著者
矢動丸 琴子 中村 勝 岩崎 寛
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.86-91, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
7
被引用文献数
2

近年,ストレスチェック制度が義務化され,職場におけるストレス対策が重要となってきている。その対策の1つとして,オフィス緑化が注目されている。そこで,本研究では,オフィス緑化が勤務者の心理に与える影響について,業種や職種の違いにより効果に差が見られるのか検証を試みた。その結果,業種や職種のみでは,効果に目立った差は見られなかったが,業種と職種を組み合わせた場合には一部で「仕事・職場に対する評価」や「気分・感情状態に対する評価」に異なる傾向が見られた。また,植物設置に対する反応も異なる傾向が見られた。その要因として,仕事内容に加え,植物に対する印象やストレスの種類等が考えられた。
著者
大島 潤一 江連 康弘 飯塚 和也 石栗 太 横田 信三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.93-98, 2018-08-31 (Released:2019-05-10)
参考文献数
19

宇都宮大学船生演習林内のスギ造林地(面積31.13 ha)を対象に,クマによる剥皮害を受けたスギの剥皮部の形態及び腐朽状況を調査し,スギ樹幹の腐朽の進行について考察した。幹周に対する剥皮幅の割合の分布は,100%(全周剥皮)が22.5%を占め,全周剥皮では,高い枯死率を示した。目視調査から,剥皮後の経過年数で高い腐朽度の個体割合が増加したことが判明した。ピロディン打ち込み深さは,経過年数とともに増加したが,応力波伝播速度は減少した。また,表面含水率は,剥皮後3 年目まで急速に減少した。クマによる剥皮害を受けたスギでは,剥皮形態により剥皮部表面及び樹幹内部での腐朽の進行が大きく異なった。
著者
大杉 祥広 石井 弘明
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.45-50, 2009-08-31
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

在来種ネズミモチと外来種トウネズミモチの生理・形態特性の違いを明らかにするため,兵庫県の西宮神社の社叢において両樹種の分布パターンおよび様々な光環境に生育する個体の光合成や形態を測定した。ネズミモチは林内にランダムに分布していたが,トウネズミモチは林縁に偏って分布していた。ネズミモチの最大光合成速度(A<SUB>max</SUB>)やクロロフィル・窒素量は光環境によって変化しなかった。一方,トウネズミモチのA<SUB>max</SUB>は,暗い環境ではネズミモチと同程度であったが,明るい環境ではネズミモチより高い値を示し,クロロフィル・窒素量も変化した。また,トウネズミモチは明るい環境における枝葉の展開が旺盛で,このような生理・形態特性が林縁におけるトウネズミモチの拡大に寄与すると考えられる。
著者
亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
緑化工技術 (ISSN:03865223)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.36-42, 1978-02-25 (Released:2011-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4
著者
津村 義彦 岩田 洋佳
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.470-475, 2003 (Released:2004-08-27)
参考文献数
41
被引用文献数
24 15
著者
村上 健太郎 松井 理恵 森本 幸裕 前中 久行
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.139-144, 2004-08-31
被引用文献数
4 7

1996年に造成後,8年が経過した都市内復元型ビオトープ「いのちの森」において,現段階でのシダ植物の種多様性の評価を試みた。種数一面積曲線を用いて,「いのちの森」の近郊にある孤立林39箇所との比較を行ったところ,「いのちの森」の種数は,高い水準にあることがわかった。また,「いのちの森」の木道下では,シダ植物の種数は他の孤立林比較調査区に比較して多かった。ただし,木道下以外の林床では,種数,対数逆Simpson指数ともに高い程度にあるとは言えなかった。よって,「いのちの森」は,他の孤立林に比べると,種数が多いと言えるが,これは木道下の適度に暗く湿った隙間環境が種数を増加させていると考えられた。
著者
稲垣 栄洋 栗山 由佳子 前島 固女 石上 恭平
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.235-238, 2007 (Released:2008-02-21)
参考文献数
9
被引用文献数
4 3

撹乱依存型絶滅危惧植物のミズアオイとオオアブノメの大規模な群落の保全を図るために,省力的な撹乱方法として湿地ブルドーザの活用を試みた。湿地ブルドーザの撹乱により,3月撹乱,6月撹乱ともに,ミズアオイとオオアブノメの発生が誘発される傾向が認められた。また,ミズアオイとオオアブノメの出現率は,湿地ブルドーザによる大規模な撹乱作業と,市民による手作業の撹乱作業とで差異が認められなかったことから,湿地ブルドーザの利用は,群落保全の手法として有効であると考えられた。ただし,夏季以降に3月撹乱区ではヒメガマ,6月撹乱区ではイヌビエが優占し,ミズアオイやオオアブノメの出現率は低下したことが問題点として残された。
著者
繁冨 剛 安里 俊則
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.228-231, 2016

新名神高速道路通過予定地の淀川河川敷には,「鵜殿ヨシ原」と呼ばれる雅楽に使用される良質なヨシの自生地がある。そのため,環境保全を目的に各種調査,検討を実施している。その一つとして,簡易動的コーン貫入試験を実施し,結果を長谷川式土壌貫入試験値に換算し,地下茎の確認状況や,土質構成から良質なヨシの生育環境を評価した。<BR>その結果,良質なヨシの生育場所は軟らかなシルト層が広がる箇所であることが確認された。
著者
平林 聡 徳江 義宏 伊藤 綾 ELLIS Alexis HOEHN Robert 今村 史子 森岡 千恵
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.44-49, 2016 (Released:2017-01-30)
参考文献数
42
被引用文献数
3 4

川崎市川崎区を事例に,都市樹林評価モデルi-Tree Ecoを試行し,その解析結果および都市樹林管理業務への活用について考察した。モデルの改変,パラメータの設定を行い,一般に公開されているデータを入力データとして用いることで,街路樹による炭素蓄積・固定量,住宅の冷暖房使用増減量,大気汚染物質除去量とそれによる健康被害軽減,雨水流出量の削減を推定した。また,それらの貨幣価値は,参考値であるが年間約530万円と推定された。
著者
那須 守 岩崎 寛 高岡 由紀子 金 侑映 石田 都
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-8, 2012 (Released:2013-04-16)
参考文献数
22
被引用文献数
9 9

都市における緑地とその利用行動が居住者の健康関連 QOL に及ぼす影響について把握するために,東京都区内の住宅地においてアンケート調査を実施した。調査データから,緑地環境を含む「地区環境」「利用行動」「健康関連 QOL」を構成概念とするパスモデルを構造方程式モデリング (SEM) によって構築した。その結果,地区環境と利用行動は健康関連 QOL の 20%を説明し,両者の影響は直接的には同程度であること,しかし地区環境は利用行動を通して間接的にも影響することが示唆された。よって健康関連 QOLを高めるためには物理的な緑地環境だけではなく,利用行動も合わせて検討することが重要であると考えられた。
著者
大澤 啓志 井上 剛 瀧 寛則 屋祢下 亮 天石 文 林 聡 横山 理英
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.87-92, 2018-08-31 (Released:2019-05-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

硝酸イオンを吸着・除去する水質浄化装置の有無による,都市型ビオトープ池の水生昆虫相及び水質や藻類の繁茂状況の影響を検討した。4 年間のモニタリングの結果,15 科29 種の昆虫が確認された。浅場での水生昆虫相の種構成・個体数には大きな差は認められず,装置設置池の方が非設置池よりもトンボ目の多様度指数は高かった。装置を設置した池では,夏季のクロロフィルa 量の極端な増加は生じず,設置後3 年目からは藻類発生の抑制効果が確認された。また夏季の池底最深部の昆虫類群集の極度の貧弱化が抑えられるとともに,池底のヘドロ様の堆積泥厚にも顕著な差が認められた。本装置設置によって池底での夏季の過度の富栄養化が抑制されていた。
著者
小坂 凜 岩崎 寛
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.254-256, 2014 (Released:2015-09-18)
参考文献数
6
被引用文献数
3 6

近年,オフィスにおけるパソコン作業 (VDT作業) は増加しており,VDT作業による精神的な疲労が社会的問題となっている。そこで本研究では,作業机の上に植物を設置することによる VDT作業時の疲労緩和効果を主観的および客観的指標から検証した。その結果,植物の設置による生理的な変化は見られなかったが,作業における疲労に対する主観的評価が減少する傾向がみられた。これらの結果から,オフィスにおけるパソコン作業上のデスクに植物を設置することは心理的な側面から疲労緩和に有効であると考えられた。
著者
村上 健太郎 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.63-68, 2018-08-31 (Released:2019-05-10)
参考文献数
33
被引用文献数
1

近畿~中国地方の鉄道駅周辺の市街地におけるハードスケープ即ち人為的で硬質な景観構成要素からなるハビタット(壁,石垣,建造物間隙,路傍間隙)に生育するシダ植物群落4,473 箇所のデータを分析し,シダ植物のハードスケープハビタットの選好性に関する基礎資料を得るための研究を行った。分析の結果,4 種のハビタットの中で最も選好されていたのは石垣であった。もともと岩上や樹幹,崖に生育する種だけでなく,森林種も多くの種が石垣を選好していた。ただし,森林種の29.3%は建造物間隙選好種であった。さまざまなハードスケープにおける植物の選好性を理解することは,長期的な視野に立った都市の生物多様性保全手法の開発に役立つだろう。
著者
中嶋 佳貴 沖 陽子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.543-549, 2016 (Released:2017-09-01)
参考文献数
22

特定外来生物ブラジルチドメグサ (Hydrocotyle ranunculoides L. f.) の水流の有無に対する生育反応及び地表における削取処理の効果を検討した。さらに茎の切断片の生育特性を把握した。削取処理を施さなければ茎長は 2か月で約 10 m 伸長した。茎は水流 ( 0.23±0.01 m/s) があると切断片が自然発生し,水流がないと乾物重が有意に重かった。表層土削取区 (表層 1cm) は地表面削取区 (地表面) より総乾物重が重く,茎削取区では植物体の再生は認められなかった。一方,実験開始時に 2 節及び 3 節の茎切断片は頂芽が切断されると再生が優れた。実験開始 63日後には,実験開始時に 2節であった茎切断片は, 4 節であった茎切断片の 8 割以上に達し,節数はほぼ同等まで発達した。以上より,茎が削取時に一部切断もしくは損傷されて残存すると,むしろ旺盛に増殖することが認められた。
著者
中村 華子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.274-276, 2007 (Released:2008-02-21)
参考文献数
2
被引用文献数
1

富士山国有林内のヒノキ人工林が風倒被害を受けたあとに植栽された広葉樹植林地において,下刈り条件の違い(年2回20cm 高/年1回20cm 高/年1回50cm 高/2年に1回50cm 高/放置区の5段階設置)による植栽木の生育状態と二次遷移の進行状況を3年間調査した。3年目までの調査結果から,樹高成長は年1回の下刈りを行っている調査区で最大であった。また,侵入種数の増加のためには放置するよりも年1回程度の下刈りが有効であること,食害防除のためには20cm 高での下刈りよりも50cm 高での下刈りが有効であった。放置区では3年目以降大きくなったススキ株が倒伏しシカの侵入・食害が見られた。
著者
田中 淳 上石 有吾 佐藤 威臣 横溝 和則
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.245-248, 2018-08-31 (Released:2019-05-10)
参考文献数
10

壮齢ヒノキ林に本数間伐率50%(材積間伐率35%)を実施した。また,間伐後の下層植生を評価するために外来牧草を播種し,植被率の変化を調査した。播種した範囲の相対照度は平均15.4%となり,間伐を実施する前と比較して,11.6%上昇した。播種した外来牧草の植被率は,播種1 ヶ月後には50%程度となったが,播種2 ヶ月後から衰退し始め,4 ヶ月後には10%未満となった。間伐を実施しない対象区の相対照度は平均4.1%であり,播種後3 ヶ月後にはほぼ枯死した。地表面侵食防止のための森林整備方法として,下層植生を早期に健全に生育させるためには,より強度の間伐を実施するか,耐陰性の高い草種の選定が必要である。
著者
金子 弥生 神田 健冴
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.507-510, 2019

<p>哺乳類のハビタットネットワークの形成を行う場合,各種や生態系の生態学的な現状を把握する必要がある。日本では,キツネ<i>Vulpes vulpes</i>やニホンイタチ<i>Mustela itatsi</i>は環境に合わせて餌食物を変化させるジェネラリストであるため,都市化の進行した環境や,開発の進んだモザイク環境でも生息可能となっていると考えられる。都市の河川においては,河川敷が生息地やコリドーとしての機能を担っているが,一方で,水害防除のための河川敷の改変や構造物設置はやむをえない面がある。災害防除と生態系保全を両立する河川敷のあり方について検討するため,多摩川中流域において,消波根固ブロックの野生食肉目による利用を調査した。その結果,在来種ではタヌキ<i>Nyctereutes procyonoides</i>とニホンイタチによる利用が確認された。</p>
著者
與猶 久恵 内田 泰三 荒瀬 輝夫 早坂 大亮
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.50-55, 2013 (Released:2014-04-02)
参考文献数
23

本研究では,絶滅危惧種コギシギシの保護あるいは保全に資する基礎的知見を得ることを目的とした。ここでは,コギシギシ痩果の外部形態ならびに発芽特性について検討を行った。後者においては,高-低温湿層処理ならびに乾燥暗所処理が発芽に及ぼす影響から考察した。その結果,コギシギシの痩果は,3 枚の花被片からなり,それぞれの縁に長い刺を有する点に特徴づけられ,エゾノギシギシの痩果に近い形態にあると考えられた。しかし,それぞれの花被片に粒体が付属する点はエゾノギシギシと異なった。一方,高-低温湿層処理ならびに乾燥暗所処理が発芽に及ぼす影響は認められず,痩果の生理的休眠は浅いものと推察された。
著者
日置 佳之 高田 真徳
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.302-314, 2014 (Released:2015-09-18)
参考文献数
91
被引用文献数
1

ニワウルシ (Ailanthus altissima (Mill.) Swingle) は,雌雄異株で,風散布に適した翼果を多数付ける中国北部から中部原産の落葉高木である。同種は日本でも街路樹としても多用されており,空き地,河川敷等において野生化している。また,海外では自生地外への分布拡大や生態系への影響が報告されているが,わが国においては侵略性の観点からの研究はほとんど行われていない。そこで,本研究では,鳥取市内の国道 9号線に街路樹として植栽された同種の逸出状況を把握するとともに,種特性から見た侵略性評価を行うことを目的とした。逸出状況については,国道 9号鳥取バイパス及びその周辺約 202 haを対象として, DGPSを用いてニワウルシの位置情報を取得し,樹高,幹周り,萌芽の有無,逸出環境を街路樹と逸出株に区別して記録した。また,侵略性については,上記の調査結果と既存文献に基づき,外来種の導入の可否を判定する Pheloungのモデル及び導入後の外来植物の侵略性を判定する John & Lindaのモデルを用いて評価した。その結果,1)ニワウルシは街路樹から逸出した個体を母樹としてとくに風下側に分布を拡大していると推定された。2)地上部のみ刈取りされている逸出株は,管理が不十分な期間に生長し,種子散布や横走根の生長によって更なる分布拡大のもととなる恐れがある。3) 2つの外来種評価モデルを用いて侵略性を評価した結果,ニワウルシは高い侵略性を持つことが示唆された。