著者
IKEDA Gakuro TOMIZAWA Akiko IMAYOSHI Yuriko IWABUCHI Hisakatu HINATA Tomoyuki SAGARA Yasuyuki
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food science and technology research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.261-269, 2006-11-01
参考文献数
28
被引用文献数
9 18

Instrumental and sensory analyses were carried out on sesame-flavored dressings to identify the odorants affecting their perceived quality. The sampling of the odor-active compounds was performed by simultaneous steam distillation extraction (SDE) and solid-phase microextraction (SPME). The odor intensity and character of the compounds were evaluated and quantified using gas chromatography/olfactometry (GC/O). The GC/O and the sensory data were processed and analyzed on the basis of food <I>kansei </I>model. Seven perceptual factors affecting the aroma and flavor were abstracted by principal component analysis (PCA) of the sensory data. According to the percentage of contribution, the first perceptual factor of "roast and spicy" was identified as a key factor. The correlations between the odorants and the "roast and spicy" factor clarified the importance of sulfurous compounds. Four sulfurous compounds were identified as butanethiol, prenyl mercaptane, 2-methyl-3-furanthiol and dimethyl trisulfide.
著者
多田 靖次 中山 大樹
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
農産加工技術研究會誌 (ISSN:03695174)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.132-134, 1954

四面環海のわが国に於いて魚介類は最も豊富且廉価な動物性蛋白資源であるが,水分含有量高く,腐敗し易く,一且腐敗すれば鼻持ちならぬ腥臭を帯びる為に利用の途が狭く,そのまゝ蒸煮,乾燥して魚粉とする以外,廃棄物の飼料化は全く行われて居ない現状にある。<BR>一方魚介類の醗酵貯蔵に関しては東南アジア方面には種々の方法があり,わが国にも塩辛,ショッツル等があるが,いずれも多量の食塩を添加するものであるから飼料目的には全く不向きである。然るに植物性飼料にはエンシレージ,甘藷摺込貯蔵等の食塩を用いない醗酵貯蔵法があり,動物蛋白資源でも適当に糖分を補充すれば食塩を加えずとも醗酵貯蔵が出来そうなものである。<BR>事実デンマークに於いては魚のアラを生のまゝ摺潰し,糖蜜と乳酸菌培養物とを加えて数日間醗酵させる方法が実用化され,特許権を保有して居る。<BR>筆者等は冨士デベロプメント株式会社の要請に基づいてデンマークの方法を追試して良好な結果を得たので,蛋白原料,添加糖質,種菌等について広く一般化を試み,動物蛋白資源の醗酵処理に関して大いに期待を深めるに至つた。今回は紙面の都合上,その中の魚介類廃棄物飼料化に関する実験結果の一端を報告して大方の御参考に供する次第である。尚本件に関しては当教室に於いて特許を数件出願中である。

1 0 0 0 OA 生卵の熱分析

著者
小澤 康弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.813-820, 1986-12-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
24
被引用文献数
1

試料測温部を工夫した示差熱分析装置を用いて,生卵を熱分析した.(1) 卵黄部は,比較物質として加熱凝固卵黄を用いた場合,81℃に中心をもつ単一吸熱スペクトルを示した.(2) 濃厚卵白部,水様卵白部は共通して,65℃に中心をもつ第1吸収と,79℃に中心をもつ第2吸収とが観測された.(3) 水様部では,第1吸収と共に比熱が変化し,かつ60℃以下で,13%グリセリン水溶液と熱的に等価であり,かつ,オボアルブミン水溶液と熱的に類似した.(4) 濃厚部では,比熱変化は起らず,60℃以下で加熱凝固卵白と熱的に一致した.又,食塩を加えると水様化し,そのサーモグラムは水様部のそれに類似した.(5) 以上により,水様部の比熱変化は二次相転移によるものであり,かつ,水様部は濃厚部の相が変化したものであると考えられる.(6) 他に,s-ovalbmin化,溶媒和効果,水和効果,結合水の相転移の可能性,卵白の構造等について論じた.(7) 以上の考察により,濃厚部は準固相の状態にあり,相転移はオボアルブミンを中心としたタンパク質によって起る,と結論した.
著者
山下 民治
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.883-890, 1991-10-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

市販大豆たん白あるいは小麦グルテンを添加したかまぼこについて,それが,かまぼこの物性に及ぼす影響について加熱条件や添加量,水分量,坐り条件を種々変えて検討を行い,次の結果が得られた.(1) 大豆たん白添加かまぼこは60℃,小麦グルテン添加かまぼこは80℃以上の加熱温度で硬いゲルを生じた.(2) 植物性たん白を添加したかまぼこを,90℃で加熱し続けたときに起こるゼリー強度低下や軟らかさおよび圧出水分率の増加は,小麦グルテン添加区は大豆たん白添加区よりも幾分大きかった.(3) かまぼこの水分量が一定で,植物性たん白の添加量が0~10%の間では,ゼリー強度は添加量が多い程,小さくなった.圧出水分率は,大豆たん白添加区は添加量が多い程小さくなったが,小麦グルテン添加区では逆であった.(4) かまぼこの植物性たん白量が一定で,水分量が68.8~79.0%の間では,水分量が多い程,ゼリー強度は小さく,軟らかさや圧出水分率は大きくなった.また,これらの物性の相違は,小麦グルテン添加区は大豆たん白添加区よりも大きかった.(5) 坐りによるかまぼこの弾力増強効果は,植物性たん白添加かまぼこは無添加かまぼこに比べて小さかった.(6) 植物性たん白のかまぼこの弾力補強効果には,大豆たん白の場合は3%塩化ナトリウム溶液不溶性画分が,また,小麦グルテンの場合は加熱で生じるゲルのゼリー強度が影響しているものと考えられた.
著者
Kenji FUKUMOTO Yasuyuki TSUKAMASA Masaru ASAI Yoshiyuki TOHMA Yoshiaki AKAHANE Kyoden YASUMOTO
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.208-213, 1989-03-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

豚肉を塩漬し,加熱処理した後の塩漬風味の変化と塩漬温度・時間の関係及び塩漬風味形成に対する亜硝酸塩の必要性について通常処理肉と無菌化処理肉を用いて調べた. 通常処理肉に亜硝酸塩を添加し, 15℃で塩漬すると短時間で塩漬風味が形成された.一方,亜硝酸塩無添加系では風味は悪く, pHも大きく低下した.残存亜硝酸根量は塩漬温度が高いほど速く減少した.無菌化処理肉に亜硝酸塩を含む塩漬剤を添加するのみで塩漬風味を形成させることができた.このことから,塩漬風味の形成に亜硝酸塩が直接関与していることが示唆された.
著者
Takashi OKAZAKI Kanichi SUZUKI Shizuhiko MAESHIGE Kiyoshi KUBOTA
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.784-788, 1991-09-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 4

ジャガイモの蒸煮中における硬さの変化を,85℃~105℃の温度範囲で測定し,速度論的解析を行った.(1) 1個のジャガイモの中央部に近い柔組織を試料にすることによって,安定した硬さの試料を得ることができた.(2) 加熱初期の昇温中にジャガイモの硬化現象が観察されたが,比較的高い蒸煮温度(95℃~105℃)において顕著であった.(3) ジャガイモの軟化は,機構の異なる2段階より成っていた.それぞれを軟化の前期と後期として軟化速度を擬一次反応に近似して解析したところ,それぞれEa=171kJ・mol-1およびEa=123kJ・mol-1となった.また,硬さが初期値の約1/10になったところで後期の軟化が始まった.(4) 後期の軟化開始時間と処理温度との間に次の関係が成立した.log t=8.85-6.33×10-2・T (tは後期の軟化開始時間(s), Tは蒸煮温度(℃))この式から計算される100℃の後期の軟化開始時間は330sとなり,文献の最適蒸煮時間に近い値であった.
著者
SACHIYO NAGASO KOICHI YOSHIKAWA
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.196-201, 1978-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12

はたけしめじの液体振とう培養条件に関する基礎的な実験を行なった。すなわち,培地の初発pH,培養温度及び振とう条件を変化させて14日間培養し,増殖菌糸体の形状の観察,培地の最終pHの測定,増殖菌体量及び菌体中の粗蛋白質を定量し本菌糸体への影響について検討した。その結果,培地の初発pH及び培養温度の変化により,本菌糸体の生育量,増殖菌糸体の形状及び含有蛋白質量などにかなりの相違が認められた。増殖菌糸の形状は,pHの低い培地ほど小さなペレットを形成し,しかも,繊維状に発育しやすい傾向がみられた。培養温度25℃,培地の初発pH5.0の場合に最良の増殖を示した。培地液量と振とう数を変える事により,Kdの変化と本菌糸体の増殖状態を検討した結果は,生育量,増殖菌糸体の形状及び含有蛋白質量に若干の相違が認められた。増殖菌糸の形状はKdが大きいほどペレットが小さくなり,特に振とう数120回/分では繊維状に発育しやすい傾向を示した。振とう数100回/分の場合が最も増殖良好であった。含有蛋白質量は,20℃培養の場合が若干低い値を示したが,いずれも約30~40%の高率を示した。
著者
Jou-Hsuan Ho Yi-Ning Yeh Hui-Wen Wang Sok Kean Khoo Yieng-How Chen Chi-Fa Chow
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.337-343, 2014 (Released:2014-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
20

Industrial wastewater containing heavy metals can become a serious environmental pollutant if not treated appropriately. Conventional treatment to remove toxic heavy metals can be expensive and may generate large amounts of toxic sludge. Regenerated natural wastes such as eggshells and eggshell membrane which are easily available, inexpensive, biodegradable, and have high adsorbability, can act as promising ‘green’ alternatives to remove heavy metal pollutants from wastewater. Here, we studied the adsorption capacity of eggshells with membrane (ESWM), eggshell membrane (ESM), and eggshells (ES) for the removal of nickel and silver ions in synthetic wastewater. Reaction time (1 to 72 h), metal ion concentration (25 to 200 mg/L), adsorbent dosage (0.1 to 0.8 g/20 mL), temperature (15°C to 45°C), and pH (1 to 9) were evaluated. Post-treatment nickel and silver concentrations were later analyzed using a spectrophotometer. Our results indicated increased removal of nickel and silver ions with increased adsorbent (all three ESWM, ESM, and ES) dosage, whereas the removal of nickel and silver ion decreased with increasing initial metal concentration. Among ESWM, ESM, and ES, ESM has the highest removal capacity and was the best adsorbent. The 0.8 g of ESM could remove 90.91% of nickel ions (100 mg/L) at 25°C, pH 5.76 and 24 h. On the other hand, approximately 100% of silver ions (25 mg/L) could be removed by 0.2 g of ESM at 25°C, pH 5.2, and 24 h. There was no difference in the adsorbability of ES and ESWM on nickel and silver ions. In summary, all three adsorbents, ESWM, ES, and ESM, can remove heavy metal ions from aqueous solution, with ESM having the highest efficiency. Hence, eggshell and its derivatives can be promising ‘green’ adsorbent materials for treating wastewater containing nickel and silver ions.
著者
Tatsuyuki SUGAHARA Hideo KAWAI Mutsuko MATSUZAWA Satoko FUJISHIRO Yasuo AOYAGI Yutaro HOSOGAI
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.540-546, 1990-07-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
15
被引用文献数
3 5

土に発生する野生食用キノコ48種56点と栽培キノコ1種1点について, K, Na, Ca, Mg, P, Fe, Cu, Zn, Cd, Pb, AsおよびHgの13種元素の含有量を測定した.これらのキノコは主に関東地方,中部地方,東北地方において, 1979~1986年に採取または購入したものである.無機質の含有量は乾燥量基準値換算で以下に示す範囲であった. K: 1.1~5.4%, Na: 15~170mg/100g,Ca: 2~89mg/100g, Mg: 8~161mg/100g, P: 165~2028mg/100g, Fe: 3.4~547.0mg/100g, Cu: 0.1~41.6mg/100g, Zn: 0.7~20.8mg/100g, Mn: 0.4~13.3mg/100g, Cd: 検出限度以下~86.05ppm,Pb: 検出限度以下~20.26ppm, As: 検出限度以下~93.25ppm, Hg: 検出限度以下~6.67ppm.キノコの種の違いによって無機質量に差がみられた.同種間ではいくつかの特徴が認められた.
著者
Hideo KAWAI Tatsuyuki SUGAHARA Mutsuko MATSUZAWA Kayoko SUMIYASHIKI Yasuo AOYAGI Yutaro HOSOGAI
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.250-255, 1986-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
18
被引用文献数
8 12

野生食用キノコ24種27点と栽培種5種6点について,K, Na, Ca, Mg, P, Fe, Cu, Zn, Mn, Cd, Pb, ASおよびHgの13種元素の含有量を測定した.これらのキノコは主に東京,東北地方,中部地方において,1979年および1980年に採取または購入したものである.元素の含有量は乾燥重量当たりで以下にご示す範囲であった.K: 1.1~5.3%, Na: 11~267mg/100g, Ca: 5~342mg/100g, Mg: 59~299mg/100g, P: 59~1938mg/100g, Fe: 4.9~419.4mg/100g, Cu: 0.2~23.2mg/100g, Zn: 0.4~16.3mg/100g, Mn: 0.8~10.2mg/100g, Cd:0.0~38.8ppm, Pb: 0.0~17.1ppm, AS:0.0~18.0ppm, Hg: 0.0~6.3ppm.キノコの種の違いによって無機質含有量に著しい差がみられた.同種間では無機質量にいくつかの特徴が認められた.
著者
Hideo KAWAI Tatsuyuki SUGAHARA Satoko FUJISHIRO Mutsuko MATSUZAWA Yasuo AOYAGI Yutaro HOSOGAI
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.468-473, 1990-06-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
7
被引用文献数
6 9

木に発生する野生食用キノコ13種17点と栽培種4種6点についてK, Na, Ca, Mg, P, Fe, Cu, Zn, Mn,Cd, Pb, AsおよびHgの13種元素の含有量を測定した.これらのキノコは主に中部地方および東北地方で,1979年から1986年に採取または購入したものである. 無機質の含有量は乾燥量基準値換算で以下に示す範囲であった. K: 0.2~6.8%, Na: 8~206mg/100g,g, Mg: 20~168mg/100g, P28~1370mg/100g, Fe: 1.1~68.6mg/100g, CuO.1~4.Omg/100g, Zn: 0.2~8.1mg/100g, MnO.4~3.9mg/100g, Cd: BDL (検出限度以下)~4.64ppm, Pb: BDL~5.44ppm, As: BDL~0.27ppm, Hg: BDL~1.21ppm. 同科,同属,同種間では無機質量にいくつかの特徴が認められた.タコウキン科は全体と比較するとFeを除き低値であった.ナラタケ属の無機質は高含有量であり,CaとFe以外は差がなかった.ナラタケとマスタケは各種無機質量がCa以外は同量であった.土に発生するキノコは木に発生するキノコに比べCu,Zn, MnおよびHgが有意に高値(p〈0.01)であった.キシメジ科において,木に発生するキノコは土に発生するキノコと比較してMgは高値, Hgは低値(p〈0.05)であった.
著者
津志田 藤二郎 鈴木 雅弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.642-649, 1996-05-15
参考文献数
22
被引用文献数
6 54

北海道産の黄色タマネギ,赤色タマネギ及び白色タマネギのフラボノール含量を測定したところ,生鮮重当たり黄色タマネギではケルセチン-3, 4'-ジグルコシドが16.8mg/100g,ケルセチン-4'-グルコシドが18.5mg/100g,セルセチン-3-グルコシドが0.8g/100g,イソラムネチン-4'-グルコシドが2.9mg/100g存在していた.赤色タマネギでは黄色タマネギに比べて3倍量のフラボノール配糖体が検出されたが,白色タマネギには検出されなかった.また,フラボノール配糖体は外側の鱗茎に多く存在した.<BR>一方,フラボノール配糖体の代謝に関与する酵素としては,2種のフラボノールグルコシダーゼと2種のUDP-グルコース:フラボノールグルコース転移酵素が検出された.これらはそれぞれ至適pHが異なり,3-β-グルコシダーゼでは4.5, 4'-β-グルコシダーゼでは7.0であり,3-β-グルコース転移酵素では6.0, 4'-β-グルコース転移酵素では8.0であった.使用した全ての品種において,ケルセチン-4'-β-グルコース転移酵素の活性が4'-β-グルコシダーゼの活性に勝っていることから,ケルセチン-4'-β-グルコシドは蓄積される方向にあることが分かった.一方,ケルセチンの3位においては逆にグルコース転移酵素がグルコシダーゼの活性より弱いため,ケルセチン-3-β-グルコシドは蓄積しにくいことが分かった.<BR>また,ケルセチンの3位に糖が結合したフラボノール配糖体には4'-β-グルコース転移酵素が作用できないため,タマネギのケルセチン-3, 4'-ジグルコシドは,ケルセチン-4'-β-グルコシドに糖転移が起こることにより合成されることが推定できた.
著者
中田 哲也
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.307-308, 2009-05-15
被引用文献数
1

フード・マイレージとは,イギリスのNGOによるフードマイルズ運動(なるべく身近でとれた食料を消費することによって食料輸送に伴う環境負荷を低減させていこうという市民運動)の考え方を参考に,農林水産省農林水産政策研究所において開発された指標である.その計算方法は,食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせ累積するという単純なもので,例えば10トンの食料を50km輸送する場合のフード・マイレージは10×50=500t・km(トン・キロメートル)となる.また,これに二酸化炭素排出係数(1tの貨物を1km輸送した場合に排出される二酸化炭素の量)を乗ずることにより,食料の輸送に伴う環境負荷の大きさを定量的に把握することが可能となる.<BR>農林水産政策研究所では,2001年に日本を含む主要国の輸入食料のフード・マイレージを初めて試算した.その後,2003年に計測方法を改善した上での計測結果によると,2001年におけるわが国の食料輸入総量は約5800万トンで,これに輸送距離を乗じ累積した輸入食料のフード・マイレージの総量は約9千億t・kmとなる(図1).これは,韓国・アメリカの約3倍,イギリス・ドイツの約5倍,フランスの約9倍と際立って大きい.品目別にみると,食生活の変化により輸入が急増した飼料穀物(とうもろこし等)や油糧種子(大豆,菜種等)が大きな部分を占めていることが分かる.<BR>そして,このフード・マイレージに輸送手段毎の二酸化炭素排出係数を乗ずると,輸入食料がわが国の港に到着するまでに排出される二酸化炭素の量は約17百万トンと試算され,これは,国内における食料輸送(輸入品の国内輸送分を含む.)に伴う排出量の約2倍に相当する.<BR>地球環境にかける負荷が小さな食生活を送るためには,なるべく近くでとれた食料を消費すること,つまり「地産地消」が重要である.近年,多くの地域で地産地消の取組が盛んとなっている.これらは新鮮で安心感のある食品の入手,現金収入の確保など消費者,生産者双方のニーズを反映したものであるが,フード・マイレージの考え方を応用すると,輸送に伴う環境負荷を低減させるという面でも有意義と言える.<BR>例えば同じ献立でも,伝統野菜など地元産食材を使った場合の食材の輸送に伴う二酸化炭素排出量は,市場で国産食材を調達した場合と比べ約17分の1,市場で輸入食材も含めて調達した場合と比べ約47分の1に縮小されるとの試算もある.<BR>ただし,輸送に伴う環境負荷は輸送手段による差が大きいこと(例えば鉄道はトラックの約10分の1)そもそもフード・マイレージは輸送段階のみに着目した指標であることに留意が必要である.このことから,フード・マイレージは食料の環境負荷を示す指標としてはカーボン・フットプリントに比べ限界があり,慎重に取り扱う必要があるといえる.ただ,食材の使用量と産地(輸送距離)さえ判れば誰でも簡単に計算でき,かつ,なるべく身近な場所でとれたものをといった実践にも結びつけやすいことから,自分の身近な食生活が地球環境問題と関わっていることに気づくツールとしては有効であり,さらに旬産旬消,なるべく食べ残しはしないといった食行動につながっていくことが期待される.
著者
NAWAZ Haq SHAD Muhammad Aslam BATOOL Zara
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.1133-1140, 2013
被引用文献数
8

Grains of six varieties of maize (<i>Zea mays</i> L.) including Sahiwal-2002, Sadaf, EV-1098, EV-6098, FH-793 and Pak-Afgoyee, being cultivated in Pakistan, were analysed for their biochemical, phytochemical and antioxidant composition. Statistically significant differences (<i>p</i> < 0.05) in these contents were observed among the varieties. FH-793 was found to be high in salt soluble proteins, tannins and saponins. Sahiwal-2000 and EV-1098 exhibited comparatively higher levels of sugars, crude oil, flavonoids, phenolic acids, antioxidants, 2, 2-Diphenyl 1-picryl hydrazyl radical scavenging activity and reducing power; therefore these two varieties should attract the attention of the nutritionists.
著者
伊井 直記 前田 忠男 土岐 良一 藤山 勝二 浅居 良輝
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.1093-1097, 1992

カルボン酸分析計を用いて食品中のNANAを簡便で他の成分の妨害を受けることなく,迅速でかつ精度の高いNANA定量法を検討し,以下の結果を得た.<BR>(1) カルボン酸分析計用試験溶液の調製は次の通り調製した.液体試料はそのまま,あるいは水で希釈して一定量に定容した.固体試料の内粉末試料は1gを精秤し,水で50mlに定容した.他の固体試料は10gを精秤し,水を50ml加えてホモブレンダーにかけ100mlに定容し, No.5Cのろ紙でろ過した.この溶液9mlをネジロ試験管にとり1N硫酸1mlを加え, 80℃で45分間加水分解を行った後,冷却し, 0.45μmのメンブランフィルターを用いてろ過を行い,カルボン酸用試験溶液とした.<BR>(2) 乳児用調製粉乳を試料として本法の繰り返し精度を確認した結果, 10回の繰り返しにおける変動係数は1.61%と良好であった.<BR>(3) 乳児用調製粉乳1g当たりNANAを2mg添加し,本法による回収率を求めた結果, 99.8%と良好であった.<BR>(4) 本法は,前処理として加水分解とろ過操作のみで試験溶液が調製でき,また,強塩基性陰イオン交換樹脂カラムを用いることで妨害となる成分からの分離ができた.<BR>(5) 食品中のNANAを簡便で迅速かつ精度良く定量する方法を確立した.
著者
Masaaki YASUDA
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.403-409, 1990-05-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
28
被引用文献数
6 13
著者
原川 守 辻 政雄 小宮山 美弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.412-417, 1981-08-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
17

製あん工程中のシアン配糖体の挙動を調査する目的で,パター豆より抽出したシアン配糖体分解酵素と試料より抽出したシアン配糖体との反応により配糖体の定量を検討した。また数種の市販酵素と鉱酸を用いてシアン配糖体の安定性を調べた。(1) 豆から調製した粗酵素液によるシアン配糖体の定量的加水分解条件はpH 5.6, 50℃, 1.5時間が最適で,この時のシアン配糖体の回収率は89.1%であった。(2) 浸漬工程においては,原料豆に含まれる50%以上のシアン配糖体が未分解であり,そのほとんどは浸漬豆に存在した。(3) シアン配種体は各種グルコシダーゼや鉱酸では分解しにくく,豆より抽出した分解酵素以外の方法ではかなり安定であった。