著者
芝本 武夫
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
演習林 (ISSN:04934326)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.105-112, 1995

東京大学演習林100周年記念(2)
著者
金 炫
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.1-69, 1999

本研究は5章から構成されている。第I章では,本研究の背景,目的,対象地について述べ,さらに研究の進め方の立脚点を明確にして,温泉地研究の中での本研究の位置づけを行った。本研究の目的は,(1)韓国の温泉地開発の現状を把握するとともに,法制度を中心とした韓日両国の相違点の分析を通して韓国における温泉地開発の特徴を明らかにし,韓国での温泉地開発の今後の課題を考察する。(2)韓日の温泉地における街路空間と街路景観の実態を明らかにし,現状の温泉地景観の特徴を把握する。(3)韓日両国の温泉地の景観評価構造と両国の差異を明らかにし,韓国における今後の温泉リゾート地の景観のあり方に関して考察することの3点である。研究の対象地としては,韓国において,宿泊施設やレクリエーション施設などの集積があり,それが資源となって明確な温泉街が形成されている水安堡温泉,白岩温泉,釜谷温泉を選定した。一方日本においては,伝統的な温泉地景観を有する代表格であり,独自に景観条例を制定し,伝統的な町並みの保存に努めている城崎温泉を対象地とした。
著者
泉 桂子
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.21-106, 2000

近年,森林の公益的機能に対する一般の関心が高まりつつある。特に森林の水源かん養機能は森林管理とも密接に関係している。筆者は既に東京都水源林及び横浜市道志水源かん養林を対象とした経営計画の変遷,東京都水源林の形成過程を明らかにしてきた。今回は,山梨県甲府市により水道水源かん養のために所有・管理されている甲府市水源林(昭和22(1947)年経営開始)を対象として取り上げた。水源林問題は河川をめぐる上下流の相互関係とも捉えられ,水源林経営問題の解明に当たってはこの上下流の関係成立過程が極めて重要な意味を持つ。そこで本研究では,甲府市水源林の経営前史における上下流の相互関係について明らかにすることを目的とした。分析に当たっては(1)上下流対立の発生と解消過程(2)森林の所有と利用の変遷(3)当時の森林経営計画の3点に着目した。
著者
竹本 太郎
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.116, pp.23-99, 2006

1. 研究の目的 学校林をめぐる共同関係は「財産」を基底にした「財産共同関係」として明治後期から大正初期にかけて誕生し,その後,昭和戦前期における「愛郷」の普及によって種々の「愛郷共同関係」に拡張したので,すでに入会集団とは異なるものに変容していると考えられる。これを前提として,昭和戦後期・現代における研究の目的を次のように設定し,かつ,森林利用形態論における学校林の位置づけを,目的2)に関連させて論じた。目的1) 天皇制支配の手段として戦前に全国的な展開を見せた愛林日や学校林造成が,戦後に植樹祭や学校植林となって継続した経緯および理由を明らかにする。目的2) そうして戦後に引き継がれた学校林およびそれをめぐる共同関係の地域社会における存在価値を,昭和の町村合併に伴う林野所有の移動から説明する。目的3) 合併を経て地方自治体制が整備されるなかで学校林が消滅,衰退する経緯と,里山保全や環境教育の場として展開し始めた現在の状況を明らかにする。2. 考察1) GHQ/SCAP の立場から考えると,急激な民主化と分権化によって引き起こされる社会不安への対応として愛林日や学校林を位置づけていたと思われる。まず1 点目は絶対的な存在としての天皇を失うことにより国民のあいだに生じる不安であり,そして2点目は農地改革に引き続く山林解放を恐れることにより山林地主のあいだに生じる不安であった。それゆえ,愛林日の復活は天皇を国土復興に担ぎ上げることによる1 点目の不安の払拭であり,学校植林運動の開始は一連の「挙国造林に関する決議」などと同様の造林奨励による2 点目の不安の払拭であった。 しかし,その払拭を実際に思いついたのはGHQ/SCAPではなく山林局(1947年4月より林野局,1949年5月より林野庁)官僚や森林愛護連盟であった。戦前の組織やシステムを維持することに対してGHQ/SCAP は少なからず抵抗するはずで,林野官僚や関係団体は愛林日や学校林を提案する際に次の2点を工夫する必要があった。1点目は愛林日や学校林がそもそもは米国の行事に由来することを主張することであり,2点目は天皇制支配の手段として用いられた過去を「緑化」というイメージにより刷新することであった。 一方で,急激な民主化と分権化により財源の確保も不十分なままに森林管理や校舎建築といった公共事業を一手に引き受けることになった地域社会の立場から考えると,心理的な基盤としては天皇参加の愛林日による国土復興に向けた一致団結が必要とされ,物理的な基盤としては学校林造成による校舎建築財源の確保が必要とされた。その結果,敗戦により「愛国」の箍を外された「愛郷共同関係」が紐帯を自生的に強めることになった。 このようにGHQ/SCAP,林野官僚および関係団体,地域社会のそれぞれの思惑が絡み合いつつ,愛林日が復活し,第1次学校植林5ヵ年計画が開始した,といえる。2. 考察2)町村合併に伴う学校林の所有移動は,無条件もしくは条件付で(すなわち学校林として維持することを条件に)新市町村に統一されるか,さもなくば前町村が財産区を設置して財産区有林の一部として学校林を管理経営するものが多かったのであろう。しかし,学校と地域社会との関係は一様ではなく非常に複雑なものがあらわれる。松尾財産区の学校林は,まず財産区有林のすべてが学校林であるという点,次に松尾を含む複数の前村組合を単位にする旧財産区有林のなかに学校林があるという点,において特殊である。学校林は,実際に植林,管理経営し,その収益を享受した体験をもつ住民や児童生徒にとって,旧財産区とは別に新財産区を設置してでも管理経営するべき存在であったと考えられる。高瀬生産森林組合有の森林は,部落有林野を統一し官行造林を実施した経緯をもつ高瀬村の村有林から成り立っている。まだ新財産区制度が導入される前の町村合併において全戸住民を権利者にして設立した任意団体,高瀬植林組合の性格が高瀬生産森林組合にそのまま受け継がれている。学校林は同生産森林組合にとって部落有林野統一と官行造林の契機となった象徴的存在である。相原保善会は,財産区,生産森林組合を設立するものの最終的に財団法人という法人格によって「地区民の公共の福祉」のための財産保全を可能にする。学校林は「地区民の公共の福祉」のため最初に設置された財産であった。町村合併に伴って財産の移動が検討されるとき一般的にみれば部落有に分解するベクトルと新市町村有に統一するベクトルが同時に働く。これに対して,「愛郷共同関係」は学校林が児童生徒や地区全戸によって管理経営されてきたことを訴える。すなわち「地区民の公共の福祉」というベクトルを掲げる。そして財産区,生産森林組合,財団法人などの制度的な外形を与えることによって「財産共同関係」を固定化し,自然村から自由を奪うと同時に新市町村への統一を防御したのである。3. 考察3)日本はGHQ/SCAPからの独立を果たし,朝鮮戦争をきっかけにして高度経済成長を開始する。この時期に第2次学校植林5ヶ年計画がはじまるが,もはや財産としての学校林を国策として奨励する必要はなくなっていた。合併により前町村が学校設置主体としての権限を失っていくだけでなく,義務教育費国庫負担金などの補助金制度によって中央から地方への統制が復活したである。新市町村にとって学校整備に必要なものは補助金であって地域社会の力ではなかった。そのため,残像としての「緑化」が以降の学校植林運動を牽引せざるを得ない。全国各地に出現する「基金条例」にみられるように財産としての学校林は1960年代から1970年代にかけてフェードアウトしていった。 そして,1970年代以降,世界的に自然環境の悪化が危惧されるなか,国内においても里山保全や環境教育の場としての学校林に対する関心が高まり始める。そして1990年代後半より2000年代前半にかけて市町村,都道府県,国レベルで学校林に関する施策が開始されるようになる。飯田市における「学友林整備事業」はその典型例であった 4. 森林利用形態論における学校林の位置づけ 直轄利用形態の変容という観点から町村合併における学校林の移動について若干の考察を加えるならば,これまで川島武宜らによる森林利用形態論において直轄利用形態は,道路,橋梁,消防,学校などの公共事業への支出により,林野を管理経営する自然村が地区内における権力を維持する手段としてみなされていた。しかし学校林は不自由な直轄利用形態,あえて名づけるならば「公共利用形態」とでもいうべきものに姿を変えた。現在も地域社会によって管理経営される学校林とは,直轄利用形態に孕まれる公共利用形態としての性格が,児童生徒や地区全戸の管理経営によって強められ,かつ,合併に伴う制度的な外形の導入によって固定化された,かなり特殊なものといえるだろう
著者
根岸 賢一郎 八木 喜徳郎
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.74, pp.p149-164, 1985-01

アカマツ2個体,ヒノキ1個体につき,各1か所の幹直径の変動を,ひずみ計利用の生長計によって,1977年5月から1978年8月までの16か月間にわたり計測した。幹直径は早朝の5時~8時に最大,昼すぎの13時~16時に最小のことが多い。幹直径の日変化の幅は,日射量の多い晴天の日が曇天や雨天より大きく,また生長のさかんな季節が冬よりも大きい。冬の最低気温が-4.0℃~-9.0℃にさがるような寒い早朝には,幹に寒冷収縮のおこることがある。肥大生長による幹直径の増加は,春なかばから秋なかばまで続く。アカマツ試料木では冬に,ゆるやかな幹直径の減少がみとめられた。Diurnal fluctuations in the stem diameter of the two Pinus densiflora trees and the one Chamaecyparis obtusa tree were recorded with an electric strain gauge dendrograph for a 16-month period May, 1977 to August, 1978. The maximum stem diameter was found at a time from 5 a.m. to 8 a.m. and the minimum one from 1 p.m. to 4 p.m. in each day usually. The diurnal fluctuations in stem diameter were remarkable on clear days in the growing season. In the early morning of the winter, a shrinkage of stem diameter occurred frequently when the minimum air temperature fell below -4℃. An increase in stem diameter probably caused by cambial growth was observed from late April or early May to mid October or early November. In Pinus densiflora trees, a gradual decrease in stem diameter continued throughout the winter.
著者
泉 桂子
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.133-184, 1998

近年,森林の公益的機能に対する一般の関心が高まりつつある中で,従来の木材生産中心の森林経営計画にかわって,森林の木材生産機能と公益的機能の両方に配慮した森林経営計画が求められている。このような多目的型の森林経営計画のあり方を展望する上で,90年余の経営蓄積を持ち,日本を代表する大都市水道局の所有・管理する森林である東京都水道水源林を対象として,研究を進めていく。筆者はこれまで,東京都水源林の経営計画の変遷について報告し,現在の経営計画は水源かん養機能高度発揮を目的とした水源林独自のものであることを明らかにした。しかし,水源林問題は河川をめぐる上下流の相互関係とも捉えられ,経営計画の変遷問題の解明にあたっても,この上下流の関係成立過程が極めて重要な意味を持つ。そこで,本研究では,水源林の経営前史における上下流の相互関係について明らかにすることを目的とした。
著者
YOKOTA Shun-ichi
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.155-164, 1953
被引用文献数
2

1. Conidial size tends to be small in accordance with the increase of concenrtions of glucose in media, and at 5 per cent in concentrations of glucose, 3-septate conidia cease to be formed. In addition, at high concentrations of glucose in media, granules appear abundantly and at 10 per cent, granules give place to oil drops. 2. 3-septate conidia cease to be formed when the concentrations of asparagine in media reach 0.5 per cent. Definite tendency of variation in conidial size and shape cannot be recognized. 3. Though irregularly large conidia appear at 13℃., it is recognized that the conidial size tends to increase in accordance with the rise of temperature of incubation. 4. Influence of duration of incubation upon conidial size and shape is obscure.菌類を培養する場合,菌類の現す性質は培養条件を様々に変へる事によつて著しい影響を受ける。菌類に対する培養条件としては非常に多くの因子が考へられるが,本報に於ては培地の炭素源及び窒素源の濃度の変化,培養温度及び培養期間の変化がFusarium solaniのconidiaの性質,特にconidiaの大さ及び内容に及ぼす影響に就て実験を行つた結果を簡単に述べる。1.glucose-seriesとして標準培養基中のglucoseだけを様々の濃度に変化させた場合に現れるconidiaの性質の変化を観察した。此の場合glucoseの濃度が高くなるにつれてconidiaの大さは,小さくなる傾向を示し,濃度が5%に至ると3-septate conidiaの形成が止む。同時に元来顆粒質に富むconidiaの内容は,濃度が10%になると,油滴が之に代つて現れて来る。2.asparagineの濃度を1.と同様に色々に変へた場合,0.5%で3-septate conidiaの形成が止むが,濃度の増加と之に伴つて生ずるconidiaの大さとの関係は明瞭でない。conidiaの形成に対しては,asparagineはglucoseよりも影響する所大である如くである。3.温度とconidiaの大さとの関係は,温度の上昇と共にconidiaが大きくなる傾向が見られる。4.培養期間のconidiaの性質に及ぼす影響は明瞭でない。なほ,本研究の費用の一部は,文部省科学研究助成補助金によつた。記して謝意を表する。
著者
赤池 慎吾
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.121, pp.173-208, 2009-06-20 (Released:2012-07-17)

官地民木とは,国が土地を所有し,住民がそこに生立する立木を所有する形態の森林であり,制度上は国有林に区分される。官地民木は,わが国の林政史において極めて希な形態であり,その大部分は青森県津軽地方に偏在している。本論文は,資料に基づいて,官地民木の歴史的展開を整理し,その成立要因及び国有林管理経営における取り扱いを明らかにした。官地民木の成立は,藩有地に住民が自費で植栽・保護管理してきた林野を,明治初期の官民有区分に際して土地所有権は官有地に編入し,使用収益権は立木所有権として住民が継承したことに始まる。官地民木の形態が青森県津軽地方に偏在し,その後も制度として存続した要因として,藩と住民との間に分収契約が結ばれておらず政府は部分林として処理できなかったこと,青森県下における官民有区分の査定基準は極めて厳格であり,その後も官林直轄が早期に実施されたことで地方庁主管による官有地の民有移譲が行われなかったこと,が挙げられる。官地民木は,森林法制定以前においては旧藩時代の林野制度を基準とし,制定以後にあっては保安林編入の有無を基準として有償貸付・無償貸付の区分がなされており,このことは林野の有する公益性が国有林管理経営における官地民木の取り扱い区分の決定要因となったといえよう。 Kanchiminboku was a system of mixed ownership forest, whereby the forestland was owned by the state, while the stumpage on the land was owned by the village or local residents. This unique combination of national and private ownership was created in the Tsugaru area of Aomori prefecture in Northern Japan, but the existence of such an ownership system within National Forest management was extremely rare in Japanese forestry. This paper aims to determine the reasons why Kanchiminboku was established in the Tsugaru area, and to explain the stumpage rights under National Forest management. The establishment of Kanchiminboku began after the Meiji Restoration in 1876 when landownership rights and use rights were conferred on forests which residents had traditionally planted and cultivated at their own expense. The main reasons why the Kanchiminboku system emerged here and not elsewhere were the lack of any profitsharing contracts between the Hirosaki fief and local residents, the stringent division of national and private land in Aomori prefecture, and the fact that Kanchiminboku was established soon after the designation of the National Forest thus precluding further negotiations. The fiefdom forest system which had been in operation prior to the establishment of the Forest Law in 1897 was replaced by a rent payment system dependent on the presence of protective forest. Thus public benefit in National Forest management can be seen as the deciding factor in the establishment of Kanchiminboku.
著者
奥山 洋一郎 永田 信
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.123, pp.1-15, 2010-07

森林教育の場である学校林がその所在する市町村の立地により,どのような差異があるのかについて,2001 年に実施した学校林現況調査データを分析することで明らかにした。学校林現況調査において所在が確認された学校林から,森林教育を実施することが多いと想定される小学校と中学校を抽出した。その上で,その所在市町村を農業地域類型と振興山村指定状況から5 地域に分類して,そのうち都市地域(都市),平地農村(農村),山間農業地域(山村)の3 地域の所在する学校林3637 箇所について分析した。<改行>その結果,都市の学校林は,校地から距離が近く,樹種は針葉樹のみという学校林は比較的少数であり,広葉樹や果樹も含めて多様な林相を持つ割合が大きかった。また,設置目的は,教育目的に類するものの割合が比較的大きかった。管理については,学校関係者のみで実施している例が多いが,外部主体では地域住民の関わりが大きい。利用に関しては,他の立地条件に比べて活発であり,半数近い学校林で利用されていた。山村は,校地から遠隔地の学校林が多く,樹種は針葉樹のみという学校林が多かった。設置目的は林業教育が多く,また学校の財産としての利用を目的とした伐採の実績も多かった。管理主体では,森林組合の割合が他よりも多かった。利用状況は一番低調であった。農村については,都市と山村の中間的な性格を持つことがわかった。ただし,設置目的や利用内容を見ると基本財産としての目的が比較的多く,財産としての森林整備も実施されていた。この点は,地域共同体の組織力とも関わりがあると予想される。学校林の整備と利用を活性化するためには,これら立地による相違を意識した,例えば都市においては森林ボランティア団体,山村においては地域共同体等の地域主体との連携が必要である。The differences in school forests depending on their location in cities, towns and villageswere examined using data from the school forest situation survey which was carried out in 2001.Data for elementary and junior high schools were extracted from the school survey where theirexistence was identified in the school forest situation survey. Municipalities were classified byagricultural area type and designated area under the Mountainous Regions Development Laws.Then, 3637 school forests was analyzed, being located in city areas, flatland farm villagesand mountain village areas. It was found that school forests located in city areas were close indistance to the school premises and most of them had diverse growing stocks. In the managementof these forests, community residents played a relatively major role. A number of them wererelatively actively used with half of such school forest exhibiting some type or usage. Schoolforests located in mountain villages were more distant from the school and many of them wereexclusively coniferous in their composition. The purposes to which these were put were mainlyforestry education, and there were many cases of felling for use by the school. Forest owners'cooperative supported the management. The number of those used was lower than in otherareas. The farm village showed results that were between those of a city and mountain villages.However, they were likely to be used for school property purpose than forests in the othercategories. To activate the maintenance and use of school forests, it was necessary to strengthenthe relationship between the local players depending on the differences of the location conditions.
著者
蒲谷 肇
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.78, pp.p67-82, 1988-02
被引用文献数
8

千葉県南部の常緑広葉樹林(0.18ha)の下層植生を1971年,1976年,1986年の3回調査した。1986年には,それ以前にくらべ,下層植生に変化が見られた。変化はニホンジカが嗜好する種で大きいことから1980年頃から増加したニホンジカによるものと推測された。林床ではテイカカズラ,アオキ,アカガシ,ヤブコウジ,フユイチゴが大幅に減少した。低木層のアオキ,カクレミノ,クロガネモチについては樹高が2m未満の個体は絶滅した。非嗜好性植物として知られているイズセンリョウ,ホソバカナワラビ,ウラジロ,ヤブニッケイ,アセビの増減は少なかった。嗜好性植物とされるサカキ,ヒサカキ,ヤブツバキ,モチノキ,ヤブムラサキの本調査地での食害ははっきりしなかった。これは本地域のシカの生息密度が低いことが関係していると思われる。Changes of undergrowth in a broad-leaved evergreen forest were surveyed in 1971, 1976 and 1986, and discussed in relation to grazing effects by sika deer. The study forest was at the Tokyo Uiversity Forest in Chiba, in the southern part of Chiba prefecture, 140°8′E, 35°9′N, ca. 300m a. s. l, 13.9℃ in annual mean temperature, and 2,230mm in annual mean precipitation, and belongs to the upper warm temperate zone. Dominant species of the upper tree-layer ranged from 13m to 21m in height were Castanopsis cuspidata var. sieboldii and Quercus acuta. Changes of the upper tree-layer during years 1976 to 1986 were slight, while those of the lower teree-layer and the forest floor vegetation were remarkable. Trees of Aucuba japonica, Dendropanax trifidus and llex rotunda less than 2m in height were abundant in 1971 and 1976, but disappeared in 1986. The coverages of Trachelospermum asiaticum, Aucuba japonica, Quercus acuta and Ardisia japonica of the forest floor vegetation in 1986 were 1/7, 1/11, 1/8 and 1/4 of those in 1971, respectively. Changes of the dominance degree were little in unpalatable species to sika deer, such as Maesa japonica, Rumohra aristata, Gleichenia japonica, Cinnamomum japonicum and Pieris japonica. The causes of decrease of palatable species were considered to be due to the population increase of sika deer (Cervus nippon) population since around 1980.
著者
石野 貴久 寺田 珠実 鮫島 正浩 鴨田 重裕
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.126, pp.45-58, 2012-02-25

イチイ属樹木特有の抽出成分として知られるタキソールは,幅広い癌に効果のある強力な抗癌剤であるが,供給不足のため依然として高価な薬剤である。この供給不足解消の新たな手段として,内生菌の利用に着目した。イチイに加え,同じイチイ科であるカヤの内生菌の単離同定を行い,そのタキソール生産可能性についてタキソール生成酵素遺伝子の有無という観点から検討を行った。まず,イチイからは一Phomopsis属を中心に10種類の菌が,カヤはXylaria属を中心に11種類の菌が単離された。次に,既知のタキソール生合成関連酵素の内,特に利用性の高いTXS(taxadienesynthase), BAPT(3-amino-3-phenylpropanoyl-13-O-transeferase),TαH(taxadiene 13α hydroxylase)という3つの酵素遺伝子の存在可能性を,ドットプロットハイブリダイゼーション法を行うことで調べ,一次スクリーニングとした。その結果,イチイ内生菌[Collelotrichum gloeosporioides],[Paraconiothyrium microdiplodia],カヤ内生菌[Xylariaceae sp, Cordyceps diplerigene],[Sordariomycete]の4菌種において,3種全てのプローブでハイブリダイズした。このうち,カヤ内生菌のCordyceps dipterigeneに注目して,サザンハイブリダイゼーションを行ったところ,上記3種の酵素のプローブでバンドが確認できた。その部分をゲル抽出してテンプレートとし,PCRを行い,塩基配列を読んだところ,上記3つの酵素遺伝子と95%以上の高い相同性を示し,タキソール生成酵素遺伝子を有する微生物を初めて発見することができた。
著者
大宮 直記
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.125-176, 1995

本研究は,今後の風景計画の検討に資するために,社会において共有される風景の捉え方の様式の存在を確認し,その近代から現代における変遷を明らかにして,変化の潮流について考察を行った。「序章」においては,背景,目的,対象,方法について述べた。近年まちづくりにおけるアメニティを考えるに際し,市民個々人の思い出や価値観を反映させた「景観づくり」,「風景づくり」の重要性が益々高まってきた。しかし一方で,そのような人それぞれの主観性に基づく風景論的立場では,普遍的結論へと帰納することが難しいともされてきた。しかしながら,デュルケムを中心とする社会学者らにより,個人を越え,集合的に共有される社会的意識である「集合意識」が提唱されており,風景の捉え方においても,そうした社会に共通する部分が存在することが明らかになれば,新しい風景計画に役立つと考え,研究を進めた。
著者
朴 相俊 岩岡 正博 酒井 秀夫 小林 洋司
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.92, pp.p175-197, 1994-12

近年,全国各地で高性能林業機械を導入して新たな林業を展開している。今回はそのなかで地形が急峻な山岳林における間伐材搬出等の集材作業仕組みとして評価が高い,タワーヤーダによる間伐作業における適切な作業システムと適正路網密度について調査し,結果を得た。即ち,間伐では単木材積が大きいほど能率的であり,またクランプ式搬器によって集材作業功程が高くなり,横取り作業の効率も3倍程度向上することが分かった。タワーヤーダによる集材作業システムを前提にした適正路網密度は40m/ha以上の高密度となった。Recentry, high quality forest machines like harvesters, feller-bunchers, processors and mobile tower-yarders have been used in Japanese forest since several years ago in order to improve its difficult forest operational conditions. In this paper we introduce an outline and results of thinning operation systems with a mobile tower-yader and a profitable forestroad density, that were performed in Tokyo University Forest at Chichibu and Chiba. A profitable forest-road density is over 40 m/ha for thinning operation systems with a mobile tower-yarder in study area A, B.
著者
YOKOTA Shun-ichi
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.165-171, 1956

It is natural that butt rot fungi should invade healthy trees through scars on the trunk. Besides, one of the modes of infection and propagation of butt rot was discovered by dissecting in detail decayed butts and roots of Sakhalin fir (Abies sachalinensis MAST.) grown in the natural forest in the Tokyo University Forest, Hokkaido.
著者
奥山 洋一郎
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.151-201, 1999

大学演習林は約130,000haという広大な面積を持つが,その広大な面積の必要性や一部大学への集中に対しては,戦後の演習林水平化運動,共同研究利用林構想という演習林当局の議論や行政監察による勧告でも問題とされてきた。本研究では演習林がこのような大面積を持つに至った経緯を明らかにすることを目的として,戦前期における社会の要請と演習林の対応の経緯について検証を行った。そこから現代につながる課題を考察した。資料としては東大演習林所蔵の各種往復文書,書類綴り,予算関係書類等の資料を用いて実証的に分析した。対象時期は演習林が創設された1894(明治27)年から戦前期までであり,特に1921(大正10)年から1934(昭和9)年までに行われた国有財産整理事業による演習林縮小の議論を中心とした。1921(大正10)年に成立した「国有財産法」により,それまで各省庁が独自に管理を行っていた国有財産について初めて統一的に規定された。同法は,国有財産の内で利用が本来の目的から逸脱したり,意義を失ったものについては処分を行うとした。そして,各省庁国有財産の評価を行う国有財産調査会が設置されて,国有財産整理事業が実施された。同事業は財政一元化を目指す大蔵省と各省庁の既得権益確保のせめぎ合いであり,公用財産として陸軍省演習地に次ぐ大面積であった演習林にも,厳しい縮小要求がなされた。北海道所在国有財産を対象とした「国有財産整理案(第一次)」(1921年11月9日閣議決定)では,東大(約25,000ha),北大(約60,000ha(4カ所))の演習林を一演習林当たり1,000ha程度へと縮小するように要求された。これに対して,東大側は林学に関する教育研究には保続的林業経営が可能な面積が必要であり,東大北海道演習林は北海道内国有林の一施業区と面積がほぼ等しく縮小は不可能と主張した。同様の縮小要求は台湾,樺太演習林にもなされて,その後,国有財産調査会において演習林の帝国大学への集中,所在地域の偏りについて共同利用化の検討や,同時に演習林の名称を変更して経営面に配慮をするべきだとする意見が採択された。東大側は教育研究における演習林の重要性を主張して,演習林の集中,偏りについては学生数や全学の予算規模から考えるなら東大は他大学の2倍の面積を持つ必要があり,演習林の財産価値が高まったのは多年の投資や努力の結果であるとした。このような大学,文部省側の抵抗で演習林の縮小は進行せず,その後,戦争という時局の変化で国有財産整理事業は1936年に打ち切られて,演習林縮小や名称変更は実行されなかった。そして,戦時体制へ移行して,海外占領地への演習林拡大が行われたのである。
著者
林 宇一
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
演習林 (ISSN:04934326)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-39, 2011-03

林業労働において,一般求職者の応募が増加傾向にあり,森林組合作業班員の雇用は一般労働市場における位置づけという側面から捉えていく必要がある。そこで,本報告では,兵庫県但馬地域内の7森林組合作業班員を対象に,現在の就労状態及び彼らが林業を職業としてどのように捉えているのかを明らかにすることを目的とした。具体的には,回答者の属性,回答者への森林組合の待遇,そして,回答者の森林組合の仕事に対する認識の3つの視点から把握した。結果,回答者は殆どが既婚者で家族と同居しており,新卒は少なく,殆どが1回以上の職業経験を経た転職者で,家族とのつながりが強く,地元就職志向が非常に強い事が示唆された。また,林業の自然を相手に出来る点が求職者を引き付け,危険な部分が求職者から敬遠される点であることがわかった。また,賃金の高低が林業の就職理由と離職理由の上位に位置しており,他の職業選択と同様,林業の職業選択や就労継続,仕事上の関心事として賃金が大きな影響を与えていることが示唆された。
著者
田中 延亮 蔵治 光一郎 白木 克繁 鈴木 祐紀 鈴木 雅一 太田 猛彦 鈴木 誠
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.197-240, 2005

東京大学大学院附属千葉演習林の袋山沢試験流域のスギ・ヒノキ壮齢林において,樹冠通過雨量と樹幹流下量の研究をおこなった。その結果,スギ林の一雨降水量(P )と樹冠通過雨量(Tf )の関係はTf = 0.877P –2.443で,またヒノキ林ではTf = 0.825P –2.178で表すことができた。全観測期間の総降水量に対するTf の割合はスギ林で79%,ヒノキ林で74%であった。また,同じ試験地で行われた単木の樹幹流下量の研究成果を考慮して,一雨降水量と上層木の樹幹流下量(Sf )の平均的な関係を推定した結果,スギ林でSf =0.064P –0.447,ヒノキ林ではSf =0.114P –0.798という関係式が得られた。また,Sf の全期間の総降水量に対する割合は,スギ林で5%,ヒノキ林で10%であった。これらのTf とSf の集計の結果,6ヶ月ないしは1年間の降水量に対する樹冠遮断量の割合は,通常,スギ林において17%前後,ヒノキ林において16-18%前後であった。本報で得られたTf やSf の値や回帰式の係数は,スギ・ヒノキ林や他の針葉樹で得られている既往の報告値と比較され,スギ・ヒノキ壮齢林におけるTf やSf の特徴を整理することができた。また,スギ・ヒノキ両林分の下層木の樹幹流下量や調べたが,それらは降水量の1%未満であることがわかった。これらは従来の研究結果と比較され,滋賀県のヒノキ・アカマツ混交林やボルネオの低地熱帯林の下層木の樹幹流下量の特性と比較された。さらに,下層木による樹冠遮断量の算定を試みたが,これらの降水量に対する割合は多く見積もっても,スギ林で0.3%程度,ヒノキ林で1.2%程度の微小な量であり,本報の観測システムで正確に検知できていたかどうかについて再検討する必要性が示された。いずれにせよ,本報の観測対象としたスギ・ヒノキ壮齢林の樹冠における降水の配分過程に対する下層木の影響は,非常に小さいことが確認された。