著者
門田 淳一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.148-149, 2005

大分大学医学部附属病院は604床を有する病院で,大分医科大学附属病院として昭和53年に開設され,平成15年10月に大分大学と合併統合され現在の名称となりました.昨年までは,大分大学医学部第2内科の呼吸器グループと第3内科の呼吸器グループがそれぞれ単独で呼吸器内科の診療を担当しておりましたが,平成17年1月より臓器別診療体制に移行したことに伴って統合再編され,旧内科第2那須勝教授を診療科長,旧内科第2門田淳一助教授と旧内科第3宮崎英士助教授を副診療科長として新たに附属病院呼吸器内科として発足しました.現在の学内の呼吸器内科医数は18名であり,上述の教授,助教授2名に加えて,助手7名,医員5名,研修医3名よりなります。現在の呼吸器内科の病床数は25床が定数ですが,常に30名を越す患者さんが入院しています.診療は肺感染症,肺癌,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患,間質性肺炎等すべての呼吸器疾患を網羅しています.外来診療は,毎日の新患外来と再来外来を担当し,水曜日午後には咳,喘息外来を開設しています.
著者
荻原 正雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-4, 2005

私の論文を書く前に, 今は過去の人となった気管支学の創始者で気管支ファイバースコープを開発された名誉教授の池田茂人先生を始め, 山口豊先生, 武野良仁先生など立派な業績を残していかれた. 数多くの立派な先輩たちが気管支学の基礎を作られ, 最近気管支学会が一歩大きく発展し, 日本呼吸器内視鏡学会となり喜ばしいことである. 慢性気管支感染症は現在では, 高年齢の男性にみられる数少ない疾患となった. 病理学的に慢性分泌腺の肥大と上皮化成を伴っている. すなわち, 長期(6ヶ月以上にわたり)多量の喀痰と咳の症状を訴え, 初診時の諸検査で炎症がみられ, 連続して喀痰の中に多数の非特異的細菌がみられる. 胸部X線像で肺炎様所見はない. 病因:高年齢の男性に多い, 大気汚染, 喫煙, 細菌, ウイルス感染, 粉塵, 化学物質に従事する職業に多く, 副鼻腔炎が誘因となる. 慢性気管支感染症, 分類 1)浮腫型 浮腫を示し, 寛解時には消退する. 喀痰と咳嗽が続き(6ヶ月前後), 非特異性細菌が多数検出される. 組織像:慢性カタール性気管支像を示す. 2)肥厚型 長期間に及ぶ炎症のため, 粘脹な分泌液が多量にみられ, 発赤腫脹を示し, 分泌腺は開大する. 組織像:混合性, 浮腫, 軽い円型細胞浸潤.
著者
永元 則義 斉藤 泰紀 佐藤 雅美 佐川 元保 菅間 敬治 高橋 里美 薄田 勝男 藤村 重文 仲田 祐 大久田 和弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.399-405, 1993

胸部X線写真無所見肺癌切除例149例中に認められた37例の隆起性病変の気管支における増殖特性を検索し, 術式の選択について考察した。肉眼所見から四型に分類できた。隆起した癌が内腔に全周性に増殖し気管支を狭窄しているもの(AC型 : 輪状狭窄型), 非全周性に一部が内腔に突出し, その周囲に表層浸潤を伴うもの(PSE型 : 進展性ポリープ型)と伴わないもの(LP型 : 限局性ポリープ型)があり, LP型はさらに有茎性(PLP型)と無茎性(NLP型)に分けられた。これら四型についてさらに組織学的に検索し, 気管支壁への深達性, 癌の広がり, リンパ節転移を検討した。以上の結果, (1)四型とも気管支鏡検査で隆起型をある程度推定しうる可能性がある, (2)PLP型, 横径小のNLP型およびPSE型は局在部位によっては区域切除やスリーブ葉切の適応となりうる, (3)AC型と横径大のNLP型は癌の根治性から考えて標準的な術式が妥当であろう, と考えられた。
著者
村上 真理 佐竹 範夫 江村 正仁
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, 2005

症例は62歳男性, 2004年11月初旬より血痰が出現し, 他院で胸部CT所見より肺癌を疑われ, 2005年1月5日当院を紹介された. 気管支鏡検査で左主気管支入口部の狭窄を認め, 同部の生検で扁平上皮癌と診断した. 1月19日左無気肺となり, 呼吸困難のため緊急入院し胸部放射線照射(66Gy)施行した. 3月15日から化学療法開始したが, 再度左無気肺となった. 左主気管支狭窄に対し, ステント留置を行うためアルゴンプラズマ凝固法(APC)で焼灼するも開存せず, 化学療法を続行した. 化学療法により無気肺は改善したため, 再々狭窄予防のためステント留置を検討した. 5月26日気管支鏡実施したところ, 左主気管支は開存し腔内の腫瘍は消失していた. 自覚症状もなかったためステント留置は見送ったが, この症例での留置の適応と時期について考察する.
著者
三戸 克彦 山形 英司 山上 由理子 一宮 朋来 山崎 透 平松 和史 永井 寛之 那須 勝
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.547-552, 2000
参考文献数
20

近年, 血清KL-6, SP-A, SP-D値は間質性肺炎の活動性の有用な指標として報告されている。今回全肺洗浄前後のモニタリングに血清KL-6, SP-A, SP-D値を用いた肺胞蛋白症の1例を報告する。症例は労作時息切れで入院した67歳の女性で, 胸部X線写真上両中下肺野に非区域性の浸潤影が認められた。胸部CTでは非区域性に広がるスリガラス様陰影と小葉間隔壁の肥厚が見られ, peripheral clear zoneが認められた。気管支肺胞洗浄と経気管支肺生検により肺胞蛋白症と診断し, 全肺洗浄が施行された。全肺洗浄後, 症状, 血液ガス, 胸部X線写真の改善とともに血清KL-6値は減少したが, SP-A, SP-D値は一過性に上昇し, その後低下した。血清KL-6, SP-A, SP-D値は病勢と一致しており, 肺胞蛋白症において有用な活動性のマーカーになりうると考えられた。
著者
森川 洋匡 平井 隆 山中 晃 中村 保清 山口 将史 赤井 雅也
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.505-510, 2004
被引用文献数
7

背景. 気管支異物は小児や脳に障害がある成人に多いとされている. 早期診断には詳細な問診に加えて積極的な検査が必要であり, 早期除去することが重要である. 目的. 気管支異物症例について症例の特徴, 検査所見, 除去方法について検討した. 対象. 1992年6月から2004年2月までの12年間に当科で経験した13例の気管支異物症例を対象とした. 結果. 年齢は1歳から86歳で12歳以下5例, 60歳以上7例と2峰性を示した. 男性12例, 女性1例と大半が男性であった. 症状は咳嗽, 喘鳴, 呼吸困難等がみられたが, 2例では自覚症状がなかった. 異物嵌頓部位は右7例, 左6例だった. 異物の種類としてはX線透過性の異物が9例, X線非透過性の異物が5例であり, 画像所見においては異常なし3例, 異物が確認できた症例が5例, 肺炎像1例, 無気肺像2例, 対側の肺野透過性亢進2例であった. 異物の除去に用いた鉗子はバスケット鉗子4例, ワニ口鉗子3例, ラリンジアルマスク+フォガティカテーテル2例, 生検鉗子2例だった. 結論. 気管支異物の診断には詳細な問診が重要である. 咳嗽, 呼吸困難があり胸部X線上片側過膨脹, 無気肺, 閉塞性肺炎などがみられる症例では気管支異物の可能性を考えて気管支鏡等を含めた積極的な検査が必要であると考えられた.
著者
星 永進 青山 克彦 村井 克己 池谷 朋彦 金沢 実 杉田 裕 高柳 昇 生方 幹夫 倉島 一喜 松島 秀和 佐藤 長人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.391-393, 2002
被引用文献数
2

目的.良性気道狭窄病変に対する気管・気管支形成術の成績について検討する.方法.過去11年間に当センターで手術を施行した良性気道狭窄8例を対象として,外科治療成績について検討した.自覚症状を有し,気管支鏡所見でpinhole状の狭窄あるいは閉塞を示す場合に手術適応とした.性別は女性7例,男性1例.年齢は23歳から58歳(平均40歳)であった.原因疾患別では結核性4例,necrotizing sarcoid granulomatosis(NSG)1例,気管内挿管後3例,病変部位は結核性では左主気管支3例,左上幹1例.NSGでは右主気管支ならびに中間気管支幹1例.挿管後では頸部気管3例.手術アプローチは結核性とNSGは側方開胸,.挿管後では頸部襟状切開.術式は結核性では左上葉管状切除1例,左上幹管状切除1例,左主気管支管状切除2例.NSGは右中下葉管状切除,挿管後では気管管状切除3例.吻合は吸収性モノフィラメント糸を用いて端々吻合した.手術時間は結核性は244〜328分(平均288分),NSG252分,挿管後97〜150分(平均124分).術中出血量は結核性150〜833ml(平均416ml),NSG385ml,挿管後40〜200ml(平均97ml).結果.吻合部狭窄,縫合不全などの術後合併症を認めなかった.狭窄病変の再発はなく,全例元気に社会復帰している.結論.良性気道狭窄病変に対する気管・気管支形成術は,安全で有用な術式である.
著者
河内 利賢 武井 秀史 塚田 久嗣 相馬 孝博 輿石 義彦 呉屋 朝幸 竹内 弘久 跡見 裕
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, 2005

症例は57歳の男性, 呼吸困難を主訴に当院を受診した. 2002年4月に進行胃癌にて胃全摘術の既往がある. 6月28日, 当院を受診し, 胸部Xpにて左肺の過膨張像を認めた. 翌日のCTにて左無気肺と気管分岐部〜主気管支周囲リンパ節の腫大による左主気管支狭窄像を認め, 胃癌の縦隔リンパ節再発による, 気道狭窄と判断した. 気管支鏡所見では左主気管支に気管分岐部よりリングの部位に全周性の狭窄を認めた. 同部位の組織診断にて胃癌の縦隔リンパ節再発を確認した. 呼吸困難にてPS3と全身状態が悪化したため, 6月30日, 姑息的に左主気管支にUltraflex Covered Stentを挿入, 留置した. 7月1日, 胸部Xpにて左無気肺の改善を認めた. その後, 一旦退院し, TS-1を含む化学療法を施行した. PS1と全身状態も改善し, 3か月間の自宅療養が可能となった. 姑息的にStent挿入を行い, QOLの改善を認めた症例を経験したため, 報告する.
著者
渡邊 亨 高瀬 恵一郎 小嶋 徹 笠倉 尚人 板井 典朗 栂 博久 高橋 敬治 大谷 信夫 湯浅 幸吉 上田 善道
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.75-79, 1998
被引用文献数
1

症例は31歳, 女性。上気道炎に罹患しやすく, 25歳時には喀血の既往歴があった。平成8年3月に湿性咳嗽と黄色痰を生じ, 以降, 乾性咳嗽が続いていた。5月28日, 突然約100mlの喀血を生じ, 以後も喀血を繰り返すため近医受診し, 同日当院に紹介入院となった。気管支鏡により, 右B^<10>から鮮紅色の出血を認め, 胸部CT検査では右S^<10>領域に気管支拡張像と一部造影効果のある腫瘤状陰影を認めた。また, 大動脈造影では右下横隔膜動脈から肺静脈へ灌流する異常血管を認めた。異常の結果から肺分画症と考え, 喀血を繰り返していることから手術適応と考えて, 病変部分右S^<10>の肺部分切除を行った。切除標本にて, 拡張した気管支内に異物を認めた。本例は, 胸部CT, 右下横隔膜動脈造影により肺葉内肺分画症が疑われたが, 気管支内異物のため感染を繰り返し, その結果新生血管が発育し, 喀血を繰り返した症例であると考えられた。
著者
正岡 昭
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.101-102, 2005

私は昭和35年から41年(1960〜1966年)まで,貝塚市にあった大阪療養所に勤務した.それまで脳外科グループに属していたので,学位獲得後のお礼奉公のこの赴任が,私の呼吸器外科の修練の始まりであり,その後,終生従事した呼吸器外科の入口となった.当時は肺結核外科の最盛期であり,胸部に陰影があれば,肺結核あるいは肺化膿症と考えていた.肺結核と思って切除した組織に癌がみつかったというような症例報告をしていた頃である.大阪療養所の外科には,沢村献児医長の下に,私を含めて5人の医師がおり,計6人で毎週十数例の手術をしていた.手術日は週2日であったが,1日に肺切除4例,胸郭成形術その他3例くらいで,2つの手術台を使って,朝から晩まで手術をしていた.手術の術前検査として,全例に肺機能検査,気管支造影,気管支鏡が実施された.外科医員5人がこれらの3検査を分担して実施していた.内科医の関与はなかった.肺機能検査とはスパイロメトリーのほかに,全摘対象例に対しては,左右別スパイロメトリーと肺動脈閉塞試験が行われていた.
著者
前田 昌純 中元 賢武 中村 憲二 南城 悟 太田 三徳 谷口 清英 坪田 典之 多田 弘人 成毛 韶夫
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.350-358, 1988

1, 562例の気管・気管支形成例の術型について分析, 追補した。術型数は, 1, 569手術例に57, 施行されていた。12の基幹術式のなかで, BBが974手術(62.1%)と最も多く, 続いてTTの282手術(18.0%), TBの92 (5.9%)の順位となる。Tp18手術(1.1%), CRは32手術(2.0%)施行されていた。CR, TB, BB術式は, 各々10, 10, 28のsub type術型にわかれる。手術数の上位3位を示すと, CRでは_<TI>__-CR, _<MM>__-CR_<TM>, ^^<CR>T-IM, TBでは左右のSP, 左右のWPと_<TI>SL, BBでは左右の上葉スリーブ(_<MI>SL SL_<ML>), 左右上葉のWL, 左右のMU吻合術型となる。術型別の合併症では, Tpの77.8%, TMTの40.0%, Teの37.9%, CRの34.4%が目立つ。7気管軟骨輪以下切除のTT, BBのうち_<MI>SL, SL_<ML>, _<MI>WL, WL_<ML>を標準術型とした。合併症頻度は, 各々, 20.3%と12.1%であった。
著者
森田 裕人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.638-645, 1996
参考文献数
9
被引用文献数
2

リドカインは気管支鏡検査施行時の麻酔薬として広く一般に使用されている。しかしながら現状では, 検査中に使用されているリドカインの総量にはあまり注意が払われていない。我々は, ジャクソン型噴霧器による麻酔とテフロン樹脂製のカテーテルを気管支鏡の生検鉗子チャンネルに挿入し麻酔することによって, 少量のリドカイン(患者1人あたり平均240mg)で1124症例に生検やブラシ, 洗浄等の気管支鏡検査を施行した。リドカイン中毒を呈した症例は認められなかった。しかし, シースカテーテルを使用しないで麻酔を行う一般的な気管支鏡検査では, いくらかのリドカインは吸引に流入されており, 実際にはリドカインの使用量に差はあるが, 有効に, 気管や気管支への麻酔に使用されたリドカイン量は同じかもしれない。そこで, 我々は, 37歳から81歳までの検査の同意を得た22人について, 同量のリドカインが現実に有効であることを否定するために, 使用されたリドカイン総量とその血漿中濃度について検討した。結果は, 使用されたリドカイン総量, 血漿中リドカイン濃度, ともにシースカテーテルを使用して麻酔した方が使用しない場合より有意に低い結果を得た。テフロン樹脂製のシースカテーテルは気管支鏡麻酔施行時のリドカイン使用量の減量に有効であると結論づけられた。加えて, 気管支鏡検査時の出血やくもりもシースカテーテル先端を気管支鏡内に数mmおさめ, 少量の生理食塩液とリドカインをシースカテーテルより注入することで, 洗い流すとともに咳嗽をおさえ, 新たなる出血を予防し改善される。エピネフリン等の止血薬注入が必要な場合でもシースカテーテルを通して注入すれば, シースカテーテルを使用しない場合よりも, より少量の使用量ですむ。
著者
高木 啓吾 加藤 信秀 笹本 修一 秦 美暢 田巻 一義 木村 一博 梁 英富 外山 勝弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.138-144, 2004
参考文献数
7
被引用文献数
4

背景.気管病変に対するステント療法は,多くの気道疾患患者のQOL向上に寄与したと言えるが,その適応,手技,合併症,成績に関する問題が未だ山積している.本稿では気管および気管分岐部のシリコンステント療法の有用性と問題点に論点を絞り,我々の経験例を中心に分析したので報告する.対象.1992年4月から2003年4月に経験した気管および気管分岐部の狭窄病変32例で,部位は気管14例,気管分岐部18例,疾患別では,肺癌16例,食道癌11例,悪性リンパ腫2例,気管切開後狭窄2例,甲状腺腫1例であった.ステント種別では,Dumon直型14例,Dumon-Y型13例,Dynamic型5例であった.結果.肺癌による狭窄のうち,気管病変は縦隔のbulky転移リンパ節によるものですでに予後不良であり,留置後の多くが1ヶ月以内に死亡したが,気管分岐部病変では,3ヶ月以上の生存例が10例中7例(70%)あり生存が見込まれた.一方,食道癌では,気管病変にせよ気管分岐部病変にせよ,ステント療法に加えて化学放射線治療が奏効するので,3ヶ月以上の生存例は予後が判明している10例中6例(60%)にあった.ステント留置後の腫瘍の再増生や瘻孔発生の可能性を考えると,本病変ではワイアーステントよりもシリコンステントの有用性が高いと考えられた.ステント留置に際して気管分岐部病変では,狭窄程度のみならず気道軸の偏位を重視しなくてはならず,高度偏位例では術中に出血に基づく換気障害による一時的な低酸素血症に留意しなくてはならなかった.留置後療喀出障害はステント全長が90mm以上の例で高率にあり,またステント内面の細菌増生は,留置後4ヶ月以上経過した12例で検討すると,全例でbiofilmの形成を認め,留置後の定期的な経過観察が必要と思われた.結論.シリコンステント療法は,その侵襲度は大きいが確実な気道確保のもとで行う安全な療法である.これを実践するには万全の体制でよき指導者のもとで臨まなくてはならない.呼吸器科医は今後硬性気管支鏡の苦手意識を取り去り,軟性気管支鏡のみならず硬性気管支鏡も熟知して,確実な気道確保のもとで多くの治療法を選択できるようになることが望まれる.
著者
林 嘉光 浅野 高行 伊藤 剛 桐山 昌伸 丹羽 宏 正岡 昭
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.466-471, 1994
被引用文献数
3

症例は59歳, 男性。1993年8月より息が吐きにくくなり, 10月下旬には喘鳴, 呼吸困難が出現し, 入院となった。当初, 気管支喘息と診断したが, 気管に痰が詰まった感じと呼気性の呼吸困難が続くため, 気管断層撮影, 胸部CT撮影を実施し, 気管下部の分岐部直上に2cm大の有茎性腫瘤を認めた。可及的な気道確保の目的で, 気管支鏡下高周波スネアで腫瘍頭部を切除した。病理組織診断は神経鞘腫と判明し, 残存する腫瘍に対しては1994年1月11日に根治的手術を行った。手術時, 気管内腔は腫瘍により分岐部より口側へ1から4気管軟骨輪にわたって狭小化し, また膜様部外側へも隆起していた。しかし, 食道を含む周囲組織への浸潤はなく, 腫瘍を含む4気管輪を管状切除し, 端々吻合を行った。経過も順調で術後19日で退院した。
著者
安岡 劭 中西 嘉巳 藤沢 謙次 林 秀樹 前田 道彦 尾崎 敏夫 北谷 文彦 松崎 圭輔
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.312-320, 1986
被引用文献数
1

気道粘液糖タンパク(粘液)は気道液の粘弾性の中心となる物質で, この作用で粘液一線毛運動に関与している。また, その表面構造は微生物の侵入に対して防御的に働くことも推定されている。気道粘液は主鎖のポリペプタイド部分と側鎖の糖部分から構成されている。フコースとシアル酸はこの気道粘液の側鎖の末端, 従って粘液の表面を占めているため, 粘液におけるシアル酸/フコース比は上述の粘液の物理学的性状や生物活性に関連すると考えられる。本報では, 慢性気道疾患における気道粘液の性状の変動や, 喀痰中のフコースやシアル酸の診断的意義などを解明するため, これら疾患患者の喀痰中のフコースとシアル酸を痰原液と精製気道粘液レベルで分析した。その結果, 粘液痰と膿性痰では, これらの糖の診断的意義が異なることや, 気道粘液の糖側鎖が疾患や薬剤により変動することが示唆された。
著者
藤沢 武彦 山口 豊 本郷 弘昭 柴 光年 由佐 俊和 崎尾 秀彦 川野 裕 門山 周文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.251-257, 1986
被引用文献数
4

中枢気道を狭窄ないし閉塞する肺癌切除不能例11例に対して内視鏡下に腫瘍内エタノール注入療法を考案し, その組織固定および止血効果につき臨床的ならびに基礎的検討を行ない, 以下の結果を得た。(1)腫瘍内へ99.5%エタノール注入後は速やかに腫瘍は淡赤白色に固定され, 内視鏡的にやや縮小傾向を示し, さらに出血例では高い止血効果が認められた。注入数日後には腫瘍は壊死に陥っており, 壊死組織内には病理組織学的に生腫瘍細胞はみられなかった。(2)気道内ポリープ状突出腫瘍に対しては本法は極めてよい適応と考えられるが, 壁外腫瘍に対してはその効果はあまり期待できないものと思われた。(3)筋弛緩剤投与下に行なった動物実験による検討では, 中枢気道壁内への99.5%エタノール投与は明らかなPaO_2の低下を示さなかったが, 肺胞内へのエタノールの流入は出血性肺炎を惹起し, PaO_2を有意に低下させた。(4)局所麻酔下に行なう臨床例においては, 腫瘍外に流出した少量のエタノールの一時的な咳嗽発作の惹起をみたのみで, 肺炎, 低酸素血症等の重篤な副作用は全くみられなかった。(5)生化学的検索でもエタノール注入は臨床的にも, また基礎的にも明らかな異常所見は示さなかった。(6)結論として, 腫瘍内エタノール注入療法は適応を選べば, 中枢気道の腫瘍性病変に対して有効な内視鏡下治療の一手段と考える。