著者
平 誠
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.233-236, 1995-07-31 (Released:2009-06-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

高層湿原の池溏における,セストン量と甲殻類プランクトン群集の種組成の関係を,苗場山頂湿原において調査した。水中のセストン量が約4mg・l-1より少ない池溏ではAcanthodiaptamus pacificus,約4mg・l-1から7mg・l-1までの中程度のセストンを有する池溏ではDiaphanosoma brachyurum,約7mg・l-1より多くのセストンを有する池溏ではDiphnia longispinaがそれぞれ優占した。これらの結果から,腐植物質を主とするセストンの量が、甲殻類プランクトンの種組成を決定する重要な要因の1つである可能性が示唆された。
著者
東 幹夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.209-217, 2003-12-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3 1

1997年4月,諌早湾奥は西九州に位置する有明海から潮受け堤防によって遮断された。諌早湾干拓事業の着工以来,貝類,エビ類,カニ類,底魚類の漁獲量は年を追って減少し続けている。潮受け堤防の完成から4年後にノリ不作が有明海全域に拡大した。諌早湾内の調整池では淡水化と富栄養化が進み,湾外では環境悪化と漁業の衰退などの「有明海異変」が顕在化した。諌早湾口周辺から有明海奥部にかけて大型底生動物相の生息密度は年々減り続けている。潮止め工事完成後,赤潮発生件数は,夏季には有害赤潮を引き起こす鞭毛藻類が,冬季には珪藻赤潮が年々激増しており,潮受け堤防締切りによる諌早湾の泥干潟喪失後に出現し始めた赤潮と貧酸素水塊によって有明海漁業への被害も頻発している。これらの問題は,干潟消滅に伴う浄化機能の喪失と,潮受け堤防建設による潮流の変化に,主として起因していると考えられる。有明海を維持可能な生態系として蘇らせるためには,諫早湾干拓事業を中止し,水門を開けて潮汐と干潟の回復を目指す適応的管理に切替えるべきである。
著者
赤堀 由佳 高木 俊 西廣 淳 鏡味 麻衣子
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.155-166, 2015-12-10 (Released:2017-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
4

近年国内の浅い富栄養湖のいくつかでヒシ属植物の増加が報告されている。本研究では,オニビシの繁茂が水質に与える影響を明らかにするために,印旛沼においてオニビシが繁茂する地点(オニビシ帯)としない地点(開放水面)の水質を比較した。繁茂期(7月から9月)のオニビシ帯は,開放水面に比べ溶存酸素濃度および濁度が有意に低かった。溶存酸素濃度の低下は夜間と底層で顕著であり,無酸素状態になることもあった。濁度はオニビシが繁茂している時期にオニビシ帯の表層と底層両方で低くなった。オニビシ帯では,浮葉が水面を覆うことにより,水の流動は減少し,遮光により水中での光合成量は低下するため,溶存酸素濃度や濁度が低くなったと考えられる。栄養塩濃度に関してはいずれもオニビシ帯と開放水面の間で有意な差は認められなかったが,8月と9月に,アンモニア態窒素濃度が高くなった。オニビシの枯死分解に伴い無機態窒素が放出されるとともに,貧酸素により底泥から溶出した可能性がある。一方,オニビシが繁茂しない時期には,地点間でこれらの水質項目に明瞭な差は見られなかった。栄養塩濃度の差は,地点間の差よりもむしろ季節による差のほうが顕著で,オニビシ帯と開放水面共に,7月から9月は全リン濃度が高く,それ以外の時期は亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素濃度が高かった。印旛沼では,このような栄養塩濃度の季節変動は毎年確認されており,栄養塩濃度の季節変動に与える複数の効果に比べオニビシの効果は小さいと考えられる。
著者
根来 健一郎
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3-4, pp.139a-142, 1952-06-15 (Released:2009-11-13)
被引用文献数
1
著者
桟敷 孝浩 玉置 泰司 高橋 義文 阿部 信一郎 井口 恵一朗
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.73-80, 2012 (Released:2013-08-21)
参考文献数
21
被引用文献数
3 2

内水面漁業協同組合によるアユ(Plecoglossus altivelis altivelis)の増殖は,内水面漁業や遊漁に果たす役割だけでなく,アユが付着藻類を摂餌することで景観を保全する機能を有している。本研究の課題は,アユ増殖への取り組みから発現する,川の景観保全効果に対する経済的価値を計測するとともに,景観保全効果の経済的価値に影響を与える要因を明らかにすることである。本研究では,アンケート調査で得られた北海道と沖縄県を除く全国838サンプルを用いて,二段階二肢選択形式の仮想市場評価法による分析をおこなった。分析の結果,アユ増殖による川の景観保全効果に対する経済的価値は,1世帯当たり平均WTP(支払意志額)で4,216円と評価された。景観保全効果の経済的価値に影響を与える要因は,“川のそばで散歩やジョギングなどをしたことのある回答者”,“川で水泳や水遊びをしたことのある回答者”,“沢登りをしたことのある回答者”,“居住地から1 km以内に川がある回答者”,“より高い年間世帯所得の回答者”,“アンケートでより低い提示額の方が支払いやすい回答者”であることが解明された。
著者
岩崎 麻美 高松 信樹 功刀 正行 大沢 信二
出版者
日本陸水学会
雑誌
日本陸水学会 講演要旨集 日本陸水学会第69回大会 新潟大会
巻号頁・発行日
pp.191, 2005 (Released:2005-09-21)

天然には、様々な環境下において青色を呈する天然水が存在している。青色天然水として知られている福島県裏磐梯の五色沼、群馬県中之条の四万湖および大分県別府の海地獄は共に青色を呈している天然水として知られている。青色天然水の呈色については1)鉄イオン, 銅イオンによる長波長光吸収機構2)微粒子による短波長可視光散乱機構 3)水そのものによる長波長光吸収機構が挙げられる。この3地点の共通点としては、硫酸酸性水にNaCl(食塩)型の温泉水が混合していることが挙げられる。本研究では水文学的調査、色彩学的調査および種々の呈色因子の同定から青色呈色がどのような物質により、どのような機構で生じているのかを解明することを目的とした。
著者
草野 晴美 伊藤 富子
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.193-201, 2004-12-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

北海道千歳川水系における淡水性ヨコエビの分布を調べたところ,本流にはトゲオヨコエビEogammarus kygi (Derzhavin),支流にはオオエゾヨコエビJesogammarus jesoensis(Schellenberg),湧水源流付近にはエゾヨコエビSternomoera yezoensis(Uéno)が生息していることがわかった。また千歳川支流のひとつ,内別川におけるオオエゾヨコエビとトゲオヨコエビの調査から,(1)2種の分布は,隣接するにも関わらず重複が少なく,分布境界が明瞭であること,(2)その分布境界の上流と下流で河川の物理的な環境に差異は見られないが,産卵後サケ死体の現存量に有意な差が認められること,(3)2種とも消化管に植物質,動物質の餌を含むが,トゲオヨコエビの方がオオエゾヨコエビより動物質の餌,特にヨコエビ破片を含んでいる頻度が高いこと,が明らかになった。これらの結果から,オオエゾヨコエビとトゲオヨコエビの分布を決めている要因について,(1)トゲオヨコエビが千歳川下流から遡上することによってオオエゾヨコエビよりあとから上流域へ分布を広げた,(2)トゲオヨコエビは動物性の餌資源をより多く必要とするためサケ遡上区域(産卵後サケ死体の分布)と重複するように分布し,オオエゾヨコエビは貧栄養的な支流に追いやられている,(3)2種間に捕食などの直接的な関係があることによって分布が排他的になっている,という3つの可能性を考察した。
著者
河西 芳一
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.56-62, 1942-09-30 (Released:2009-12-11)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

1.本報告は日本に於ける主なる強酸性水域13に就いて調査した動物相の概報である。2.本調査の結果從來知られて居た耐酸性種の外に多くの種類が著しい強酸性水域にまで棲息する事が明かになつた。3.中性水域では蜉蝣類,毛翅類,せき翅類が主要素であるが,酸性水域では鞘翅類,毛翅類,双翅類が主要素で殊に浮游類は殆ど出現しない。4,季節的變化は中性水のそれと大差なく尚水温が周年高温を保つ温泉附近の河川には特殊な動物が著しく繁殖して居る。5.一河川に於ける種數密度は中性河川と同じく中流で最も多く上下流では少い。6.中性河川と酸性河川との合流點を見ると酸性水域の動物相が著しく貧弱で且酸性河川に多くの動物が見られる時は兩河川に共通種が多い。從つて酸性河川の動物は中性河川より移動侵入したものと考へられる。7.pH5.0以下に出現する動物の種數次の如し。鞘翅類2種,毛翅類15楓,双翅類11種,異翅類8種,せき翅類5種,脈翅類5種,蜉蝣類4種その他7種である。8.pH2.0以下にまで棲息し得るもの次の如し。Rhyacophila towadensis., Prolonemonra sp.,Notouecla triguttat, Sigara substriata, Protohermes grautlis, EmpidacのEuhiefferiella sp., Poly--pedilum Sp.
著者
田村 正
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.63-73, 1936-06-20 (Released:2009-12-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1
著者
程木 義邦 渡辺 泰徳
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.27-37, 1998-03-01 (Released:2009-06-12)
参考文献数
23
被引用文献数
3 10

5つの湖沼の22定点において水中の太陽紫外線の消散過程とその要因を調べた。測定を行った全ての水域において,太陽放射は水深とともにほぼ対数的に減衰し,UVB(280-315nm),UVA(320-400nm),光合成有効波長(400-700nm)の順で強く減衰された。太陽放射の減衰の程度は水域により大幅に異なり,UVBの水面での放射量に対して1%となる水深(Z1%)は,富栄養水域で0.3から1m,貧から中栄養で2m以上であった。また,UVBとUVAのZ1%はそれぞれ透明度の0.5倍,0.9倍であった。UVBとUVAの消散係数(m -1)は,湖水中のクロロフィルおよび懸濁態有機炭素濃度と強い正の相関を示し,溶存有機炭素濃度と弱い相関を示した。これ迄の報告では,水中紫外線の消散要因として溶存有機物による吸収が強調されていたが,植物プランクトン量が多くDOC濃度が低い水域では,植物プランクトンが水中紫外線の主な消散要因となることが推測された。
著者
青柳 育夫 手塚 マサ子 中村 和夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.185-198, 1998
被引用文献数
4

茨城県下の鬼怒川下流域において,アカツキシロカゲロウEphoron eophilum ISHIWATAに関する野外調査を実施した。同所にはオオシロカゲロウE. shigae(TAKAHASHI)も生息する。両種の卵を実験室内において孵化させ,若齢幼虫の形態比較を行った。<BR>1)アカツキシロカゲロウは年1化性で,越冬した卵は4月から7月にわたって孵化し,成体は7月から10月にかけて羽化・産卵した。短期間に同調的な孵化および羽化がおこるオオシロカゲロウと比較すると孵化および羽化とも長期間に及んだ。2)アカツキシロカゲロウの羽化・産卵は日の出前後におこり,日没直後に行われるオオシロカゲロウの羽化・産卵とは明確に分離していた。3)アカツキシロカゲロウの卵はオオシロカゲロウより体積で約4倍大きく,1齢から5齢幼虫は同一齢のオオシロカゲロウより大型で,特に大顎牙が1齢の時期からよく発達していた。4)大卵少産型のアカツキシロカゲロウは幼虫が粘土質の河床に生息しており,小卵多産型のオオシロカゲロウの幼虫は砂礫質や砂泥質の河床に生息、している。アカツキシロカゲロウの1齢幼虫の大顎牙は固い粘土質の河床での生息に適応した形態と考えられる。
著者
岩崎 麻美 高松 信樹 功刀 正行 大沢 信二
出版者
日本陸水学会
雑誌
日本陸水学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.158, 2003

群馬県四万湖の色彩測定,水質分析,呈色因子物質の分析を行い,四万湖の青色呈色因子について考察した。四万湖水中には二価の鉄イオンや銅イオン濃度が極めて低いことから,青色呈色の原因がこれらイオンによる光の吸収によるものではないと判断された。また,四万湖の懸濁物の赤外吸収スペクトル解析,蛍光X線分析,走査型電子顕微鏡による観察から,四万湖水中には,粘土鉱物の前駆物質であるアロフェンが存在しているこが確認された。アロフェン粒子の直径は約40nmであり,この粒子に太陽光の光があたることによりレイリー散乱が生じ,青色に呈色していると結論された。
著者
岩崎 麻美 高松 信樹 功刀 正行 大沢 信二
出版者
日本陸水学会
雑誌
日本陸水学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.191, 2005

天然には、様々な環境下において青色を呈する天然水が存在している。青色天然水として知られている福島県裏磐梯の五色沼、群馬県中之条の四万湖および大分県別府の海地獄は共に青色を呈している天然水として知られている。青色天然水の呈色については1)鉄イオン, 銅イオンによる長波長光吸収機構2)微粒子による短波長可視光散乱機構 3)水そのものによる長波長光吸収機構が挙げられる。この3地点の共通点としては、硫酸酸性水にNaCl(食塩)型の温泉水が混合していることが挙げられる。本研究では水文学的調査、色彩学的調査および種々の呈色因子の同定から青色呈色がどのような物質により、どのような機構で生じているのかを解明することを目的とした。
著者
平林 公男 荒河 尚 吉田 雅彦 風間 ふたば 吉澤 一家 有泉 和紀 長澤 和也
出版者
日本陸水学会
雑誌
日本陸水学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.176-176, 2005

山梨県四尾連湖において、1994年4月から2004年3月までの10年間、動物プランクトンネットによって、水深ごとにチョウ(Argulus japonicus)の浮遊個体数、齢別構成などを調査した。調査期間中、チョウ類が観察されたのは、2000年から2002年の3年間のみで、他の年には、全く発生していなかった。発生ピーク年は2001年で、196.3個体/tであった。夏期の水温の上昇とともに浮遊個体は多くなり、8月にピークが認められた。また、水深2m層で、個体数が多かった。
著者
西田 睦
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.211-216, 2016 (Released:2017-05-30)
参考文献数
31