著者
夫 鍾閔 Jongmin Boo
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.57-84, 2021-11-30

本論文は,丸山眞男の思想をめぐる言説を取り上げて,そこにおいてどのような観点から,何が問題とされてきたかを検討するものである。まず,国民国家の問題点に積極的に取り組んで丸山を批判する議論を検討し,そこで丸山が国民国家論の思想家の代表として標的にされた理由を考察した。その後,国民国家批判の潮流と距離を置きながら丸山思想の意義を見出す諸解釈を検討したが,こうした議論が〈国民国家批判としての丸山批判〉から丸山をどのように救い出しているのかを確認した。これらの解釈は国民国家の問題性を認識しながらも,丸山と国民国家を分離させようとするが,そこには,自由主義と民主主義の対立という契機が働いている。しかし,それらの主張を丸山のテキストに即して検証したところ,その解釈には論理的な難点がある。その点,丸山のテキストの読解としては,丸山の国民国家論を一貫したものとして捉えたということで,国民国家批判論者たちによる丸山論のほうがより適切だったと結論付けると同時に,丸山の国民国家論に再解釈の余地があることも明らかにした。
著者
神鳥 武彦
出版者
広島文化女子短期大学
雑誌
広島文化女子短期大学紀要 (ISSN:09137068)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.71-86, 1993-07-10

The rhythm of Japanese is based on its writing system "Kana" which also represents its phonological segment. /R/ (a vowel with a long durative time), /N/ (a nasal) and /Q/ (a consonant with a long durative time) are called the special phonemes in Japanese, the m?ra phonemes. The suprasegmental feature of Japanese is characterized by these phonemes and /i/ after the vowels. Pitch accent on /R/, /N/, /Q/ and /i/ at word-level is defferent from that at sentence-level. Comparing the pitch accent patterns on these phonems at word-level and sentence-level, it is possible to say that the accent pattern on the phoneme /i/ is most stable and /R/, /N/ are less stable, then the accent pattern on the phoneme /Q/ is always inconsistant. The results show that it is not reasonable to say that Japanese has only two groups in its dialects, namely the Mora dialect and the Syllabeme dialect. The sutdy of accent patterns in Kumano dialect shows the both features of the Mora dialect and the Syllabeme dialect. Thus we shoud third category 'm?ra-syllabeme hibrid dialect' when we group the Japanese dialects.
著者
平野 怜旺 渡邊 恵太
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.220-227, 2023-08-23

メンタルイメージベースのブレインコンピュータインターフェース(MI-BCI)は,特定の思考やメンタルイメージを用いて外部機器を制御できる.MI-BCI は多くの用途で有望であるが,研究室以外で日常的に使用するには,まだ十分な信頼性がない.MI-BCI を制御するために,ユーザトレーニングが重要であり,ユーザは特定の脳波パターンを安定して生成する能力が必要である.しかし,この能力を身につけるための最適なトレーニング方法は未だ研究中である.本稿では,オノマトペを用いたユーザトレーニング方法を提案する.視覚イメージとオノマトペによる聴覚イメージのマルチモーダルなアプローチによるトレーニングを行い,ユーザパフォーマンスに与える影響を調査した.
著者
八城 年伸
雑誌
第84回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.493-494, 2022-02-17

COVID-19対策のオンライン授業において、筆者は「ゆっくり解説」の手法を用いたオンライン教材を作成し、講義を実施した。講義に対する受講生の評価は、発声がより自然であれば、合成音声を用いたコンテンツを受け入れやすくなるとするものであった。これらの試行の報告に対して、音声合成エンジンにAmazon Pollyを使用してみては、との提案が寄せられた。音声合成エンジンの違いが、オンライン授業コンテンツに対する受講生の評価に、どのように表れるのか報告する。
著者
Wataru Hashimoto Takahiro Shinagawa
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-160, no.9, pp.1-9, 2023-07-27

Low-level languages including C/C++ require manual heap management, which often leads to memory-related bugs. The key challenge of UAF prevention is to ensure that freed heap objects are not accessed through dangling pointers, while not introducing significant performance overhead, and preserving the source code compatibility. We present LeaseMalloc, a system that combines a source code transformation and a runtime library to detect UAF. It ”leases” heap objects to users, then ensures that memory is not accessed through dangling pointers by supervising the lease status of heap objects. Lease information is updated dynamically at runtime, which allows LeaseMalloc to skip the lease check to reduce the performance overhead. We implement LeaseMalloc as an LLVM Pass Plugin to instrument target application and confirmed that it can detect temporal memory errors without modifying application source code.
著者
吉岡 恵吾 穐山 空道
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-160, no.7, pp.1-7, 2023-07-27

本研究では RowHammer 攻撃でこれまで着目されていなかったページテーブル上のフラグを書き換えることで,攻撃者が被攻撃者のデータにアクセス可能になることを示した.RowHammer 攻撃とは,メモリ上の同一のアドレスに繰り返しアクセスすることで,DRAMの特定のセルから電荷が放出され,メモリ上の値が書き換わる現象である.本研究では,ページテーブル上の Global bit の反転により起こる現象を,CPU シミュレータ上で動作する Linux を用いた実験を通して解明した.RowHammer 攻撃で Global bit を書き換え,攻撃者と被攻撃者のプロセスでアドレス変換情報を共有させることで,攻撃者が被攻撃者のデータにアクセスすることが可能になった.さらに,提案した攻撃手法に対する緩和策や,ARM,RISC-V などの様々な ISA における攻撃についても考察した.
著者
青葉 隼人 川島 龍太 松尾 啓志
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-160, no.4, pp.1-7, 2023-07-27

インメモリ KVS はデータベースや Web アプリケーションで生成されたデータのキャッシュとして用いられている.しかし,インメモリ KVS は Linux カーネルのプロトコルスタックがボトルネックとなる.DPDK と F-Stack を用いてインメモリ KVS を再設計した手法では,Linux カーネルのパケット I/O 処理で生じたオーバーヘッドを解消し高速化を図ったが,依然としてプロトコルスタックがボトルネックとなる.また,XDP を用いてドライバ層でキャッシュを行う手法では,キャッシュヒット時にプロトコルスタックをバイパスしてボトルネックを解消したが,ドライバ層におけるカーネル由来のオーバーヘッドは未解消である.本研究では DPDK を用いた透過型 L2 プロキシで KVS のキャッシュを行う手法を提案する.DPDK によりコンテキスト切り替えのオーバーヘッドを解消し,OSI 参照モデルのデータリンク層でキャッシュ制御を行い,キャッシュヒット時にプロキシがレスポンスを送信してスループットを向上させる.インメモリ DB である Redis に適用して提案手法の性能を評価した結果,キャッシュヒット時においてレイテンシを 36% 削減した.また,READ リクエスト割合の増加に伴いスループット性能が向上し,公式の Redis と比較して最大 13.6 倍向上した.
著者
橋浦 健太 飯田 和也 赤塚 翔太 趙 勇気 神山 洋一 渡邊 恵太
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.38-41, 2023-08-23

ビデオゲームにおいて複数人が協力してプレイする場合でも,それぞれが独立したコントローラーで操作が行われきた.本研究では,力覚フィードバックを用いた操作感覚の共有がビデオゲームのパフォーマンスに与える影響を評価した.その結果,全試行中で最速記録は感覚共有時に達成された一方,平均的なパフォーマンスは感覚共有時に低下した.これは,操作感覚の共有は操作を困難にする場合があるため,パフォーマンスを低下させる可能性を示唆している.
著者
高橋 和也 村上 雄哉 渡邊 恵太
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.247-252, 2023-08-23

Figma やAdobe XD といったツールは画面上のインタラクティブなプロトタイピングに優れているが,IoT のようなハードウェアと画面が連携した体験はプロトタイピングできない.本研究では,画面設計が容易なFigma をM5StickC と連携させる拡張手法を提案する.これにより,例えば加速度センサの数値に応じてFigma の画面を遷移させる,Figma 上のボタンを押してLED を点灯させるといったことができる.提案手法を用いて,IoT 製品のプロトタイプ作成をテーマとしたワークショップを実施した.
著者
髙山 英里 能丸 天志 安中 勇貴 山岸 丈留 渡邊 恵太
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.52-61, 2023-08-23

「あアラウド法」は,実験参加者が「あ」のみを発声することで,実験参加者のリアルタイムな感情を観測する手法である.この手法は,明確な評価基準を定義しにくいエンタテイメントコンテンツの評価に役立つ可能性がある.一方で,発声方法や感情分析の妥当性については,十分な検討がなされていない.そこで本研究では,「あアラウド法」を感情観測手法として確立するため,発声方法が結果に与える影響と,感情分析の実行可能性についての実験を行い,適した実験設計と有用性について考察した.
著者
林田 明香里 加藤 邦拓 太田 高志
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.313-315, 2023-08-23

本研究ではスピーカを取り付けた洋服を実装し,ユーザの動きによるインタラクティブな音楽体験を設計する.具体的には,CD アルバムのジャケット画像が印刷された洋服をユーザが着用すると,洋服上のスピーカからアルバム内の楽曲が再生される.またユーザ同士が肩を組む,あるいはハグといったスキンシップをすることで,お互いの洋服から同じ楽曲が再生されて,音楽を共有できるインタラクションを設計する.提案手法により,ユーザは音楽配信サービス上でダウンロードした音源を物理的に所有できるようになり,洋服を着用することによる視覚的かつ聴覚的な自己表現が可能になる.また,ユーザ同士の自然なコミュニケーションによる楽曲共有を可能にすることが目的である.
著者
庄司 俊之
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.97-104, 2020-03-23

この研究ノートは死生観の歴史的変遷と現在を考えるための視点についての覚書である。第1節では、現代の状況を考えるための視点としてバウマンの「液状化する社会」を挙げる。そして液状化にもかかわらず、あるいはそれゆえに、きわめてシンプルな死生観に収斂していく可能性について述べ、さらに今日「死生観を問う」こと自体が政治的効果を発揮しうることを言う。つぎの第2節では、2019年にオランダで議論された「認知症の安楽死」をとりあげ、これを死生観全体でいえば先端部分に位置する論争点と理解したうえで、その歴史的な経緯や行方について考える。そして第3節では、先端から底辺へ視点を移し、戦後日本における死生観の変容について、そして世界史的な転換の構図について触れる。最後の第4節では、死生観を考える際に見落とされることの多かった生の諸相について、排泄と食べることを例にとって若干の考察を行なう。