著者
石山 由香里 加藤 清司 松崎 重之
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.324-327, 1997-06-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
12

33歳,妊娠27週に発症した急性妊娠性脂肪肝の妊婦の帝王切開の麻酔管理を経験した.著明な凝固障害と出血傾向を合併していたため,全身麻酔のみで管理した.診療上,輸血は不可避であったが,患者は「エホバの証人」だったため,最初は手術そのものを拒否していた.患者の全身状態と手術,輸血の必要性を十分説明し,「最大限の努力をしたうえで,最小限の輸血にしてほしい」という了解を得たうえで輸血を行ない,救命しえたが,患者の希望を尊重した結果,輸血開始時期の判断に苦慮した.
著者
石部 裕一 有光 正史 宇野 洋史 辻村 謙二 福喜多 邦夫 塩川 泰啓 末包 慶太
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.142-146, 1993-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
4

小児に対する前投薬として,ミダゾラム注腸投与の効果を,1~6歳の小児109例を対象とし,投与時間(導入30分前と60分前),投与量(0.2mg/kgと0.4mg/kg)および年齢(1~3歳と4~6歳)に分けて検討した.鎮静スコア1(導入時にマスクを嫌がるもの)を無効,スコア2~4を有効,スコア5を過剰鎮静として評価すると,30分前投与群で,投与量に関係なく,年長児の有効率(92~100%)は年少児(54~58%)に比較して有意に高く,この傾向は投与時間を導入60分前にしても同様であった.以上の結果からミダゾラム0.2~0.4mg/kgの30~60分前注腸投与法は,年少児での有効性は十分でないが,4~6歳の就学前児童の前投薬としては有用な方法と思われた.
著者
高橋 進一郎 高地 哲夫 石橋 史子 富永 静子 坂下 美彦 長谷川 里砂
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.755-758, 1998-12-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
6

純酸素吸入は,より低濃度の酸素吸入時に比べ吸収性無気肺を起こしやすいことが実験的に示されている.そこで,麻酔導入時と抜管時の純酸素吸入が,臨床的に問題となる術後の酸素化障害や,無気肺を引き起こしているか否か検討を行なった.幽門側胃切除を予定された呼吸器合併症のない21例を対象とし,麻酔導入時と抜管時の各10分間,純酸素吸入を行なう群と40%酸素吸入を行なう群に分けて,術中から術後24時間までの動脈血酸素分圧,術直後と術後第1日の胸部X線写真を比較した.その結果,両群間で有意な差を認めず,麻酔導入,抜管時の吸入酸素濃度の差は術後の酸素化障害および無気肺の発生に寄与していなかった.
著者
堺 登志子 葛川 顕子 吉川 清 岸 義彦 桑木 知朗 市川 隆徳
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.365-369, 1996-05-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

手術侵襲による免疫能の変化として末梢血中の好中球数の増加が認められる.好中球数や機能に対し大きな役割をもつ内因性顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を,新たに開発された高感度ELISA法によって測定した.吸入麻酔開始ではG-CSF値は測定限界をほとんど超えることなく,皮切後3時間目から上昇し,6時間目でピークを迎えて後に下降した.好中球数は皮切3時間目には上昇し,翌日まで同等の値を示した.手術侵襲で分泌されるのが知られているコルチゾールは,G-CSFと同様の傾向を示すが,相互の役割分担や関係は不明であった.術中早期からの血漿G-CSFの上昇は,神経系の刺激を介して分泌されることを推測させた.
著者
浅雄 保宏 高田 啓介 武部 佐和子 前田 正人 真嶋 良昭
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.632-635, 1991-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

われわれは気管内挿管下の全身麻酔による甲状腺良性腫瘍手術後に手術側の反対側に声帯麻痺をきたした症例を経験した.カフつきチューブの使用,頸部後屈などにより,気管に偏位やねじれが生じ,反回神経との位置関係が変化して左側の反回神経に牽引,圧迫が加わりやすくなって,反回神経の栄養血管の血流障害による神経麻痺をきたしたと考えられた.1ヵ月後には声帯麻痺は完全回復した.
著者
溝部 俊樹
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.362-373, 2006-07-14

高校生がもっている麻酔科医像はテレビや漫画などの メディアによってつくられ, われわれ専門家の言葉は残念ながら彼らにはほとんど届いていない. <br>  『白い巨塔』が書かれた時代 (1963年) には, 麻酔科医は物語に登場することさえなかったが, 徐々に麻酔科医が メディアに登場することが増えて, 仕事の内容はともかく知名度は向上している. しかし, メディアが麻酔事故のみを医療過誤として報道する時代が長く続いたため, 麻酔科医は常に麻酔事故とセットになって描かれ, ネガティブなイメージが広まってしまった. しかし, 今では麻酔科医の仕事が高校生にも理解され始め, メディアにおいて正確で客観的な描写もみられるようになり, 高校生が麻酔科医を正しく理解する基盤が整いつつある.
著者
米井 昭智
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.427-432, 2009-07-15

術前診察と術後回診を効率的に行うことは麻酔科医の過重労働を軽減するために必要と考えられる. われわれは麻酔説明用のアニメーションビデオを業者と共同開発した. 2008年10月より, 手術予定の患者・家族に麻酔科外来にて医師の診察が始まる直前にビデオを鑑賞してもらうことを開始した. これにより医師の説明時間が短縮し, 患者・家族の理解が促進されたと考えられる. 一方, 術後回診の効率化はいまだ課題として残っている.
著者
野間 研一 村川 和重 石本 栄作 石田 克浩 石田 博厚 和泉 良平
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.236-240, 1991-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
4

Ramsay Hunt症候群は,顔面神経麻痺,内耳神経症状,外耳道,耳介周辺部の疱疹を三兆候としているが,帯状疱疹と顔面神経麻痺出現の時期についての詳細な報告は見当たらない.我々は,ウイルス性髄膜炎を併発した,三叉神経第2枝帯状疱疹例に対し,早期より抗ウイルス剤の投与および神経ブロック療法を施行し,順調に経過していたにもかかわらず,発症3週間後に遅発性顔面神経麻痺を生じた症例を経験した.顔面神経麻痺出現時には,すでに皮疹および疼痛はほぼ消失しており,VZV感染と顔面神経麻痺の因果関係は明確にできなかった.また,従来は,Ramsay Hunt症候群の治療として抗ウイルス剤の投与や星状神経節ブロックが施行されているが,今回の症例では,顔面神経麻痺出現前より,これらの治療を行なっていたが,その出現を防止できなかった.
著者
川島 信吾 植田 広 佐藤 恒久 鈴木 興太 鈴木 祐二 山口 裕充 内崎 紗貴子 鈴木 明
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.816-819, 2010-09-15

麻酔科関連の学会では一つの目玉になる企画として,学術機器展示がある.機器展示場は最新機器の特徴や情報を得る絶好の場であるが,研修医や若手医師のなかにはそれぞれの企業とのやり取りが苦手で有効に活用できていない場合がみられる.ベテランの医師でも効率よく回れないブースの配置もある.そこで,日本臨床麻酔学会第29回大会では,初の機器展示場のラウンドツアーを企画・実行した.担当のモデュレータが,各企業ブースへ案内をするツアーである.参加者には高評価をいただき,今後も継続してよい企画であると考え,反省点も含めて紹介する.
著者
鳥越 和憲 秋岡 健一郎 住谷 泰 清水 信貴 小林 裕子 白鳥 倫治
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.101-106, 2000-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
21

プロポフォール麻酔中に低濃度のセボフルランを使用することによって,夢や健忘の出現に変化があるかを検討するために,ASA Iの耳鼻科患者60名を無作為に,プロポフォール+亜酸化窒素(PN)群,セボフルラン+亜酸化窒素(SN)群及びプロポフオール+亜酸化窒素+30分間低濃度セボフルランを30分間隔で投与した(PNs)群の3群(各20例)に分けて比較した.夢の想起率は,PN群で55%,SN群で10%と後者で有意の減少があった.PNs群は45%で,PN群より減少傾向を示した.翌日の健忘については,色に関する回答において,PNs群は他の2群に比べ有意に健忘が増加した.手術室での出来事や覚醒後の出来事についての調査では,PNs群は他の2群に比べ有意に健忘が増加した.プロポフォール+亜酸化窒素麻酔中,低濃度のセボフルランを間歇的に併用すると,夢は減少し健忘は増加して,麻酔の「覚醒の質」の向上を得られることが示唆された.
著者
川崎 孝一 上村 裕一
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.297-307, 2003-12-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
29

周術期の循環管理においては,カテコラミンをはじめとした種々の血管作動薬が用いられる.これらの薬物は血管収縮薬と血管拡張薬に大別され,その作用は血管平滑筋を収縮あるいは弛緩するという点では同じであるが,血管平滑筋の収縮弛緩過程における作用機序は異なっている.また,心臓を含めた血管以外への作用もそれぞれ異なる.したがって,血管作動薬を用いる際には作用点である血管平滑筋の収縮弛緩機序を理解するとともに,薬理作用(作用機序,臨床効果,使用量,副作用)を熟知して循環動態に合った適切な薬物を選択する必要がある.本稿では,まず血管平滑筋の収縮弛緩機序について概説し,次に現在使用されている代表的薬物の作用機序と臨床的効果および臨床使用法について述べる.
著者
佐藤 紀 宮部 雅幸 川真田 樹人 中江 裕里 表 圭一 並木 昭義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.9, pp.616-619, 1995-11-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
6

咽喉頭全摘出術患者10名にリドカインを用いて頸部硬膜外麻酔を施行し,反復投与による血漿リドカイン濃度の推移を検討した.笑気酸素-セボフルランを用いた全身麻酔下で,初回に20万倍エピネフリン添加2%リドカイン3mg/kgを投与し,1時間後より1時間ごとに20万倍エピネフリン添加1.5%リドカインを循環動態に応じて1~2mg/kg追加投与した.初回投与後,血漿リドカイン濃度は15分でピークに達し,追加投与直前の1時間後に最低となった.初回投与3.5時間後に2.6±0.6 (SD) μg/mlに達した後は,およそこの血漿中濃度で安定した.長時間にわたる頸部手術における頸部硬膜外麻酔併用全身麻酔では,安全なリドカイン血漿濃度を維持できることが示された.
著者
藤本 淳 木田 景子 宇野 太啓 池邊 晴美 谷口 一男 野口 隆之
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.400-403, 1999-07-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
11

貼付用リドカインテープ(ペンレス®)は,患者に疼痛を与えない局所麻酔を目的として開発されたテープ剤である.今回,健康成人ボランティア20人を対象として,リドカインテープによる表在痛及び深部痛の疼痛閾値の変化を測定し,プラセボと比較して評価した.表在痛の疼痛閾値はリドカインテープ群がプラセボ群に比較して有意な上昇を示したが,深部痛では両群間に有意差はみられなかった.リドカインテープは表在痛に対して有効であり,使用法が簡便であることや患者の苦痛を伴わないことから有用な鎮痛法であると思われた.一方,深部痛に対しては有効性は認められなかったが,貼付法•貼付時間の点からさらに検討の必要があると思われた.
著者
今泉 均 角田 一眞 渡辺 明彦 升田 好樹
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.343-347, 1988-07-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
12

虚血性心疾患の既往のない, 69歳男性の腹部大動脈瘤破裂の緊急手術前に, 中心静脈カテーテル挿入のため右内頸静脈穿刺時, 突然STの上昇と共に徐脈, 血圧低下を認めた. 腹部大動脈瘤患者では高率に冠動脈疾患を合併することから, 冠動脈硬化による冠動脈血管の tonus の亢進した状態下に, 中心静脈穿刺時の迷走神経刺激が誘因となって冠動脈スパズムが発生したものと考えられた.明らかな虚血性心疾患の既往がなくても全身的に高度な動脈硬化性疾患を有する患者の麻酔管理においては, 冠動脈硬化病変の存在並びに冠動脈血管の tonus の亢進によって, 冠スパズムや重症な不整脈の発生し易いことを十分に念頭におくべきである.
著者
星 拓男 須賀 明彦 熊谷 恵 宮部 雅幸 佐藤 重仁
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.7, pp.609-612, 1996-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
8

患者は24歳女性.誤って漂白剤を浴び,アルカリ腐食性角膜潰瘍のため入院した.入院後,角膜穿孔と角膜移植を繰り返し,合計7回の角膜移植を受けた.この間痛みは,角膜の状態悪化とともに増悪し,ブプレノルフィンの筋注を最高1日6回まで必要とした.しかし薬物血中濃度から内服が守られていないことがわかり,痛みを訴える一方で,安静を守らないなど不審な点も多く,心理的要因を疑い精神科を受診したところ虚偽性障害が疑われた.薬物療法,面接,行動療法を行なったところ,それまでの痛みはブプレノルフィンを筋注して欲しいための嘘であったことがわかった.慢性痛を訴える患者では,チーム医療および精神科的アプローチの重要性を痛感した.
著者
半澤 晋二 小野田 昇 寺尾 一木 崎尾 秀彰
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.116-119, 1997-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
5

巨大卵巣嚢腫のため,仰臥位での睡眠が困難な症例の周術期管理を経験した.術前にあらかじめ約35lの嚢腫内容液を排除したところ,仰臥位での睡眠が可能となった.手術を全身麻酔下に開始したが,嚢腫内容液の吸引により血圧は低下し,昇圧薬と急速輸液で対処した.同時に低酸素血症を呈したため,一時的に高濃度酸素吸入を行なった.術前排液量を含めた摘出臓器重量は53kgであった.術後は集中治療部にて管理したが,入室8時間後に血圧低下をきたした以外,呼吸・循環系は安定しており,術後2日目に集中治療部を退室し,後日軽快退院した.
著者
大堀 久 津田 喬子
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-13, 1997

星状神経節ブロック(SGB)後の1回換気量減少の機序を明らかにする目的で,SGB療法中の患者を対象にSGB前,後の二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)換気応答をReadの再呼吸法を応用して解析した.対照群として健常者に,生理食塩水の星状神経節部注入を行ない同様の検討をした.終末呼気CO<sub>2</sub>分圧を横軸に,1回換気量あるいは分時換気量を縦軸にとり,比較したところ,局麻薬によるSGB後には傾きが減少した.しかし生理食塩水の注入では一定の傾向を認めなかった.SGBはCO<sub>2</sub>換気応答を抑制し,それが安静時1回換気量,分時換気量,SpO<sub>2</sub>の減少の一因である可能性が示唆された.
著者
中江 裕里 高橋 俊彦 宮部 雅幸 並木 昭義
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.189-192, 1993-03-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
15

軽度の耳下腺腫脹と著明な血清アミラーゼ値の上昇により術後耳下腺炎と診断された症例を経験した.耳下腺の腫脹は手術後1日目から6日間持続したが,炎症症状を欠き,局部の冷却湿布と通常の上腹部手術術後管理に準じた抗生剤および輸液管理により軽快した.耳下腺腫脹の原因としては手術中のバツキングによる腹圧上昇,気管内チューブによる咽頭反射の亢進による唾液腺の静脈うっ血に起因する耳下腺管の閉塞が考えられた.術後耳下腺炎はまれな合併症であるが,日常の麻酔管理における操作が原因となりうることを常に銘記すべきと思われた.
著者
森本 康裕 佐伯 仁 牧野 朝子 松本 聡 岡 英男 宮内 善豊
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.135-139, 1999-03-15

各種の医療用エアゾル剤を用いて,麻酔ガスモニター測定値への影響について検討した.フロンガスを含むメプチン<sup>®</sup>エアーでは,ブリューエルケアー1304で,エタノールを含むニトロール<sup>®</sup>スプレーでは,オメダ5250で測定値が影響を受けた.ミオコール<sup>®</sup>スプレーには,代替フロンHFC134aとエタノールが含まれており,オメダ5250とブリューエルケアー1304ともに影響を受けた.アルティマMM206は今回検討したエアゾル剤に関して最も影響を受けにくいモニターであった.麻酔ガスモニター使用中にエアゾル剤を使用する際は,エアゾル剤中に含まれる噴射剤の成分とモニターの測定原理に注意する必要がある.
著者
水嶋 章郎 山本 泰久
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.278-282, 1987-05-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
11

Wilson 病は, 肝硬変, 錐体外路症状, Kayser-Fleischer 角膜輪を主徴とする先天性銅代謝異常で, その麻酔管理には問題が多い.症例は11歳時に本症と診断され, D-ペニシラミンの長期投与を受けている26歳の女性, ドロペリドール, フェンタニール, 笑気-酸素を用いたNLA原法とパンクロニウムの筋弛緩下に, 脊椎管狭窄症に対する椎弓切除術 (C3-7) を行い, 良好な結果をえた. 本例では, 術中に軽度の体温上昇を認めたほかには, 麻酔によると思われる呼吸•循環系, 肝•腎機能への影響を認めず, 術後, 錐体外路症状も増悪することはなかった.本症に病態生理に基づき, 麻酔薬の選択および術中•術後管理について, 文献的考察を加えた.