著者
川野 潤 大澤 康太朗 豊福 高志 長井 裕季子 田中 淳也 永井 隆哉
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

To understand the formation or dissolution mechanism of crystal in aqueous solution, it should be important to analyze the local condition of solution just around dissolving or growing crystal. Recently, we have succeeded to visualize the distribution of pH and ionic concentration around carbonate minerals dissolving in inorganic environment, by using the fluorescent probe. In the present study, we have tried to apply this technique to the formation process of calcium carbonate.Calcium carbonate was synthesized by the counter diffusion method, in which calcium chloride and sodium carbonate solutions were counter-diffused through an agarose gel matrix containing the fluorescent probe like 8-hydroxypyrene-1,3,6-trisul-fonic acid (HPTS). We observed under a microscope that pH in the middle part of gel first increased gradually with time and turn downward after crystals formed. The counter diffusion method with gel media for the carbonate synthesis has attracted attention as a valid tool in the study of biomineralization because the calcification sites in some organisms were recently suggested to have the features of a highly viscous sol or gel matrix. Therefore, the detail observation of the local condition around forming calcium carbonate in gel matrix could provide new insights into the knowledge of biomineralization mechanisms.
著者
武村 俊介 利根川 貴志 中島 淳一 汐見 勝彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

海洋プレート上部に低速度層として存在する海洋性地殻は,沈み込みに伴う脱水反応によりエクロジャイト化することで,深い部分では海洋マントルと同程度の地震波速度となることが予想される(例えば,Fukao et al., 1983 Nature; Abers et al., 2003 GRL; Hacker et al., 2003 JGR).本研究では,海洋モホを伝播する屈折波を用いて,フィリピン海プレートの海洋性地殻がエクロジャイト化する深さを拘束することを試みる.海域で発生する海洋モホより浅い地震時に,陸域で観測される初動は海洋モホを伝播する屈折波となることが知られている(Takemura et al., 2016 EPS).例えば,2016年4月1日に三重県南東沖の地震時に陸域のHi-netで観測された初動走時は,震央距離70~200 kmにおいて見掛け速度7.2 km/s程度の屈折波PPHSが明瞭に確認できる.震央距離200 km以上では,見掛け速度8 km/s以上と海洋マントルに対応した初動走時となる.このような見掛け速度の距離変化は,マントル以深の地震波速度構造に起因すると考えられる.現実的な構造を仮定した2次元差分法による地震動シミュレーションにより,初動走時の特徴を調べる.地殻構造はF-net 1D構造(Kubo et al., 2002 Tectonophys.),フィリピン海プレート上面形状はHirose et al. (2008 JGR)を採用し,プレート上面から深さ方向に7 kmの領域を海洋性地殻としてシミュレーションを行った.海洋性地殻を深部まで低速度層として存在させると,PPHSが遠方まで初動として伝播し,観測された初動走時の特徴を説明できない.そこで,海洋性地殻が海洋マントルと同程度まで高速化し,海洋モホがある深さで消失したとしてシミュレーションを行った.海洋モホの消失する深さを様々に変えたシミュレーションから,海洋モホが消失する深さに依存して初動走時が変化することがわかった.海洋性地殻のエクロジャイト化により海洋モホが深さ52 km以深で速度コントラストを持たなくなり,初動がPPHSから海洋マントルに対応したP波に変わるため,初動走時が変化する.海洋モホの消失する深さを52 kmとした時に,初動走時の再現性が最も良くなった.この深さは,Kato et al. (2014 EPS)による紀伊半島下のフィリピン海プレートの海洋性地殻のエクロジャイト化する深さと整合的である.以上のことから,海域で発生した海洋モホより浅い地震とモデルシミュレーションの比較から,海洋モホの速度コントラストが消失する深さを拘束できることが期待される.海洋モホの消失は沈み込みに伴う脱水反応が原因と考えられ,海洋性地殻のエクロジャイト化と関連があると考えられ,沈み込む流体の移送過程を知るヒントとなる.謝辞F-net MTカタログとHi-net速度波形を利用したました.地震動計算には地球シミュレータを利用しました.
著者
山口 龍彦 萩野 恭子 平 陽介 濱田 洋平 斎藤 仁志 小野寺 丈尚太郎 板木 拓也 星野 辰彦 稲垣 史生
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

IODPを始めとした掘削科学のプロジェクトにおいて、珪藻、有孔虫、放散虫、石灰質ナノプランクトンなどの微化石を用いて堆積物の地質年代を正確に決定することは非常に重要である。微化石の抽出と分類群の正確な同定には豊富な経験・知識が必要とされ、同定と堆積物の年代決定には時間を要する。DSDPが開始された1960年代より微化石の専門家は、掘削船に乗船し船上で微化石の分析を行い、掘削科学に貢献してきた。一方で、コンピュータ処理能力の向上により運転など従来人間が担ってきた操作が人工知能(AI)に置き換わられつつある。人工知能の構築に広く用いられているのはディープラーンニングと呼ばれる機械学習技術であり、多層のニューラルネットワークを用いることで、データの特徴を段階的により深く学習させる手法である。近年、国際空港の出入国管理、アミューズメントパークやコンサート会場の入場セキュリティを担う顔認証システムにおいて、ディープラーニングを用いることで、その識別精度を向上させる実用例も報告されている。我々は、この機械学習・画像認識技術の微化石年代測定への応用、さらには自動年代決定AIシステムの開発について研究を一昨年から開始した。昨年の本学会では、比較的単純な2種類の石灰質ナノ化石および珪藻化石について、NECのAIソフト「RAPID機械学習」による自動識別が可能であることを示した。今回の発表では、実用化に向けたさらなる検討として、分類する石灰質ナノ化石の種類を第四紀の堆積物から多産するEmiliania huxleyi, Gephyrocapsa oceanica, Gephyrocapsa ericsoni, Reticulofenestra haqii, Gephyrocapsa caribbeanica, Reticulofenestra productの6タクサ(種)に増やし、自動分類を試みた。ランダムに30枚の教師画像を与えて構築した分類モデルを用いて教師画像とは別の120枚(6種×20枚)の標本の画像の自動識別を行った。この結果、G. oceanicaやR. haqiiの判別的中率は100%、95%であり、自動判別の有効性が示された。一方、その他の4種類の判別的中率は0-35%であった。判別的中率が低い分類群では同定の鍵となるbridgeの認識がうまく行われていないと考えられる。偏向板を回転させたり、画像の解像度を上げた教師画像のみを与えることでより高精度の分類が可能になることが予想される。本発表では、石灰質ナノ化石の他の微化石への応用例も紹介し、自動分類の可能性について議論を深めたい。
著者
水野 貴之 小髙 充弘
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

世界の3億社と1.4億人に関する株所有情報を含むデータセットを用いて,グローバルな株所有ネットワークにおける中国の間接支配を調べる.はしめに,ネットワーク上のパーコレーションモデルを拡張することによって,支配関係をグローバルな株所有ネットワークのサブグラフ(サブネットワーク)として抽出する.このモデルは,直接所有だけではなく,支配下企業を介した間接所有も加味して,企業が支配されるか(ノードがパーコレートするか)を定める.次に,中国株主と米国企業(投資会社とGAFA)による世界支配を,支配に必要な所有比率を変化させて観測する.中国株主が協調することで,世界支配は大きく拡大する.中国は, 1%を超える間接的な株所有によって世界の全従業員の47%を支配している.中国による支配は,タックスヘブン地域,フランス,南アフリカ,ナイジェリアで顕著である.フランスは旧植民地であるアフリカで多くの企業の株を持っている.支配関係は階層構造を持っている.すなわち,中国はフランスを介してアフリカを支配している.特に,採掘業で顕著である.中国の世界支配は強いけれども,米国企業による支配はその比ではない.
著者
佐藤謙次 細川智也 関口貴博 鈴木智
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【目的】膝前十字靱帯(ACL)再建術後再断裂の危険因子に関する報告は散見されており,低年齢やスポーツ活動レベルの高さが指摘されている。一方,ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツの再断裂率は高いとされており,コンタクトスポーツとノンコンタクトスポーツでは傾向が異なることが予測される。しかし,スポーツカテゴリーの違いが再断裂に及ぼす影響に関する報告は渉猟し得ない。本研究の目的はACL再建術後の再断裂の危険因子を明らかにすることである。【対象と方法】対象は当院において2005年から2010年に膝屈筋腱を用いた初回解剖学的二重束ACL再建術を受け2年以上経過観察可能であった949例(男性500例,女性449例:平均年齢26.5歳)とした。両側ACL損傷例,再再建例は除外した。診療記録より再断裂の有無を調査した。再断裂は担当医が理学所見,KT2000,MRI,関節鏡所見から総合的に判断した。性別,年齢(18歳以下・19歳以上),スポーツレベル(競技レベル・レクリエーションレベル),スポーツカテゴリー(コンタクトスポーツ・ノンコンタクトスポーツ)に分けて再断裂率を算出した。なお,練習回数が週4回以上を競技レベル,週3回以下をレクリエーションレベルとした。また,コンタクトスポーツは,フルコンタクトスポーツとリミテッドコンタクトスポーツを含んだものとした。統計学的解析は,再断裂率を項目ごとに両群間でχ2検定を用いて比較した。また,多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いて,再断裂の危険因子を抽出した。目的変数を再断裂の有無とし,説明変数を性別,年齢,スポーツレベル,スポーツカテゴリーとした。なお統計ソフトはR2.8.1を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいて行い,データの使用にあたり患者の同意を得た。個人情報保護のため得られたデータは匿名化し,個人情報が特定できないように配慮した。【結果】再断裂は949例中45例に認められ再断裂率は4.7%であった。性別(男性4.2%,女性5.3%)において男女間に有意差は認められなかった。年齢(18歳以下8.1%,19歳以上2.8%),スポーツレベル(競技レベル8.1%,レクリエーションレベル2.3%),スポーツカテゴリー(コンタクトスポーツ5.8%,ノンコンタクトスポーツ2.7%)において両群間に有意差が認められた(p<0.05)。多重ロジスティック回帰分析の結果,スポーツレベルとスポーツカテゴリーが危険因子として選択された(モデルχ2検定:p=0.000)。スポーツ活動レベルのオッズ比は3.4,スポーツカテゴリーのオッズ比は1.8であった。【考察】ACL初回損傷において女性は男性よりも2~8倍受傷リスクが高いことが知られているが,再断裂については男女間に有意差はなく危険因子としても抽出されなかった。したがってACL再建術後のスポーツ復帰に際しては男女ともに同等に注意を要すると思われた。2群間の比較において低年齢,競技レベル,コンタクトスポーツが有意に高い再断裂率を示したが,ロジスティック回帰分析による危険因子の抽出では,低年齢は選択されず,競技レベルとコンタクトスポーツが選択された。これはステップワイズ法により多重共線性をもつ低年齢が除外されたものと解釈できる。一方,スポーツレベルについては過去の報告と同様に危険因子として抽出され,競技レベルはレクリエーションレベルよりも3.4倍再断裂のリスクが高いことが明らかになった。さらにこれまで指摘されてこなかったスポーツカテゴリーにおいて,コンタクトスポーツが危険因子であることが新たに明らかになった。得られたオッズ比からコンタクトスポーツはノンコンタクトスポーツよりも1.8倍再断裂のリスクが高いことが分かった。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から,競技レベルとコンタクトスポーツの選手がハイリスク群として抽出された。したがってこれらに対して集中的に再断裂予防策を講じることが効率的・実用的と考える。競技レベルはレクリエーションレベルより3.4倍,コンタクトスポーツはノンコンタクトスポーツよりも1.8倍再断裂のリスクが高いことを患者に対しても説明可能であり,術後理学療法を円滑に進める一助になると考える。とくにスポーツの種類により再断裂率が異なることを新たに証明できた意義は大きいと考える。
著者
原 聡
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

深層学習モデルはその複雑な内部のネットワーク構造がゆえに、モデルがどのような認識機構に基づいて画像認識を行っているかを人間がうかがい知ることはできない。このモデルのブラックボックス性を緩和して説明性を高めるために、特に画像認識の分野において視覚的な説明性を向上させる方法の研究が進めらている。これら視覚的な説明では、深層学習モデルが画像中のどの領域を根拠に認識を行なっているか、その認識対象を特定してハイライトする。本研究では鮮明なハイライトを得るための前処理方法として活性固定化を提案する。活性固定化ではまず前処理として深層学習モデルの認識に寄与している主要な構造だけを残して、残りの非主要部を枝刈りする。その後で既存の視覚的説明法でハイライトを生成する。このように前処理として活性固定化によりモデルの非主要部を枝刈りすることで、非主要部に由来するノイズを除去した鮮明なハイライトを生成できる。