著者
岡 洋樹 高倉 浩樹 北川 誠一 黒田 卓 木村 喜博
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

旧ソ連圏に属したモンゴル、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、グルジア、ロシア連邦サハ共和国について、社会主義期から体制崩壊後の歴史記述・認識とその教育面への反映の状況を、収集した文献と、現地研究者との協力を通じて比較検討することによって、相互の共通性と特色を解明する。とくにソ連圏崩壊後に各国で顕著な民族主義的歴史記述や教育が創出している歴史認識の特徴と社会主義期との継承関係を解明する。
著者
牛越 惠理佳
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

これまでに,体積一定の摂動条件のもと,Stokes方程式の速度場に対するHadamard変分公式の導出に成功した.また,体積一定であることに加えて,摂動条件に若干の仮定を加えることによって,速度場だけでなく,圧力に対する変分公式を導出することができた。しかしながら,未だこの証明方法は煩雑で,Hadamard変分公式の応用を考察するためには,証明方法の更なる簡略化および摂動条件に新たに加えられた仮定を取り除く必要性を感じ,研究を行った.そして実際,体積一定の摂動に対して,Stokes方程式の速度場および圧力に対する変分公式の証明の簡略化に成功した.しかしながら,シンプルな証明を確立したことによって,これまでに得ることの出来なかった,速度場および圧力の第二次変分までをも導出することに成功した.この手法に,所謂bootstrap argumentを用いることによって,任意の高階に対する変分公式の導出が可能になると予想される.これらの結果をまとめ,論文として投稿した,以上の研究成果をもって,国内研究集会へ積極的に参加し,研究分野の近しい数学者と議論を行い,変分公式の次なる発展を模索することを心がけた.変分公式は,領域摂動問題において,基本的でありかつ不可欠である.実際に,変分公式を応用して,固有値の領域依存性を解析した多くの結果が存在する.様々な数学者との議論を通して,今後の研究へ大きな影響を与えるような知見を得ることが出来た.
著者
目時 弘仁
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

BOSHI研究では1年間を通じて317人の登録を行い、研究開始時より計831名の参加者となった。平成20年3月31日までに出産者した正常血圧妊婦109人を対象で、心拍数とショックインデックスは妊娠経過とともに増加して妊娠33週で最高値となり、以降は減少した。一方、ダブル・プロダクトは妊娠初期から妊娠後期までに単調に増加した。妊娠経過や季節変動が心拍数やダブル・プロダクトに及ぼす影響は、妊娠経過の影響が大きかったが、ショックインデックスは季節変動の影響が大きく、夏期に顕著に上昇した。平成21年3月31日までに出産した正常血圧妊婦258名に対象を広げ、妊娠初期の基礎特性とその後の血圧推移との関連を検討した。妊娠前に肥満であった妊婦は、妊娠時の血圧が正常レベルであっても、正常BMIの妊婦と比較し有意に高値であった。また、妊娠前にBMIが18.5未満であった群では2500g未満の低出生体重児であった割合が高かった。さらに、妊娠初期の血中インスリン濃度やHOMA指数と血圧推移との関連を調べたところ、血中インスリン濃度が高くなるにつれて、妊娠期間中の血圧レベルが高くなるばかりでなく、妊娠中期の収縮期家庭血圧低下は減弱した。大迫研究では、遺伝子多型や親の長寿と高血圧新規発症・高血圧有病との関連を検討した。計53個のSNPsのうち、RGS2、ADD1、CACNA2D2、CATの4つのSNPが高血圧発症と有意に関連し、オッズ比は1.6倍から1.9倍、P値は0.01から0.04であった。両親の長寿は、子の成人時の高血圧と関連し、母親が69歳未満で死亡した場合、子の血圧は127.4±13.2/76.2±9.1mmHg、84歳以上まで生きていた場合には123.4±15.2/74.4±10.3mmHgで、長寿の母親を持っ子の血圧レベルは有意に低かった。父親の場合も同様であった。
著者
安田 二郎 津田 芳郎 中村 圭爾 吉川 忠夫 山田 勝芳 寺田 隆信
出版者
東北大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

中国の知識人(士大夫)層の「歴史」との関わり方の諸相を、春秋時代から清末までにわたって幅広く発掘し、各々の時代性と関連づけて解明した。主要な成果の一部を紹介すれば、以下の如くである。(1).漢武帝が、季陵の家族や司馬遷に下した厳罰は純然たる司法処置であって、怒りにまかせた感情的行為とするのは、三国期に出現した新解釈であり、ここには古代的漢武帝像から中世的武帝像への展開を見出し得る。(2).『晋書』の日食記事には、実際には観測不可能な夜日食、わらには非日食さえもが数多く見出される。地上における政治的混乱は必ず天文現象に反映するという、編纂者たちがいだく天人相関理論に対する確信が、かかる虚偽記事を記さしめた理由の一として指摘できる。この事実は、中国中世における歴史叙述の特殊な性格をうかがわせる。(3).梟雄桓温の野望を抑えることを現実的な動機とした習鑿歯『漢晋春秋』が、魏をしりぞけて蜀を正統とした理由は、司馬氏一族が魏代に行った悪業を免罪することにあり、かかる視点の設定が、司馬昭の魏帝弑殺の事実を直書することをはじめて可能とさせ、鑒誠の実をあげしめた。(4).『新唐書』には、唐代の知識人が開陳した見解をそのまま利用しているケースがいくつも確認される。中国近世独裁体制下における修史事業の複雑微妙さを考えさせる。(5).司馬光『資治通鑑』刊行後、近世士大夫層の歴史理解が専らそれに依存したというばかりでなく、征服諸王朝下においても各々の国語に翻訳され、非漢民族支配層の好箇の教本として愛読され活用された。(6).金石資史料は、既存文献とは異なる情報を数多く与えてくれるが、特に墓誌銘の場合には、極度な虚飾を加えた記述も少くはなく、利用には慎重を要する。
著者
村上 哲見 渡辺 武秀 浅見 洋二 熊本 崇 川合 康三
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

中国における文学芸術の最も洗練された部分は, 「文人」と呼ばれる人々によって支えられて来た. 人間類型としての「文人」は, 魏晋の頃に出現し宋代に至って完成したものと考えられる. そこで本研究は, 宋代を中心として, この「文人」なる人間類型の特色を解明し, 更にその現実の姿ならびに文学芸術との関係などを考究すべく計画された.「文人」と並ぶ中国特有の人間類型に「読書人」と「士大夫」がある. 本研究ではこれらを対比しつつ分析することによって, それぞれの特色を明らかにした. まず「読書人」の不可欠の必要条件を考えてみると, (1)儒教の古典に通ずること, (2)文言の韻文および散文が書けること, の二点に帰着する. この点は「文人」も「士大夫」も共通で, つまり「文人」も「士大夫」も「読書人」であることを前提として, 他の要素が加わったものである. 「士大夫」にとって必須のもうひとつの要素は, 国家社会の経営に対する使命感であり, 実践としては官僚となって政治に参与することになる.つぎに「雅俗観」すなわち「雅」と「俗」とを上下に対置して一切の評価の基準とする認識は, 中国の伝統的知識人に普遍的な価値観であるが, それを純粹につか徹底的に追求する精神が, 「文人」なる人間類型の核心である. そこで実践としては, 「読書人」としての必要条件を備えるのは当然のこととして, 書画音楽など, 更に高度な芸術に秀でることになる.「士大夫」と「文人」とは矛盾するものではなく, 双方の要件を兼ね備えた人を「官僚文人」という. 歴史的にみると, 北宋では欧陽修・蘇軾など, すぐれた官僚文人が輩出したが, 南宋になると姜〓・呉文英など, 純粋型の文人が輩出し, これが南宋の文化を特色づけている. またこれらの文人が江南地方と深く結びついていることも見逃せない. 本研究ではそうした具体的な情況についても考察を進めた.
著者
松本 和紀
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、統合失調症(精神分裂病)の記憶機能に注目し、これが統合失調症の病態といかなる関わりがあるかを明らかにするために行った。報告者の研究により統合失調症では、記憶や言語機能を反映する事象関連電位反復効果に異常があることが見いだされているが、今回は特にこの反復効果が、統合失調症に特徴的である思考障害の基盤にある認知神経異常として現れると考え実験を行った。対象は、健常対照者10名、統合失調症患者19名で、患者はDSM-IVの基準を満たし、検査時には寛解期にあった。いずれの被検者に対しても研究について書面でのインフォームドコンセント行った。思考障害の評価にはホルツマンらの思考障害評価尺度を用いた。統合失調症患者は、この尺度に基づき思考障害群9名と非思考障害群10名に分けられた。反復効果課題施行中の事象関連電位が測定された。刺激は、かな二文字からなる単語で、標的は動物を意味する単語、非標的はそれ以外の単語を用いた。非標的の半分は初回提示の後に反復され、その半分は直後に反復される直後反復で、残り半分は平均5単語おいて反復される遅延反復であった。思考障害群では、有効な反復効果は認められず効果の大きさは刺激提示後300-500ミリ秒の平均振幅で健常群と比べ有意に減弱した。非思考障害群は部分的に反復効果を認め、効果の大きさは健常者と思考障害群との中間であった。反復効果の頭皮分布は、思考障害群では健常群や非思考障害群で認められる正中有意の分布を示さなかった。反復効果は、記憶や言語などの認知機能と関わりが深いことが知られており、特に刺激提示後400ミリ秒近辺の電位はN400成分と関わりが深いことが知られている。本研究の結果、思考障害を有する統合失調症患者では、N400の調整機構が障害されており、記憶や言語と関わる認知機能が思考障害の基盤にある可能性が指摘される。
著者
松本 和紀 進藤 克博 松岡 洋夫 松本 和紀
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本研究は脳内で行われる言語情報処理の早期の「知覚処理」から後期の「意味処理」への変換の仕組みとその相互作用を電気生理学的に解明していくために、事象関連電位を用いて早期の知覚情報処理に関わるNA電位と意味・記憶処理と関わるERP反復効果を指標に研究を行った。今年はNA電位とERP反復効果を健常者と精神分裂病者を対象に調べた。実験1:外国文字とかな文字との比較-刺激は非読外国文字、無意味かな単語、有意味かな単語の三種類。刺激は二文字からなり200m秒、2〜3秒の間隔で提示された。被験者はある意味範疇に属する単語に対してボタン押し反応をした。NA電位は非標的刺激に対するERPから単純反応課題に対するERPを差分して得られた。結果、NA電位は、三種類の刺激間で差が認められず、早期知覚処理では、意味の有無、日本語・外国語の違いなく同等に処理が行われることが分かった。健常者と分裂病者の比較では、分裂病者でNA電位の遅延が認められたが、刺激間の差はなかった。実験2:ERP反復効果とNA電位の比較-刺激は二文字からなるかな単語で、標的は動物の意味をもつ単語で非標的はそれ以外のかな単語。非標的の半分は初回に提示される単語で、残り半分は直後反復される単語と平均5単語間隔をおいて遅延反復される単語とに分けられた。単純反応課題も施行され、実験1と同様の方法でNA電位が計測された。結果、反復単語に対してCzを中心に全般性にERPが陽性方向へシフトするERP反復効果が認められた。NA電位とERP反復効果とは振幅や潜時に相関は認められなかった。一方で精神分裂病では、直後反復でのERPで反復効果の減弱が認められた。この結果、知覚の早期処理と記憶処理とでは、ある程度独立した機構が並行した処理を行っている可能性が指摘され、精神分裂病では知覚の早期処理の遅延と、記憶や意味と関連する電気生理学的活動の減弱が推定された。
著者
辻 俊宏 山中 一司 三原 毅
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

走査プローブ顕微鏡により逆圧電応答を計測する圧電応答顕微鏡(PFM)により、強誘電体メモリ用薄膜の疲労現象やMEMSのアクチュエータ用薄膜の性能向上のメカニズムが明らかにされつつある。しかしデバイスの動作環境、すなわち分極反転過程および逆圧電駆動中の分域をナノスケールの空間分解能で観察する手法は確立されていない。本研究では、表面に作製した電極対(表面電極対)の微小なギャップを利用してデバイスの動作環境の再現を試み、ナノスケールにおける弾性特性評価が可能な超音波原子間力顕微鏡(UAFM)により評価して、強誘電体材料の実用的な環境における材料評価技術の確立を目的とした。強誘電体材料には様々なものがあるが、ここでは特定の結晶方位に分極処理を施すことで従来の材料に比べて著しく高い圧電係数を発現することで近年注目されているマグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg2/3Nb1/3)O3-PbTiO3:PMN-PT)単結晶について実験を行った。その結果、この材料はキュリー点が130℃と低いために真空蒸着による電極作製時の入熱で脱分極分域組織が発生してしまったものの、表面電極対の電場で分域構造を駆動可能なことが初めて示された。その際に発生した分域境界をUAFMで観察した結果、表面下で斜めになっていることを示唆する結果が得られた。これはPFMのように誘電率の高い材料で電場が表面に集中する状況では不可能な測定であり、UAFMによる表面下欠陥の3次元構造の解析の可能性を実証できた。このように強誘電体材料の分域構造の評価において表面電極対を用いた電界印加およびUAFMによる非破壊評価が有用なことを初めて実証した。以上の研究により微細加工電極により分極・駆動される強誘電体の超音波原子間力顕微鏡による非破壊評価に関する基盤技術が確立でき当初の目的を達成した。
著者
山下 博司
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

東南アジア(特にタイとインドネシア)へのインド系宗教の伝播につき文献収集し諸遺跡を実地調査した。特に東ジャワの大規模遺跡と王権・墓廟との関係で新知見を得た。現代東南アジアにおけるインド系宗教と王権との関わりにつき、王制を維持するタイで現存バラモン儀礼を調査し統治との関係を考究した。タイ版ラーマーヤナ劇の伝統維持についても王国を挙げての保護の様子を取材した。司祭養成の現状を調べるため南インドを実地調査し大きな示唆を得た。
著者
高倉 浩樹
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、シベリア・ヤクーチア地域の先住民社会を対象とし、歴史的・政治経済的条件のなかで、先住民の民俗環境知識の生成メカニズムの解明を目的としている。最終年度である2004年度においては、前年度までに収集してきたフィールド民族誌資料を整理すると共に、文献資料を行い、国内の専門家と意見交換を行いながら、研究を進めた。結論から言うならば、当該地域の先住民の民俗環境知識は、畜産学・家畜管理学的な知見に基づく農業政策の影響をうけながらも、放牧活動を実践する牧夫達の経験的知見の相続そして個人的な発見によって生成されている。ただし、その知識はいくつかの相に分類でき、そのことはヤクーチア地域の社会主義化=集団化・定住化と深く結びついている。知識は、(1)家畜の再生産、特に獣医学的な知識にかかわるもの、(2)家畜の群れとしての行動についての知識、(3)牧夫達が家畜管理を行う際の放牧地選定及び宿営地設営にかかわる知識である。類型的に述べると(1)から(3)の順で科学的知識の影響は弱くなり牧夫の経験的な知識が重要性を増すことになる。そのことは、これらの知識が共有される人々の量に関連する。つまり(1)に近いほど、この知識を共有する(あるいは蓄積しうる)社会的階層が人々が多く(3)については牧夫などに限られる。従来、科学的知見は専門家集団に限られ、経験的知識はより幅広い層に認められるという理解であるが、これは歴史的・政治経済的条件のなかで生業という活動に従事する人々自体が先住民コミュニティのなかで少数化していることを示している。主たる成果は、ソ連時代に科学的な畜産技術・家畜管理学的技術が導入されたトナカイ飼育のなかで、牧夫達の移動距離や行動パターンを質的・量的に把握し、群れ管理の技術と知識の位相について論考を出版したことである。第二に、その広い意味での歴史的背景を明らかにした。1920-30年代の初期ソビエト政権においてヤクーチアの民族知識人がみずからの生業の産業化の過程をどのように評価していたのか、民族学史・科学史という視点で考察した論考を出版した。さらに、上記にのべたメカニズムをより具体的な民族誌的文脈に即した論考の出版を計画している。
著者
川島 隆太
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

疲労やストレスによるパフォーマンスの低下が、脳のどの領域の働きの変化と関連するのかを、非侵襲的脳機能イメージング手法を用いた基礎研究によって明らかにし、さらに、認知心理学的研究を追加することによって、健常成人の疲労やストレスによる認知機能の変化を定量的に評価可能なシステムを開発することが本研究の目指す最終的な目的である。平成20年度は、機能的NIRsを用いて、健康な右利き大学生6名を対象として、連続単純計算による精神疲労負荷時の前頭前野活動を計測したが、疲労に伴う変化を計測できなかった。このため、精神疲労モデルを再構築することが必要であると判断し、心理学研究を展開した。健康な右利き大学生30名を対象として、内田クレペリンテスト(連続単純計算)による精神疲労の状態を、認知心理学的手法によって経時的に観察した。その際に、バランス栄養流動食を摂った場合と、水のみ摂取した場合の2条件を設定した。水のみ摂取した場合には、VAS法による精神疲労の内観が時間と共に増加し、単純計算の作業量も減少する傾向にあったが、流動食を摂った場合には、開始後1時間半までは、精神疲労の内観も単純計算の作業量も減少しないこと、1時間半以降は、水のみ摂取群と同様に精神疲労度の内観も、作業量も低下することがわかった。先行研究では、ブドウ糖のみ摂取した場合には、水のみ摂取と同じ疲労傾向を示すこともわかっており、朝食の摂取パターンによって、精神疲労とそれに伴うパフォーマンスの低下の程度に差が出ることがわかった。
著者
北村 成寿
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

極域電離圏は、そこから伸びる磁力線が地球磁気圏の外側や惑星間空間に接続しており、磁力線に沿ってプラズマが流出していく。磁気圏の尾部に輸送されたプラズマは内部磁気圏のエネルギーの高いプラズマの源となるため、極域電離圏は磁気圏全体のプラズマの源として重要な領域である。あけぼの衛星、Intercosmos衛星、EISCATスバールバルレーダーのデータを用いて、地磁気静穏時の極冠域電離圏-磁気圏での電子密度分布、電子温度、イオン温度の太陽天頂角依存性を明らかにし、電離圏への日照の有無がこれらのパラメータに極めて強い影響を与えていることを明らかにした。さらに、電離圏が日照状態の場合について、過去のモデル計算でイオン流出への重要性が指摘されている光電子に着目し、FAST衛星の観測データを解析した。その結果、地磁気静穏時には磁力線に沿って電位差が存在し、電離圏から流出する光電子を減速、反射していることを観測的に示した。高高度で反射されてくる光電子のエネルギーの解析から、典型的な電位差は20V程度であり、過去のモデルによる予測よりは小さいものの、高高度に大きな電位差の存在を予測したタイプのモデルが静穏時の極冠域電離圏からのイオンの流出の描像として比較的妥当であるという結果を得た。一方、磁気嵐時のイオン流出については、あけぼの衛星が電子密度増加を観測し、ほぼ同時にPolar衛星がイオン上昇流を観測している2000年4月6日から7日にかけての同時観測データを解析し、磁気嵐中の電子密度増加の発生時に磁気圏へ流出できるエネルギーをもったイオン上昇流の見られる領域は、高度9000km付近の極域磁気圏においてはカスプから昼側極冠内に昼夜方向に10°程度も広がっていることを明らかにした。これは、磁気嵐時の磁気圏への重イオンの供給に関して、極域磁気圏においての昼側極冠域の重要性を示している。
著者
出口 徹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は矯正歯科治療に伴う痛みに対するCO2レーザーの軽減効果のメカニズムを解明することである。本研究において、実験的歯の移動時におけるCO2レーザーの疼痛軽減の効果を中枢側(中脳路核)および末梢(歯髄、歯根幕)において検証を行った。その結果、歯の移動時に伴い、中枢側において増加した痛み発生物質(c-fos)の発現がCO2レーザー照射後に有意に減少する事が明らかとなった。一方、末梢側においては、実験的歯の移動後、末梢神経組織のマーカーとしても知られるカルシトニン遺伝子関連ペプチド: CGRPおよびPGP9. 5の発現はわずかに増加した。CO2レーザー照射後においては、CGRPおよびPGP9. 5の発現に全く変化を認めなかった。さらに、CO2レーザー照射後の温度変化を計測した結果、いずれの照射強度、時間においても40°を超えることはなく、人体に影響を与えることはないことが示唆された。以上よりCO2レーザー照射は、中枢に発現するc-fos蛋白の発現を抑制することにより、歯の移動時に認める痛みを末梢組織の損傷等を起こさずに軽減する可能性が示唆された。
著者
松原 渉
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究では,データ圧縮を単に保存領域の削減にとどまらず,処理の効率化を目指して,圧縮文字列のための文字列アルゴリズムの開発を行った.とりわけ,文字列の繰り返し構造に着目し,圧縮文字列から繰り返し構造を検出するアルゴリズムの開発を目指して研究を行った.ひとつに,繰り返し構造に込められた制約をより明確にするために,繰り返し構造から,もとの文字列を推測するという逆問題に取り組んだ.本年度は,繰り返し構造の中でも局所周期に着目して逆問題に取り組み,部分的な成果を得た.結果として,計算複雑性がアルファベットサイズに依存して変化し,アルファベットサイズに制約がない場合か,アルファベットサイズが2以下であるとき,効率良く逆問題を解くアルゴリズムを与えた.アルファベットサイズが3以上の定数である場合の計算複雑性を明らかにすることが今後の課題である.本研究の成果は,学術論文誌Discrete Applied Mathematicsの特集号に投稿済であり,査読中である.ふたつに,圧縮文字列照合について,文字列に含まれる繰り返し構造を求めるアルゴリズムの開発に取り組んだ.既存研究として,圧縮データ長をn,展開文字列長をNとしたとき,繰り返し構造の存在判定を行う0(nlogN)時間アルゴリズムが知られている.本研究では,この結果をベースとして,スクエア(2回繰り返し部分文字列)および連(極大な周期的部分文字列)の個数を求めるアルゴリズムに拡張した.この成果について,国際学会への投稿を準備している.
著者
Mizuseki H. Tanaka K. Ohno K. Kawazoe Y.
出版者
東北大学
雑誌
Science reports of the Research Institutes, Tohoku University. Ser. A, Physics, chemistry and metallurgy (ISSN:00408808)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.55-59, 1997-03-20

A new Monte Carlo model is introduced to describe the Diffusion-Limited Aggregation (DLA) with extra forces arising from the Lorentz's and/or Coulomb forces. Specific patterns grown under the external force are produced by Monte Carlo simulation. In the present model, the basic movement of particles is the random walk, with different transition probabilities in different directions, which characterize stochastically the effect of the extra forces. In some cases, pattern-formations which are qualitatively different from the standard DLA model are observed and they are compared with preexisting experiments.fractal dimensionDiffusion-Limited Aggregation (DLA)magnetic fieldcrystal growthcomputer simulationrandom walkMonte Carlo method
著者
芳賀 洋一 松永 忠雄 牧志 渉
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

1本の光ファイバーを電磁的に2次元スキャンさせ画像を構成する原理を用い、細径かつ解像度の高い医療用内視鏡の実現を目指した。血管内、乳管内、歯周ポケットなどへ挿入し光学的観察を行うことを想定している。外径2mmのポリイミドチューブを基板とし、円筒面上へのフォトリソグラフィーと銅の電解めっきにより2次元駆動のための多層コイルを作製した。円筒状基板へのフォトリソグラフィーは、露光光としてレーザ光をスポットで照射し、基板をステージ制御で動かすレーザ描画で行う。スプレーコーターでレジストを均一な膜厚で塗布し、レーザ描画露光装置を用いてコイル形状をパターニングする。その後レジストを型として電解めっきを行いコイルの作成を行った。光ファイバーを電磁的に駆動し振動させるため、永久磁石を取り付けたコリメートレンズ付き光ファイバーをコイル内に内蔵する。永久磁石は、外径500μm、内径140μm、長さ2mmのFe-Cr-Co系永久磁石を使用した。また、コリメートレンズは外径125μmで長さ790μm、焦点距離750μmのファイバー融着型グリンレンズを使用した。コイルに交流電流を流すと永久磁石の磁気モーメントが磁界と揃うように曲がり光ファイバーを振動させる。X,Yそれぞれの1次元の駆動および、X方向とY方向の位相を90度ずらした状態で正弦波振動させ円を描き、2次元駆動を確認した。
著者
目時 弘仁
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

女性における出産イベントが血圧に及ぼす影響を検討した。外来血圧では、経産婦に比べ初産婦で高値を示し、先行研究と一致した。しかしながら、家庭血圧では、初産婦と経産婦で差はなく、非医療環境下での血圧が初産婦・経産婦で差がないという先行研究とも一致した。外来血圧のみに基づく妊婦の血圧評価では、特に初産婦の血圧を過大評価する可能性があり、家庭血圧などの非医療環境下での血圧を考慮した血圧評価の必要性が示唆された。
著者
大桃 敏行 宮腰 英一 小川 佳万 藤田 晃之 柳田 雅明 背戸 博史 荒井 克弘 藤井 佐知子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、生涯学習の推進に伴っていち早く学習機会の供給主体の多様化が進んだ成人学習の領域を対象とし、国内外の調査を通じて公共管理システムの転換の動態と課題を明らかにすることであった。おもな成果は次の通りである。1.指定管理者制度の導入は、行政と地方公共団体の出資財団との関係、行政と住民やNPOとの関係、そして財団と住民やNPOとの関係に変化をもたらしていること。この変化は、行政に対して、その守備範囲の再検討とともに、供給主体間の新たな関係設定の構築を求めるものとなっていること。2.住民ボランティアの主導で行政が支援する活気ある生涯学習事業が生まれる一方で、住民主導の事業は、事業拡大に伴い、異なるセクター間のコーディネート機能をどう確保するのかが課題となっていること。3.イギリスにおいては、伝統的に私的イニシアチブを国が追認する方式がとられてきたが、サッチャー政権以降、アウトプット評価に基づく管理が進められてきていること。4.アメリカにおいては、リテラシー教育や職業技能訓練など公的機関の責務とされているが、この領域でも民間の営利・非営利組織が参入し、契約と成果の評価に基づく管理システムが組み立てられてきていること。5.一方、日本の地方公共団体の生涯学習施策においては、学習成果の評価について問題が指摘される一方で、学習者の組織化による共同性の創出が進められていること(学会誌掲載論文)。
著者
荒井 克弘 大桃 敏行 宮腰 英一 橋本 鉱市 小川 佳万
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究の平成17年度の研究実績としては、昨年度から収集してきた内外の高等教育に関する文献・論文のほか、研究体制の組織・風土・制度化に関する基本的文献、東北大学の理工系学部ならびに附置研究所における研究者らの自伝・評伝・史資料などの文献・資料を、毎月1回程度のペースで研究会を開いて読み進めていった。また昨年度に行った東北大学の工学研究科、金属材料研究所、電気通信研究所など理工系の研究科・研究所における著名な研究者に対するインタビューを、中間報告の形で公表した。こうした基礎的な作業と並行して、東北大学の理工系ならびに文科系の研究科・研究所の教授・助教授を対象とした研究室体制に関する大規模なアンケート(『東北大学の研究と教育』)の集計と分析を進めた。これらの分析結果は、本研究科の年報に、「学問風土の研究-東北大学の研究と教育-」として公表(継続中)した。また、東北大学に留学して学位を取得し、その後本国に帰国して活躍しているアジア地域の著名な研究者に対して、留学当時の研究室の文化や風土についてインタビュー調査を行い、それぞれの研究室の学統を継承する子弟関係や優秀な人材を育ててきた学問風土について知見を深めた。また彼らの何人かを招聘して国際シンポジウムを開催し、学内外の研究者・大学院生らと活発な意見交換を行った。これらのインタビュー、シンポジウムでの講演ならびに質疑応答に関しては、録音テープを起こして報告書として刊行する予定である。
著者
小笠原 國郎 菅原 勉 谷口 孝彦 廣谷 功 吉田 尚之 高橋 道康
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

生理活性の発現は分子の持つキラリティーに依存する.それゆえ有機化合物の合成に当っては常にキラリティーの制御をも可能にするジアステレオ制御合成方法論の確立が必須である.本研究は基質制御型の合成方法論の立場から効果的なエナンチオかつジアステレオ制御法の確立を目的として行った.すなわち,本質的な立体制御要素を備えたキラル分子を先ず獲得し,この分子の持つ立体化学的ならびに化学的な機能性を反映させて効果的に目的物にエナンチオかつジアステレオ制御下に到達するものである.具体的には分子的に備わったカゴ状構造を持ち,さらに分子内にエノン単位あるいはジエノン単位を顕在的あるいは潜在的に保有する環状キラル分子を設計し,これを化学的不斉導入法あるいは酵素的分割法によって光学的に純粋に獲得しこれを基本合成素子として生理活性天然物の合成を検討した.その結果,シクロペンタジエノン等価キラル合成素子,シクロヘキサジエノン等価キラル合成素子,ジオキサビシクロ[3.2.1]オクテノン型多目的キラル合成素子,ならびにビシクロ[3.2.1]オクテノン型キラル合成素子開発に成功し,これらより多種にわたる生理活性天然物のエナンチオかつジアステレオ制御合成への道を拓いた.代表的例はプロスタグランジン鍵中間体,8組16種のアルドヘキソースの集約的合成,6種のコンドリトール異性体すべて,エストロン,ビタミンD,モルヒネ,カラバル豆アルカロイド,カイニン酸,抗マラリアアルカロイド,フェブリフジンおよびキニーネ,抗菌性シュードモニク酸,等の獲得に成功した.