著者
永広 昌之 鈴木 紀毅 山北 聡
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

北部北上帯は,タウハ帯や渡島帯と南部秩父帯をリンクする重要な位置にある.本研究では,葛巻地域から安家地域にいたる北部北上帯の北部地域の東西地殻断面を作成し,この地域の付加体の構造層序と付加年代を明らかにするために,詳細な野外調査と化石層序学的検討を行った.その結果,葛巻地域に後期石炭紀の海山玄武岩-石灰岩複合体由来の異地性岩体があること,安家地域の大鳥層が後期石炭紀チャートを含むことを明らかにし,北部北上帯付加体を構成する海洋地殻の年代が後期石炭紀に遡ることを確認した.また,大鳥層中に,東北日本では初めて,深海域ペルム紀-三畳紀境界に見られる黒色有機質泥岩層を発見し,初期三畳紀を示すコノドントHindeodus parvusの初産出層準直下の黒色炭質泥岩最下部で炭素同位体組成の急激なマイナスシフトを認めた.付加年代に関しては,大鳥層のそれが中期ジュラ紀Bajocian後期〜Bathonianであること,高屋敷層のそれが後期ジュラ紀Oxfordianであることを明らかにし,安家地域の付加体の地質構造が整然相を主体とするユニットの大規模褶曲構造で特徴づけられ,構造的下位が大局的には若い付加年代を示すことを確認した.これらのデータにもとづき,異地性岩体の年代構成にもとづく,北部北上帯の葛巻-釜石亜帯(西側)と安家-田野畑亜帯(東側)への細区分が北海道渡島帯にも延長できること,岩相や海洋プレート層序の類似から,大鳥層を中心とする安家地域西部の付加体が西南日本の柏木ユニットや大平山ユニットに対比されることを推論した.
著者
木村 憲彰
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

これまで、重い電子系における重い電子の起源、あるいは超伝導の形成において、スピン軌道相互作用の役割がよくわかっていなかった。本研究では結晶の空間反転対称性の破れによってあらわになるスピン軌道相互作用を、ドハース・ファンアルフェン効果をはじめとする輸送現象の測定によって明らかにし、質量増強のスピン依存性、異方的常磁性対破壊効果によって増強された超伝導上部臨界磁場を明らかにした。また、超伝導揺らぎの可能性や空間反転対称性の破れに共通した特異な超伝導状態を見出した。
著者
佐藤 しづ子 笹野 高嗣 阪本 真弥 庄司 憲明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

近年、従来はみられなかった若年者における味覚異常が社会問題となっている。その原因としては、ダイエット、コンビニエンス食、食生活の欧米化とそれに伴う和食の不摂取、昼夜逆転など若年者をとりまく最近の社会現象(life styleの変化)との関連が指摘されはじめている。さらに、現代社会におけるストレスは、自律神経を失調させ、味覚に重要な役割をはたす唾液分泌の低下をきたし口腔乾燥症を招き、ストレスによる若年者の味覚異常の惹起が指摘されている。しかしながら、これまで味覚異常は、高齢者についての実態調査はみられるものの、若年者における実態は全く不明であった。そこで、若年者をとりまく社会現象との関連を明らかとすることを目的として、若年者の味覚異常の実態(発症率・病因など)について疫学調査研究を行った。調査研究に同意を得た本学歯学部新入生153人に、濾紙ディスク法を用いた味覚検査、唾液分泌量測定および味覚異常の原因に関する問診を行った。その結果、1)全体の24.8%に味覚異常がみられた。殆どは、軽度味覚異常で、高度味覚異常者はいなかった。味覚異常者の9割以上には、味覚異常感はなかった。2)味覚異常者全員の唾液分泌量は正常だった。3)味覚異常者には、全身疾患および服薬はなかった。4)味覚異常者には、ストレス、睡眠時間、インターネット使用、香水使用との関連はみられなかった。5)味覚異常者には、朝食欠食者が多かった。6)味覚異常者では、豆類、魚貝類、海草類の食品摂取頻度が少なかった。7)味覚異常者には、貧血様症状と体重減少者が多くみられた。以上より、若年者における味覚異常は食生活との関連が深いことが判明し、若年者の全身健康のために味覚検査と食事教育が必要であると思われた。
著者
吉岡 真由美
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

地球の全表面が海で覆われた仮想的な「水惑星」で、台風発生と海面水温(SST)分布の関係を、計算機を用いた数値実験によって明らかにした。東西一様で、赤道で最大で両極へ向けて減少する南北対称なSST分布を持つ水惑星では、台風が発生しなかった。東西一様のままSSTを全体的に上昇させた(温暖化)実験でも、台風は発生しなかった。東西一様な赤道域の一部に暖かいSST領域(+3度の暖水塊)を重ねて与えた実験では、暖水塊の西側低緯度域で台風が発生しやすい環境が形成され、その領域に東へ伝播する強い西風が吹いた時に、赤道をはさんで双子台風が発生した。これは西太平洋でエルニーニョ期に見られる台風発生を説明する。
著者
福永 浩司 笠原 二郎 塩田 倫史
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

私達はこれまでに心臓型脂肪酸結合蛋白質(H-FABP)の欠損マウスにおいて常同行動と認知機能の異常、恐怖行動の亢進が起こることを見出した。脳内ドパミン神経はこれらの行動発現に関与すること、H-FABPはドパミンD2受容体との結合することから、H-FABP欠損マウスのドーパミン神経機能について解析した。最初にH-FABP欠損マウスにメタンフェタミンを投与し、ドパミンD2受容体の機能異常について調べた。また、ドパミンD2受容体拮抗薬であるハロペリドールによるカタレプシー現象を検討した。さらに、背側線条体におけるマイクロダイアリシス法を用いて、ハロペリドール刺激によるアセチルコリン(ACh)の放出を検討した。結果として、H-FABP欠損マウスではメタンフェタミンに対する感受性が有意に減弱した。さらに、H-FABP欠損マウスにおいてドパミンD2受容体拮抗薬の投与によるカタレプシー現象の有意な亢進が見られ、H-FABP欠損マウスではカタレプシーが亢進する同じ用量で、線条体でのハロペリドール誘発のACh遊離が顕著に亢進していた。免疫染色法によりH-FABPが背側線条体のACh神経細胞に強く発現することを確認した。さらに、培養神経様細胞を用いてH-FABPがドパミンD2受容体の機能を亢進させることを初めて証明した。これらの結果は、H-FABP欠損マウスに見られたカタレプシー現象の亢進には線条体におけるACh神経におけるD2受容体の機能異常が関わることを示唆している。
著者
中塚 晴夫 渡辺 孝男 池田 正之
出版者
東北大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

一般家屋に於ける空気の汚染源としては、暖房装置と炊事用熱源が挙げられるが、本研究では前者に注目し、その種類によって自覚症状に変化が見られるか否かを調査した。対象は宮城県仙台市・涌谷および田尻町の3地区40歳以上の男女32124人(男14383人、女17741人)とし、この人達にアンケート調査をした結果の解析を行うとともに、これに同県白石市の8千人の対象者を加えるための調査を行った。暖房に関する質問として、(1)暖房しない(2)電気ストーブまたは電気ごたつ(3)エアコン、セントラルヒーティングまたはスチーム(4)クリーンヒータ(5)煙突付きのストーブ(6)煙突無しストーブ(7)炭や煉炭の火鉢やこたつなど、のどれを使うかを回答してもらい、汚染源となる(6)(7)のいずれか一つでも用いる群(I)と、いずれも用いない群(II)とに対象者を分けて自覚症状に差が見られるか否かを検討した。その結果、撹乱因子の少ないと思われる非喫煙者を見ると、男子では涙が出やすい(Iで13%、IIで10%、値はいずれも年齢訂正有症率、以下同様)と疲れやすい(I16%、II13%)という自覚症状が汚染源を使用する群に有意(P<0.05)に多く、女子では鼻汁がよく出る(I11%、II10%)と不眠(I10%、II8%)に有意の差が現れていた。それ以外では統計的に有意とはならないが、男子では、せき、たん、眼の充血、眼がコロコロする、女子では眼の充血、眼がコロコロする、涙が出やすいなどが増加する傾向を示した。また、生活環境に影響を与える道路に面した家屋に住んでいるか否かについても解析したが、この影響は明確で、非喫煙女子では「症状無し」も含め17項目中9項目に有意差が認められた。以上のことから、暖房にともなう屋内汚染の人体に対する影響は若干認められるが、その程度は道路に代表される屋外環境の影響よりは少ないと推定される。
著者
加納 純也 張 其武 齋藤 文良 加納 純也
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

自動車のマフラーに使用される触媒は,自動車が寿命になると,白金などの貴金属を回収するために,積極的に回収される.しかしながら,その中から貴金属のみを効率的に回収する方法は,いまだ確立しておらず,その効率的な回収法の開発が望まれている.マフラーの中にはアルミナに白金などの貴金属が担持されており,そのアルミナから貴金属のみを分離するのが回収の重要な鍵を握る.そこで本研究では,メカノケミカル法を利用して自動車廃触媒からの貴金属を分離し,回収技術の開発を行う.すなわち,メカノケミカル法により,自動車廃触媒を微粉化し,活性化状態にし,その後,抽出処理により,貴金属のみを回収する.メカノケミカル法では,転動ボールミルあるいは遊星ボールミルを使用し,自動車触媒を粉砕し、得られた粉砕産物に対し王水を用いて抽出処理を行った。王水に溶解した貴金属をICPで濃度を測定し,評価した。自動車廃触媒中の白金などの貴金属はメカノケミカル法を適用しなくてもある程度は王水により抽出できる.ただその回収率は極めて低い.そこで、貴金属の回収率を向上するために抽出処理を行う前に転動ミルを用いて粉砕処理を行い、粉砕産物をいくつかの粒径ごとに分級処理を行った。その結果,粒径の小さなグループほど貴金属の回収率が高まることが確認された。このことを利用すれば、白金族金属の回収がより効果的に行えると考えられる。また、他の粒子サイズのグループにも貴金属が含まれているので,そのグループからも金属を回収する技術が今後の課題である.
著者
行場 次朗 三浦 佳世 北岡 明佳 川畑 秀明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、R.L. Gregoryの「心のデザイン」モデルを援用し、人間情報処理の主要な3つのストリームに由来するクオリア、アウェアネス、知覚ルールを次元的にクロスさせて、体系的に視覚芸術の基底をなす共通項とその心理・脳科学的基盤を明らかにする世界に類がない試みを行った。その結果、心理・脳科学的には、視覚美の様相は多数存在し、それぞれが機能的に特殊化した脳内のモジュール活動に結びついており、本研究で示した分類法の妥当性とともに、美を感受するモジュールやストリームの多重性が明らかにされた。
著者
有光 秀行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

これまで積み重ねてきた「ネイション・アドレス」研究を最終構築段階に入れるべく、国内で参照不可能な地方史関係刊行物、さらにイングランド司教文書・ノルマン朝国王文書・12世紀を中心とした教皇庁文書などのうち、これまで未検討であった史料にあたって分析を行ない、とくに「文書形式」そのものの伝播・継承・変化についてデータを充実させ、総合的な像の構築をこころみた。同時に、地域の実情(「ノルマン人」の定着度)とのかかわりについても考察した。
著者
境田 清隆
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

気象庁技術報告第34号「積雪累年気候表」には、1963年までの約800地点における最深積雪深と積雪日数の累年値が掲載されている。本研究では、各県の気象月報等を用いて、1931年まで遡ることが可能で、かつAMeDASデータにより現在まで接続可能な地点の積雪データを収集した。その結果、435地点について、1931〜1991年の最深積雪深および積雪日数の累年値を収集した。しかし、気象官署以外の観測点では欠測年が多く、また明らかに異常なデータも散見され、データの均質性をチェックすることは容易ではなかった。本研究では、そのうちほぼ均質なデータの得られた、北海道17地点、東北地方43地点の積雪日数のデータを用いて、地域毎の気候変動と都市の影響とを分離する方向で、解析を行なった。北海道と東北地方でそれぞれ、地点間のクラスター分析を行ない、積雪日数の年々変動の類似性の観点より、北海道で4地域、東北地方で5地域に区分した。そして地域内平均値の経年変化によって地域の気候変動を明らかにし、地域内の都市と非都市との比較から、積雪に及ぼす都市の影響を検討した。その結果、1)北海道は南部で減少、中北部で変化なしであるが、札幌は減少が著しく、地域平均との差は約6日である、2)東北地方太平洋岸は、地域としては積雪日数の増加が顕著であるが、仙台は増加しておらず、地域平均との差は約8日に及ぶ、3)盛岡など県庁所在地クラスの都市においても、地域平均に比べ8〜10日程度減少している、4)札幌・仙台・県庁所在地など都市規模により都市の影響が顕在化する時期がずれていること、などが明らかになった。
著者
近江 隆 北原 啓司
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

大都市圏及び地方中心都市に立地する区分所有集合住宅(マンション)において、所有と利用の不一致、すなわち、所有者の不在化の進行状況、背後にある所有権の流動化、マンションの立地・供給動向、不在者の離散プロセスとその意味等について分析した。調査対象は札幌、仙台、大宮、千葉、名古屋、堺、広島、福岡である。分析結果の概要を以下に述べる。1.大都市圏のベットタウン都市は不在化が抑制され、逆に所有権の移動が激しい。これは中古住宅の流動性の高さ、定住の為の住宅需要が支配的であることを示す。2.地方中心都市では不在化が4割水準に達し、賃貸住宅需要、業務需要マルテハビテーションの需要が大きい。従って、投資的要素が強く、それだけ所有権の移動が抑制されている。3.不在化はオイルショック後に完成した物件で特に進行し、ストックとしての不安定な状態が益々深刻化してゆくと考えられる。4.不在化は立地、建設年代、開発・販売主体等の要因でかなり左右される。但し、これらの作用は地域の市場関係の特殊な条件とも関連し、各々の都市で独自な傾向をもつくりだしている。5.不在・賃貸化した住宅は市場において一定の社会的役割をはたしている。特に、着工レベルの小規模賃貸住宅への偏りが、市場レベルではマンションの賃貸化により、定住可能型と云える中・大規模の需要を吸収している。6.持家政策の中でつくりだされたマンションが、社会的な借家需要に応えるという矛盾を内在させている為、分譲持家としての限界性と共に、借家としても社会的ストックとして位置づけための問題性、要件の欠落と有している。所有者不在とその空間的離散は、マンションの社会的、政策的な位置づけの方向転換を迫る結果を示した。
著者
日野 正輝
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

札幌,仙台,広島,福岡の4広域中心都市はこれまで中心性および成長力の点で類似した都市として認識されてきた.しかし,1980年代後半以降,4都市間の成長の差が顕在化してきた.本研究はこの点を主に4都市の雇用者数の動向に焦点を当てて検証した.その結果,下記の諸点が明らかになった.(1)広島の人口および従業者の増加率は1980年代後半以降他の3都市に比べて継続して低位にある.この広島の成長率の低位は主に流通産業の成長の鈍化に求められる.広島の支店集積量は福岡の1/2程度の規模しかない.また,1980年代以降の成長産業である情報サービス業の集積においても,広島は4都市のなかで最も低位にある.(2)福岡と仙台の成長は最も良好であった.しかし,仙台の成長は1990年代においても域外企業の事業所の集積に依存し,地元企業の成長による従業者の増加は相対的に小さい状態にある.それに対して,福岡の従業者の増加は,域外企業の進出に依存すると同時に,地元企業の成長による部分が仙台に比べると絶対的にも,また相対的にも大きい.(3)札幌は,東京企業などの支店集積量では仙台と同規模にあって,福岡に比べると小さい.そのため,支店集積による従業者の増加も相対的に少ない.しかし,札幌では地元企業の従業者の増加数が大きい.この点は,情報サービス業においても同様の傾向にある.
著者
長谷川 公一 町村 敬志 喜多川 進 品田 知美 野田 浩資 平尾 桂子 池田 和弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、気候変動政策の政策形成過程と政策ネットワークに関する国際比較研究の日本版である。主要3紙の関連記事を対象としたメディア分析と主要な関係団体に対する質問紙調査とインタビュー調査からなる。後者では、省庁・政府系研究機関・業界団体・民間シンクタンク・NGO・自治体・政党・マスメディア・企業など125団体の気候変動問題担当者に質問紙を用いて面接、72団体から回答を得た(回収率57.6%)経済・業界団体などのように、自主的な削減の取り組みを評価し、大きな削減目標に消極的なグループと、地方自治体・環境NGOなどのように、法的な削減を求め、削減に積極的なグループとに2極化していることがわかった。
著者
浅井 圭介 永井 大樹 沼田 大樹 姜 欣 近野 敦 近野 敦 中北 和之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,航空機の非線形領域における動安定性を調べる実験技術として,ハイブリッド・アプローチによる次世代動的風洞試験法を開発することを目的としている.従来のシリアルロボットに加えて,新規にHEXA型パラレルロボットとその制御系を開発し,それらを用いて縦運動と横運動が連成する2自由度の加振実験を実施した.これと並行して,非定常感圧塗料や蛍光ミニタフトなどの先進的な光学計測手法を開発し,非定常運動するデルタ翼面上の前縁剥離渦の崩壊や空気力への周波数の影響を実験で明らかにした.これら一連の実験により,非線形飛行力学の研究を行うための基盤技術を構築することができた.
著者
鈴木 厚人 井上 邦雄 末包 文彦 白井 淳平 古賀 真之 斎官 清四郎 山口 晃 阿部 浩也 吉村 太彦 橋本 治
出版者
東北大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1997

研究代表者が率いるカムランド実験は,中核的研究拠点形成プログラムの支援(平成9年度〜平成15年度)を得て,平成13年度に1000トン液体シンチレータニュートリノ/反ニュートリノ観測装置を神岡鉱山の地下に完成させた。そして,平成14年1月よりデータ収集を開始し,現在継続中である。この間,平成14年12月に,原子力発電所の原子炉から生成される反電子ニュートリノ(原子炉起源)の消失現象を世界で初めて検出した。この現象は,ニュートリノが質量を持つことに起因するニュートリノ振動を強く示唆し,その証拠は次の論文(平成16年7月予定)で公表する予定である。また,原子炉反電子ニュートリノ消失現象の発見に関する論文(Phys.Rev.Lett.90,021802,2003)は,現在までに被引用数537となっており、Thomson ISI Web of Scienceデータに基づくScience Watch誌の最新号(March/April,2004)では本論文は月間被引用数で物理学分野の世界第1位、医学、化学、生命科学・物理学を合わせた総合順位でも世界第2位となっている。本研究では,反電子ニュートリノスペクトルにおけるウラン及びトリウム・ピークの同定による地球反ニュートリノ検出の挑戦も行なわれた。これまでの実験で検出器の充分な性能が示され、世界初の検出が期待されている。実現すれば地球内部のウランやトリウムの存在量、ウラン/トリウム比の測定など地球内部のエネルギー生成機構や地球進化史の解明に不可欠の情報が期待される。また検出器を更に高感度化し^7Be太陽ニュートリノの未曾有の高感度測定を目指した研究が進行中である。
著者
宇都宮 裕貴 高野 忠夫 八重樫 伸生 小林 里香 山崎 幸 高林 俊文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

子宮内膜癌細胞株を用いてERαが直接結合する新たな転写制御領域を同定しその機能解析を行うことにより、新たな分子機構の解明を試みた。始めに転写制御領域を同定するためにChIP クローニングを行い、47 の標的部位を得た。それらの中には、従来まで重要でないとされてきたイントロンも多数含まれていた。そして、ERα転写コアクチベーターであるGRIP1 に着目しその機能を検討したところ、子宮内膜癌細胞株においてGRIP1はアポトーシスを抑制することにより生存細胞数を増加させる可能性が示唆された。
著者
白川 仁 駒井 三千夫 後藤 知子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高等動物の組織内で変換・生成されるビタミンK(メナキノン-4、以下MK-4)の変換機構と生理的意義の解明を目的として、MK-4の新しい作用(抗炎症効果、性ホルモン産生調節)とビタミンK3からMK-4への変換の分子機構を解析した。MK-4処理によって炎症シグナルを仲介する分子の活性化が阻害され、性ホルモン産生を活性化させるリン酸化酵素の活性化が明らかになった。また、MK-4変換には昨年報告のあった酵素の必須性が再確認された。
著者
細貝 良行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では放射線治療時における照射線量をシンチレータとして人工ルビーを使用し、リアルタイムでモニタリング可能なシステムの構築を行ってきた。ルビーからの光を光ファイバーで道光しフォトンカウンタに取り込み解析を行う。光量を定量化するために核医学的手法を応用し、X線CTの3D画像から体内に分布する臓器の距離・形状を把握し、光の吸収を補正することで可能とした。本研究期間中に特許の出願を行った。
著者
磯部 彰 真鍋 俊照 新宮 学 金 文京 藤本 幸夫 山田 勝芳
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

東アジア社会の構造及び将来のあり方を考える時、意志疎通、情報の伝達、文化の共有に多大な影響と役割を果たした出版文化は文化・政治・経済・宗教等の基本をなした。本研究は、中国・朝鮮・日本等の近世出版システムと文化形成との関係を解明すべく立案され、文学・歴史学・思想宗教学・書誌文献学・言語学・美術史学等の多方面から成る研究者を研究分担、もしくは研究協力者として結集し、十数回に及ぶ小地区会議、三回の全体会議を開催して検討した。その結果、近い将来、特定領域Aに企画案を申請することとし、今回なお検討を要する問題は継続検討課題とする一方、東アジア諸国における出版文化研究の現況成果を知るため、更に企画案に盛り込むべき外国調査、共同研究を実施することとし、明年の国際学術研究に申請することを計画した。研究の大綱は、次のように決定した。○研究会名称:東アジア出版文化研究機構○総括機構 五大地区・計画研究代表から組織五大地区・計画研究双方を統合して、一般市民も含めた研究シンポジウム・出版展示会・特別講演を指導する。総括機構に直属する情報図書インフォメーション支構を通して、インターネットで資料・情報・文献の提供を図書館・研究所に対して行う。○研究期間は5年間○地区は東北・京浜・京阪・中国・九州の5ブロック○計画研究は(1)出版交流研究、(2)出版形成・機構研究、(3)出版文化論研究、(4)出版環境研究、(5)出版政策研究、(6)出版物の研究の6本を基幹研究のもとに2〜3件づつ設ける。○公募研究は(1)〜(6)基幹研究(計画研究)の下でそれぞれ公募し、約八十の個別研究を計画研究の支柱とする。○外国研究機関との共同研究・調査も実施し、例えば中国では社会科学院文学研究所と共催で北京出版文化研究シンポジウムを開く。○事務局を総括機構に設ける。
著者
岩佐 和晃
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

物質の性質・新機能を明らかにする基礎科学分野において、温度などの環境の変化に伴う物質の状態変化である相転移の研究が必要である。磁性や電気伝導性の相転移に伴い物質の原子配列(結晶)構造をも変化する現象が見られる。本研究では、希土類元素と隣接原子から供給される電子が互いに強く混ざり合う化合物における電子相転移と結晶構造変化の物理的機構について、構造的なダイナミクスの観測から明らかにすることを試みた。