著者
齋藤 ひろみ 市瀬 智紀 河野 俊之 徳井 厚子 浜田 麻里 上田 崇仁
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

教員養成課程に在籍する学生及び現職教員へのアンケート調査、外国人児童生徒教育歴の長い教員へのインタビュー、プロジェクトメンバーの所属大学における教育実践を通して、学校の多文化化に対応するための教員の日本語教育等に関する資質・能力として、「教育実践力」「教師として成長する力」「社会的実践力」という3層からなる資質・能力モデルを提案し、そのモデルに基づき、教育課程の試案を策定した。
著者
加瀬 進 荒川 智 真城 知己 新井 英靖 米田 宏樹 星野 常夫 山中 冴子 渡邉 健治
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

欧米8カ国(アメリカ・イギリス・オーストラリア・ロシア・ドイツ・フランス・デンマーク・スウェーデン)のインクルーシヴ教育は、単に障害児と非障害児を同一空間・同一教材で教授することを施行するのではなく、「学習への完全参加」をすべての子どもに保障しつつ、共に生きる市民として育ち会える環境をどのように構築するか、という大きな教育的チャレンジであり、合理的配慮のあり方も障害者差別禁止法体制との関連で探求されつつある。
著者
遠藤 徹
出版者
東京学芸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、江戸期の高野山鎮守天野社(現、丹生都比売神社)で約二十年毎の遷宮の際に行われていた舞楽曼荼羅供とそこで唱えられた南山進流声明を、当時の式次第に則して復元的に把握することを試みたものである。とくに注目したのは、雅楽曲と声明が共奏する箇所である。当該法要が最後に行われてから百七十年を経た今日、現行伝承で当該箇所を重ね合わせても音響は調和しない。そこで、当初の意図を読み取りつつ検討した結果、声明の音程の変化を想定することになった。
著者
筒石 賢昭
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、1994年に発表された『全米芸術教育標準』の目的、内容、及び実践への示唆を明らかにすることを課題とした。研究の目的は2点に大別され、第一点は、理論的研究として、『標準』の成立過程を歴史的側面より明らかにした。特に『標準』のスコープとシークエンスを平成10年12月に発表された我が国の学習指導要領と関連させながら分析した。第二点は、実践的研究として、この『標準』が実際に現場の芸術教育または音楽教育にどのような影響を及ぼしているか、イリノイ大学やミシガン大学の関係者のインタビューを含んだフィールド調査をすることによって明らかにした。以上の結果、『標準』の事例は、discipline-basedと呼ばれる芸術本来の持つ原理、機能を明らかにしつつも他教科、他分野との学際的なカリキュラムでもあることが分かった。この『標準』の意義はつぎのようなものである。(1)音楽における知識・技能を多様な角度から理解・獲得できるよう、「学際的・総合的な学習」を指向している。(2)「美的一般教育」としての芸術統合教育の発展上にある。(3)コンテクストとの関わりで音楽にアプローチする、「多文化音楽教育」に対応する内容を提示している。(4)芸術教科だけでなく、他教科との関わりを強調することで、音楽の学習を学校教育における他教科との学習に有機的に結び付けている.また教師教育という観点からも、「全米音楽教育者会議」MENCは大学の教員養成カリキュラムの実施にも積極的に支援した。
著者
中道 直子
出版者
東京学芸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

(1)乳幼児のふりの理解レビュー論文の執筆,投稿乳幼児のふりの理解についてこれまでの先行研究をレビューし,ふりの理解の発達モデルを提案した。本モデルは,1歳半頃にはふりという行為の理解が可能となり,ふりの背景にある主体の心的状態の理解は4歳以降に可能となることを説明した。また,この2段階の理解は,目的論的推論と心理主義的推論(Gergely&Csibra,2003)の2種の異なる推論によってそれぞれ獲得されるものであることを提案した。(2)実験:乳児におけるふりの目的論的理解の検討1歳半児のふりの目的論的推論に基づく理解を予測の違背課題で検討し,彼らがふりを目的論的推論で理解していることを明らかにした。例えば,乳児は飲むふりをするという行為の目的を「のどの渇きを癒す」ことではなく,「遊ぶ」ことであると理解していたなら,その予想に背くジュースを飲むという行為の映像を長く注視した。(3)博士論文の執筆(1)の論文で提案したふりの理解の発達モデルを,7つの実験で検証した。これらの実験の結果は,1歳半頃にはふりという行為の理解が可能となり,ふりの背景にある主体の心的状態の理解は4歳以降に可能となること,乳幼児期を通してのふり遊びの体験がふり行為の心理的背景への理解をもたらすことを明らかにし,モデルの適切性を一部実証した。
著者
林 尚示
出版者
東京学芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

3年計画で,人間としての在り方生き方への自覚を深める高等学校ホームルーム活動に関する研究を実施してきた。その最終年度である3年目の研究実績は,次の4点である。第1番目に,生徒指導と特別活動の関係について質問紙調査を実施し,共分散構造分析を用いて検討した結果,生徒指導の満足度が特別活動の満足度に影響を及ぼすことが確かめられた。そして,分析の結果,特に,生徒指導の中の「個人的適応指導」と,特別活動の中の「学芸的行事」や「健康安全・体育的行事」に着目して特別活動をさらに充実させていくことが提案できた。第2番目に,ホームルーム活動の指導内容になることの多い「いじめ」の解決のためには,被害の申告先を明示して,助言,仲介,加害者側への注意などの方法を駆使して被害者を救済していくことを提案した。「いじめ」や「校内暴力」へは,学校や教師の毅然とした対応が必要であり,政策的側面についてもその具体的な方向を検討できた。第3番目に,子どもの「社会的自立」の基礎を培うためには,ホームルーム活動等での生徒指導の役割が大きいことを言及できた。第4番目に,学習指導要領の内容を吟味しつつ,その中でホームルーム活動を含む特別活動の位置付けを調べ,教育課程上の重要性を再確認できた。これらを総合すると,学習指導要領上でのホームルーム活動を含む特別活動を重視し,その中で子どもの「社会的自立」の基礎を培うために,生徒指導の具体的方策をさらに検討することが課題提起できる。
著者
岡 典子 中村 満紀男 米田 宏樹 佐々木 順二
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、インクルーシブ教育についてその本質と課題を明らかにするため、インクルーシブ教育がもっとも盛んに議論されており、しかし同時に、インクルーシブ教育に関わる問題をもっとも深刻に抱えるアメリカ合衆国を対象として、インクルーシブ教育の理念的・制度的・方法論的出発点としての特殊学級の成立と展開の過程ならびにその教育的・社会的意味について検討した。特殊学級は、今日、インクルーシブ教育推進者によって、その対極に位置する特殊教育の象徴的存在として、特殊教育批判の重要な一角とみなされてきている。しかし、彼らの批判に反して、実は特殊学級には開設初期から既に、今日のインクルーシブ教育に連なる理念やそれを達成する方法あるいは実践が含まれていたのである。たとえば、インクルーシブ教育をめぐる現代の議論では、個別的ニーズへの着目と通常教育との一体化という理念のみが先行しているように思われるが、このような認識と議論は、特殊学級においても初期の段階から重要な課題として存在してきたし、障害種によって方法と程度は異なっていたが、その対応策も考案されてきた。アメリカの特殊学級は、すべての都市において、またすべての障害種について同一の様相を示していたわけではない。たとえば統合と分離(separation)あるいは隔離(segregation)をめぐる議論とその背景、特殊学級に対する障害当事者の見解、特殊学級の発展や挫折を生じさせた諸条件、教育内容や方法の開発・改善、スティグマなどは、いずれも時期によって、あるいは地域や障害種によって異なる実相をもつ。したがって、インクルーシブ推進者が主張するような特殊学級がすべて排除的・排他的であったという批判は正鵠を得たものではないし、むしろ特殊学級において何が達成され、何が実現できなかったのかを詳細に解明することで、インクルーシブ教育の実現に必要な課題と手段が具体化できるのである。
著者
山名 淳
出版者
東京学芸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

研究計画の最終年度となる平成18年度は、論文「『もじゃもじゃペーター群』の教育学的分析(前半)-絵本に描かれる「悪い子たち」の境界づけをめぐるライナー・リューレの試みとその妥当性について」(『東京学芸大学紀要第一部門 教育科学』第57集、2006年3月、47-62頁)において特定した教育学的に重要な『もじゃもじゃペーター』の類似本の一覧にもとついて、引き続きドイツの類似本収集家たち(とりわけ、代表的な収集家であるライナー・リューレ氏、ヴァルター・ザウアー氏、ディーター・ザロモン氏)と郵便およびメールのやりとりを通じて未収集であった類似本の情報および複写を入手した。考察対象の候補としてリスト・アップした182冊の作品のうち、収集した類似本は、約81パーセントの155冊(約1,250話)である。それらを対象として、各物語の内容を確認した後に、(1)主人公の性別、(2)具体的な特徴および行為(3)忠告の有無(4)忠告の与え手、(5)行為の帰結、(6)懲罰の種類、(7)懲罰の与え手、(8)推奨されるモラル、(9)危険の区別(危険としての子ども/危険としての環境)、について分析を加え、それにもとついて物語の歴史的な変遷について検討を行った。その結果、時代の変遷とともに、戒めの多様化、危険な時間帯および空間の変遷、物語における親の役割の普遍性、偏見への配慮の増大、などの傾向が見られることを確認した。これらの結果を「文明化」理論に依拠しつつ解釈した。本研究の成果については単著の形で公刊する予定であり、現在、その準備を進めている。
著者
中野 幸夫
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

気相ヨウ素分子が大気中に放出されるとヨウ素エアロゾル生成を引き起こす。この気相ヨウ素分子の大気中への生成の新たな過程として,海洋中のヨウ化物イオンの光分解が一つの候補として考えられる。しかし、この生成過程が大気環境に与える影響の評価は未だ行えていない。本研究では,この過程による気相ヨウ素分子生成量の水素イオン指数,溶存酸素量,ヨウ化物イオン濃度など海洋条件における各パラメータ依存性について高感度分光測定法を用いた実験的決定の研究を行った。その結果を用い、この過程が実際の大気環境へ与える影響力についてのモデル計算を行い評価した。