著者
藤原 真理
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.71-82, 1993-09-30

本研究は、「そう」という形式を含む相づち表現「そう」「そうだ・そうです」「そうですか」「そうですね」を中心に、その用法を分析することによって、相づちによって表現される話し手の立場・態度の様相の一端を示したものである。「そう」系の相づち表現は、その用法上、話題・情報に対して話し手が積極的に「同意」を表明する場合と、情報の「受容」の表明にとどまる場合との、二つに大別される。それらは共起する感動詞によって、「感心」「思案・納得」「気づき・驚き」「肯定」など、さまざまな副次的な表現意図と合せて表出される場合がある。そのうち「思案・納得」「気づき・驚き」は、「受容」「同意」のどちらとも共存可能であるが、「感心」は「受容」とのみ、「肯定」は「同意」とのみ共存する。こうした分析から、相づち表現の意味構造が幾つかの層の表現意図からなる、重層的なものであることが予想される。
著者
張 雪玉
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.107-119, 1991-09-30

〓南語の中で [m] と [b] に二分され, 対応している漢字の読音が北京官話では [m] 声母で読まれる。従って, 〓南語系の人達が北京官話を発話する際に, 特に気を使うことは言うまでもない。さらに, 日本語の漢字音においては, 単語によって, [b] と [m] の二通りの読み方がある。この複雑な事情から, 台湾人日本語学習者が漢語音を読む際に揺れが生じる。小論では, これに関するテスト (調査) を行い, その結果を分析した。結論としては, これらの誤読は話者の心理的要因及び漢語の語形の認識の問題によるものであることを提示した。
著者
Furuya H. Idemitsu K. Inagaki Y. Arima T. Sasaki T. Kuroda Y. Uchikawa S. Mitsugashira S. Suzuki Y.
出版者
東北大学
雑誌
Science reports of the Research Institutes, Tohoku University. Ser. A, Physics, chemistry and metallurgy (ISSN:00408808)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.89-91, 1997-03-28

It is necessary to obtain the data of some parameters concerning migration behavior of radionuclides in underground water for the safety assessment of radioactive waste disposal. Sorption and desorption experiments were carried out by using tracer amount of plutonium on biotite in a granitic rock. In this study, pH dependence of distribution coefficients of plutonium on a biotite mineral were measured. The following results are obtained; (1) The biotite has the pH buffer capacity at around pH 5. (2) Plutonium sorption rate was fast around pH 6 but slow at lower pH than 5. (3) The 95 percent of plutonium was sorbed on biotite at around pH 5. (4) The 10 to 30 percent of sorbed plutonium in biotite was desorbed with 1N KCl, the 50 to 60 percent with 1N HN0_3. (5) The rest of plutonium sorbed in biotite could not be desorbed even with 1N HN0_3. (6) The neutral plutonyl hydroxide could be an important species sorbed on the biotite.sorptionplutoniumbiotite
著者
中井 未生 三石 大
出版者
東北大学
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.111-118, 2004-03

本研究の目的は、音楽の印象評価に基づく特徴とその印象に対する個人差の関係を明らかにすることである。本研究では、音楽の印象を表す言葉による楽曲フレーズの印象評価実験を行った。分析の結果、「明るい」、「優しい」といった印象の曲は、その印象について明確な評価が可能であり、評価の個人差も少なかった。これに対して、「暗い」、「重い」といった印象の曲は、その曲を特徴付ける「暗い」や「重い」に関しても印象の個人差が大きいことが明らかになった。また、被験者の音楽経験と曲の認知度の違いによる印象評価の差はあまり大きくなかったが、差が見られた印象は、その曲の特徴をあまり示さない印象であり、経験や認知度が少ない被験者が多い被験者よりも高く得点する項目が確認された。
著者
高橋 哲 永井 宏和 大谷 真紀
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.149-158, 1999-12
被引用文献数
3

MR画像で認められるjoint effusionの生物学的意義を検討するため, 顎関節症患者の関節滑液中の蛋白濃度を, Joint effusionの有無で比較検討した。対象としては, パンピングマニピュレーションを行った顎関節症患者のうち, MRIを撮像し得た27症例38関節である。コントロールとして, 顎関節に症状のない健常人女性, 5例6関節を用いた。Joint effusion像は矢状断でT2強調画像にて高信号域を示し, プロトン強調画像にてその信号が減弱するものとし, 0点から4点までの5段階(Effusionスコア)に分類し, 3点, 4点のものをjoint effusion有りとした。顎関節滑液は希釈法により採取し, 滑液中の蛋白濃度をBCA assayにて測定し, joint effusionの有無, 臨床症状のうち, 関節痛の有無とにおいて比較検討して, 以下の結果を得た。1.コントロール群では, いずれもjointe ffusionは認められず, その蛋白濃度は(中央値 : 0.73mg/ml), 患者群の中で, jointe effusionと関節痛いずれも認めない関節(中央値 : 0.67mg/ml)と同程度であった。2.jointe ffusionは患者群の全関節の65.8%に認められ, 関節痛の有無との比較では, 関節痛のある関節でjoint effusionの出現頻度が高く(p<<0.05), 関節痛の有る関節の蛋白濃度(中央値 : 1.92mg/ml)は関節痛の無い関節(中央値 : 0.86mg/ml)に比較して高値を示した(p<0.05)。3.jointe ffusionの程度(Effusionスコア)と蛋白濃度は正の相関(7=0.663,p=0.025)を示し, joint effusionの有る関節(1.87mg/ml)は, jointe ffusionの無い関節(中央値=1.14mg/ml)に比較して有意に高値を示した(図2)。以上の結果から, MRIで認められるjointe ffusionは, 関節痛のある関節に高頻度に認められ, 関節痛やeffusionの認められる関節では蛋白濃度が高い関節が多く, この蛋白濃度の上昇は, 滑膜炎などの炎症性反応の結果として, 血清由来の蛋白などの分子が関節液中に滲出したもの, あるいは下顎頭の負荷により, 軟骨などの関節構成組織が融解した物質である可能性が示唆された。
著者
菅原 仁子 萩原 敏朗
出版者
東北大学
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.47-65, 2006-03

本研究では、中学生の情報リテラシーの育成には、その情報利用の実態について基礎的な研究が必要であるという観点のもと、中学生の情報探索行動の実態を把握するために中学生500名以上に対して質問紙調査を行った。調査の結果、中学生にとってインターネットが情報探索時の情報源としても日常の利用情報システムとしても多用されていることが明らかになった。情報探索行動の傾向としては、情報探索時にインターネットや図書資料を利用せず、自ら調べようとしなかったり、情報システムに接しようとしない生徒の情報を活用する能力が低いことが見出された。インターネットは情報の収集力の向上には影響力を持っていることが示唆されたが、情報教育を行う際には、ひとつの情報システムに偏重することなく指導してゆくことが必要であると言えよう。指導方法に関しては、現在行われている調べ学習や図書館、インターネットの利用指導の有効性が明らかになった。
著者
Hosoya M. KAKITA Yachiyo GOTO Hidehiro
出版者
東北大学
雑誌
Science reports of the Research Institutes, Tohoku University. Ser. A, Physics, chemistry and metallurgy (ISSN:00408808)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.206-214, 1961

Fundamental experiments were carried out to determine the micro-amounts of aluminium by spectrophotometry, using chrome azurol S, a reagent used in complexometric titration of copper, zirconium and aluminium. By this new method, most part of the iron content was separated by methyl isobutyl ketone, and the remaining iron and copper was masked by thioglycolic acid and after adjusting the pH to 5.6-6.8, the absorbance of the aluminium chelate compound was measured at 550 mμ. This method requires only a few reagents and does not need warming for promoting coloration, nor does it require the protecting colloid in contrast with the aluminon method. Since this reagent presents very sensitive color reaction even in micro-amounts of aluminium, 0.002 to 0.1 per cent of it can be determined with good reproducibility.
著者
志村 匡代 岩倉 政城 井川 恭子 小関 健由
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.99-105, 2003-12-30

口臭に対する関心が高まりつつある現代社会において, 口臭外来の需要は高まりつつある。口臭と歯科疾患, 全身疾患, 精神疾患の関連が論じられ, 口臭症の国際分類も提唱されている。一方で, 地域住民の口臭の度合や口臭に対する意識の程度は十分に把握されていない。本研究では宮城県一農村地区の成人歯科健診受診者333名を対象に口臭測定器による口臭検査ならびに質問紙調査を行った。口臭検査による口臭の有無, また質問紙調査による口臭意識の有無で対象者を群別し, 歯科健診項目をあわせて関連性を検討した。その結果, 本調査対象者の44.4%が口臭ありと判定され, このうち65.5%が自分の口臭に認識を持たなかった。また91.9%には口臭での受診歴がなく, 潜在的な口臭症の治療対象者と考えられた。一方, 口臭なしと判定された者のうち, 自分の口臭に対する認識を有する13.2%には, 自臭症(仮性口臭症および口臭恐怖症)の可能性が高いと考えられた。この群の81.8%には口臭での受診歴がなく潜在的な口臭症治療対象者の可能性が示唆された。なお口腔内診査の結果から, 舌苔のある者, 口腔清掃状態の悪い者で有意に口臭が認められた。さらに自分の口臭に対する意識のある者では, 有意に年齢が低く, 未処置歯数が多く認められた。
著者
趙 菲 林 治秀 田端 孝義
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.73-79, 2004-12-30

ヒトの経穴(右手の合谷又は右足の足三里)を電気鍼刺激し, レーザー血流計で両側手の指掌と両側足背の皮膚血流変化を測定した。経穴刺激による血流変化(増加又は減少)は刺激開始後の時間や被験者により差が見られた。刺鍼前の血流量を100%として, 全被験者の平均値で表すと, 15分間の合谷電気鍼刺激により, 同側及び対側の指掌の血流は留鍼5分後148%及び137%とそれぞれ有意に増加し, その後刺激前の値に回復した。又, 合谷刺激による両側足背の血流は留鍼中増加傾向を示し, 抜鍼後有意に増加した(同側の足背, 126%;対側の足背, 141%)。足三里電気鍼刺激では留鍼中両側足背の血流は変化せず, 抜鍼後血流は有意に減少した(同側の足背, 90%;対側の足背, 88%)。足三里刺激による両側指掌の血流には, 留鍼中及び抜鍼後とも有意な血流変化は認められなかった。以上の結果は合谷や足三里鍼刺激が手足の皮膚血流を変化させることを示し, この結果とラットを用いて行った同様の実験の結果とを比較検討した。
著者
倉田 靜佳
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.47-58, 2003-12-10

曲亭馬琴の読本『南総里見八犬伝』における「然」が後接する漢字語につけられた、字音語振り仮名について、一般的に「漢語」としては呉音から漢音への移行の優勢が常識とされるのに反し、「ゼン」から「ネン」への交替が多くの漢字語において顕著であり、しかもその交替時期は第6・7輯 (文政10・11年) を境としていることを明ら加こし、それは各語における音連結や文脈には起因せず、筆工の交替による可能性を指摘した。
著者
小野寺 学
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.144-133, 1998-11-20

漢語接辞「然」を構成要素とする二字漢語「-然」は、近代の国語辞書と小説において出現の様相が異なる。小説において字音語と熟字使用でゆれていたこと、会話での「-然」の多くは書生を中心とした教養層が用いることから、当時まだ「-然」が日本語の語彙として定着していなかったためであると思われる。
著者
朴 承圓
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.51-62, 2000-12-20

本研究では、日本語母語話者・韓国人日本語学習者・韓国語母語話者を対象として、三者の不満表明における特徴を探るため談話完成テストによる調査を行った。三者の不満表明ストラテジーの使用と言語形式に見られる間接的要因の使用を調べた。その結果、ストラテジー使用は、慣用的前置き表現に韓国人日本語学習者の過剰修正 (Hyper-Correction) の傾向が見られた。また Hedges 表現や省略表現の使用の面でも学習者は日本語母語話者に比べその使用が多く、学習者がより間接的な不満表明をすることが明らかになった。