著者
久保田 陽子 伊田 昌功 伊藤 宏一 加藤 浩志 辻 芳之
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.257-264, 2014

日本では諸外国に比し硬膜外麻酔を用いた無痛分娩の普及率は著しく低いが,当院では分娩例の約半数に無痛分娩を施行している.今回,2010年7月から2011年12月の間での無痛分娩症例において,後方視的に自然分娩例と比較し分析することにより,無痛分娩が分娩や新生児に与える影響を明らかにすることを目的とした.無痛分娩群では自然分娩群と比較して,回旋異常発生率・陣痛促進剤使用率・吸引分娩施行率・分娩所要時間(分娩第1期・分娩第2期)が有意に上昇したのに対し,緊急帝王切開移行率・分娩時総出血量は両者で有意差を認めなかった.新生児への影響に関しては,Apgar score,臍帯血pHには有意差を認めなかった.臍帯血BEにおいては両群間で有意差を認めるも,ともに正常値の範囲内であり,以上より無痛分娩が新生児へ悪影響を及ぼすことはないという結果になった.無痛分娩による母体合併症として,当院では2例の硬膜穿刺後頭痛を経験したが,いずれも保存的治療のみで症状は軽快し,うち1例では次回分娩時にも無痛分娩を希望した.以上より,分娩帰結に差がないことを考えれば,痛みのない分娩を選択でき得ることは妊婦にとって大きな助けになると思われる.〔産婦の進歩66(3):257-264,2014(平成26年8月)〕
著者
高橋 義浩 小西 公巳 岡田 仙三 井上 慶三 野村 皓夫 上羽 捷之
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.42-48, 1972-01-01 (Released:2011-10-11)
参考文献数
11

免疫学的妊娠反応は産婦人科臨床に日常広く使われているが, 最近HAIRについでlatex粒子にHCG, または抗HCG(γ-グロブリン)をcoatingしたLAIR, LARのスライドテストが, その判定迅速性にすぐれ, 臨床応用されるようになった.われわれは, これらの市販免疫学的妊娠反応の正診率について比較, 検討を加えた.また絨毛性腫瘍の診断, 予後判定に高濃度および低濃度HCGの定量的測定が必要であるが, それぞれの目的にHAIRを用いたmicrotitration法およびvisking tubeによるサンプルの減圧濃縮法を行なったので, その臨床成績について報告した.
著者
窪田 俊夫
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.337-340, 1958-09-01 (Released:2011-10-11)
参考文献数
3
著者
藤本 昭
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.307-310, 1968-07-01 (Released:2011-10-11)
参考文献数
31

人魚体とは, 下肢が癒合して単脚となつた下肢癒着奇形を云い, 本邦では極めて稀な奇形とされている.私は偶々妊娠8ヵ月で自然早産した児に本症の一例を経験し, 外観上, レ線写真所見により, FörsterのいわゆるSympus Monopusに属するものと思われる.
著者
中元 剛 角玄 一郎 安田 勝彦 堀越 順彦 神崎 秀陽
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.82-86, 2007

今回,われわれは診断に苦慮した巨大筋腫分娩の1例を経験したので,臨床経過,文献的考察を加えて報告する.症例は37歳,未婚,経妊0回経産0回.2ヵ月前ごろより腟内に異物感を認めるも放置しており,1週間前より38.5℃前後の発熱を認め,腟口より腫瘤の脱出を認めたため近医受診し,同日精査加療目的にて,当科搬送入院となった.初診時視診にて腟口より約2cm程度の変性をともなった腫瘤の脱出を認め,腟内は腫瘤のため緊満状態で,腫瘤と腟壁の間からは淡血性の膿が約200ml排出された.末梢血検査にてWBC10500/&mu;l(好中球分画84.5%),Hb7.1g/dl,生化学検査にてCRP12.29mg/dlと強い炎症と貧血を認めた.腫瘍マーカー値は,SCCが2.1ng/mlと軽度高値を認めた.画像所見は,経腹超音波検査およびmagnetic resonance imaging (MRI)検査にて腟外から続く巨大腫瘤を認め,その頭側に子宮体部様の像を認めた.子宮と腫瘤の関連については不明であった.入院翌日に,腫瘤が約6cm脱出し,Hb5.9g/dlと貧血の悪化を認めた.入院3日目,計4日間排便がないためグリセリン浣腸120mlを使用したところ排便,出血とともに巨大腫瘤が完全脱出した.その際Hb5.6g/dl,Ht19.0%と貧血がさらに悪化したためMAP3単位を輸血しつつ,巨大腫瘤は変性した筋腫分娩であるとの診断に至り,内子宮口部付近にて腫瘍を結紮のうえ切除術を施行した.摘出腫瘤は組織診にて変性した子宮筋腫であり,筋腫分娩の確定診断となった.術後,炎症と貧血はまもなく回復し,術前軽度高値であったSCCは正常範囲となった.術後2ヵ月後のMRI検査にて大きな子宮筋腫は認めず,正常な位置に子宮を認め,月経の異常も認めず外来定期検診を受けている.〔産婦の進歩59(2):82-86,2007(平成19年5月)〕<br>
著者
山越 統雄 三上 康彦 田幡 義郎
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.531-534, 1968

新生児の細菌性髄膜炎は, 近年その報告が多く, その起炎菌は生後日数の短いものにおいてはグラム陰性菌, 特に大腸菌が主とされている. 児の細菌感染の多くは分娩中, 就中早期破水後の羊水感染によるものであり, 臨床症状は初期には定型的なものを欠き, 診断には髄液検査が不可欠とされ, 屡々剖検によつて確診が得られるものが多い. 我々は分娩経過中に大腸菌性膀胱炎をきたし, 早期破水, 微弱陣痛で分娩遷延し, 羊水感染を疑わしめた母親から出生した成熟児で, 診断の確定せぬまま生後43時間で死亡し, 剖検によりEscherichia coiiを起炎菌とする新生児髄膜炎と判明した1例を経験し, 我々が行なつた満期産60例の羊水中及び破水後の腟内容と新生児口腔内吸引物中の細菌検索の成績においても. 菌の種類はE. ColiがStaphylococcus epiderimidisに次いで多く, 大腸菌性の新生児感染症に留意しなければならない結果を得ており, 同時に髄液検査の重要性を示唆されたので考察を加え報告した.
著者
岩橋 正明 矢本 希夫 生駒 誠 仲野 良介
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.145-148, 1996

常染色体優1生遺伝QT延長症候群の1つであるRomano-Ward症候群は,Torsadedepointesや心室細動等の心室1生不整脈により失神発作や突然死をきたす.このため本疾患合併妊婦は,妊娠期間を通じて厳重な管理が必要である.今回,本症候群合併妊婦の人工妊娠中絶を経験した.症例は17歳で,7歳時にRomano-Ward症候群と診断され小児科にて管理されていた.妊娠16週で小児科より妊娠継続困難のため人工妊娠中絶目的にて紹介された.初診時の心電図ではQTc=0.58secと著明に延長していた.抗不整脈剤の持続点滴をしながら,ラミナリア桿にて子宮頸管を開大し,プロスタグランジン膣座薬により妊娠中絶に成功した.現在も抗不整脈剤の経口投与にて管理中である.
著者
井上 佳代 鍔本 浩志 金澤 理一郎 堀内 功 小森 慎二 田端 千春 中野 孝司 塚本 吉胤 廣田 誠一
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.106-111, 2011

悪性腹膜中皮腫(malignant peritoneal mesothelioma:MPM)と原発性腹膜癌(primary peritoneal carcinoma:PPC)は同じ腹膜中皮細胞由来であるが,病態や治療方針が異なり早期に鑑別する必要がある.またMPMはPPCに比してまれで本邦の年間女性死亡者数は30人に満たず,肉眼的に大網に限局した早期のMPMの報告は海外を含めて数件が報告されているのみである.今回経腟的腹水穿刺を行い,腹水細胞診を免疫染色することでMPMを診断し,MPMに適応した術式が選択できた症例を経験したので報告する.症例は32歳,経産婦.月経不順にて前医を受診し腹水貯留を指摘されたため当科紹介となった.血清CA125は129 IU/ml,経腟超音波検査にて両側付属器およびダグラス窩腹膜は正常で,腹部造影CT検査にて肥厚した大網の脂肪組織が淡く造影された.消化管内視鏡検査にて異常なく,PET/CT検査にて18F-fluorodeoxygrucose (FDG)の有意な集積は認めなかった.ダグラス窩穿刺により淡褐色粘性腹水を採取し細胞診に提出したところ,重積性を示すマリモ状細胞集塊を認め,calretinin,CK5/6,D2-40による免疫化学染色法にていずれも陽性であった.これよりMPMと診断し腹腔鏡下に腹腔内を観察したところ,黄褐色で不整に肥厚した大網以外に異常を認めず大網生検を行った.生検組織によりMPMと確定診断した後に肉眼的完全摘出を目標として大網亜全切除術を行った.術後に化学療法を勧めたが拒否され, 6ヵ月後に全身倦怠感を認めPET/CT検査を施行したところ腹腔内に多発腫瘍を認めた.現在,pemetrexedとcisplatinによる全身化学療法を行っている.〔産婦の進歩63(2):106-111,2011(平成23年5月)〕
著者
萬代 博行 上河原 良衛 脇坂 一郎 茨木 健二郎
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.35-39, 1979

妊娠中期中絶の方法として従来より行われてきたラミナリア・メトロイリーゼを前処置として施行し, 薬剤投与方法を塩酸キニーネ経口, PGE<sub>2</sub>経口, PGF<sub>2α</sub>卵膜外注入の3群にわけ比較検討し, 次の結果をえた.<br>(1)流産平均時間:塩酸キニーネ17.8±12.2時問, PGE<sub>2</sub> 18, 4±12, 9時間, PGF<sub>2α</sub>, 10.5±11.2時間(2)出血量:塩酸キニーネ228±207g, PGE<sub>2</sub>122±103g, PGF<sub>2α</sub>152±271g(3)薬剤投与量:塩酸キニーネ0.69±0.04g, PGE<sub>2</sub>6.4±5.5ヵプセル, PGF<sub>2α</sub>4.5±2.3mg(4)36時間以内の流産率:塩酸キニーネ88%, PGE<sub>2</sub> 91%, PGF<sub>2α</sub> 100%, (5)完全流産率および胎盤娩出所要時間は大差なかった.
著者
黄 清煕 伊熊 健一郎 戸田 一司 竹村 正 礒島 晋三
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.235-237, 1978

28才の経産婦で, 子宮外妊娠の診断のもとに開腹したところ, かつて右卵管峡部の外妊であったのが破裂ではなく完全に峡部より断裂し, 卵管采を含んだ末梢部が, そのまま腹腔内を遊走し, 胃下部の大網膜に移植して発育を続け, 他方断裂した子宮側卵管の断端は瘢痕化して索状となり, あたかも細い卵管と見誤る程きれいに修復きれていた非常に興味ある症例を経験した. 大網膜上に移植された卵管内部および移植部位より, 病理組織学的に明らかな絨毛が見られた.
著者
伊藤 崇博 橋本 公夫 川北 かおり 小菊 愛 秦 さおり 奥杉 ひとみ 近田 恵里 佐原 裕美子 竹内 康人 片山 和明
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.75-82, 2013

子宮内に胎児と奇胎が併存する場合,多くは部分胞状奇胎であるが,正常胎児と胞状奇胎が併存する胎児共存奇胎の可能性もある.胎児共存奇胎であれば児の生存も期待できるが,生児を得ることができるのは半数以下とされる.今回われわれは,生児を得られた胎児共存奇胎の1例を経験したので報告する.症例は30歳,排卵誘発周期に妊娠成立した.経腟超音波検査にて正常絨毛と奇胎を別々に認め,初診時(妊娠9週)の血中hCG値は349,619 mIU/mlと高値であった.羊水染色体検査は46XXの正常核型であり,血中hCG値も妊娠13週以降は低下傾向にあった.早期より切迫流早産徴候を認め,陣痛抑制困難のため妊娠33週での帝王切開分娩となったが,児の予後は良好であった.奇胎娩出後,免疫組織化学的検査により正常胎児と全胞状奇胎との共存であることが確認された.血中hCG値は順調に低下しており,術後34週を経過したが続発性疾患の発症は認めていない.〔産婦の進歩65(1):75-82,2013(平成25年2月)〕
著者
宮本 真由子 福田 綾 福田 裕償 福岡 寛子 横井 恵理子 大八木 知史 坪内 弘明 筒井 建紀
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.388-393, 2015

症例は32歳,3経妊未経産.稽留流産,人工妊娠中絶術による2回の子宮内容除去術後,異所性妊娠による片側卵管摘除術を経て,今回凍結胚移植により妊娠成立した.妊娠8週に性器出血にて来院し,超音波検査にて巨大絨毛膜下血腫と診断されたが,巨大絨毛膜下血腫は縮小せず,持続する性器出血により高度な貧血を呈したため入院となる.鉄剤投与により保存的に経過観察されていたが,妊娠20週にコントロール不可能な多量の出血が持続したため,妊娠継続は困難と判断,ゲメプロスト腟剤による人工妊娠中絶術を行うに至った.頸管拡張術中に再び多量出血し母体が一時ショック状態になった.児娩出後にも胎盤遺残を伴った性器出血が続いたため子宮内容除去術も行い,誘発分娩開始から胎盤娩出までの出血量は約3000ml,濃厚赤血球12単位,新鮮凍結血漿4単位を輸血した.近年,絨毛膜下血腫はIVF妊娠で血腫発症率が上昇するとの報告もあり,今回の巨大絨毛膜下血腫と大量出血の原因としてIVF妊娠が関与している可能性が考えられた.〔産婦の進歩67(4):388-393,2015(平成27年10月)〕
著者
吉澤 ひかり 蝦名 康彦 今福 仁美 鈴木 嘉穂 若橋 宣 宮原 義也 出口 雅士 山田 秀人
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.9-16, 2019

<p>正常胎児と全奇胎の双胎(complete hydatidiform mole coexistent with a fetus;CHMCF)はまれな疾患であり,2~10万妊娠あたり1例とされる.CHMCFは母体合併症が高率であり,また存続絨毛症などの続発性疾患(gestational trophoblastic neoplasia:GTN)のリスクが全奇胎単体より高いとされる.今回われわれは,2006~2015年の10年間にCHMCFの3症例を経験したので報告する.CHMCFの診断週数は12~14週であり,3例中2例は排卵誘発による妊娠であった.母体合併症は,妊娠悪阻(1例),性器出血(3例)であった.CHMCFについて,生児獲得率が低く,母体合併症やGTNのリスクが高いことを説明したところ2例は妊娠中絶を希望した.残りの1例は妊娠継続を希望した.しかし肺転移が判明し21週で妊娠中絶となった.3例中2例にGTN(奇胎後hCG存続症1例,臨床的侵入奇胎1例)を認め,化学療法にて寛解した.CHMCF症例においては,早い週数で妊娠を中断した場合でも,GTNの発症に十分注意して管理する必要があると考えられた.〔産婦の進歩71(1):9-16,2019(平成31年2月)〕</p>
著者
岡野 友美 角 玄一郎 梶本 めぐみ 吉村 智雄 杉本 久秀 髙畑 暁 安田 勝彦
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.119-125, 2017

<p>漢方薬は西洋薬に比べて胎児への影響が少ないと考えられ,妊娠時にしばしば投与される.胎児への影響に関しては漢方薬の胎児への移行の有無や程度を理解しなければならない.しかし,漢方薬の胎児移行についてはわれわれの調べた範囲ではこれまでに報告がない.今回,初めて漢方薬由来成分の胎児移行を確認したので症例の臨床経過を文献的考察も含めて報告する.症例は35歳の初産婦,妊娠39週6日で女児3222gを自然分娩した.妊娠前からうつ,てんかん,橋本病があり,妊娠21週3日から分娩まで抑肝散,リスぺリドン,レボチロキシンの3種薬剤を継続服用していた.分娩後に当院で基本検査として実施している臍帯血検査でCRPは正常範囲内にもかかわらず,白血球増多症(26000/µl),好中球増多症(18070/µl),高コルチゾール血症(269 ng/ml)がみられた.しかし,無治療で分娩119時間後(出生5日目)には白血球,好中球,コルチゾールは全て正常化した.漢方薬の甘草由来成分のグリチルレチン酸による白血球増多症,好中球増多症ならびに高コルチゾール血症が疑われたため,検査機関に依頼したところ,液体クロマトグラフィー・マス・マススぺクトロメトリー法にて,臍帯血中にグリチルレチン酸が検出された.漢方薬を服用していない母親から生まれた児の臍帯血3例を対照として検査したところ,3例ともグリチルレチン酸は検出されなかった.また,本症例の血中グリチルレチン酸は分娩119時間後には検出されなかった.これらのことから,グリチルレチン酸が白血球増多症,好中球増多症,高コルチゾール血症に関与した可能性が示唆された.〔産婦の進歩69(2):119-125,2017(平成29年5月)〕</p>
著者
熊谷 広治 明瀬 大輔 平井 隆次 植木 實 林 嘉彦
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.178-183, 2003 (Released:2003-06-24)
参考文献数
14

2001年に厚生労働省の研究班が行った全国9モデル県での調査によると,性感染症のうちもっとも無症候化しつつ拡散しているのは性器クラミジア感染症であり,男性より女性の罹患率が高い.われわれは,2001年6月から2002年5月までの1年間に公立甲賀病院産婦人科において,甲賀郡・蒲生郡に在住する480例の後腟円蓋部から子宮頸管分泌物を採取し,polymerase chain reaction(PCR)法によりクラミジア・トラコマチスのDNAを検出した.クラミジア抗原陽性率は, 15~19歳群で17.8%と最高値を示し,おおむね年齢が若い群ほど高値を示した.居住地域別の陽性率は,各町のそれぞれで0.0~13.9%の値を示した.陽性者の主訴は,帯下感,下腹部痛,不正性器出血,挙児希望,無症状がそれぞれ, 23.3%,43.3%,6.7%,3.3%,23.3%を占めていた.滋賀県に在住する10~30歳代の女性に対して,症状の有無にかかわらず,積極的にクラミジア検査を行うべきである. 〔産婦の進歩55(2):178-183, 2003(平成15年5月)〕