- 著者
-
福岡 豊
- 出版者
- 東京医科歯科大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1995
本研究の目的は「ニューラルネットを用いることによって生体信号からストレスの客観的評価が可能であることをラットの拘束水浸ストレス負荷実験によって示すこと」であった.ストレス負荷の際は、ラットを3群に分け、それぞれのストレス負荷時間を0(対照群)、2時間、6時間とした。4週間にわたってストレスを負荷した後に,ニューラルネットの入力信号用として心電図,血圧,直腸温を記録した。その後、副腎および胸腺重量を計測し、これらの値から5層砂時計型ニューラルネットによりストレス指標を算出した。3層ニューラルネットにこの指標を与えて学習を行い、学習用とは別のラットから記録した評価用データを入力したときに,どの程度の推定精度が得られるかを検討した.また、心電図、血圧、直腸温をどのように組み合わせて入力した場合に、高い推定精度が得られるかを検討した。その結果・ストレスを負荷したラットと負荷しないラットでは、副腎・胸腺の重量が異なること(ただし、2時間と6時間の群では有意な差が認められなかった。この理由により、対照群と6時間負荷群のみの比較を行うこととした。)・上記の生理指標から算出したストレス評価値が有意(危険率0.1%以下)に異なること・ニューラルネットにより生体信号とストレス評価値の対応付けが可能であること・心電図のRR間隔の変動のみを用いるだけで、高い推定精度が得られること・未学習データに対しても良好な推定結果が得られることを確認し、ニューラルネットを用いることにより生体信号によるストレスの客観的評価が可能であることを示した。