著者
後藤 順一 眞野 成康 島田 美樹 山口 浩明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

プロテオミクス手法を駆使して、脳内胆汁酸の機能解明に挑戦するとともに、胆汁酸シグナル伝達解析法の構築を試みた。まず、成長ホルモンとケノデオキシコール酸の結合につき、アフィニティーラベル化法により解析し、受容体結合部位とは異なる部分にケノデオキシコール酸が結合することが判った。次に、特異的誘導体化法と疑似ニュートラルロスを組み合わせるリン酸化タンパク質解析法を構築し、本法が複雑なタンパク質混合物中のリン酸化タンパク質の特定に有用なばかりか、リン酸化部位の同定にも優れることが判明した。さらに、ケノデオキシコール酸固定化cleavable affinity gelを用いて肝細胞中の結合タンパク質の抽出を試み、胆汁酸結合タンパク質として知られているジヒドロジオールデヒドロゲナーゼのほか、ペルオキシレドキシン1 がケノデオキシコール酸と結合することが明らかになった。
著者
高梨 弘毅 大谷 義近 大野 裕三 小野 輝男 田中 雅明 前川 禎通
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本特定領域では、スピン流の生成と消滅、そしてそれらを通して生じる物理的信号の変換制御に関わる学理を確立し、新規なデバイス応用への可能性を探索することを目的としている。総括班は、本領域全体のコーディネータ的役割を果たし、同時に内部評価を行う。本年度は、本特定領域の最終成果報告会として国際ワークショップ「5th International Workshop on Spin Currents」を2011年7月25日(月)~28日(木)の日程で仙台国際センターにおいて開催した。最近のスピン流研究において注目される議題として、(1)スピンホール効果やスピンゼーベック効果に代表される純粋スピン流現象、(2)スピン注入磁化反転や自励発振、電流誘起磁壁駆動などのスピントランスファー現象、(3)非磁性体、特に半導体へのスピン注入、(4)磁化の電気的あるいは光学的制御、(5)スピン流の創出と制御のための材料探索・プロセス・評価の5項目について、それぞれの分野において世界最先端の成果を上げている研究者を組織委員会で選出し、口頭発表をお願いした。それ以外にも、特定領域研究で得られた成果が、ポスター講演において数多く報告され、4日間にわたって活発な議論が展開された。また、各計画研究代表者および公募研究代表者から、領域設定期間中の成果に関するデータを収集した。そのデータを元にして、原著論文、解説、著書、国際会議発表、国内会議発表、報道(新聞、TV等)、受賞、特許、その他(若手育成など)、の9項目について成果のとりまとめを行った。
著者
寺内 正己 津田 健治 小形 曜一郎 佐藤 庸平 津田 健治 小形 曜一郎 佐藤 庸平
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

電子顕微鏡法を用いて構造・組成評価を行った良質な試料領域から構造・電子状態の研究を行い、ボロンナノベルト、ゼオライトカーボン、ポリマー重合C_<60>、LiドープαボロンおよびMgB_4の特徴的な電子状態の存在を明らかにした。また、分光CBED法による価電子分布の異方性検出、EELSによるナノ粒子の近赤外応答の解析、異方的SXES計測による価電子分布の異方性の検出などの解析手法の高精度化を実現した。
著者
荻野 博 谷口 功 松村 竹子 田中 晃二 佐藤 弦 佐々木 陽一
出版者
東北大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

本研究を推進する上で基本となる単核、二核および多核錯体ならびにクラスターの合成について大きな進歩が見られた。特に二核錯体については系統的な錯体の合理的な合成がいくつかの系で可能となった。これらの成果にもとずき、錯体の電子状態と酸化還元電位との関連および混合原子価状態の理解を深めることができた。ゼロ次反応速度則に従う電子移動反応系、プロトン移動と共役した電子移動やCO_2還元を触媒する錯体の発見など、興味ある種々の電子移動反応系が発見された。金属タンパク質の電極上における酸化還元挙動の研究の歴史は極めて浅いが、本研究においても大きな進展が見られた。金属錯体の光誘起電子移動反応が理論および実験の両面から研究された。走査トンネル顕微鏡(STM)の発明とその後の急速な発展は、これまでほとんど推測の域をでなかった固体界面の研究状況を一変させつつある。電極と溶液界面における電子移動との関連から、本研究においてもSTMを使った表面化学種の構造解析が行われ、大きな発展があった。以上述べた研究は研究者間の相互の連絡のもとに進められた。平成3年11月11日および12日の両日にわたって東工大において、さらにまた平成4年11月11日および12日の両日にわたって分子科学研究所でそれぞれ公開シンポジウムを開催し、総括的な検討を行った。なお1992年のノーベル化学賞は「化学系における電子移動理論への貢献」を行った米国カリフォルニア工学大学のマーカス教授が受賞した。我々の研究提案がいかに緊急性があったか、また時宜を得たものであったかを証明したものと自負している。
著者
齊藤 伸
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、「マイクロメートル領域内の局所的な磁化ベクトルの方向を可視化表現できる磁区観察顕微鏡」を実現した。磁化方向の特定のためには、対物レンズ入射瞳の直交方向の辺縁部に微小径の直線偏光を入射させて、磁化ベクトルの各軸方向成分像を得、それらを合成することが有効であった。各軸からの照明タイミングをずらす方法(時分割法)に加え、高周波掃引磁界と同期を取って撮像する方法(ストロボ法)を組み合わせた。これらにより局所領域の磁化ベクトルのダイナミクスの可視化も可能となった。本装置は永久磁石やトランス鉄芯材料、スピントロニクスデバイスの研究開発に大いに役立っている。
著者
福土 審 金澤 素
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

脳腸相関の詳細と過敏性腸症候群の病態を解明することは、心身医学的に重要であるだけでなく、社会的利益が大きい。本研究では、炎症回復後の過敏性腸症候群の動物モデルに対する副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)拮抗薬の投与が、動物の内臓知覚過敏と消化管伸展刺激による粘膜炎症の再燃の病態をともに改善させた。また、ヒトへのペプチド性CRH拮抗薬の投与が脳腸相関を介した過敏性腸症候群の中枢機能を改善させた。
著者
石井 敦
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

朝日新聞を対象にした新聞報道のフレーミング分析を行った。記事の70%はポジティブにCCSを捉えているものであった。CCSのリーケージ・リスクに関する記事はほぼ皆無であった。支配的なフレーミングとしては「技術移転」、「革新的技術」、「大規模CO2削減技術」、「技術先進国としての日本」が挙げられる。引用されていたアクターは、官僚や政府、産業アクターや研究者が中心であり、環境NGOに関する引用はなかった。外国アクターとしては、アメリカやヨーロッパ、中国、インド、IEAとIPCCの国際機関に関する引用が多かった。
著者
武藤 芳雄
出版者
東北大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

本研究の目的は、東北大金研の深瀬・藤森・武藤、九大理間瀬及び東大物性研石川が、各自のグループの教官・技官及び大学院学生とともに、重いフェルミ粒子をもつ新超電導体、磁性超伝導物質などを含む新しい金属間化合物超伝導体を創造し、超伝導特性を中心にした諸物性を解明し、基礎的研究をベースにしながらも、機に応じて新しい応用を含む開発研究も行なうことにある。本研究費により、これまで間歇化学気相蒸着法、低温高速スパッタ法(間瀬)、2元スパッタ蒸着法(藤森)、高圧RF・EB溶解法(既設・深瀬)、RF真空炉法(石川)などの新物質作製装置が、本年度までに完成した。超伝導特定測定には、現有設備及び金研超伝導材料開発施設の諸設備(武藤)を用いるが、SQUID磁束計(深瀬)及び高精度帯磁率測定装置(石川)を購入しすでに実験に使用している。来年度はホール効果測定装置(藤森)を加える予定である。なお来年度の研究費は主として極めて高価な遷移金属元素及び稀土類金属元素の購入にあてられる。これまでにA15型超伝導体のマルテシサイト及びその前駆現象(深瀬)bct(RE)【Rh_4】【B_4】化合物の超伝導と磁性の相関(武藤)、Ce【Cu_2】【Si_2】の超伝導性の組成との関係(石川)、Nb/Ti;Nb/Ag多層膜の超電導性(藤森)、【Nb_3】Geの結晶成長の超伝導特性への影響(間瀬)などについて研究成果をあげ、60年度成果報告会(日米新超伝導物質研究会)で報告した。また武藤・深瀬のグループより3名、米国Amesで60年5月に行なわれた関連国際会議また石川は f電子系に関する日ソセミナーなどで発表した。61年度には、阪大基礎工朝山、広島大理藤田、阪府大奥田の3氏を協力者に加え、最終年度の総括を行なう予定である。なおこれらの成果は、1987年(昭62)夏に 京都で行なわれる第18回低温物理国際会議及び引き続き仙台で行なわれる高度に相関のあるフェルミ粒子系の超伝導国際会議に集大成される予定である。
著者
松崎 瑠美
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

近世後期における武家の女性の実態やジェンダーの仕組みについて、薩摩藩島津家を事例として、分析を進めた。その結果、側室の中には、藩内で正室格として処遇される者が存在したが、幕府への公式な手続きを経た正室と違い、幕府との儀礼という政治的役割は担えなかったこと、幕府との儀礼や島津家の縁組決定過程の分析から、大名家の「奥」と江戸城大奥とを結ぶ奥向のルートの構築過程と、表向のルート及び奥向のルートの利用形態を具体的に明らかにした。また、当該時期・地域の庶民の家について、建築構造面から家の間取りを比較し、「表」と「奥」に明確に区分された大名家の家と、区分のない庶民の家という階層性の違いを明らかにした。さらに、近代初期における島津家について分析した。その結果、邸宅における「表」と「奥」の空間分離や、「表」と「奥」それぞれに対応した職制の存在が見られ、近世のジェンダーの仕組みが引き継がれていた。また、一家の掟である家憲の分析によると、明治期の家憲では、母親が未成年の家主の後見人となり得たが、大正期の家憲では、後見人は親族・分家の男性に限定された。これは法制面での変化であるが、実態面での変化はどうであったのかを今後明らかにする必要がある。以上のように、今年度の研究では、近世後期と近代の一時期における武家社会の女性やジェンダーについて明らかにした。今後も、通時的な視点で引き続き幕末期や近代の分析を進めていきたい。
著者
佐藤 嘉倫 近藤 博之 尾嶋 史章 斎藤 友里子 三隅 一百 石田 浩 三輪 哲 小林 大祐 中尾 啓子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

地位達成過程の背後にある制度に着目することで、不平等を生み出すメカニズムのより深い理解をすることが可能になる。たとえば、貧困にいたるプロセスは男女で異なるが、それは労働市場と家族制度における男女の位置の違いを反映している。また、日韓の労働市場の制度の違いにより、出産後、日本の女性のほとんどが非正規雇用者になるが、韓国の女性は正規雇用、非正規雇用、自営の3つのセクターに入る、という違いが生じる。
著者
源栄 正人 大野 晋 佐藤 健 寺田 賢二郎 篠澤 洋太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本成果報告書は、平成18年度と平成19年度の2ヵ年の研究成果もまとめたものである。内容的には、緊急地震速報と構造物のモニタリングとの連動により付加価値を高め、更なる信頼性の向上と実用性の向上を計るためのシステム開発を行ったものである。主な研究項目として、(1)構造物の耐震モニタリング機能と連動した警報システムの開発、(2)地域の地盤環境を考慮した地震動予測精度の向上、(3)病院における実証試験による有効利用の検討、(4)学校における実証試験による有効利用の検討を行った。(1)については、建物のモニタリングのための常時作動している地震観測(オンライン地震観測)システムを設置し、この地震計による現地地震情報と、緊急地震速報の両方を連動したシステムの開発を行い、東北大学工学研科の人間・環境系建物および宮城県沖地震の際に地震波到来の早い石巻市牡鹿総合支所庁舎(旧鮎川町役場)で実証試験を行った。(2)については、仙台市域の表層地盤構造と深部地盤構造のデータベースの構築を行うとともに、牡鹿総合支所で観測された記録のP波の立ち上がり部の波形からニューラルネットワークを用いて仙台市域の地震動を高精度に予測する方法を検討した。(3)については、東北大学病院における緊急地震速報の利活用について、同病院においてアンケート調査を実施するとともに、ニーズに基づく利活用システムの提案を行った。(4)については、教育モードとして組み入れるべく素材に関する調査を行なうとともに、地域で予測される被害モードを想定した災害シミュレーションを動画の作成と活用法を検討した。学校における緊急地震速報の利活用の啓蒙と教育現場におけるニーズ調査のために宮城県域と首都圏の649校を対象としたアンケート調査を実施した。
著者
梅村 晋一郎 吉澤 晋
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

生体組織の超音波加熱を促進するキャビテーション気泡の強力な超音波パルス照射による生成を,まず,高速度カメラを用いて研究した.そのために,生体に類似した超音波特性をもち光学的に透明なゲルファントムを作成し,実験を行った.強度10kW/cm^2程度以上の超音波パルスにより,目的の気泡をゲル中に生成できること,また,100μs程度以下の短いパルスを用いれば,超音波焦点付近に限局して生成できることを確かめた.次に,生成したキャビテーション気泡により,摘出生体組織を超音波加熱凝固するスループットを顕著に改善できることを確かめた.さらに,第2高調波重畳波を用いることにより,目的のキャビテーション気泡を発生するに必要な超音波強度を顕著に低下させ得ることを見出した.
著者
石井 慶造 松山 成男 山崎 浩道
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

本研究では、超微量元素分析法であるPIXE法を教材にした理科教育、および「裁判形式」を通した理科教育を検討した。IT理科教育を目指して、これらの研究成果に基づいたホームページを作成し、公開した。中・高校生に対して以下の教育効果が得られた。平成14年7月30日、31日に開催された「東北大学工学部オープンキャンパス」に参加した中・高生および一般人を対象に、PIXE公開実験を行なった(参加者総数は39名)。実験後アンケートを採り、放射線の利用については約50%は不安を感じていたが、PIXE分析公開実験に参加した後は、70%が「放射線は役立つのでその利用をもっと進めるべきだ」の意見に変わった。PIXE法は一般に良く受け入れられる放射線理解のための教材であることが示された。放射線科学を大学生による演劇を通して、その理解を試みた。演劇の中では、放射線を被告人にしたてあげ、裁判を行い、検事と弁護士および被告人とのやり取りから、放射線を理解する方法を考えた。演劇授業は、平成14年7月〜平成15年1月の間に計4回(総人数309名)行い、それぞれ、終了後にアンケート調査し、その効果を調べた。アンケート調査結果は、参加者の94%が「楽しかった」、92%がPIXEに興味を持った、78%がこの劇を通して放射線についての理解が得られた、98%が放射線に興味を持った、と回答した。このように、裁判形式の演劇授業による放射線理科教育の有効性が見られた。また、どの中学校も、大学生とのふれあう機会が欲しいとの要望が90%以上あり、今後は、下記のIT理科教育とともに、この学生の要望を視点にした出前演劇授業による理科教育も行うことにした。上記、催しの収録をもとにホームページを作成した。講義内容は、「ピクシー先生による理科教育」と題し、「放射線裁判」の劇を通して、放射線およびPIXE法について理解するとともに、実際にPIXE実験に参加も受け付けるものである。(http://pixe.qse.tohoku.ac.jp/pixe-geki/index)
著者
福土 審 青木 正志 金澤 素 中尾 光之 鹿野 理子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

脳腸相関とは、中枢神経系と消化管の機能的関連を言う。これは発生学的に古い現象であるが、不明な点が多い。脳腸相関には大きく分けて2つの現象・経路がある。一つはストレスにより、中枢神経系興奮が自律神経内分泌系を介して消化管機能を変容させる現象・経路である。もう一つは、消化管からの信号が求心路から中枢神経系に伝達され、中枢神経機能を変容させる現象・経路である。われわれは、ストレスにより、あるいは、消化管刺激により、脳の特定部位でcorticotropin-releasing hormone(CRH)を中心とする神経伝達物質が放出され、局所脳活動を賦活化する、そして、過敏性腸症候群においてはこの現象が増強されている、と仮説づけた。本研究は、この仮説を動物実験とヒトに対する脳腸検査によって検証することを主目的とし、positron emission tomography(PET)と脳波power spectra、topographyをはじめとする脳機能画像と併せ、脳腸相関におけるCRHならびにその他の物質の役割を明確にした。平成15-18年度の科学研究費により、過敏性腸症候群の動物モデルを作成することができた。この動物モデルの病態はCRH拮抗薬により改善した。また、消化管への物理ストレスにより内臓痛が生じ、視床と辺縁系で脳血流量が増加した。同時に、脳波power spectra、topogramが変化し、腹痛とともに不安が生じた。この時、消化管運動も変化した。過敏性腸症候群ではこれらの現象が顕著であるが、これらもCRH拮抗薬により改善した。過敏性腸症候群あるいはその病態を示す動物では、辺縁系におけるCRH遊離がこれらの結果を招くことが示唆された。これらの知見を平成15-18年度に得たことにより、脳腸相関におけるCRH系の関与を明らかにするという研究目的を達成することができた。
著者
田代 学 関 隆志 藤本 敏彦 谷内 一彦
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

健常被験者を対象として、安静状態と連続暗算課題による精神的ストレス下における脳内ヒスタミン遊離量を比較したところ、被験者は暗算課題による心理ストレスを感じていた一方、PETでは差は検出できなかった。一方、頸部痛、肩こりのある男性を対象として、代替医療のカイロプラクティック施術後と無治療時の脳糖代謝の差を比較したところ、PETで測定した脳糖代謝変化が自律神経活動の変化と関連している可能性が示された。また、動物介在療法に関連した課題においてもストレス緩和に関連した所見が観察された。このようにPETを用いた脳糖代謝測定によって、代替医療の治療効果を評価することが可能と考えられた。
著者
北村 勝朗 生田 久美子
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究が目指す理数科系領域の学習モデル構築に向け,(1)もの作りの体験を理数科系領域における学習の枠組みの中で再考し,理数科系領域の学習における教科の本質ともの作りとの関係構造を明確にする作業,及び(2)わざ職人を対象としたインタビュー調査によるもの作りの体験の描写,の2つの作業を実施した。まず,もの作りを再考する作業から得られた知見として次の2点があげられる。第1に,もの作りは,新たな発見に向けた工夫と反復が必要であり,そのために長い年月に渡る試行錯誤の体験が不可欠となる。第2に,そうした意味において,もの作りは理数科系教育の本質に大きく迫る探索活動と位置づけられる。次にインタビュー調査による体験の描写に関しては,厚生労働省による平成17年度現代の名工として表彰されたわざ職人から,次の基準により20名の対象者を選出した。(1)理数科系領域における卓越したわざを発揮している職人,(2)個人の持つ技能の卓越性がきわめて優れた技能として評価されている,(3)製造法等の開発の成果も高く評価されている,(4)現在,表彰を受けた技能に関わる職業に従事している,(5)後輩職人の育成も高く評価されている。また,職業能力開発局能力評価課による国際技能競技大会(国際技能オリンピック)日本代表者から,次の基準により12名の対象者を選出した。(1)平成17年度の国際技能オリンピックの日本代表選手として優れた成績をおさめている若手職人,(2)理数科系領域における技能オリンピックのわざ職人,(3)オリンピック大会においてわざを高く評価されている。以上の基準に基づいて選ばれた対象者に対し,インタビュー調査を実施した。分析作業の結果,わざ職人は,ものづくりを自身の体験として取り込み(意味の発見),徹底して追求し(探索的体験),自他が一体化される過程(知識の統合)によって構成されることが示唆された。
著者
小沢 博 有馬 哲夫 大西 洋一 中村 隆 大河内 昌 石幡 直樹 ROBINSON Peter
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、英文学に現れた異人概念の変遷を比較検討することにより、英文学及び英国文化を、広義の異文化交渉史の中で捉え直すことにあった。新大陸や東洋のみならず、文学的尚古主義、階級差、性差といった広い意味での内なる異文化も対象とし、そこに継起する異人概念の変遷を検証することにより、英文学を内と外の複眼的視点で相対化しようとする試みである。こうした観点から、小沢は、英国ルネサンス期に見られる外国人排斥運動の思潮を検討し、これが当時の演劇作品と上演活動にどのような影響を与えているかを考察した。石幡は、英国ロマン派文学に顕著な尚古主義や高尚なる野人の概念を異文化への憧憬の象徴的行為として捉え、ロマン派思潮台頭の背後にある社会文化的要因を当時の異国趣味との関連で検討した。大河内は、19世紀における階層社会の形成を異人としての下層階級の形成として捉え、当時の政治経済理論がこうした内なる異人の生産といかに連動していたかを政治社会史的文脈の中で探った。中村は、19世紀英国小説におけるユダヤ人の表象を検証し、大衆文化の担い手としての小説がいかに通俗的な異人観を形成していったかを考察した。大西は、17・18世紀英国演劇における新大陸と東洋の表象を比較検討し、西欧の西進と東進がもたらした異なる二つの非西欧文化との交渉を演劇の文化史として考察した。有馬は、アメリカ文学におけるインディアンの表象の変遷を俯瞰し、これを英国の植民地政策との関連で比較文化論的に考察した。Robinsonは、英国近代文学の創作活動が異人としての女性の侵入と密接な関係を持ってきたことを、RichardsonのClarissaやT.S.EliotのThe Waste Land改作問題と絡めて検証した。以上のような具体的研究成果を通じ、共同研究者の知見を統合して、英文学における異人概念の変遷の一面を解明できた。
著者
川人 貞史
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.議員立法の活性化の分析を進めるため,1947年の第1回国会から1998年の第144回国会までの衆議院議員提出法律案(衆法)について,提出者の所属会派,各院における付託日,委員会議決,会派ごとの賛否の情報,本会議議決,修正・否決の場合の回付,衆議院再議決,法案成立の場合の公布日などの分析用データ・ファイルを作成した.2.近年の議員立法の活性化と対照をなす1950年代以降の議員立法の衰退に関して,数量分析で特質を分析し,議員立法発議要件過重化に至る国会法改正過程を検討し,政治アクターたちにとって国会法改正がどのような意味をもったかを分析した.議員立法の衰退の原因は,国会法改正よりもその後に別に形成された制度ルールが重要だったことがわかった.3.1994年の政治資金規正法改正により透明度の高まった政治資金全国調査データを利用して,政治資金支出と選挙競争の関連性に関する初の包括的研究を行った.4.2000年9月から官報および全国47都道府県の公報に順次掲載された1999年政治資金収支報告書の概要(中央届け出分および地方届け出分),および,2000年6月25日執行の衆議院総選挙の選挙運動費用収支報告書の概要に関する全国47都道府県の公報掲載資料を収集し,データ入力した.2000年総選挙における小選挙区結果データおよび比例代表選挙結果データを小選挙区単位で政党ごとに集計し直したデータ・ファイルを作成した.また,市区町村ごとに集計された1995年国勢調査データを小選挙区単位で集計し直したデータ・ファイルを作成した.5.4で作成したすべてのデータを統合することにより,政治改革のインパクトの理論的・実証的分析のためのデータ・ファイルを作成し,1996年および2000年総選挙における戦略投票,政党間協力,政治資金の効果に関する分析を進めていく.