著者
梅澤 佳乃子 大西 尚 湯村 真沙子 藤井 真央
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.233-238, 2019-05-25 (Released:2019-06-10)
参考文献数
18

背景.慢性腎不全患者における難治性胸水例が呼吸器内科に紹介となることがある.胸水貯留の原因の一つとして尿毒症性胸膜炎が知られているが,局所麻酔下胸腔鏡所見に関しての報告は少ない.目的・方法.2012年2月から2014年8月に当院にて局所麻酔下胸腔鏡検査を施行し,尿毒症性胸膜炎と診断した維持透析患者9例を対象とし,その臨床的特徴を検討した.結果.平均年齢は65歳,男性8例,女性1例.胸水量は中等量が7例,大量が2例.透析期間は中央値36か月(12~252か月),胸水貯留指摘から検査までの期間は中央値4か月(1~7か月).淡血性から血性胸水が7例,黄色胸水は2例.胸腔鏡所見は8例でびまん性胸膜肥厚と線維素が形成され,詳細な観察は困難であった.生検可能な8例に対して胸膜生検を施行し,全例で線維素性胸膜炎として矛盾しない結果であり,除外診断として尿毒症性胸膜炎と診断した.結論.慢性腎不全患者における難治性胸水の原因として尿毒症性胸膜炎を念頭に置く必要があり,その特徴的な胸腔鏡所見はびまん性胸膜肥厚と線維素形成であった.
著者
周東 寛 柳沢 尚義 外丸 輝明 金重 博司 和田 育穂 刑部 義美 国枝 武文 中神 和清 鈴木 一 野口 英世 小林 瑛児
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.281-287, 1982

近年, 空気銃モデルガンが出回っており, 男子小学生や中学生のこれによる事故のニュースもあり, 同プラスチック製空気銃弾丸による気管支異物が数例報告されている。今回我々は, 右下気管支に嵌頓密着したプラスチック製弾丸(写真1)を, 全身麻酔のもとで経気管支鏡的に除去術を行ない, 鉗子の改良により2度目に除去しえた8歳男児の1症例を経験したので報告する。
著者
礒部 威
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.427-428, 2005

島根医科大学は1975年に開設されました. 医学部は2003年10月に島根大学と統合し島根大学医学部となりました. 島根県は非常に横に長い県で, 医学部は島根県のやや東に位置する出雲市にあります(写真1). 出雲は神話の国として有名で, その中心が「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」をおまつりする出雲大社です. 陰暦の十月のことを神無月といいますが, 出雲では, 神々がお集まりになられるので「神在月(または神有月)」といい, 毎年この時期に出雲大社では, 神迎祭, 神在祭が行われます. 古代出雲大社本殿は非常に高い建造物で, 高さ48m, 15階建てのビルに匹敵するとされます(写真2). 天禄元年(970)と年号が記された「口遊(くちずさみ)」という書物によれば, 当時の大建造物のおぼえ歌があり, 「大屋を誦して謂う. 雲太, 和二, 京三」と書かれています. 雲太とは出雲大社のことで, これが一番大きく, 次いで大和国東大寺の大仏殿であり, 京三とは京都の大極殿八省(今の平安神宮)のことです. 内科学講座(第4内科)は1980年に循環, 呼吸器, 腎臓内科として開設されましたが, 2004年5月に循環器科が分離し, 呼吸器, 腎臓内科として新生しました.
著者
山本 聡 辻 博治 原 信介 田川 泰 綾部 公懿 劉 中誠 澤田 貴裕 白藤 智之 田村 和貴 岸本 晃司 新宮 浩 赤嶺 晋治 岡 忠之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.493-496, 1997
参考文献数
5
被引用文献数
4

鈍的外傷による頸部気管完全断裂の2手術例を経験した。症例1は21歳, 男性。バイク乗車中転倒, チェーンにて頸部受傷。第1と第2気管軟骨間において完全断裂, 両側反回神経と食道の合併損傷も認めた。症例2は55歳, 男性。ショベルカーのアーム部にて前胸部, 頸部を受傷。第1と第2気管軟骨間において完全断裂, 両側反回神経と頸髄の損傷を認めた。両症例とも気管損傷に対しては気管端々吻合術を施行した。鈍的外傷による気管完全断裂症例は受傷早期の気道確保を確実に行えば, 比較的救命率の良い外傷であると考えられた。また, このような症例では気管のみではなく他臓器の合併損傷の可能性もあることが示唆され, 術中術後の充分な検索が必要と思われた。
著者
安藤 陽夫 清水 信義 宮澤 輝臣
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.668-671, 1998
参考文献数
5
被引用文献数
2

気管支鏡についてのアンケートを行い, 中四国の31施設(88.6%)から解答をいただいたので, その結果を中心に考察を加えて報告する。1. 気管支鏡施行前に行う検査については, (1)感染症対策(2)出血対策(3)気管支鏡の適応決定(4)気管支鏡検査の精度向上の観点から検討し, 施行されるべきであると思われた。2. 前投薬および麻酔方法は, 従来からの方法が多く施行されているが, 患者にとってより楽な検査とするために常に前向きに検討していくべきと思われた。3. 適応と禁忌については, ほぼ共通の認識ができあがっているように思われた。4. 合併症としては, 気胸・キシロカイン中毒に加えて, 大出血・感染症・呼吸不全の経験のある施設も少なくなかった。5. 軟性気管支鏡は数・種類ともに確保されていると思われたが硬性気管支鏡はまだ少数の施設に常備されているのみであった。6. 気管支鏡のインフォームドコンセントは医師により行われていたが, その内容の充実が望まれる。7. 気管支鏡施行後の洗浄方法・洗浄液・保管方法についての関心は薄く, 十分な対応がなされているとは言いがたい。
著者
小林 淳 北村 諭
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.176-179, 1997
参考文献数
10
被引用文献数
1

1995年に宇都宮で開催された第18回日本気管支学会総会出席者を対象に喫煙に関するアンケート調査を行い, 我々自身の喫煙に関する意識を調査した。その結果, 総配布数943枚に対して回収数は748枚で, 回収率は79%であった。喫煙率は22%であり, 回答者の勤務する病院が全面的に禁煙であるのはわずかに59名(8%)であった。また, 医師は39%のみが分煙されているのに対して, 患者は82%が分煙されていた。病院内たばこ販売については, 約6割で自動販売機や売店でたばこが販売されていた。その一方で82%の回答者が病院の無煙環境を望んでいた。我々は職業的倫理観から患者に禁煙を勧め, 同時に自らも率先して禁煙すべきであろう。また気管支学会内部でも十分に論議し, 関連学会と共同で何らかの社会的行動をとるべきではないかと考える。
著者
西山 明宏 石田 直 吉岡 弘鎮 橘 洋正 橋本 徹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.140-143, 2016-03-25 (Released:2016-03-30)
参考文献数
13

背景.漢方薬が原因の薬剤性肺障害にはしばしば遭遇する.症例.普段より活発で継続的な薬剤服用歴のない65歳・女性が,感冒予防のために約1カ月にわたり葛根湯を内服し,急性呼吸不全で当院を受診した.病歴から葛根湯による薬剤性肺障害を疑い,気管支肺胞洗浄と経気管支肺生検で診断確定とした.結語.医療従事者だけでなく非医療従事者も,漢方薬による有害事象と予防内服の危険性について認識するべきと思われる.
著者
太田 伸一郎 橋本 邦久 仲田 祐 佐藤 博俊 斎藤 泰紀 薄田 勝男 菅間 敬治 佐川 元保 佐藤 雅美 永元 則義 今井 督 須田 秀一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.122-130, 1986
被引用文献数
9

自験例13, 222件の気管支造影像で発見された気管支分岐異常71例, 85件について検討した。分岐異常は, 中枢気道に関係する区域支までの異常に限定し, 右B^7の欠如・左B^7の存在・左右Bは分岐異常にいれなかった。分岐異常の出現頻度は0.64%であり, 右上葉の異常が全体の75.3%を占めていた。転位気管支の頻度は過剰気管支の7.2倍であり, 気管気管支が全体の31.8%を占め最も多かった。中支から上葉区域支が分岐していたものが10例あり, そのうち8例は, 残る上葉区域支も気管気管支で異常分岐であった。極めて稀な分岐異常としてdouble right tracheal bronchusの1例を経験した。気管支分岐異常に合併した奇形(ASD, 頸肋, 肋骨欠如)を検討し, これら奇形の発症時期と気管支の発生時期とが符合していたことから, 胎生5週初めから6週末までの子宮内環境が気管支分岐異常の発生誘因になりうると考えられた。
著者
浅野 文祐 青江 基 大崎 能伸 岡田 克典 笹田 真滋 佐藤 滋樹 鈴木 栄一 千場 博 藤野 昇三 大森 一光
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.209-218, 2012-05-25 (Released:2016-10-29)
参考文献数
24
被引用文献数
2

目的.呼吸器内視鏡施行実態と合併症を調査するために,日本呼吸器内視鏡学会は郵送による全国アンケート調査を行った.方法.調査用紙をすべての本学会認定および関連認定の538施設に郵送した.対象. 2010年1年間に施行された呼吸器内視鏡症例(診断的気管支鏡,治療的気管支鏡,局所麻酔下胸腔鏡)で病変,手技別に施行件数,合併症,死亡を症例調査表を使用して調べた.結果. 483施設(89.8%)から回答を得た.診断的軟性気管支鏡施行件数は103,978件で4件(0.004%)の死亡を認めた.病変別の合併症率は, 0.51%から2.06%に分布し,びまん性病変が最も高く,手技別の合併症率は0.17%から1.93%に分布し,鉗子生検が最も高かった.末梢孤立性病変に対する鉗子生検の合併症率は1.79%(出血0.73%,気胸0.63%),肺門縦隔リンパ節病変に対する超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)の合併症率は0.46%であった.治療的気管支鏡施行件数は3,020件で,金属ステント挿入による出血1件(0.03%)の死亡を認めた.手技別の合併症率は異物除去(2.20%)が最も高かった.局所麻酔下胸腔鏡施行件数は1,563件であった.合併症率は高周波不使用生検(1.86%)が最も高かった. 228施設(47.2%)で気管支鏡および周辺機器の破損を経験していた.結語.呼吸器内視鏡は安全に施行されていたが,新しい手技の合併症についての啓発が必要である.
著者
田宮 基裕 松井 薫 河原 邦光 楠 洋子 笹田 真滋 小林 政司 松浦 由佳 森下 直子 上原 暢子 鈴木 秀和 岡本 紀雄 平島 智徳
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.257-261, 2010
参考文献数
11
被引用文献数
1

背景.肺放線菌症は時に肺癌との鑑別が困難な場合があり,診断に苦慮する疾患である.症例.症例は65歳,男性.血痰を主訴に近医受診,胸部X線にて左上葉の腫瘤陰影を指摘され当院へ紹介.腫瘤陰影はFDG-PETでも強い集積を認め,肺癌が疑われた.気管支鏡検査を施行し,autofluorescence imaging(AFI)でマゼンダの色調を呈する慢性肉芽と思われる気道病変を左B^3bに認めた.同部位の擦過細胞診にて放線菌が検出され肺放線菌症と診断し,クラリスロマイシン,アンピシリンを投与し腫瘤陰影は縮小した.約4ヵ月後,再度気管支鏡検査を施行したところ,同部位の気道病変は消失し,AFIでも粘膜所見は正常であった.結論.AFIにて肺放線菌症の慢性肉芽を観察した報告はなく,治療効果判定に有用である可能性がある.
著者
片倉 浩理 畠中 陸郎 山下 直己 佐藤 寿彦 岩切 章太郎 尾崎 良智 長井 信二郎 岡崎 強 塙 健 松井 輝夫 美崎 幸平 桑原 正喜 松原 義人 船津 武志 池田 貞雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.281-284, 1999
参考文献数
14

症例は41歳, 男性。脇差しにより頸部正中刺創を受け, 近医で皮膚縫合を施行されたが, 頸部腫脹, 発声障害が進行するため, 受傷後約18時間後に当院を受診した。著明な皮下気腫を認め, 気管の損傷を疑い気管支鏡を施行した。第1気管軟骨輪に約2cm, 同レベルの膜様部に約1cmの損傷を認めた。同検査中再出血により緊急手術を施行した。出血は甲状腺左葉内の動脈性出血であり縫合止血した。食道の損傷はなかった。気管軟骨輪および膜様部の縫合を行った。術後経過は良好で退院したが, 肉芽形成の可能性もあり, 経過観察が必要である。
著者
渡辺 真純 神山 育男 神谷 一徳 佐和 貞治 仲村 秀俊 石坂 彰敏 小林 紘一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.592-596, 2006
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的.気管支鏡下に低侵襲で特定領域の気道上皮被覆液(ELF)を採取できるマイクロサンプリング(BMS)法を関発し急性肺損傷,肺癌などの診断に応用している.BMS法により採取したELFがプロテオーム解析可能か検討した.方法.BMSプローブは先端に吸湿性チップのついた内筒カテーテルと外筒からなり,気管支鏡チャンネルを通じてELFを採取できる.ELF 2μlからプロテインテップシステム^<TM>(サイファージェン・バイオシステムズ)を用いてパルスレーザー照射による質量分析を行った.1)ラットLPS肺損傷モデルでのELFの経時的解析および2)原発性肺癌症例での腫瘍周囲ELFの解析を行った.結果.1)LPS投与後ラットのプロテオーム解析では31000,47000,63000 Da付近に再現性のあるピークが確認された.TNF-α antagonist 投与では上記のピークは消失または減少した.protein bankの検索からこれらピークはTNF-α関連物質などである可能性が示唆されている.2)腺癌症例の解析で腫瘍側ELFで3460,9280,20800 Da付近および5230 Da付近に健常側では認められないピークを認めた.まとめ.BMS法によるELF検体のプロテーオム解析が可能なことが判明した.各種肺疾患ELF中の網羅的蛋白解析が病態解明につながると考えられた.(気管支学.2006;28:592-596)
著者
池田 拓也 中西 亨 伊藤 源士 高木 康之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.426-430, 2006
参考文献数
12
被引用文献数
6

背景.気管原発の神経鞘腫は稀な疾患である.治療としては外科的切除の場合が多く,気管支鏡下に切除された症例は少ない.症例.症例は58歳,男性.主訴は血痰.気管支鏡検査で気管下部左主気管支直上に,膜様部から隆起する腫瘤を認め,生検で神経鞘腫と診断した.壁外浸潤はなく,気管支鏡下切除の適応と考え,全身麻酔下に高周波スネアで切除し,残存腫瘍をAPC (argon plasma coagulation)で凝固焼灼した.3年彼の気管支鏡検査で再発を認めていない.結果.気管原発の神経鞘腫に対し高周波スネアとAPCを用いて気管支鏡下に切除した.3年間再発はなく本法は有用である.
著者
妻鹿 成治 糸井 和美
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.553-557, 2003
参考文献数
13

背景.tracheobronchopathia osteochondroplastica(以下TBOC)は気管,気管支の粘膜上皮下に骨・軟骨組織が異常増殖し緩徐に進行する良性疾患である.比較的稀な疾患であり,これまで欧米で約370余例,本邦で130余例の報告を認める.症例.71歳男性,前立腺癌の手術の際,I.D. 6 mm (O.D. 8 mm)の気管チューブでも挿管不可能であり,当科に紹介された.気管支鏡検査および病理診断にてTBOCと診断された.考察/結論.これまで本邦で報告され,調べ得た133例についてまとめると,高率(28例= 21.1%)に悪性腫瘍を合併し,うち26例は同時性であった.特に肺癌の合併を多く(15例=11.3%)認め,なかでも腺癌(11例= 73.3%)を多く認めた.TBOCには悪性腫瘍を合併することが多いが,前立腺癌を合併した報告は本症例が1例目であった.これまでの本邦報告例で調べ得た133例についてまとめるとともに,文献的検討を踏まえ報告する.
著者
石川 浩 星 秀逸 小川 純一 井上 洋西
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.206-210, 1994
被引用文献数
1

症例1は60歳, 男性。突然新鮮血を吐き出し, 意識不明の状態で当センターに搬送された。直ちに気管内挿管を施行した。挿管チューブからは血液は吸引されなかった。吐血を疑われたが上部消化管内視鏡で胃内に出血源は認められなかった。胸部X線写真で左上肺野に腫瘤陰影を認め, 弓部大動脈瘤と診断された。第2病日から大量の喀血が出現, 気管支鏡で左B^<1+2>およびB^3からの出血を認め止血を試みたが, 胸腔内にも出血を来たして死亡した。症例2は61歳, 男性。突然新鮮血を吐き出したため, 当センターに搬送された。初め吐血を疑われたが上部消化管内視鏡では胃内に出血源は認められなかった。胸部X線写真上, 左第1弓に接して腫瘤の存在が疑われ, ivDSA検査で弓部大動脈瘤が確認された。気管支鏡では左B^<1+2>に凝血塊を認め同部からの出血が示唆された。胸部大動脈瘤切迫破裂と診断し手術が予定されたが, 再び喀血し死亡した。喀血の原因は大動脈と肺に瘻孔が形成されたためと考えられる。大動脈肺瘻は稀な病態であるが, 外科的処置が不可欠で早期診断が必要である。
著者
常塚 宣男 本多 桂 竹内 一雄 中村 康孝 蒲田 敏文 清水 淳三
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.167-171, 1997
参考文献数
6
被引用文献数
2

止血困難な気道出血に対し, 高出力半導体(GaAlAs)レーザーを用いることにより止血し得た症例を経験したので報告する。症例は85歳男性, 食事中に突然新鮮血を吐き, 意識不明状態で救急車にて搬送された。二次救命処置後, 気管内挿管チューブから血性痰が吸引されたが, 緊急上部消化管内視鏡検査でDieulafoy潰瘍からの出血を認めたため吐血の誤嚥と考えられた。しかし胸部大動脈瘤の病歴, および血痰の持続から, 気道出血の可能性を考え気管支内視鏡検査を施行した。気管および左中間幹に出血源を認めたためエピネフリン散布, トロンビン散布, バルーンカテーテルによる圧迫を5日, 計10回にわたり試みたが止血は不十分であった。今回, この気道出血に対し, 高出力半導体(GaAlAs)レーザーシステム(DIOMED 25, OLYMPUS)を使用し, 経内視鏡的に止血に成功し得た。