- 著者
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毛利 正守
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.1, pp.1-15, 2011-01-01
筆者は,これまでに字余りをいくつかの視点から眺めてきたが,本稿では,脱落現象という観点を導入して字余りを生じる萬葉集のA群とB群の違いを追究した。その際,唱詠の問題が関わるかも知れない和歌の脱落現象は除外し,あくまで散文等の脱落現象をとり挙げ,それと字余りとを比較するといった立場をとっている。A群もB群も唱詠されたものとみられるが,B群は,散文の脱落現象と同じ形態または近似した形態のみが字余りとなっており,A群は,基本的に脱落現象とは拘わらずいかなる形態も字余りをきたしている。散文における脱落現象というものは,日常言語に基づいた音韻現象の一つである。これらを総合的にとらえて,B群の字余りは,音韻現象の一つであると把握し,A群の字余りは,日常言語のあり方とは離れた一つの型として存する唱詠法によって生まれた現象であると位置づけた。