著者
浜崎 信行 依田 明
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.187-196, 1985-10-30

われわれはふたりきょうだいを調査対象として,出生順位と性格の関連を検討してきた(1993,1980)。その結果,長子的性格,次子(末子)的性格が明確に存在することが明らかにされた。すなわち,長子は自制的で,ひかえめで,仕ごとがていねいで,話すよりも聞き手であり,めんどうなことを嫌う。それに対して,次子は甘ったれで,親に告げ口をし,おしゃべりで,やきもちやきで,強情で,活動的である。今回は,三人きょうだいを取りあげた。ふたりきょうだいの調査とまったく同じ方法で,出生順位と性格の関連を分析した。調査対象は,主として神奈川県に住む小学校4年生から中学2年生までの児童・生徒とその母親,それぞれ525名である。性格特性に関する資料は,51項目の日常生活における行動の記述が,3人きょうだいの誰にもっともあてはまり,誰にもっともあてはらないかという相対的判断を求めることによって得た。そのほかに,MMPIの性度尺度を参考に作製した性度検査を実施した。主要な結果は,つぎのとおりである。1.長子的性格は6項目,中間子的性格は3項目,末子的性格は9項目抽出された。長子的性格と末子的性格は,従来見出されたものとほぼ同様であった。2.中間子はめんどうくさがらずに仕ごとに取りくむが,よく考えないので失敗も多い。また,気にいらないと黙りこむという特徴を持つ。中間子的性格は,長子的性格,末子的性格にくらべると,あまりはっきりしたものではない。長子と末子の生育環境は,共通性,一般性が高い。つまり,どこの家庭に生まれても,同じような環境で育っている。このような長子や末子にくらべると,中間子の生育環境は多種多様であると考えられる。長子との年齢差,性別構成などの点で,3人きょうだいはふたりきょうだいよりも,はるかに複雑なものなのである。3.姉妹にかこまれた男子の女性度は,他の位置にある男子よりも高い傾向にあった。けれども,兄弟にかこまれた女子の女性度も高い傾向を示した。異性にかこまれて育っても,男子と女子とでは親の役割期待が異っていることを示している。
著者
関根 剛 小川 捷之
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.127-139, 1985-10-30

The purpose of this study is to discuss archetypal dreams and their relations to the dreamers personalities. A questionaire consisting of questions related to the frequency of dream recall and one's interest in dreams and a section for describing freely one's vividest dreams was given to 156 female university students. At the same time MBTI (Myers-Briggs Type Indicator) for Jung's typology was also given to them. To determine whether or not it was archetypal, each dream was rated on the basis of the four criteria of the Archetypal Dream Scale composed by Kluger (1975). The following 4 points were discussed: (1) The frequency of occurence of control dreams and vivid dreams; Kluger's study was followed in part. (2) The relation between collected archetypal dreams and the functions of personalities in Jung's theory. (3) The relation between the frequency of dream recall and functions of personalities or occurence of archetypal dreams. (4) The relation between the subjects' interest in dreams and functions of personalities or occurence of archetypal dreams. The results were as follows: (1) Vivid dreams were significantly (p<.001) more archetypal than control dreams. (2) The occurence of archetypal dreams had a close relation to Perceiving (Irrational function), especially Intuition in it. Those who had archetypal dreams were superior in their Perceiving and Intuition to those who did not have any archetypal dreams. (3) The frequency of dream recall had a certain relation to Judging (Rational function) and no relations to the occurence of archetypal dreams. Those who had a high frequency of dream recall were superior in Thinking to those who had a low frequency. (4) There were no relations between the degree of the interest in dreams and the function of personalities or the occurence of archetypal dreams.
著者
相馬 直子 山下 順子 陳 國康 王 永慈 栄 多永
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、晩産化・超少子化・高齢化が同時進行する東アジア社会において、介護と育児のダブルケア分担という新たな社会的リスクにいかに対応しているのか、あるいは対応できずにいるのか、その対応の仕方の共通点と差異は何かを、ミクロな家族の実態分析と制度分析を通じて、日本・韓国・中国・台湾・香港とのケアレジーム比較研究から明らかにした。晩産化、超少子化、高齢化の同時進行は、現存の介護サービス、育児サービスを使いこなしながら親の介護と子育てという「ダブルケア負担」に対応しなければならない世帯が増加することが推察され、包摂的なケア政策の構想が東アジア全体で求められる。
著者
西 栄二郎 荒井 寛 笹沼 慎一
出版者
横浜国立大学
雑誌
Actinia : bulletin of the Manazuru Marine Laboratory for Science Education, Faculty of Education and Human Sciences, Yokohama National University
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-12, 2000-03-31

Chaetopterus gregarius new species (Polychaeta: Chaetopteridae) is described from 120-300m depth off Tokyo Bay, Central Japan. The new species is gregarious and probably epifaunal; masses of irregularly U-shaped, tough, parchment-like tubes were recovered from hard substrata. The species is oculate, of moderate size (up to 57mm long), with 9A+5B+16-23C segments. It appears to differ from other members of the genus in having two kinds of notopodia in region C. When live specimens were placed in fresh water, bioluminescence was seen in the palps and alate (winglike) notopodia of B1, with the most long-lasting and brilliant light at the base of the B1 notopodia. No other areas luminesced. This pattern appears to differ from ones reported from other members of the genus, most of which have been (incorrectly) identified as C. variopedatus.
著者
金井 淑子
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究はフェミニズムと倫理学を架橋する問題意識から、ジェンダー、身体、本質主義、構築主義をめぐる議論のある種の膠着状況にあるとの認識に立ち、それを突き破りうる「身体論」の位相を拓こうとするものである。身体の問題について、哲学の場面に登場しつつある臨床哲学や現象学的身体論を批判的に引き込み、その議論の土俵をつくる企てであった。フェミニズムに「フェミニニティ」を立てれば、本質主義という批判を免れがたいのだが、あえてそこに踏み込み、フェミニズムにおいて知の余白に置かれてきた身体の主題化に挑戦した。計画年度初年度は、主としてフェミニズムの側から、フェミニニティ、身体、社会構築主義/本質主義、ジェダーのキーワードに関わる課題について考察した。中間年度は、哲学・倫理学の側でキーワードとなる、身体、女性、パターナリズム、ケア、家族・家庭、親密圏についての概念的整理を通して、「弱いパターナリズムとしてのケア倫理」の提唱に及んだ。研究は、論文数編と、編著『ファミリー・トラブル近代家族/ジェンダーのゆくえ』に結実した。最終年度は、単著『異なっていられる社会を女性学/ジェンダー研究の現在』、編著『身体のアイデンティティ・トラブルセックス/ジェンダーの二元論を超えて』、共著『差異を生きるアイデンティティの境界を問い直す』『ジェンダー概念が開く視界-バックラッシュを越えて』、他、論稿数本において、本研究テーマの成果を反映した刊行につなぐことができた。なお本稿が立てた「フェミニニティと現象学的身体論批判」について、身体への現象学的アプローチの考察に十分な展開を果たせていないことを付言しておきたい。
著者
浜崎 信行 依田 明
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.187-196, 1985-10-30

われわれはふたりきょうだいを調査対象として,出生順位と性格の関連を検討してきた(1993,1980)。その結果,長子的性格,次子(末子)的性格が明確に存在することが明らかにされた。すなわち,長子は自制的で,ひかえめで,仕ごとがていねいで,話すよりも聞き手であり,めんどうなことを嫌う。それに対して,次子は甘ったれで,親に告げ口をし,おしゃべりで,やきもちやきで,強情で,活動的である。今回は,三人きょうだいを取りあげた。ふたりきょうだいの調査とまったく同じ方法で,出生順位と性格の関連を分析した。調査対象は,主として神奈川県に住む小学校4年生から中学2年生までの児童・生徒とその母親,それぞれ525名である。性格特性に関する資料は,51項目の日常生活における行動の記述が,3人きょうだいの誰にもっともあてはまり,誰にもっともあてはらないかという相対的判断を求めることによって得た。そのほかに,MMPIの性度尺度を参考に作製した性度検査を実施した。主要な結果は,つぎのとおりである。1.長子的性格は6項目,中間子的性格は3項目,末子的性格は9項目抽出された。長子的性格と末子的性格は,従来見出されたものとほぼ同様であった。2.中間子はめんどうくさがらずに仕ごとに取りくむが,よく考えないので失敗も多い。また,気にいらないと黙りこむという特徴を持つ。中間子的性格は,長子的性格,末子的性格にくらべると,あまりはっきりしたものではない。長子と末子の生育環境は,共通性,一般性が高い。つまり,どこの家庭に生まれても,同じような環境で育っている。このような長子や末子にくらべると,中間子の生育環境は多種多様であると考えられる。長子との年齢差,性別構成などの点で,3人きょうだいはふたりきょうだいよりも,はるかに複雑なものなのである。3.姉妹にかこまれた男子の女性度は,他の位置にある男子よりも高い傾向にあった。けれども,兄弟にかこまれた女子の女性度も高い傾向を示した。異性にかこまれて育っても,男子と女子とでは親の役割期待が異っていることを示している。
著者
蒲生 重男 三浦 薫
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育学部理科教育実習施設研究報告
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-20, 1985-03-25

The various systems of organs of a littoral stalked barnacle, Pollicipes mitella (LINNAEUS) are studied and illustrated herein.
著者
岡田 守弘 井上 純
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.45-66, 1991-10-31
被引用文献数
1

本研究では,キャンバス上に「何が描かれているのかわからない絵画」,すなわち抽象的表現による絵画を見るとき,鑑賞者は具象画を見る際と同様の基準でその絵画を鑑賞し評価するのか否かを,2つの実験を通して検討した。研究1では,絵画鑑賞に伴う感情の因子を抽出し,具象画と抽象画の与える印象の違いについて検討した。実験は,10枚の絵画(具象画5枚,抽象画5枚)を7件法のSD法尺度で評定するものであった。その結果,絵画鑑賞に関わる因子として,先行研究に準ずる4因子が抽出された。具象画と抽象画の印象の違いは,個性とバランスの因子において顕著であり,「具体的なフォルムの崩壊」が鑑賞者に直接的に影響を与えているものと考えられる。研究2では,主に,芸術性評価要素の構成が検討された。実験は,研究1にほぼ準ずる形で行われた。その結果,具象画では芸術性評価がやわらかさや,好みなど美的評価に基づいてなされ,抽象画ではおもしろさや個性に基づいてなされていることが見いだされた。本研究の結果から,ひとくちに絵画と言っても,具象画と抽象画とでは鑑賞者の側でもその鑑賞基準と評価基準が異なるものと思われ,その原因は「具体的なフォルムの崩壊」に求めることができると考えられた。
著者
中島 啓光
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

金属を高濃度で蓄積する地衣類ヤマトキゴケまたはオオキゴケを国内11府県で採集、金属分析を行い、黄砂の影響を調べるための基礎データが得られた。二次代謝物を分析したところ、ヤマトキゴケはCu濃度が高いほど二次代謝物濃度が低く、Cu汚染の影響を受けていることが示唆されたが、オオキゴケにはそのような相関が見られず、二次代謝物へのCu汚染の影響に違いが見られた。また、金属を高濃度で蓄積するコケ植物イワマセンボンゴケの金属分析の結果、Ca濃度とK濃度の間に負の相関関係が見出され、過剰なCaによるK取り込みの抑制が示された。以上から、これらのコケに対する金属汚染の影響についての理解が深まった。
著者
跡部 真人
出版者
横浜国立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

微小な流路内で化学反応を行うマイクロリアクターは、様々な分野で応用が期待されている反応デバイスであり、これを利用した研究は1990年代初頭から分析化学の分野で、また、最近は有機合成化学の分野でも大きな成果を挙げている。とくに大きな比界面積を有し迅速な溶液混合が可能といった特徴は、均一系反応よりもむしろ固-液不均一系界面での反応のほうが効率化できるなど利点が多く、典型的な固-液界面での反応である電気化学反応においても大変魅力的なものと言える。さらに、電気化学測定・分析の領域のみならず、電解合成の分野においては、マイクロリアクターの利点はこれだけではない。電極間距離がマイクロオーダーであり、「電解液の流れがリアクター内で厳密に制御されている」といった特徴を最大限に活用すれば、従来のバッチ式反応容器(フラスコやビーカー)では決して実現できなかった全く新しい電解合成反応や電解合成システムが構築できることも予想される。このような着想に基づき、平成25年度はマイクロリアクターを利用した「連続的レドックス反応システムの開発」に着手した。具体的には連続的レドックス反応によるハロゲン化フェノール誘導体からのジアリールエーテル合成をモデルに選定し、従来のバッチ式反応容器(フラスコやビーカー)では決して実現できなかった全く新しい電解合成システムが、マイクロリアクターの活用により構築できることを検証した。
著者
内藤 晶 西村 勝之 川村 出
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

カルシトニンはアルツハイマー病に見られるアミロイド繊維を形成するアミロイド形成タンパク質と認識されている。このカルシトニンの線維形成現象を解明するため、固体高分解能NMRの手法を用いて線維形成と反応速度、線維の二次構造決定を行い、線維形成の分子機構を明らかにする研究を行った。さらに、細胞内の条件に近づけるため、脂質二分子膜の存在下で起こる線維形成の分子機構を明らかにする研究を行った。ヒトカルシトニンに関して、繊維成長の経時変化からこの線維形成は線維核形成と線維伸長の2段階自己触媒反応機構により形成することが判明した。この線維形成機構で生じる中間体は球状の形状をもち、線維に転移することが電子顕微鏡により観測された。ヒトカルシトニンのF16L, F19L変異体については繊維伸長速度が遅くなったので、芳香族アミノ酸であるPhe-16, Phe-19が線維成長に重要な役割をしていることが判明した。アミロイド線維形成阻害物質について検討したところ、電荷をもつアミノ酸は繊維核形成阻害効果のあることが判明した。またポリフェノールのクノクミンを加えると繊維がまったく形成されなかったので、大きな阻害効果のあることが判明した。グルカゴンについては脂質二分子膜の存在下で線維形成を行ったところ、水溶液中で形成する線維はN-端側とC-端側がβ-sheet構造を形成するのに対し、脂質二分子膜存在下ではN-端はα-helixを形成したままであることが分かった。また、脂質二分子膜存在下では水溶液中に比べて核形成速度は速くなり、線維成長速度は遅くなることが分かった。グルカゴンは脂質膜に結合して濃縮されるので、線維核形成は速くなると考察できる。