著者
小野寺 恒信
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、光触媒還元法を確立し、新規な有機・無機ハイブリッドナノ構造体を創製するとともに、有機・無機双方の特性を相乗的に活かした物性・機能を探求する。本年度は、作製した有機・高分子ナノ結晶をコアとする金属ナノシェル複合体の評価と、複合体の集積化を行った。1.有機・高分子ナノ結晶をコアとする金属ナノシェル複合体の評価ポリジアセチレンナノ結晶をコアとする金属ナノシェル複合体について、SEM/TEM観察および分光測定を行った。金属ナノシェルは、金属種によってシェルの凹凸に顕著な違いが認められた。その中でも、銀ナノ粒子は被覆率の違いと表面プラズモン吸収ピークのシフトに相関かおり、銀ナノ粒子間の双極子-双極子相互作用により議論できた。さらに、共同研究として単一粒子のレイリー散乱スペクトルの測定、特に偏光依存性を評価した結果、ポリジアセチレンナノ結晶の光学異方性に対応したスペクトルを観測すると共に、銀ナノ粒子の表面プラズモン吸収についてもコア結晶の屈折率の異方性に影響されたスペクトル変化が観測され、単一粒子レベルでコアーシェル間の相互作用を詳細に評価できた。これらは、複合体の構造と電場増強効果の相関解明に向け、重要なデータと成り得る。2.金属ナノシェル複合体の集積化交互積層法を用いて、複合体を35層まで積層し、非線形光学特性評価に必要な吸光度1程度の薄膜の作製に成功した。しかし、薄膜のSEM観察から、μmオーダーの凝集体が確認でき、より光学品質の高い薄膜を作製するには積層過程での複合体の分散安定性に留意する必要がある。以上のように、金属ナノシェル複合体の評価を行い複合化の特色を明確にすると共に、複合体の集積化を行うという当初の目標を達成できた。また、本研究の成果は学会および論文発表を行った。非線形光学材料・触媒・メタマテリアルなどの作製に貢献すると期待している。
著者
末永 智一
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は, 「細胞の新規パターンニング法, 分離, 捕捉法を確立する」ことにある. 本年度は, 遺伝子組み換え細胞, バイオ微粒子を用いて, 誘電泳動による細胞捕捉と細胞アレイの作製, 捕捉された細胞の機能評価, 異種細胞のパターンニング等に関しても検討した.・単一細胞アレイの作製 : 誘電泳動により個々の微小ウェル中への細胞の捕捉することによる細胞アレイの構築に関して検討を行った. その結果, 直径30μm, 深さ25μmのウエルアレイを利用し, 1MHz, 3Vppの交流電圧を印加することにより, 効率的に単一細胞(HeLa細胞)ウエル中に捕捉することができ, 細胞アレイを構築できることが明らかとなった.・捕捉された細胞の活性評価 : 分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)をレポーター遺伝子として組み込んだHeLa細胞を作製し, 上記手法により誘電泳動により単一細胞アレイパターンを作製した. 発現したSEAP活性を電気化学顕微鏡により評価したところ, 単一細胞レベルでは遺伝子発現効率に大きな不均一性が認められた.・異種細胞のパターンニング : 誘電泳動パターニングデバイスを用いて細胞のパターニングを行なった. 本デバイスの利用により細胞に大きな損傷を与えることなく, 5分という極めて短時間に細胞をラインアンドスペース状に配列できることを明らかにした. さらにこのデバイスを利用することで, 異種細胞の異所領域へのパターニングが行なえることが明らかとなった.・バイオ微粒子のパターンニングと応用 : ITOマイクロアレイ電極上での誘電泳動を利用し、抗体固定化微粒子を抗体が固定されたPDMS表面の特性部分に集積させた. 集積化した微粒子量を蛍光計測することにより. マウスIgGを0.01ng/mLと高感度でしかも迅速に検出することに成功した. この手法を利用することにより, 各種細胞が混合した液から特定の細胞を分離できると考えている.
著者
小川 仁 柴田 近 佐々木 巖
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

臨床研究においては当科での回腸嚢炎の発症頻度を明らかにするとともに、従来明らかではなかった発症後の長期経過とくに抗菌薬治療に対する感受性の変化を明らかにした。基礎研究においてIL-23が腸管上皮細胞に対して細胞内シグナル伝達機構を活性化させるとともにサイトカインの放出を促すことを明らかにし、また大腸癌の一部においてもIL-23Rの発現を認めIL-23が増殖・浸潤を刺激する事を明らかにした。
著者
佐藤 英明 西森 克彦 甲斐 知恵子 角田 幸雄 佐々田 比呂志 眞鍋 昇
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)インドネシア・ブラビジャヤ大学生殖生物学部門教授のS.B.Sumitro博士を招聘し、「The use of zona pellucida protein for immunocontraceptive antigen」と題するセミナー、及びをウイスコンシン医科大学生化学部門助教授の松山茂実博士を招聘し、「Bcl-2 family proteins and cell death regulation」と題するセミナーを行った。また、国内からアニマルテクノロジーに関する専門家を4名招聘し、セミナーを行った。2)自治医科大学分子病態治療研究センター教授の小林英司博士を招聘し、「ブタは食べるだけ?」と題するセミナーを行い、アニマルテクノロジーによって家畜の意義がより広い分野で高まっていることについて情報を収集した。3)オーストラリア・アデレード大学において体細胞クローンの研究動向調査を行った。スウェーデン農科大学獣医学部において受精卵の大量生産技術の現状と将来の研究方向の調査を行った。インドで開催されたアジア大洋州畜産学会議において、アジアにおけるアニマルテクノロジーの動向について情報を収集した。4)オーストラリア・アデレード大学において、アニマルテクノロジーに関するアジアシンポジウムを共催し、世界の動向について情報を収集した。5)体細胞クローン技術による遺伝子欠損動物作出戦略について検討した。特に、「卵巣から採取した卵子を体外成熟させ、除核未受精卵をつくる。また体外成熟卵子を体外受精・体外発生させ、胚盤胞をつくり、そのような胚盤胞から胚性幹細胞株を樹立する。胚性幹細胞株を用いて遺伝子欠損細胞を作り、これを除核未受精卵に移植する。このような核移植胚を体外で培養し、生存胚を仮親に移植する」という戦略の有効性を検討した。6)調査結果をまとめ、「Animal Frontier Science」と題する本に計9編の論文を寄稿し、出版した。
著者
小野 尚之 堀江 薫 上原 聡 ハイコ ナロック 中本 武志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、語彙意味論モデルと構文研究を基に語彙情報と事象構造の融合に関する日英語の比較対照研究を行うものである。中心課題は次の3つに集約される。(1)生成語彙意味論によるレキシコン研究の推進。生成語彙意味論モデルのクオリア(語彙情報)が事象構造の解釈をどのように決定するかという問題の解決を目指す。(2)言語における主観性(subjectivity)問題の解明。主観性が事象構造の解釈(例えば、心理状態述語など)にどのように影響するか。そして、構文選択にどのように影響するか。(3)語彙化・文法化における語彙情報と構文の融合についての新たな提案。語彙情報が構文に融合しさらに文法化していく過程には、類型論的に捉えるべき普遍性があることを示す。
著者
大方 昭弘 伊藤 絹子 片山 知史 本多 仁 大森 迪夫 菅原 義雄
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

砂浜浅海域に生息するアミ類は、沿岸魚類の生活上不可欠の食物源であり、浅海域魚類群集の生産構造の中核的地位を占めている。しかし、水深3m以浅の砂質海岸の砕波帯に生息するアミ類の生物生産過程および沿岸物質循環系における機能については明らかではない。本研究は、仙台湾砂質海岸の波打ち際斜面に生活し、数量的にも多いアミ類Archeomysis kokuboiの示す物質経済の特異性を明らかにし、浅海域生物群集との機能的結合関係を見いだすことを目的に行われ、下記のような結果が得られた。1.砕波帯における水深5m以浅に出現するアミ類のほとんどはArchaeomysis属であり、特に水深3m以浅にはA. kokuboi、3m-5mにはA. grebnitzkiiが卓越し、5-15mの水域にはAcanthomysis属が多い。魚類の胃内容組成にも、このような水深によるアミ類の分布状態の違いが反映している。2.汀帯の砂質斜面に生息するA. kokuboiの高密度分布域は、潮汐とともに移動するが、汀帯下端部からの距離はほぼ一定である。アミが潜砂するこの高密度域の砂の中央粒径値は2.0-2.3の範囲にある。日中は汀帯砂中に潜砂するものが多く、夜間には汀帯の沖側、水深1-2m付近を群泳しながら鞭毛藻やCopepodaなどを摂食している。3.水温15℃、照度0-100luxの条件におけるA. kokuboiのアルテミアを食物とする日摂食率は、湿重量で24.8%、乾重量で39.7%であった。1日24時間の摂食量のうち夜間は74.9%、昼間は25.1%であった。4.摂取されたアルテミアのアミ体物質への転化効率は、15℃において他の温度条件におけるよりも大きく、体長別にみると、小型が24.6-44.2%、中型が15.4-36.4%、大型が8.9-13.8%であり、成長とともに低下する。放射性同位元素Cでラベルしたアルテミアの投与量とアミ体内残留量との比は、12時間後52%、24時間後38%であった。5. A. kokuboiは一生の間に少なくとも2回以上産卵する可能性があり、個体群としては年間6発生群以上であることが確認された。4-6月生まれの群は成熟が速く小型で産卵し、11-1月生まれの群は成長が遅く、春季に大型群となって産卵に参加する。このように、本種は周年にわたって砕波帯魚類群集の生産構造の中核種として重要な役割を果たしていることが明らかにされた。
著者
青木 淳賢
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

これまでのノックアウトマウスを用いた解析により、オートタキシンは発生段階の血管形成過程に重要な役割を有することが明らかになっている。しかしながらその詳細な作用機構は明らかでなかった。この問いに答えるために我々はゼブラフィッシュに着目した。ゼブラフィッシュは分子レベルでも哺乳類と血管形成過程が類似していることが示されている。我々は、オートタキシンが、ゼブラフィッシュにも高度に保存されていること、および、in vitroで発現させたとき、リゾホスファチジン酸産生活性(リゾホスホリパーゼD活性)を示すことを確認した。さらにオートタキシンに対するアンチセンスオリゴ(MO)を投与することでオートタキシンの機能抑制を行ったところ、ゼブラフィッシュにおいても顕著な血管形成異常が観察された。今後は各LPA受容体、並びにオートタキシンの基質産生酵素候補遺伝子に関して、血管形成異常を指標として機能的関連性を明らかにし、オートタキシンの血管形成過程における役割を分子レベルで明らかにされることが期待される。
著者
越後 成志 橋元 亘 森川 秀広
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々は、IL-18の抗腫瘍効果の詳しいエフェクター細胞に関してマウスの系を用いて解析を行い、その抗腫瘍効果のエフェクター細胞がNKT細胞ではなくNK細胞であること(論文投稿中)、またIL-18がNK細胞を活性化し腫瘍細胞をアポトーシスに陥らせる結果、樹状細胞を介して効率良く腫瘍特異的CTLを誘導すること(Tanaka et al. C. Res. 2000,60:4838-4844)などを明らかにしてきた。平成13年度は、ヒトでのIL-18の抗腫瘍効果、特にその詳しいエフェクター細胞の解析を行った。ヒト末梢血をHuIL-18で14日間刺激・培養し、リンパ球の表面マーカーの変化を解析したところ、CD3-D56+(NK)細胞が著明に増加することが分かった。また、その際の培養液中のIFN-γ産生量をELISA法にて測定したところ,IL-2単独で培養した場合と比較して、多量のIFN-γ産生がみられることを明らかにした。IL-18の添加培養でNK細胞が増加していること、またIFN-γの産生増強がみられたことより、IL-18がヒトにおいても抗腫瘍効果を発揮することが予想された。そこで次に、IL-18により活性化されたリンパ球が腫瘍細胞に対してアポトーシスを誘導するかどうかを検討した。HuIL-18を添加培養したヒト末梢血リンパ球とヒト腫瘍細胞株とを8時間共培養した後、腫瘍細胞をAnnexin-V, Phi-Phi-Lux, PI等で染色することによりアポトーシスの検出を試みた。その結果、IL-2単独で培養した場合と比べてIL-18+IL-2で培養したとき、腫瘍細胞のアポトーシスが増強された(論文準備中)。以上のことより、ヒトの系においてもIL-18が抗腫瘍効果を有することが明らかになり、ヒト悪性腫瘍治療への臨床応用の可能性が示唆された。
著者
山本 雅之 勝岡 史城 峯岸 直子 本橋 ほづみ 黒河 博文 鈴木 教郎 森口 尚 鈴木 隆史 田口 恵子
出版者
東北大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2007

生体は、環境ストレスに適切に応答して恒常性を維持している。本研究は、酸化ストレス・異物に対するセンサーであるKeap1-Nrf2システムを検証し、ストレス感知の新たな分子機構、疾患との関連を明らかにした。また、低酸素ストレスについては、エリスロポエチン遺伝子の発現制御を通じて、組織ごとに異なる多様な低酸素応答に対する遺伝子発現制御機構について新たな知見を得た。
著者
郭 常義
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.25-37, 1991-09-30

希望の助動詞「たい」による希望表現には, 人称制限と制限解除との場合があるが, その実態と原因について従来の研究では単文を中心に分析されてきたが, 本研究は日本語教育の立場から従来の研究を踏まえて, 複文を主にして検討し, 「たい」形式の希望表現の人称制限が解除されるかどうかは, 「希望」が現時点の事実であるかどうかによるという結論を提出した。
著者
高倉 浩樹
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

200字程度本課題は、デジタル映像技術の発展を背景に、人類学的研究の新たな方法とその可能性を探ろうとするものである。具体的には、(1)デジタル映像技術と人類学調査研究に関わる最新知識の解明、(2)映像人類学の基盤的知見の探求、(3)日本の人類学における写真史に関わる総説的知見の探求、(4)デジタル映像技術を利用した研究成果発信方法の開発である。結果としてデジタル映像技術を利用した人類学調査は、調査者と被調査者との関係の相対化をふくむ双方向性的なものになっていること、この特性を利用することで人類学の知見はより効果的・説得的に社会に提起されうることを明らかにした。
著者
滝沢 寛之
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

データクラスタリングのためには最近傍のクラスタ探索(最近傍探索)のために高次元ベクトル間の距離計算を多くの回数行う必要があり、大規模な問題に適用する場合にはその計算負荷が大きな課題となる。本研究では平成15年度に、近年のパーソナルコンピュータ(PC)用描画ハードウェア(GPU)の急速な発展に着目し、一般的なGPUを並列プロセッサとして利用すること(GPGPU)で高速な最近傍探索を実現した。さらに、平成16年度はその研究成果を応用して、GPUとCPUとの協調によりデータクラスタリングを高速に行う手法を開発した。この手法は最近傍探索距離の有する2種類の並列性を効果的に利用可能であり、その成果は国際会議において最優秀論文賞を受賞するなど学術的に非常に高く評価された。また、データクラスタリングに適用可能な競合学習をPCクラスタで効果的に並列実行する手法を提案し、その成果が国際学術論文誌に掲載された。データマイニングの重要な要素である可視化についても引き続き検討し、北海道大学-東北大学間のスーパーSINETによる接続実験により、可視化サーバを対話的に遠隔利用できることを実証実験した。物理的に遠隔地にある演算サーバを利用してクラスタリング処理やその後のボリュームレンダリング等の可視化処理を行い、データマイニングに利用可能であることが実証された。その成果は学術論文誌に掲載予定である。Chinrunguengらの手法は、部分歪みエントロピを用いてクラスタの最適性を評価することにより平均歪みを最小化する。しかし、適切なクラスタを形成するまでに多数回の繰返し計算が必要であり、時系列データの時間変化に対して迅速に追従できない可能性がある。本研究では、部分歪みエントロピに基づいて適切にクラスタを再配置する手法を新たに提案し、動画像の適応ベクトル量子化に適用することよって追従速度と歪み最小化性能との両立を実現できることを確認した。
著者
柳原 真知子
出版者
東北大学
雑誌
東北大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:09174435)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.9-22, 2000-01-31

脱構築相互交渉関係性経験正統的周辺参加新参者
著者
石川 遼平 井上 博文 三本木 貢治
出版者
東北大学
雑誌
東北大學選鑛製錬研究所彙報 (ISSN:0040876X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.193-200, 1974-03-28

The relation berween cerium and oxygen in liquid iron together with the phase of deoxidation products at 1650℃ was studied. The following results were obtained : 1) The composition of deoxidation products is considered to be that the O/Ce ratio is 1.5 to 1.64 ([%Ce]<10 ppm), 2) If the deoxidation products are assumed as Ce_2O_3,the deoxidation equilibrium constant can be expressed as below, Ce_2O_3=2 Ce__-+3 O__- K=4.0×10^<-15>, 1650℃, [%Ce]<10 ppm.
著者
〓 再京
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.37-48, 2001-11-15

順接と逆接の論理を盛り込むことによって、「妥当な推論の結果としての話し手の判断」と「話し手の認識の確認や再確認」という二つの機能が「やっぱり」には認められる。さらに談話においても、複文より複雑な構造をなすものの、順接と逆接の論理が適用される。その結果、順接の論理からは、応答表現としての「やっぱり」の機能が認められ、逆接の論理からは、発話を修正する (repair) 機能が認められる。そして、話者交替 (Turn-taking) のシステムにおける発話の順番取りの機能、話題導入のシグナルとしての機能が両論理から認めれる。
著者
青木 周司 菅原 敏 佐伯 田鶴 中澤 高清
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

人間活動によって大気に放出された二酸化炭素が陸上生物圏と海洋にどのくらい吸収されているかを定量的に評価するために、二酸化炭素濃度と炭素同位体を組み合わせて解析する方法と、酸素濃度と二酸化炭素濃度を組み合わせて解析する方法を実施した。まず二酸化炭素濃度と炭素同位体を組み合わせて解析することによって得られた人為起源二酸化炭素の陸上生物圏と海洋による吸収量を1984-2000年の期間について評価した。その結果二酸化炭素吸収は、陸上生物圏について1.21GtC/yr、海洋について1.59GtC/yrとなり、観測期間全体を平均すると陸上生物圏も海洋も二酸化炭素の吸収源となっていたことが明らかになった。これらの吸収源の強度は年々変動しており、特に陸上生物圏による吸収がエルニーニョ現象や火山噴火による異常気象の影響を強く受けて変化することが明らかになった。一方、酸素濃度と二酸化炭素濃度を組み合わせることによって評価した1999-2003年の二酸化炭素吸収は、陸上生物圏について1.1±1.0GtC/yr、海洋について2.0±0.6GtC/yrと見積ることができた。2つの独立した研究から得られた成果を観測期間がほぼ重なっている時期について比較した。陸上生物圏による二酸化炭素吸収量は、二酸化炭素濃度と炭素同位体から得られた1994-2000年の値が0.90GtC/yrであり、酸素濃度と二酸化炭素濃度から得られた値が1.1±1.0GtC/yrと評価された。また、海洋による二酸化炭素吸収量は、二酸化炭素濃度と炭素同位体から得られた1994-2000年の値が1.73GtC/yrであり、酸素濃度と二酸化炭素濃度から得られた値が2.0±0.6GtC/yrと評価された。2種類の全く異なった研究方法によって得られた結果が良く一致しているため、本研究によって信頼性の高い結果が得られたと考えられる。
著者
中澤 高清 森本 真司 塩原 匡貴 和田 誠 青木 周司 山内 恭 菅原 敏
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

1998年7月、1998年12月〜1999年3月にスバールバル諸島ニーオルスンにおいて、大気中の温室効果気体やエアロゾルなどの実態の把握を目指し、集中観測を行った。これらの観測から、北極域におけるCO_2、CH_4、O_3の変動が詳細に捉えられると同時に、CO_2データは海水表層でのCO_2交換の評価のための基礎データとなった。エアロゾルについては今回の集中観測で多くの基礎データの蓄積がなされ、冬から春にかけての極域におけるエアロゾルの特徴をとらえることができた。北極域における大気微量成分の広域3次元分布、特に極渦の形成・崩壊期に着目した輸送・循環・変質の過程を調べるため、1998年3月6日〜14日の期間、航空機にオゾンおよびCO_2の連続測定装置、大気サンプリング装置、エアロゾル計測装置、エアロゾルサンプリング装置等を搭載し、観測を実施した。観測は北極点を通過し北極海を横断する長距離高高度飛行(巡航高度12km)を基本とし、その他、スピッツベルゲン島近海上空およびアラスカ州バーロー沖合上空では海面付近から高度12kmまでの鉛直プロファイルの観測を行った。機器は概ね順調に動作し、良好なサンプルやデータを取得することができた。その結果、(1)CO_2やO_3濃度は圏界面高度で不連続に変化し、圏界面を挟んで鉛直混合が大きく妨げられる様子が確認された、(2)CH_4とN_2O濃度に見られた正の相関は前年度にスウェーデンで実施された大気球による北極成層圏大気の観測結果と良い一致を示した、(3)硫化カルボニル(COS)の高度分布測定から、COSが成層圏エアロゾルの硫黄供給源であることを示唆する結果が得られた、(4)北極ヘイズ層は多層構造をなし対流圏上部まで到達することがあった、(5)エアロゾルの直接サンプリングにより、成層圏・自由対流圏では主に硫酸粒子、下部混合層では海塩粒子の存在が確認された。
著者
中澤 高清 青木 周司
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

南極及びグリーンランドで掘削された氷床コアを分析することによって過去の温室効果気体の変動を推定するために、コアから効率よく空気を抽出する装置と試料気気中に含まれるCO_2,CH_4,N_2C,CO_2のδ^<13>Cを高精度で定量する装置を開発した。総合分析精度はそれぞれ、1ppmv,10ppbv,2ppbv,0.05%以内であった。これらの装置を用いて南極みずほコア,南やまとコア,グリーンランドSiteJコアを分析した結果、以下のことが明らかとなった。1.9000-250年前の後氷期におけるCO_2,CH_4,N_2O濃度は280.9±4.6ppmv,729±30ppbv,265±8ppbvとほぼ一定であった。しかし、何れの気体の濃度も、人間活動の影響によってこの250年の間に急速に増加し、現在のレベるに達した。2.南やまとコアを分析することによって得られたCO_2,CH_4,N_2O濃度は213.3±4.6ppmv,484±44ppbv,243±10ppbvであり、後氷期の値よりかなり低く、このコアは氷河期のものであることが示唆された。また、δ13CはCO_2濃度の変動とほぼ逆相関となっており、このことから、氷河期の大気中のCO_2濃度の変動は海洋生物活動に帰依されると考えられる。3.みずほコア及びSite Jコアから得られた250年以前のCH_4濃度はそれぞれ701±10ppbv,756±10ppbvであり、工業化以前でも自然的発生源の強度の違いを反映して、南半球高緯度よりも北半球高緯度において濃度が高かったことを意味している。また、現在の南北両半球の濃度差は本研究で得られた値の役3倍であり、CH_4の濃度増加の原因は北半球における人間活動による発生源の強まり、あるいは消滅源の弱まりによるものと考えられる。
著者
三浦 隆史
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

プリオン病は脳内タンパク質により引き起こされる致死性の神経変性疾患であり、感染性を示す点でアルツハイマー病などの他の痴呆症とは異なる特徴を持つ。正常なプリオンタンパク質(PrP^c)は約210アミノ酸残基からなり、C末端側約半分の領域はαヘリックスに富む。このαヘリックスの一部がβシートに転移すると分子間会合によってアミロイド化し病原性を示すようになる。最近、研究代表者はPrP^cのN末端領域に存在するPHGGGWGQというオクタペプチドの繰り返し配列にCu (II)イオンが結合すると、そのC末端方向にαヘリックス構造が誘起される新しい現象を見い出した。本研究では、この知見を基礎として、(1)金属結合部位の特定と(2)繰り返しの理由の解明を行った。1.オクタペプチド(NPr1)とCuの複合体のラマンスペクトルから、ヒスチジンのイミダゾール側鎖および脱プロトン化した主鎖アミドの窒素原子が配位子となることがわかった。さらにオクタペプチドの断片化を行うことにより、HGGG領域がCu結合部位であることを明らかにした。2.NPr1の場合、金属複合体形成はペプチドに対して2当量以上のCu (II)イオンの存在を必要とする。しかし、オクタペプチド2回繰り返しからなる16merペプチド(NPr2)ではオクタペプチドユニット当り1当量のCu存在下で顕著な複合体形成を示し、Cuに対する親和性の増加が認められた。以上の結果から、PHGGGWGQ配列が連続することで、HGGG部位がCuに効率的に結合し、PrP^cのαヘリックス構造が安定化されることがわかった。脳内の金属イオン濃度やpHの変動によるオクタペプチド領域の構造変化がプリオンタンパク質の病原化の原因である可能性がある。