著者
森田 裕人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.638-645, 1996
参考文献数
9
被引用文献数
2

リドカインは気管支鏡検査施行時の麻酔薬として広く一般に使用されている。しかしながら現状では, 検査中に使用されているリドカインの総量にはあまり注意が払われていない。我々は, ジャクソン型噴霧器による麻酔とテフロン樹脂製のカテーテルを気管支鏡の生検鉗子チャンネルに挿入し麻酔することによって, 少量のリドカイン(患者1人あたり平均240mg)で1124症例に生検やブラシ, 洗浄等の気管支鏡検査を施行した。リドカイン中毒を呈した症例は認められなかった。しかし, シースカテーテルを使用しないで麻酔を行う一般的な気管支鏡検査では, いくらかのリドカインは吸引に流入されており, 実際にはリドカインの使用量に差はあるが, 有効に, 気管や気管支への麻酔に使用されたリドカイン量は同じかもしれない。そこで, 我々は, 37歳から81歳までの検査の同意を得た22人について, 同量のリドカインが現実に有効であることを否定するために, 使用されたリドカイン総量とその血漿中濃度について検討した。結果は, 使用されたリドカイン総量, 血漿中リドカイン濃度, ともにシースカテーテルを使用して麻酔した方が使用しない場合より有意に低い結果を得た。テフロン樹脂製のシースカテーテルは気管支鏡麻酔施行時のリドカイン使用量の減量に有効であると結論づけられた。加えて, 気管支鏡検査時の出血やくもりもシースカテーテル先端を気管支鏡内に数mmおさめ, 少量の生理食塩液とリドカインをシースカテーテルより注入することで, 洗い流すとともに咳嗽をおさえ, 新たなる出血を予防し改善される。エピネフリン等の止血薬注入が必要な場合でもシースカテーテルを通して注入すれば, シースカテーテルを使用しない場合よりも, より少量の使用量ですむ。
著者
高木 啓吾 加藤 信秀 笹本 修一 秦 美暢 田巻 一義 木村 一博 梁 英富 外山 勝弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.138-144, 2004
参考文献数
7
被引用文献数
4

背景.気管病変に対するステント療法は,多くの気道疾患患者のQOL向上に寄与したと言えるが,その適応,手技,合併症,成績に関する問題が未だ山積している.本稿では気管および気管分岐部のシリコンステント療法の有用性と問題点に論点を絞り,我々の経験例を中心に分析したので報告する.対象.1992年4月から2003年4月に経験した気管および気管分岐部の狭窄病変32例で,部位は気管14例,気管分岐部18例,疾患別では,肺癌16例,食道癌11例,悪性リンパ腫2例,気管切開後狭窄2例,甲状腺腫1例であった.ステント種別では,Dumon直型14例,Dumon-Y型13例,Dynamic型5例であった.結果.肺癌による狭窄のうち,気管病変は縦隔のbulky転移リンパ節によるものですでに予後不良であり,留置後の多くが1ヶ月以内に死亡したが,気管分岐部病変では,3ヶ月以上の生存例が10例中7例(70%)あり生存が見込まれた.一方,食道癌では,気管病変にせよ気管分岐部病変にせよ,ステント療法に加えて化学放射線治療が奏効するので,3ヶ月以上の生存例は予後が判明している10例中6例(60%)にあった.ステント留置後の腫瘍の再増生や瘻孔発生の可能性を考えると,本病変ではワイアーステントよりもシリコンステントの有用性が高いと考えられた.ステント留置に際して気管分岐部病変では,狭窄程度のみならず気道軸の偏位を重視しなくてはならず,高度偏位例では術中に出血に基づく換気障害による一時的な低酸素血症に留意しなくてはならなかった.留置後療喀出障害はステント全長が90mm以上の例で高率にあり,またステント内面の細菌増生は,留置後4ヶ月以上経過した12例で検討すると,全例でbiofilmの形成を認め,留置後の定期的な経過観察が必要と思われた.結論.シリコンステント療法は,その侵襲度は大きいが確実な気道確保のもとで行う安全な療法である.これを実践するには万全の体制でよき指導者のもとで臨まなくてはならない.呼吸器科医は今後硬性気管支鏡の苦手意識を取り去り,軟性気管支鏡のみならず硬性気管支鏡も熟知して,確実な気道確保のもとで多くの治療法を選択できるようになることが望まれる.
著者
林 嘉光 浅野 高行 伊藤 剛 桐山 昌伸 丹羽 宏 正岡 昭
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.466-471, 1994
被引用文献数
3

症例は59歳, 男性。1993年8月より息が吐きにくくなり, 10月下旬には喘鳴, 呼吸困難が出現し, 入院となった。当初, 気管支喘息と診断したが, 気管に痰が詰まった感じと呼気性の呼吸困難が続くため, 気管断層撮影, 胸部CT撮影を実施し, 気管下部の分岐部直上に2cm大の有茎性腫瘤を認めた。可及的な気道確保の目的で, 気管支鏡下高周波スネアで腫瘍頭部を切除した。病理組織診断は神経鞘腫と判明し, 残存する腫瘍に対しては1994年1月11日に根治的手術を行った。手術時, 気管内腔は腫瘍により分岐部より口側へ1から4気管軟骨輪にわたって狭小化し, また膜様部外側へも隆起していた。しかし, 食道を含む周囲組織への浸潤はなく, 腫瘍を含む4気管輪を管状切除し, 端々吻合を行った。経過も順調で術後19日で退院した。
著者
安岡 劭 中西 嘉巳 藤沢 謙次 林 秀樹 前田 道彦 尾崎 敏夫 北谷 文彦 松崎 圭輔
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.312-320, 1986
被引用文献数
1

気道粘液糖タンパク(粘液)は気道液の粘弾性の中心となる物質で, この作用で粘液一線毛運動に関与している。また, その表面構造は微生物の侵入に対して防御的に働くことも推定されている。気道粘液は主鎖のポリペプタイド部分と側鎖の糖部分から構成されている。フコースとシアル酸はこの気道粘液の側鎖の末端, 従って粘液の表面を占めているため, 粘液におけるシアル酸/フコース比は上述の粘液の物理学的性状や生物活性に関連すると考えられる。本報では, 慢性気道疾患における気道粘液の性状の変動や, 喀痰中のフコースやシアル酸の診断的意義などを解明するため, これら疾患患者の喀痰中のフコースとシアル酸を痰原液と精製気道粘液レベルで分析した。その結果, 粘液痰と膿性痰では, これらの糖の診断的意義が異なることや, 気道粘液の糖側鎖が疾患や薬剤により変動することが示唆された。
著者
藤沢 武彦 山口 豊 本郷 弘昭 柴 光年 由佐 俊和 崎尾 秀彦 川野 裕 門山 周文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.251-257, 1986
被引用文献数
4

中枢気道を狭窄ないし閉塞する肺癌切除不能例11例に対して内視鏡下に腫瘍内エタノール注入療法を考案し, その組織固定および止血効果につき臨床的ならびに基礎的検討を行ない, 以下の結果を得た。(1)腫瘍内へ99.5%エタノール注入後は速やかに腫瘍は淡赤白色に固定され, 内視鏡的にやや縮小傾向を示し, さらに出血例では高い止血効果が認められた。注入数日後には腫瘍は壊死に陥っており, 壊死組織内には病理組織学的に生腫瘍細胞はみられなかった。(2)気道内ポリープ状突出腫瘍に対しては本法は極めてよい適応と考えられるが, 壁外腫瘍に対してはその効果はあまり期待できないものと思われた。(3)筋弛緩剤投与下に行なった動物実験による検討では, 中枢気道壁内への99.5%エタノール投与は明らかなPaO_2の低下を示さなかったが, 肺胞内へのエタノールの流入は出血性肺炎を惹起し, PaO_2を有意に低下させた。(4)局所麻酔下に行なう臨床例においては, 腫瘍外に流出した少量のエタノールの一時的な咳嗽発作の惹起をみたのみで, 肺炎, 低酸素血症等の重篤な副作用は全くみられなかった。(5)生化学的検索でもエタノール注入は臨床的にも, また基礎的にも明らかな異常所見は示さなかった。(6)結論として, 腫瘍内エタノール注入療法は適応を選べば, 中枢気道の腫瘍性病変に対して有効な内視鏡下治療の一手段と考える。
著者
和泉 宏幸 小島 勝雄 下山 武彦 赤松 秀樹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.503-507, 2003
被引用文献数
4

気管・気管支狭窄に対するステント留置による拡張術は標準的な治療となっており,Dumon stentは代表的なシリコンステントである.Dumon stentは通常硬性鏡などの内部に充填して挿入されるが,永久的気管孔を有する症例では硬性鏡は使用できず,挿入法を工夫する必要があった.症例.下咽頭癌術後で永久的気管孔を有する気道狭窄2症例に対してDumon stentを直接的に気管内に挿入・留置した.静脈麻酔と吸入麻酔を併用して自発呼吸を出しながらステントの挿入を行った.ステントは気管の湾曲に沿ったケリー鉗子にて折りたたんで直接把持し,透視下に狭窄部位に誘導した.両症例とも安全かつ迅速にステントの留置が行えた.術後,呼吸困難などの気道病変による症状は著明に改善した.結論.永久的気管孔を有する症例では,湾曲のあるケリー鉗子でステントを把持して直接挿入することで容易にステントを留置できた.折りたたんだステントをケリー鉗子で把持することがこの術式の要と考えられた.
著者
近藤 丘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, 2005

気管支鏡安全対策委員会 編 気管支鏡安全対策委員会より「教訓的事例」コーナー終了のお知らせ 気管支鏡安全対策委員会では平成13年に行った全国気管支鏡調査のさいに寄せられた過去5年間に経験した教育的事例をもとにした「教訓的事例」というコーナーをこれまで約3年間にわたって続けて参りました.このコーナーの掲載につきまして平成16年6月にアンケート調査を行いました.434施設に発送して172施設からご回答をいただきました.その結果を以下にお示しします.(1)「気管支学」に掲載されている教訓的事例について 1. 継続した方がいい:171 2. やめた方がいい:1 (2)(1)で1とした方 A. 目を通す頻度は 1. 毎回読んでいる:73 2. 時々読んでいる:87 3. ほとんど読んでいない:10 4. 回答無し:1 B. 内容については 1. 非常に意義がある:130 2. あまり役には立たない:7 3. ケースによる:6 4. 回答無し:28 このアンケート結果から,このコーナーについては比較的好意的に受け止められており,利用されている頻度も高く継続を望む声が優勢であることがわかり,委員会として意図したものは達成できたのではないかと考えています.しかし,このアンケート時にさらなる事例の投稿をお願いしましたが,それに対する反応はありませんでした.今回,平成13年に会員より寄せられた事例で編集委員会とも相談の上,このコーナーへの掲載に適すると判断した事例は前号で全て掲載を終えましたので,これをもってこのコーナーの終了とさせていただくこととなります.なお,このような事例の投稿についてはホームページへの投稿という手段も含めて今後検討して参りたいと思います.
著者
池田 徳彦 吉田 浩一 本多 英俊 永田 真一 林 和 坪井 正博 土田 敬明 古川 欣也 奥仲 哲弥 平野 隆 中村 治彦 加藤 治文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.612-617, 2002
被引用文献数
2

内視鏡的蛍光診断は中心型早期肺癌,扁平上皮化生などの気管支微小病変の診断に有用と報告されている.当院では肺癌治療前,喀痰細胞診異常,術後の経過観察など600例に本検査を施行,合計997部位を生検し,組織診断と蛍光診断の診断率を評価した.癌病巣では白色光,蛍光に差を認めなかったが,蛍光診断で病巣の進展を客観的に把握し得た.化生病巣においては白色光では発見困難で蛍光でのみ診断された病巣は全体の約40%を占め,蛍光診断の有用性が示唆された.また,喀痰細胞診異常症例に蛍光内視鏡を併用することにより病変の局在同定率は白色光単独の場合の59%から72%へと上昇した.簡易型の蛍光診断装置(System of Autofluorescence Endoscope, SAFE, Pentax)は従来より用いられてきたLight Induced Fluorescence Endoscope(LIFE,Xillx)と同程度の診断能を有すると考えられた.中心型早期肺癌の治療戦略の一環として蛍光診断と超音波内視鏡検査を併用することにより浸潤範囲と壁深達度を正確に評価し適正治療を選択することが行われている.蛍光診断は特別な前処置も必要とせず,従来の内視鏡検査と併用することにより,日常検査の精度向上が期待でき,適応はますます拡大するものと思われる.一方,ラマン分光の応用やOptical Coherence Tomography(OCT)の出現は内視鏡診断にoptical biopsyという新たな進歩をもたらすであろう.