著者
杉内 友理子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

これまで明らかにされていなかった、輻輳性眼球運動に関与する神経機構を解析した。従来、急速眼球運動の生成に関与することが知られている上丘の頭側部に、輻輳性眼球運動に関与すると考えられるニューロンが存在することが示唆された。その出力は、動眼神経核背側部の中脳灰白質から中脳網様体にかけての領域に存在する介在ニューロンを介して、内直筋および外直筋の運動ニューロンに伝えられると考えられた。
著者
田井 健太郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究プロジェクトでは、近世兵法書を用い、中世に展開された武術の特性について、戦闘技法構造の側面と萌芽的武士倫理性との関連の側面から明らかにした。また、兵法書の中での近世初期の武士倫理が、戦闘者的武士身分観と士的武士身分観の混在状態から、武を司る者による徳治という倫理観への発展がみられることを明らかにした。
著者
二宮 彩子 増田 敦子 小泉 仁子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

平均年齢67歳の高齢者27名(男性14名女性13名)に対して、ベッド及び和式布団から起き上がる際の血圧変動について検討を行った。tilt-up試験のように受動的な起立ではなく、圧受容器反射の違いを考慮し日常生活で行われる能動的な起立方法を用いて、仰臥位から立位への姿勢変換時における血圧データを収集した。起立直後の血圧最低値からその後血圧が上昇をする態様を観察した結果、血圧の最低値に対する最高値の割合は、ベッドの場合125%、和式布団の場合134%であった(収縮期血圧)。同じく拡張期血圧においては、ベッドでは108%、和式布団では120%の上昇が見られた。拡張期血圧、収縮期血圧それぞれにおいて、ベッドと和式布団との間で上昇率に有意差が認められた。このことは和式布団からの起き上がりはベッドの場合に比べて、血圧の変動が大きいことを示唆していると思われる。脈圧に関しては、収縮期血圧の変動が拡張期血圧の変動に比して大きいため、起立直後一時的に安静時の約4割にまで減少していた。主観的なめまい、ふらつき感、浮遊感などの症状についての訴えは、ベッドからの起き上がり時で約1割、和式布団からの場合では約2割の者に見られた。特筆すべきことは本人にその自覚がなくても足元がふらついている者が2名、布団からの起き上がり時にみられたことである。ベッドの場合には一度、マットレスの縁で端座位の姿勢を保持することによって、上体を起こす際の静脈還流量減少が和式布団の場合に比べて少なく、同時に足腰への負担も軽減されること等から、布団からの起き上がりよりも身体にかかる負担が少なくてすむと考えられる。一方、和式布団での仰臥位から立位への姿勢変換時には、今回の研究結果からもわかるように血圧の変動がベッドに比べて大きい為、めまいやふらつきによる転倒の予防に十分配慮して立ち上がる必要がある。
著者
坂本 忍
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

精巣腫瘍の増加、精子数の減少、不妊の増加、乳癌の増加、子宮内膜症の増加などが「内分泌撹乱物質」との関連を懸念されている。我国の約13万人の女性が内膜症治療を受け、患者数は100万人を越えるとまで言われている。内膜症の発生と進展に与える内分泌撹乱物質の影響は、PCB、DDT、ビスフェノールAなどのように直接エストロゲンレセプターを介するものが先ず第一に考えられるが、ダイオキシン類のようにサイトカイン制御異常から免疫防御機構の破綻が原因することも大いに考えられる。流産防止の目的でジエチルスチルベストロール(DES)を投与された妊婦から生まれた子に、膣癌、子宮形成不全、精巣萎縮などが発生し大きな社会問題に成ったことは余りにも有名な話しである。本科学研究費補助金の援助を得て、イソフラボン、ビスフェノールAなど内分泌撹乱物質のマウス子宮腺筋症と乳癌の発生と進展に与える影響を、子宮腺筋症と乳癌が自然発生してくるSHNマウスを用いて検討した。SHNマウスは商業的には購入不可能な閉鎖系のために、当該実験動物施設内でのみ自己繁殖が可能であり、繁殖作業と実験作業を平行して行っている。そのために研究計画は未だ終了しておらず、現在も進行中であるが、一応の結果は得ている。また、本研究中に派生的に生じた興味ある実験結果を報告した。すなわち、血管新生阻害因子がこのマウス子宮腺筋症の進展を抑制するというものである(Fertil Steril 80 : 788-794,2003)。
著者
伊角 彩
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

東京都足立区で2015年度から実施している悉皆調査「子どもの健康・生活実態調査」を用いて 、小学生高学年の子どもの自殺リスク要因を縦断的に検討する。具体的には、小学校4年生時点および6年生時点の希死念慮を主要アウトカム、自己肯定感・幸福度・コーピング・抑うつ傾向を副次アウトカムとして、1)家庭の経済的状況、2)家族構成の変化、3)ネガティブな親子の関わり(虐待傾向を含む)、4)友人と地域とのつながり、5 )いじめられた経験とボジティブな親子の関わりの交互作用との関連を調べる。
著者
MATIN KHAIRUL 田上 順次 花田 信弘 北迫 勇一
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

新型PC-software(EPC-2000)導入人工口腔装置(AMS:新名称Oral Biofilm Reactor:OBR)の開発を行い、人工biofilmを形成する事に成功した。う蝕原因菌や栄養源を、速度を制御しながら滴下する事により、口腔内に類似した環境を作る事が可能となった。初期う蝕・二次う蝕の発生メカニズムの解明:牛歯・ヒト抜去歯切片をOBRにて人工biofilmを形成し、肉眼所見にてWhite Spot Enamel Lesionを確認した。その後定量的光誘導蛍光装置(QLF)及び走査型電子顕微鏡(SEM)により、表層下脱灰が認められた。さらに分散形X線分析装置(EDS)を用いて元素分析を行い、無機質のピークの減少も確認できた。また、牛歯前歯・ヒト抜去歯に形成した窩洞内にコンポジットレジンを充填した試料を使用し、複数う蝕原因菌を用いて人工biofilmを形成し、二次う蝕を形成した。その後蛍光顕微鏡、SEM、Micro-CT等を用いて観察及び分析を行い境界部の脱灰processの一端が明らかになった。上記方法により、人工初期う蝕・二次う蝕モデルの確立及びその発生メカニズムの解明に成功した。う触・二次う蝕予防を考慮した歯科材料の検討:歯科におけるSelf-surface-cleaningの実現に向け、新規フッ素樹脂化合物(テフロン)応用修復材料及びフッ素オリゴマー含有コーティング材等を使用し、材料学的・細菌学的に研究を行った。その結果、表面性状の影響を加味した第二世代への移行を遂げた。新しいう蝕予防法の検討:Biofilmの主要構成要素であるglucanに焦点を置き、常在菌叢を破壊しないglucan溶解法を検討した。その結果、アルカリ電解水がglucan溶解に有効な事を見出した。また、RT-PCR及び二次元電気泳動等を用い、菌体定量及び菌表層タンパクに変化が認められ、glucan溶解メカニズム解明の一歩と成り得た。さらに上記二次う蝕モデルを用いて、様々な予防法の開発を行っている。
著者
上田 真保子 宮沢 孝幸 大保木 啓介
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

乳がん臨床試料から得た遺伝子発現解析で、レトロトランスポゾン由来の遺伝子である「Arc」と「Peg10」が高発現することを見出した。これらの遺伝子はレトロウイルスのGag遺伝子と相同で、ウイルス様の粒子(VLP)を形成し、乳がんの転移に関わる可能性が高い。またVLPを形成可能なタンパク質をコードする、レトロトランスポゾンがヒトゲノムに多数あることから、ArcやPeg10以外にもVLPを形成する遺伝子が存在する可能性がある。本研究では、乳がん試料からVLPを形成するレトロトランスポゾン由来遺伝子をすべて同定し、そのVLPが内包するRNAが乳がん治療に向けての新しい分子標的となりうるかを調べる。
著者
正田 若菜
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

カリウム(K)の排泄は、腎臓の遠位尿細管に存在するNa-Cl共輸送体(NCC)で調節されている。多量のKを摂取した時のKの排泄制御にはカルシニューリン(CaN)が関与しており、高Kが細胞内のカルシウム(Ca)を増加させ、活性化したCaNがNCCを脱リン酸化する機序が考えられている。しかしながら、高K負荷後どのように細胞内のCaが増加するのか、詳細な機序は不明である。本研究は、高K時にCaの流入経路となり得るNa/Ca交換輸送体(NCX)に着目し、NCX阻害剤や遺伝子改変マウスを用い、急性高K血症時のK排泄制御の詳細な分子機構を解明する。
著者
高橋 英彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

統合失調症患者の脳内における単語の表象ネットワークの乱れを脳内における単語の表象ネットワークにグラフ理論による解析を適応し、定量的に解析することを目的とする。対象は統合失調症患者で、臨床・心理データに加え、脳MRIを取得する。被験者に自然動画刺激を提示し、全脳活動をfMRIによって記録する。動画に含まる単語のラベル時系列と脳活動から、重み係数を求める。この過程で、単語をベクトルに変換する自然言語処理技術Word2Vecを用いる。脳内単語ベクトルの任意の2語の組み合わせの類似度を表した行列を得るこの行列から、隣接行列を作成し、グラフ理論による脳内の単語表象のネットワーク解析を行う。
著者
井上 昌次郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究者らが睡眠促進物質(SPS)の一成分として同定した酸化型グルタチオン(GSSG)は、還元型グルタチオン(GSH)とともに生体内に広く分布し、活性酸素の中和などによって解毒をおこない、生体防御にかかわることが知られている。また、中枢神経系では両物質がグルタミン酸作動性神経伝達を阻害することが知られている。一方、グルタミン酸は興奮性アミノ酸として重要な神経伝達物質であるが、その過剰は酸化窒素の生成を促進し、これが神経毒として作用すると理解されている。これらの事実から論理的に推論すると、睡眠促進物質としてのグルタチオンはグルタミン酸作動性神経伝達を阻害することによって睡眠を増強するが、このさいの睡眠には覚醒時の神経興奮によって生じたグルタミン酸過剰ないしは神経毒産生を解消する能動的な生理機能が賦与されているのではないか、という仮説に到達する。本研究は睡眠促進物質グルタチオンを通して生体防御に果たす睡眠機能について、このような革新的な発想を実験的に解析しようとするものである。実験動物に若い成体の雄ラットを用い、無拘束・無麻酔状態で、自発行動・脳波・筋電図・脳温を連続的にモニターした。第3脳室には微小量の睡眠物質溶波を連続注入するためのカニューレを慢性的に挿入した。これらの実験動物にGSSGまたはGSHを夜間の活動期に投与すると睡眠が有意に増加することがわかった。また、GSSGを明期に投与したのちに部分断眠または強制運動を負荷すると、体温上昇や睡眠潜時が有意に軽減されることがわかった。これらの結果は上の仮説に符合するものであり、さらなる解析により確証できるものと考えられる。
著者
山本 雄大 内田 篤治郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

心臓手術の術中に採血した検体で、誘電コアグロメーターを用いて全血凝固検査を行い、ROTEMによる測定と比較し、さらに、術直後の血液の分析結果と術後のドレーンからの出血量の相関について検討するプロトコールで、前向きの臨床研究を行った。また、組織因子に対する血液の反応性についても、誘電コアグロメーターで評価を行い、血漿中のtissue factor pathway inhibitor(TFPI)濃度との相関、トロンビン生成能との相関について検討した。本研究の対象は、人工心肺を用いる予定心臓血管手術を受ける患者100名であり、(1)麻酔導入後手術開始前、(2)人工心肺終了後・プロタミンによるヘパリン中和の終了時、(3)閉胸後手術終了時に採血し、誘電コアグロメーターによる測定、ROTEMによる測定、血算、凝固検査用に分注し、それぞれ検討を行った。本研究で得られたデータから、誘電コアグロメーターによって赤血球の連銭形成における誘電率の変化が血漿フィブリノーゲン濃度と相関することが本研究で示唆され、研究成果の発表を行った(EUROANAESTESIA 2020).対象となった心臓手術症例では、Calibrated automated thrombogramによって測定されたトロンビン生成能が、TFPI濃度の上昇などにより低下する症例が認められたが、誘電コアグロメーターにおけるClotting timeがトロンビン生成能の低下を反映して延長することが示された。
著者
小椋 麗子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-02-07

インプラント及びその対合歯に対して,咬合面上の各部位での咬合力,咬合感覚の測定を行い,インプラントへの咬合接触の付与様式を模索した.被験歯である下顎第一大臼歯部インプラントの咬合力には各測定点間で有意差は認められず,対合歯である上顎第一大臼歯では中央が頬側と比較して有意に高い結果となった.また,咬合感覚は上下顎共に各測定点間で有意な差は認められず,咬合力との相関も認められなかった.以上から,インプラントは咬合面のどの部位でも比較的安定した咬合力と咬みやすさを得られる一方,咬合感覚を得にくくなるため,天然歯よりも歯周組織やインプラント対合歯に対する影響を自覚しづらくなる可能性が示唆された.
著者
戸原 玄 稲次 基希 片桐 さやか
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

ヒトの腸管には多様な腸内細菌が生息し、これらの細菌は複雑な微生物生態系を形成しており、これを腸内細菌叢とよぶ。腸内細菌叢のバランスが崩れると、個体の免疫機構の異常、糖尿病など様々な疾患の発症および進展に影響することが報告されている。禁食となった患者に嚥下訓練を行うと、口腔と大腸が腸管を通じてつながっているため、経口摂取の再獲得が腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、脳卒中によって経管栄養となった被験者に摂食嚥下訓練を行い、経口摂取と腸内細菌叢との関連を細菌学的に検討する。
著者
三輪 全三 飯島 英世
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.研究目的 : 現在小児における歯髄の生死は主として電気刺激などの侵襲的な刺激に対する反応によって判断されていることが多い。本研究では、小児の歯髄から透過光光電脈波(TLP)を記録し、この脈波の有無が歯髄生活テストヘ応用が可能か否かを検討した。2.研究方法 : 予備実験として成人を被験者とし、今までに報告されている透過光光電脈波法(井川ら1983)によって健全歯の歯髄から脈波が検出できることを確認した。次に小児の健全歯(幼若永久歯および乳歯)からも同じように歯髄脈波が検出できることを確認した。方法は被験歯の印象模型から製作した個歯アダプターの口蓋側に付けられた光ファイバーを通して、歯に緑色の発光ダイオード(LED、ピーク値525nm)を照射し、この透過光を唇側から採取した。透過光はCdS光電セル(ピーク値、550nm)に導かれ、透過光量は交流増幅器を通しTransmitted Light Photoplethysmography(TLP)として被験者の指尖脈波と同時に記録した。記録はうす暗い部屋で、遮光性の黒色ラバーダムを装着した場合としない場合とに分けて行ない、歯周組織脈波の混入の影響を確認した。成人被験者において、局所麻酔前後でのTLP振幅の変化を観察した。TLP信号は後で平均加算し、脈波振幅は信号処理ソフトを使用して求めた。3.研究結果 : 1)成人および小児の被験者の健全歯から、指尖脈波に同期したTLPが検出された。小児の被験歯では成人と比較してTLPの脈波振幅は大きく、波形も明確であった。2)電気刺激に反応しなかった脱臼歯においてもわずかにTLPは記録された。しかし、再植歯では明瞭な波形は検出されなかった。3)ラバーダムの装着により信号の有意な減少は生じなかった。4)局所麻酔よって、TLP振幅が変化することからTLPは歯髄の血流を反映してると思われた。本法は非侵襲的で痛みを誘発せず、客観的であるため、外傷歯や幼若永久歯などの歯髄診断に有用であり、小児歯科臨床における検査法として応用できる可能性が示唆された。
著者
亀井 康富 菅波 孝祥
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「寝たきり」や「ギプス固定」等により骨格筋を使わない状態が続くと、骨格筋量が減少し、その機能が低下する(廃用性筋萎縮/アトロフィー)。しかし、この廃用性筋萎縮の生じるメカニズムは不明である。本研究は骨格筋量の調節分子として、廃用性筋萎縮時に著しく変動する転写因子であるFOX01および関連分子に着目し、骨格筋の萎縮・増量の分子機構の解明を目指し研究を行うものである。FOX01マウスの遺伝子発現および培養細胞を用いたin vitroの検討から、FOX01による筋萎縮はA)蛋白質分解の促進、B)細胞増殖抑制、C)蛋白質合成の抑制、という経路の遺伝子発現を増強するためであることが示唆された。さらに、絶食・再摂食のようなエネルギー状態の変動により骨格筋において核内受容体RXRγの遺伝子発現がFOX01と逆方向に変動することを見出した。さらに、骨格筋特異的にRXRγあるいはそのドミナントネガティブ変異体を過剰発現するトランスジェニックマウス(RXRγマウスおよびDN-RXRγマウス)を作製し、その骨格筋ではそれぞれSREBP1cの遺伝子発現が著しく増加あるいは減少していることを見出した。以前に作製していたFOX01を骨格筋で過剰発現するトランスジェニックマウス(FOX01マウス)ではSREBP1cおよびRXRγの遺伝子発現が減少していた。In vitroの解析によりFOX01はRXR/LXRを介するSREBP1cの遺伝子活性化を抑制する事を明らかにした。これらの結果は、骨格筋においてSREBP1cの遺伝子発現はRXR/LXRにより活性化され、FOX01により負に調節されることをin vivo,in vitroで示すものである。
著者
小薮 大輔 飛龍 志津子 小林 耕太 東山 大毅 福井 大
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

本年度はこれまでベトナムで収集したコウモリ類の胎子標本を発生ステージ表を参照してステージの同定を行った。また収集した標本はPFA固定、カルノア固定、エタノール固定をそれぞれ行った。それらをマイクロCTによる三次元的非破壊撮影を行ったのち、パラフィン包埋標本・凍結標本を順次作成し、アセチレッテドチューブリンを用いた神経系の免疫組織化学染色、ヘマトキシリン・エオシンを用いた筋系・硬骨・軟骨の組織染色を行った。また、Ptch1, Ihh, Runx2, Sox9, Aggrecan 各遺伝子のRNAプローブの作成を進め、その合成に成功した。予察的にこれらのRNAプローブによるin situ ハイブリダイゼーション実験を開始したが、高品質の染色結果を得ることに成功した。新年度以降は本格的にこれらを用いてコウモリ類における舌骨発生に関連する遺伝子の発現パターンの把握を目指す。また、野外においてコウモリ類の超音波発生および聴取の行動を三次元動画記録、音声ソノグラム記録を行い、コウモリ類のエコーロケーション行動の把握につとめた。さらに、野外で捕獲したコウモリ類の成体に対し、脳幹上丘に刺激用双極電極を挿入して刺激に対する超音波発声および耳舌骨を含む外耳の動きを計測した。刺激部位に逆行性神経トレーサ・フロオロゴールドを注入し、刺激量および刺激部位を変量として、外耳の動き、発声タイミング、発声の音響特性が脳幹上丘内でどのように表象されているかの把握を進めた。また本年度はタイ・プーケットで行われたコウモリ類国際研究会議に参加し、本課題に大きく関連した研究発表を行うとともに、各国研究者と討議を行った。
著者
松浦 孝典
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

GBR(骨再生誘導法)を行なったインプラント周囲組織に対し炎症を惹起させると、使用した骨補填材によって炎症の影響に差があるか組織学的に評価することを目的として実験を行った。イヌ下顎骨顎堤に骨欠損を作製しインプラントを埋入、インプラント周囲の欠損部に自家骨、異種骨を補填し治癒後に実験的周囲炎を惹起させた。組織切片上で計測したBIC、新生骨面積、骨吸収面積などの各パラメーター間には統計学的に有意な差を認めなかった。本結果より、異なる骨移植材を用いたGBR後のインプラント周囲組織の炎症の影響には差がないことが示唆された。
著者
奈良 信雄 村上 直巳
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

急性骨髄性白血病の治療成績は向上しているが、現在においてもなお難治性である。今後治療成績をさらに向上させるには、患者の予後を正確に予知し、個々の患者に即応した理論的な治療を行う必要がある。本研究では、白血病細胞の増殖能こちにサイトカイン遺伝子発現と予後が相関するかどうかを検討した。まず白血病細胞集団の増殖は、その中の一部の白血病性幹細胞によって維持されていることが確認された。白血病性幹細胞には自己再性能があり、その強弱が患者の予後と相関する事実が見出された。そこで、白血病性幹細胞の増殖機構をさらに検討した。白血病性幹細胞の増殖は、G-CSF、GM-CSF、IL-3、SCFなどのサイトカインによって刺激されることが分かった。その刺激効果は患者間で差異があったが、CSFの刺激効果と患者の予後には有意な相関は見られなかった。白血病細胞にはこれらのCSF遺伝子の発現している症例があった。ただし、サイトカイン遺伝子発現と患者の予後には有意な関連は見られなかった。白血病性幹細胞の自己再生能は種々のサイトカインネットワークによる制御を受けていることが立証されたが、その詳細な機構は解決されていない。今後の研究において、白血病性幹細胞の増殖機構を分子レベルで明らかにし、白血病性幹細胞の根絶を目指した治療体系の確立が重要と考えられる。