著者
中村 雅之
出版者
富山大学
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.109-118, 2001-03-21
著者
劉 海宇 Liu Hai-yu
出版者
国立大学法人岩手大学平泉文化研究センター
雑誌
岩手大学「平泉文化研究センター年報」 = Hiraizumi studies (ISSN:21877904)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.85-93, 2014

中国古代の庭園を分類する場合、一般的には皇帝直属の大規模な皇家苑囿と貴族・富豪の私邸庭園とに大別される。『史記』秦始皇本紀によれば、秦の始皇帝は戦国諸侯を滅ぼすたびに、その宮室を模して首都咸陽の北の山麓に宮殿を建てたという。天下を統一すると、さらに渭水を中心に、離宮別館・苑囿台池を造営し、中でも蘭池宮・上林苑・阿房宮等は現在においても有名である。ところで、始皇帝の贅を尽くして造営した苑囿に対して、秦代の官僚や富豪の私邸庭園については、将軍王翦の「美しき田宅園池を請ふこと甚だ衆し」を除けば、史書にほとんど記録を確認できない。いわんや秦代の庶民の私邸庭園においておやである。もとより資料の制限により、従来の研究では秦代の宮廷苑囿に関する議論は多く見えるが、秦代の私邸園池については研究が少ないのが現状である。 幸いにも、近年、中国各地から秦代の簡牘資料が相次いで出土しており、秦代の研究ではこれらの簡牘の利用なくして進展は考えられないと言えよう。秦代の簡牘資料では、「数術」と分類される一群がある。「数術」とは、『漢書』芸文志では「太史令の尹咸をして数術を校せしむ」の顔師古注に「占卜の書なり」とか、「凡そ数術百九十家、二千五百二十八巻。数術は、みな明堂・羲和・史卜の職なり」とあるように、古代の天文・暦法・占卜等に関する学問のことである。「数術」の書籍には天文・暦譜・五行・蓍亀・雑占・刑法の分野が含まれており、出土した「数術」簡牘にもこうしたすべての分野が包括されている。それでは、秦代の「数術」簡牘文献に官僚や庶民の私邸園池に関する資料があるのだろうか。 本稿では、出土した秦代の「数術」簡牘に見える池を中心とする私邸庭園について、関係資料を収集・分析することによって、秦代の私邸庭園の地割や池の性格を明らかにし、あわせて成立年代が平安時代末期とされる東アジアの最古の造園書『作庭記』における造園の禁忌思想と比較してみたい。
著者
小林 文治
出版者
早稲田大学史学会
雑誌
史觀 (ISSN:03869350)
巻号頁・発行日
no.170, pp.57-79, 2014-03-25
著者
大宮司 信
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.339-354, 2006-09-30

本論文では、精神医学の領域でかつてもちいられ、今はまったく捨てられたロボトミーという治療技術の盛衰を通して、医療技術の忌避の要因について考えた。第一にあげられる点は、心や精神という人間それ自体と同義に考えられる対象に対する医療の適用への嫌悪感・拒否感である。第二は治療手法の非可逆性である。ロボトミーが捨てられた最大の原因は、取り返しのつかない後遺症をもたらした点である。第三は、医療技術の開発は目的に対応する計画的な準備だけでは不十分で、多彩でしかもまったく偶然的な要素の出現が、アミダくじ的に組み合わさって可能になるという、「医療のアミダくじ的な展開」という村岡の指摘である。抗精神病薬の登場は、ロボトミーをのこすか捨てるかという当時の議論をとびこして、必要としなくてよいとする決定因のひとつとなった。このアミダくじの一部を担いうるものとして、宗教は医療や倫理とはまた違った仕方で、視座を与えうると筆者は考える。
著者
坂本 鐘期
巻号頁・発行日
2010-03

Supervisor:東条敏
著者
岩本 舞 小島 俊輔 中嶋 卓雄
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2012-EIP-57, no.20, pp.1-8, 2012-09-06

大学等におけるプログラミング系科目のレポート課題において,他人の記述したプログラムをそのまま流用して提出するする行為が問題となっている.このプログラムのコピーを自動で検出する技術に,コードクローン検出技術がある.本研究は,学生の提出する不正コピーの検出に注目した,コードクローン検出アルゴリズムの開発を目的としている.本研究で提案するアルゴリズムは,トークンごとの比較を基礎としており,学生が提出する不正コピーの特徴,たとえば,関数の場所やプログラムの行単位の入れ替えをすべて検出できる.提案するアルゴリズムを実装し,学生 119 名から提出された課題に対して評価実験を行った.目視による判定と比較した結果,学生の作成した非常に短いプログラムにおいて, 36 件の不正コピーのうち 32 件を検出することができた.
著者
橋本 佳延 石丸 京子 黒田 有寿茂 増永 滋生 横田 潤一郎
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究(オンライン論文集) (ISSN:1883261X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.69-76, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
63
被引用文献数
1

Miscanthus sinensis grasslands can be dominated by dwarf bamboo such as Pleioblastus chino var. viridis after abandonment, leading to decrease diversity in the communities. We investigated the effect of mowing on recovery of grassland species richness and cover, and overall species composition over three years. Two treatments were tested: mowing above ground vegetation every autumn and mowing above ground vegetation every autumn with selective cutting of P. chino var. viridis in the first summer. The number of grassland plant species increased slightly under both treatments, although M. sinensis did not return as the dominant species in either treatment after the restoration. The addition of selective cutting of P. chino var. viridis resulted in greater cover of M. sinensis and higher richness and cover of grassland species. These results show that selective cutting of P. chino var. viridis in summer enhance the effect of management for restoring grassland species diversity in long-abandoned semi-natural grassland communities.
著者
福田 真嗣
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.145-155, 2015 (Released:2015-08-01)
参考文献数
46
被引用文献数
1

メタボロゲノミクス(Metabologenomics)とは,代謝物質を網羅的に解析するメタボロミクス(Metabolomics)と,腸内細菌叢遺伝子を網羅的に解析するメタゲノミクス(Metagenomics)とを組み合わせた研究アプローチである.われわれの腸管内には多種多様な腸内細菌が生息しており,それら腸内細菌叢が宿主腸管細胞と相互作用することで異種生物で構成される複雑な腸内生態系,すなわち腸内エコシステムを形成している.腸内エコシステムの恒常性を維持することがヒトの健康維持・増進に大きく寄与していることが近年明らかになりつつあるが,逆に腸内細菌叢のバランスが崩れることで腸内エコシステムが大きく乱れると,大腸がんや炎症性腸疾患といった腸管関連疾患のみならず,自己免疫疾患や代謝疾患といった全身性の疾患につながることも報告されている.したがって,腸内細菌叢を異種生物で構成される一つの臓器として捉え,その機能を理解し制御することが,疾患予防・健康維持における新たなストラテジーとして重要と考えられる.近年,特に腸内細菌叢のメタゲノム解析やメタトランスクリプトーム解析により,個々人の腸内細菌叢遺伝子地図や推定される遺伝子機能に関する研究は盛んに行われている.しかし,腸内細菌叢による宿主への直接的な作用を理解する上で重要なカギを握るのは,腸内細菌叢から産生される種々の代謝物質と考えられる.本稿では,腸内細菌叢由来代謝物質が宿主の健康状態にどのように影響しているのかについて,メタボロミクスによる全容理解に向けた近年の取り組みについて紹介するとともに,腸内細菌叢変動とも組み合わせたメタボロゲノミクスの有用性についても議論する.