著者
北脇 知己
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

この研究では、自転車ペダリング動作を評価するための指標を確立することを目的として、クランクとペダルの回転変動状態を正確に計測し、その変動成分を解析して自転車ペダリング動作中の筋活動状態を推定することで、自転車ペダリング動作スキルを計測可能なデバイスを構築するとともに評価指標について研究を行います。さらに、この新しいスキル指標を用いて高スキルペダリング技術の習得法についても検討し明らかにします。
著者
織田 裕行 中森 靖 木下 利彦 池田 俊一郎
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

「自殺企図男性のLOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群に関する検証」の課題名で、関西医科大学総合医療センター倫理審査委員会に申請し、2017年9月19日に承認を得て本研究を継続してきた。その内容は、救命救急センターに自殺企図で搬入された男性のテストステロン値を測定し、日本において自殺率が最も高い年齢層である50歳代男性の自殺企図と加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism:LOH症候群)との関係を検証することにある。具体的には、救命救急センターに搬入された男性自殺企図者を対象として、総テストステロン値、遊離テストステロン値を測定すること、その検査結果と本人や家族から得た情報を踏まえLOH症候群による影響を検証する予定であった。しかし、予期できない研究環境の変化が生じた。そのため、現状の中で「自殺企図男性のLOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群に関する検証」が達成できる方策を再度検討した。その結果、「自殺企図男性のホルモン値に関する検討」として関西医科大学総合医療センター倫理審査委員会に申請し、2019年7月23日に承認を得て救命救急センターに搬入された男性自殺企図者を対象とした総テストステロン値の調査を実施することとした。2021年度には、第40回日本性科学会学術集会において、「男性自殺企図者に対するホルモン値調査の結果報告 -男性ホルモンと甲状腺ホルモンの比較-」として一部報告を行った。さらに検討を加え、日本性科学会雑誌に投稿中である。
著者
小早川 令子
出版者
関西医科大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

匂いに対する恐怖行動は先天的と後天的なメカニズムにより制御される。私たちは、両者の情報は鼻腔内の異なる領域から始まる経路を介して脳へ分離して伝達された後に、恐怖中枢である扁桃体の亜核である中心核のセロトニン2A受容体陽性(CeA-Htr2A+)細胞において拮抗的に統合され、その結果、先天的恐怖が後天的恐怖行動に優先されるという階層性の存在を解明した。さらに、人工匂い分子ライブラリーを用いて最適化することにより、極めて強力な先天的恐怖情動を誘発する匂い分子群であるチアゾリン類恐怖臭(Thiazoline-related fear odors: tFOs)を開発した。嗅覚刺激に対する恐怖行動は嗅覚受容体遺伝子により制御されると考えられてきた。これに対して、私たちはフォワードジェネティクススクリーニングにより恐怖情報の入力を統合制御する遺伝子としてTRPA1を同定した。空腹マウスに対して餌とtFOによる先天的恐怖刺激を同時に与えると恐怖行動が優先され摂食行動が抑制された。この効果は後天的な恐怖刺激では誘導されない。TFO刺激は後天的な恐怖刺激とは異なり、CeA-Htr2A+の神経活動を抑制させ、その結果、摂食行動が抑制されると考えられた。一方、tFO刺激は代謝や体温の低下を含む多様な抑制的生理応答を誘導することは判明した。先天的恐怖刺激は危機応答性の代謝抑制モード誘導することで、摂食行動の抑制と生存を両立させると推定された。CeA-Htr2A+細胞の人為的な不活性化は、tFOが誘導する先天的恐怖行動を亢進するが、生理応答に関しては明確な影響を与えなかった。一方で、Trpa1遺伝子のノックアウトマウスでは恐怖行動に加え生理応答も抑制された。このことは感覚神経で統一的に入力された恐怖情報が扁桃体に至る以前の段階で複数のサブシステムにより分離して処理される可能性を示唆する。
著者
松村 美代 戸部 隆雄 山田 晴彦 松村 美代
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

高濃度酸素負荷によりマウス網膜の視細胞が脱落し、網膜の菲薄化がみられる事がこれまでの実験により分かった。そこで我々はこの網膜視細胞の脱落がアポトーシスによるものである事を証明し、そしてどういう経路によりアポトーシスが引き起こされているのかを研究している。マウスを酸素濃度75%に調節したBOXにいれ、高濃度酸素に1週間から3週間暴露した。各時点において眼球を摘出し網膜のみを単離した。また眼球の凍結薄切切片を作成した。単離した網膜からDNAを抽出し免疫電気泳動を行うとDNAの断片化が明かとなった。また凍結薄切切片を用いてTUNEL染色を行うと高濃度酸素負荷により網膜外層にTUNEL陽性細胞が著明に増加しているのがみられた。これらのことから網膜視細胞が高濃度酸素によりアポトーシスに陥っている事が分かった。また種々のアポトーシス関連蛋白の発現をm-RNAを抽出してRT-PCRを施行し検討してみた。Caspase3のm-RNAは高濃度酸素負荷により増加し、Baxも増加を認めた。一方Bcl-2は高濃度酸素負荷1週で増加するが、2週で減少した。これら2つは拮抗する蛋白であるのでこれらが網膜視細胞のアポトーシスの制御に関わっていると考えられる。アポトーシス関連酵素のノックアウトマウスであるFas, FasLノックアウトマウスを用いて同様に高濃度酸素暴露し同様にTUNEL染色を施行した。Fas, Fas-Lのいずれのノックアウトマウスも暴露前はコントロールと同様でアポトーシスは抑制されなかったのでFas, Fas-Lはこのアポトーシスに直接関与していないことが考えられた。これらのことから視細胞のアポトーシスはcaspase dependentでBax, Bcl-2の経路が関与している事が考えられた。
著者
菅谷 泰行 川浦 孝之
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題は日本、ドイツ、オーストリア、スイスの主に介護付有料老人ホームに暮らす65歳以上の高齢者を対象にして、人生に関するライフストーリーインタビュー調査を実施し、そのインタビューを記録した音声データを文字に起こし、ライフストーリーコーパスを作成した。また、このコーパス化の作業と併行して、ナラティブに関する文献研究、コーパス化したインタビューデータを用いた「語り」におけるフィラーの使用に関する分析、高齢者の心的特徴の比較、デマテル法のストーリー研究への適用の可能性について検討した。
著者
山口 龍二 広田 喜一
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

デオキシグルコース(2DG)とABT-263(ABT)という二つの薬を体内に投与するとグルコース代謝が進んでいる細胞でストレスがかかり、さらにABTを投与すると相乗的相互作用が働き細胞死に誘導されます。体内でグルコースの代謝が進んでいるのは過剰な運動をしたときの筋肉細胞、脳細胞、そしてがん細胞ですが、ABTは脳・血管関門を通れないため通常細胞死に誘導されるのはがん細胞だけです。しかしこの治療の効率は腎癌で低いのでその理由を解明すると、腎癌ではAKTが異常に活性化し、細胞死を抑制していました。AKTをbeta-cyclodextrinで抑制すると2DG-ABTの効率が上がりました。
著者
狩谷 秀治 谷川 昇 中谷 幸 井上 理人 河野 由美子
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

(1)用手的ナノバブル生成器を用いて血栓化させた血管内にナノバブルを大量に発生させ、超音波を照射すると血栓溶解作用が促進された。(2)用手的ナノバブル生成器を発明し特許出願した。(3)用手的ナノバブル生成器を用いると小動物での実験にナノバブルを投与できることが証明された。今後マウス、ラット、ウサギの生体内でキャビテーションを生じさせることが可能である。(4)用手的ナノバブル生成器を用いると微量の液体で極めて高密度のナノバブルを供給することが可能である。これに超音波を照射することにより極めて高いキャビテーション効果を試験管やシャーレ内で発生させることができた。
著者
小早川 高
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

私たちは、マウスの鼻腔の特定の領域から開始する神経回路が匂いに対する先天的行動を制御することを解明した。この原理を応用し、極めて強力な先天的恐怖行動を誘発する人工匂い分子「チアゾリン類恐怖臭」を開発した。本研究では、これらの匂い分子を活用し、フォワードジェネティクススクリーニングで先天的な恐怖行動の誘発を担う遺伝子を探索しTrpa1遺伝子を同定した。Trpa1ノックアウトマウスやTrpa1標識マウスなどを用いて、三叉神経に発現するTRPA1はチアゾリン類恐怖臭を検知し、その情報が脳幹部の三叉神経脊椎路核へ伝達されることで、先天的な恐怖行動が誘導されることが明らかになった。
著者
小林 良樹 神田 晃
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は、喘息を高率に合併する難治性好酸球性気道炎症である。治療抵抗性の鼻ポリープや膠状分泌物(ムチン)の発育・蓄積が問題となり、QOL (生活の質)を著しく低下させている。好酸球性ムチンの正体は好酸球細胞外トラップであるが、その病態との関連性は明らかにされていない。細胞外の病原体を傷害する好中球細胞外トラップの形成メカニズムから好酸球性ムチンの制御へのヒントを得て、好酸球ペルオキシダーゼ(EPX)に着目した。好酸球性ムチン中にEPXに対する自己抗体の存在を証明し、その病態への関与を明らかにすること、さらにEPX抗体を標的にした新しい治療戦略の開発を目指す。
著者
葉山 杉夫 中務 真人
出版者
関西医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

二足起立姿勢をとらせたニホンザルに対するX線写真撮影の結果,猿まわしの調教をうけたサルの脊柱にはヒト的な特徴である腰椎前弯が発生していることが判明した。ニホンザルをはじめヒト以外のほとんどの霊長類の脊柱には胸腰部を通じ後弯しか存在しない。四肢性歩行者である彼らの胸腰椎は腹側に凸な曲げモーメントに耐える構造になっている。一方,調教ザルに認められた腰椎前弯の機能的意義は二足性起立時に,1)腰椎に発生する曲げモーメントを減少させる,2)体幹を起立させる固有背筋のテコ比を高め,効率的な筋活動を可能にする,3)体の重心を背側方向に移動させ,体重を支える後肢の負担を軽減させる,ことにあると考えられる。さらに,腰椎前弯の発達度と,調教期間,調教方法との関係について検討した。一般に,調教期間が長いサル(3年以上)は,短いサル(約1年未満)よりも顕著な弯曲を示す。また前者では,四肢性姿勢時でも腰椎前弯が認められるが,後者では弯曲は失われ通常のニホンザルに近い状態を示す。しかしながら,調教期間の長い個体群についてみると,調教期間が必ずしも前弯度と相関をしていない。腰椎前弯の発達の程度には第一に調教期間,第二に個体が潜在的に持っている能力の程度が関係していると考えられる。三番目の要因として,二足歩行のための調教方法の違いが示された。調教の初期段階で二足起立姿勢を維持する訓練を受けたサルは,始めから立って歩く訓練を受けたサルに比べ,同程度の調教期間の経過後,より顕著な脊柱の代償性弯曲を示す。
著者
西野 義輔
出版者
関西医科大学
巻号頁・発行日
1978

博士論文
著者
川村 文彦
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

味覚の再生医療を目指す。舌上皮に点在する味蕾には、味覚を司る味細胞の幹細胞が存在すると言われていた。しかしながら我々が行った細胞系譜追跡法によって、味蕾には前駆細胞しかなく、舌上皮の乳頭間窩(Interpapillary pit; IPP)に味幹細胞が存在することが判明した。先行研究において樹立したIPP由来味蕾オルガノイドと、マウスES細胞より内胚葉系に分化誘導した細胞とを共培養したところ、世界で初めて3種の味細胞マーカーを発現する細胞塊を確認した。本研究では、この味細胞分化誘導法の確立を目指し、さらにヒトiPS細胞に応用することを目的とする。将来的には味覚障害患者の再生医療を目指す。
著者
甲田 勝康 河野 比良夫 中村 晴信 奥田 豊子
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

「適応能」は生理人類学の中心的概念の一つである。ヒトはその歴史のほとんどを自然環境の中で過ごし、その環境に適応してきた。その結果、様々な生理的多型性が生まれヒトは全世界に分布した。諸民族の問にエネルギー代謝の違いがあることが報告されている。動物性タンパクや脂肪摂取の多いイヌイットは高い代謝水準によって寒さを凌ぎ、食糧事情の悪いアンデス高地の住民は代謝増大をできるだけ抑え断熱型の反応をする。しかし、このような相違が遺伝的要因により決定されるものなのか、もしくは短期的な機能馴化によるものなのかは十分には解明されていない。今回我々は、短期的な絶食および食事制限がエネルギー代謝や他の生理機能にどのような影響をおよぼすかについて検討し、ヒトの環境適応の過程にについて考察した。労働者の健康増進を目的として、軽度肥満者や軽度高脂血症者または健常者に餌や運動指導を行っている企業がある。本研究は、この企業の健康増進活動に参加したものを対象として行われた。対象者を中等度摂取エネルギー制限群および軽度摂取エネルギー制限群の二群に分け、摂取エネルギー以外の健康指導は両群とも同じとした。呼吸商は、エネルギー制限により低下し、エネルギー源が経口の炭水化物から体脂肪に移行していることが示唆された。基礎代謝量も減少し、その程度は中等度制限群において軽度制限群より大きかった。また、この基礎代謝の変化は体重の変化よりも大きかった。このことからエネルギー制限により、基礎代謝は敏速に減少することが確認された。さらに動物を用いた実験系で検証した。その結果、短期の絶食により代謝系を含む生理機能が変化することが観察された。この研究成果は、国内および国際学会で報告し、国内および国際誌上に発表した。以上のごとく、本研究は目的を達成することができた。
著者
浜田 吉則 海堀 昌樹
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成23年度の実施計画では、まず最初にIschemic preconditioning (IPC)施行ラット同系異所性小腸移植モデルの作製を行うことであったが、移植モデルの作成ができない状況になったため、腸管のIschemic preconditioning(IPC) として、上腸間膜動脈の第1分枝を10分クランプしたあと30分再灌流した腸管の作成実験を施行した。また適切なEGF投与のタイミング、投与経路などについて種々の条件設定を試みたが再現可能なデータはまだ得られていない。
著者
松村 美代 南部 裕之 安藤 彰
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

培養ブタ虹彩上皮細胞に1μMのprostamideとPGF2αを含む緩衝液を還流して連続的に作用させ、蛍光顕微鏡アクアコスモスを用いてカルシウムイメージングを行った。同一視野の中で反応する細胞をカウントして細胞内カルシウムの上昇度を計測したところ、ほとんど全ての細胞で反応が見られなかった。同様に隅角線維柱帯、毛様体の組織培養から得られた隅角線維柱帯細胞、毛様体上皮細胞におけるカルシウムイメージングを行ったが陽性反応は見られなかった。このことから1μMのprostamideとPGF2αではブタ培養虹彩上皮細胞、隅角線維柱帯細胞、毛様体上皮細胞において細胞内情報伝達のトリガーである細胞内カルシウム濃度を上昇させるような生理活性がない可能性が示唆された。同様の実験を当院眼科で緑内障に対する線維柱帯切除術を行う際に同意を得た患者から得られた線維柱帯細胞を用いて行い、ブタとヒトの種差の有無を検討した。結果はブタ線維柱帯細胞と同じく1μMのprostamideとPGF2αを作用させたところほとんど全ての細胞で反応が見られなかった。これらの結果から当該実験系ではブタ線維柱帯細胞とヒト線維柱帯細胞では種による差がないものと考えられた。同様に培養ヒト隅角線維柱帯細胞における各種プロスタグランジン誘導体に対する細胞内カルシウムの上昇は見られず、ブタおよびヒト隅角線維柱帯細胞に対してプロスタグランジンは少なくとも細胞内カルシウム濃度の上昇を引き金とした細胞内シグナル伝達を引き起こさない可能性が示された。今回の実験で用いた培養細胞はブタ、ヒトともに初代培養系であったため継代を重ねると細胞分裂の限界が訪れた。このように老化に陥った線維柱帯細胞について老化のマーカーであるテロメアの短縮とガラクトシダーゼ活性の変化を検討したところ培養線維柱帯細胞も細胞老化の特徴を示し、アクアポリン1などの遺伝子発現も変化することが明らかになった。この線維柱帯細胞の細胞老化の現象についてはBritish Journal of Ophthalmology誌に公表した。
著者
廣瀬 卓治 中尾 慎一
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ケタミンなどの非競合性NMDA受容体拮抗薬は、神経細胞保護作用がある一方で、精神異常誘発作用を有し、脳後帯状・後板状皮質:PC/RS)の神経細胞傷害を引き起こす。一方、バルビツレートにも精神作用があるが、ケタミンの精神作用を抑制し、NMDA受容体拮抗薬によるPC/RSの神経細胞傷害を抑制する。精神異常作用や分裂病の病因としては、ドパミン系の機能亢進がその本体と考えられていている。本研究の目的は、多くの薬物の精神作用や分裂病の責任部位と考えられている脳側坐核ドパミン放出に対するケタミンの作用と、これに対するペントバルビタ-ルの効果を調べること、さらに、ケタミンによるPC/RS(もう一つの薬物の精神作用や分裂病の責任部位と考えられている。)への作用にドパミン系が関与しているかどうか、を調べることである。ケタミンは、濃度依存性に側坐核ドパミン放出を増加させた。最大増加はケタミン投与20-60分後であり、ラットの行動変化と一致していた。ペントバルビタールは側坐核ドパミン放出を抑制し、さらにケタミンによるドパミン放出の増加を抑制した。以上の結果より、ケタミンによる幻覚や妄想などの精神異常誘発作用や神経細胞傷害作用の一因として、中脳辺縁系ドパミン系の活性化が考えられた。一方、ケタミンの精神異常誘発作用や神経細胞傷害作用を反映するPC/RSでのc-Fos発現は、NMDA受容体ノックアウトマウスでは有意に低下すること、ドパミン受容体やシグマ受容体に働く抗精神病薬ハロペリドールでは抑制されないが、他の抗精神病薬リムカゾールでは抑制されることを証明した。この結果は、ケタミンの上記作用には、実際にNMDA受容体の関与があること、ドパミン系やシグマ受容体の関与も有ることを示唆している。
著者
澤田 俊輔
出版者
関西医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

口腔内感染症である慢性歯周炎は、罹患率の高さから国民を悩ます口腔疾患である。重度の慢性歯周炎では骨吸収により抜歯を余儀なくされるケースも少なくない。炎症を効率的に抑制するとともに、歯槽骨再生を積極的に促す新規治療法の確立は重要な課題となっている。我々は複数の炎症性サイトカインの抑制作用を持つ融合タンパク質発現ベクターを構築した。また、抗炎症作用だけでなく、組織修復能の観点から、in vivo実験に有効な骨分化能に優れたGFPマウス骨髄由来間葉系幹細胞株を樹立した。より効果的な抗炎症作用を有し、組織修復能に長ける幹細胞を用いた新たな治療法開発の基盤となることが予想される。
著者
田中 孝也
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的はin vitro,in vivoの実験系を用いて,TNF-a,TNF-a+actinomycin D,LPSなどにて誘導されるapoptosisがFAS/CD95系を介さないで発生する可能性、apoptosis発生にNOがどの程度関与しているのか、その際、poly(ADP-ribose)polymeraseはいかなる動態を示すのか、などである。本研究のin vitroにおいて、TNF-a+actinomycin Dにより誘導されるapoptosis発生はNO誘導物質であるSNAPにより、mitochondria呼吸鎖で産生されるROI発生の抑制を介して抑制された。このapoptosis抑制はNOによる直接的なROIのscavenge作用ではなく、cytochrome oxidase 活性の抑制によると考えられた。TNF-a+actinomycin D投与後のdihydrorhodamine123やhydroethidineの酸化がNOにより抑制される機序に関してはNOが直接的にTNF-a+actinomycin Dにより産生されたROIと結合してROIを中和する、NOが酸素と競合することによりcytochrome oxidaseによる呼吸を抑制するなどが考えられた。しかも、ONOO^-の障害作用が何らかの形で抑制されたことが考えられるが、その作用機序に関しては不明である。いずれにしても、NOがmitochondriaにおける呼吸鎖のcomplexI,II,IIIの抑制を制御したことから、NOによるapoptosis発生の抑制がmitochondriaにおける呼吸鎖でのROI抑制によると推察できる。In vivoにおいても、LPS誘発apoptosisを確認した。DNA fragmentationは肝細胞死の数時間前にALTの上昇と同じように出現したことから、LPSによる肝障害の初期はapoptosisが主体である可能性が考えられる。Fas/CD95は正常の肝細胞でも誘導され、apoptosis発生の必要性に応じてapoptosisを誘導することが知られている。しかし本研究において、Fas/CD95の誘導とは無関係にapoptosisが発生した。本研究においてTNF-a,LPSにてmitochondria内膜障害、NAD^1の減少、ATP減少などに続くpoly(ADP-ribose)polymerase活性の賦活などを認めた。NOの障害性に関して、peroxynitriteはDNAの断片化、poly(ADP-ribose)polymerase活性化を促進し、細胞内エネルギー量の低下をもたらすが、NO自体にはその作用が極めて低いと考えられている。DNAはあらゆる障害物質にてたやすく傷害され、poly(ADP-ribose)polymeraseが活性化される。poly(AP-ribose)polymeraseの活性化は細胞内エネルギーを消費し、NAD^+の低下などが発生するため、その程度が高じると細胞障害を増長すると考えれる。
著者
米虫 敦 谷川 昇 澤田 敏 狩谷 秀治 野村 基雄 鎌田 実 中谷 幸 吉田 理絵
出版者
関西医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

経皮的椎体形成術後に放射線治療を施行を可能とするための基礎データを得ることが本研究の目的である。本研究により、骨セメントが放射線治療時の線量分布に与える影響を明らかにした。この結果を基にして、椎体転移による激しい疼痛の集学的治療として経皮的椎体形成術と放射線治療の併用療法が可能となり、疼痛緩和治療のイノベーションが創出される。本研究結果は、Radiology Research and Practice誌に公表した。