI: 1.82–197.16) であった。【結論】千葉県のPT において診療ガイドラインの利用は十分ではなく診療ガイドラインの利用や重要性の認識に関連する要因は,EBP の必要性の認識とEBP を行ううえで必要な行動であった。
著者
森 勇 高橋 泰 浜崎 満治 山田 翔梧
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.434-441, 2015-08-20 (Released:2017-04-13)
被引用文献数
1

【目的】基本動作能力を測定する新指標の開発およびその指標の反応性と信頼性の検証を目的とした。【方法】基本動作の動きそのものを判定尺度とし,動作の状態像をイラストで視覚化した基本動作能力のCapacityを測定する基本動作指標(以下,BMS)を作成した。対象は要支援1から要介護5の介護保険サービス利用者148名(男性49名,女性99名。平均年齢82.8±7.7歳)。理学療法士と作業療法士(セラピスト)の主観的評価に対するBMS,BI,FIM運動項目の感度と特異度を算出した。セラピストを検者とした検者内および検者間信頼性を求めた。【結果】BMSは感度89%(特異度34%)と各ツールの中で感度がもっとも高く,特異度がもっとも低かった。検者内と検者間ともに高い信頼性が得られた。【結論】BMSは,指標として高い信頼性があり,基本動作能力のCapacityを測定しセラピストの主観的評価に高い感度で反応する指標であることが示唆された。
著者
髙橋 真 岩本 浩二 門間 正彦 水上 昌文
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.138-145, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
19

【目的】大学野球選手における投球側肩関節の外旋角度の増大に伴う上腕骨頭-肩甲骨関節窩後縁の骨間距離(以下,PGHD)を明らかにすることである。【方法】対象は大学野球選手11 名の投球側肩関節11肢とした。MRI 撮像時の肩関節肢位は肩90°外転位から90°,100°,110°外旋位の3 肢位とし,各肢位のPGHD を計測した。【結果】PGHD は肩関節90°外旋位よりも110°で有意に低値だった。【結論】肩関節外旋角度が増大すると,上腕骨頭と肩甲骨関節窩後縁が接近した。