著者
森脇 愛子 藤野 博 生駒 花音
出版者
東京学芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の児童が適応的な仲間関係構築に至る様相とそれを支える支援法を“過程志向的”に検討するものである。本研究の3つの成果は①ASD児の仲間関係構築を相互作用の変容過程から定量的かつ効率的に把握する最適な評価手続きを精査したこと、②評価手続きを用いた2人組の相互作用量および質の時系列データを活かし、ASD児の関係構築傾向と支援介入の示唆が得られたこと、③仲間関係支援が及ぼす効果が確認されたことである。これらの成果により、ASD児は対人行動の非典型特性を持ちながらも、適切な支援環境下では本人が満足できる親密な仲間関係を構築できるという実証に寄与したと考えられる。
著者
大伴 潔 林 安紀子 橋本 創一 菅野 敦
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

幼児期から学齢期にかけての言語・コミュニケーションスキルの変化を縦断的に追跡し、学齢期での支援ニーズを予測する関連要因について検討した。併せて環境的要因としての家庭での語りかけの豊富さや読み聞かせの頻度等についてアンケート調査も実施した。その結果、幼児期の総合LC指数は学齢期のLCSA指数と有意に相関し、幼児期の言語発達面の課題は学齢期の困難を予測することが示されるとともに、環境・生活要因の影響も明らかになった。幼児期の支援としては、間接的な方法としての言語環境の調整と、より直接的な介入として語彙面、統語面、対人交渉場面でのコミュニケーション面の指導に整理された。
著者
江原 遥
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

Webの発達等により、特に英語では幅広い解説テキストが入手可能になり、これらで学習者の知識を拡充する機会が増えている。こうしたテキストを入力とし、テキストのどの部分が学習者にとってどの程度難しいか(リーダビリティ)を自動判定する技術は、教材推薦や自動作問など様々な学習支援の応用の基盤技術である。しかし、従来のリーダビリティ判定技術は「表現の難しさ」の判定が中心であった。本研究提案では、「表現の難しさ」に加えて、深層機械学習により文脈や意味を考慮することで、テキストの「知識の難しさ」をも判定できるリーダビリティ判定技術を研究する。
著者
高嶋 由布子
出版者
東京学芸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

本年度は、前年度にまとめきれなかった論文執筆に取り組み、認知言語学の範囲でできる研究をまとめた。日本の手話研究は、先行研究が乏しく、手法も確立しておらず、手話話者と研究者の関係も乏しい状態であったことから、海外で先行している研究をまとめ、啓蒙的な論文を書くことが重大なミッションの1つであることが徐々に明らかとなり今年度はこれに取り組んだ。認知言語学の観点からの手話研究のレビューとして、『認知言語学大事典』に「手話と認知言語学」という項目を執筆した。また、手話言語の社会言語学的な状況と言語記述の必要を示した論文を、国立国語研究所論集に「危機言語としての日本手話」として出版した。さらに昨今のろう・難聴児を取り巻く急速な政策の展開を踏まえ、言語政策誌に「人工内耳時代の言語権―ろう・難聴児の言語剥奪を防ぐには」という共著論文を出版した。これらは日本手話が社会とどのように関わっているか、そして研究や手話話者への支援が、国外の状況・研究成果を踏まえたうえでどのように解釈できるかについて論じたものである。手話研究の分野はアメリカが先行しているが、アメリカでも著名な研究者が来日する機会があったので、国際的な研究業界の状況とその基礎についての講演会・ワークショップをコーディネートして、手話研究の重要性とその具体的な内容について、手話通訳をつけたうえで、手話話者と研究者に国立国語研究所と国立民族学博物館で開催した。フィールドへの還元を確保する一方、国際認知言語学会での発表や手話言語学最大の国際学会であるTISLRでの発表を行い、国際的な手話研究の土俵に日本手話のデータを上げることができた。前者は因果推論の構文の分析で、後者は語彙の構音的なネットワークを否定とメタファーの観点からまとめたものであり、どちらも認知言語学というフレームワークが手話研究でどのように生かせるかを示すものとなった。
著者
西村 圭一 山口 武志 久保 良宏 長尾 篤志 長崎 栄三 清野 辰彦 青山 和裕 松嵜 昭雄 清水 宏幸
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,わが国の子どもに,「数学的論拠に基づいて,事象を分析,解釈し,意志決定する能力」である「数学的判断力」の育成することを目的としたものである。数学的判断プロセスを規定し,数学的判断力に関する実態調査を実施するとともに,数学的判断におけるプロセス能力の水準化や,そのプロセス能力と数学の内容・選択支援・社会的価値観・他者との相互作用の五つの軸によって構成される授業の枠組みを作成した。そして,小・中・高校で実験授業を実施し,その有効性について実証的に検討した。