著者
森口 裕之
出版者
京都市立堀川高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

プランクトン個体を発見し、捕獲し、個別の個体を飼育しながら追跡観察できる実験系を開発することで、学校における「プランクトンの観察」をその場限りに終わらせず、そのライフサイクルを実験を通して学ぶことができる学習へと発展させることを意図して、簡易なプランクトン個体単離飼育容器を開発した。容器の素材には、透明性や加工性などに優れるシリコーンゴム(PDMS : Polydimethylsiloxane)を用いた。スライドガラスにセロハンテープや寒天の小片を貼り付け、それらを凸版の鋳型としてPDMSを硬化させることで凹部を型取りし、鋳型から剥がしたPDMS小片を別の平坦なスライドガラス上に貼り付けることで、プランクトンを流す流路や、そこから分岐したプランクトンの飼育部屋などを作り込んだ透明なデバイスを多数製作した。ここで、市販のセロハンテープの小片1枚を鋳型にすると高さ50μm前後の流路が成形され、セロハンテープを重ねる枚数を調整することで飼育対象とするプランクトンのサイズに応じた高さの流路を作製できた。例えば、2枚重ねたセロハンテープを鋳型とした場合には、ゾウリムシ(Paramecium caudatum)の個体が余裕を持って通過し、縦方向には回転できないが横方向には回転できる程度の高さの流路が作製された。デバイス内の流体の駆動・操作は、「紙縒り」に水を吸わせる方法(毛細管力による方法)やシリコーンチューブ等を介して空気圧を操作する方法、流路出入口上に設けた液貯めの水面の高さの差による静水圧による方法等のほか、流路に刺し込んだガラス管マイクロピペットによる吸引や、二流路型のガラス管マイクロピペット(θ管)を用いた培養液の交換も可能であることを確認し、実際にゾウリムシの個体を飼育部屋に単離し、少なくとも1週間、飼育しながら顕微鏡観察を続けることが可能であることを確認した。
著者
村田 陽平 埴淵 知哉
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2007年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.601, 2007 (Released:2007-12-12)

回想法(reminiscence, life review)とは,1963年にアメリカの精神科医ロバート・バトラー(Butler,R.N)が提唱した,高齢者を対象とする心理療法の一つである。回想法の目的は,高齢者が専門家とともに,過去の記憶を辿り,今までの人生を振り返りながら,これからの自己の「生」に対する肯定感の獲得を目指すものである。回想法の実施により,自尊感情の高まりなど個人の内面への効果や,生活の活性化や対人関係の進展など社会面への効果等が指摘されており,バトラーの提唱以降,アメリカ,カナダ,イギリスなど欧米を中心に取り組まれてきた。日本でも少なからず研究や実践が進められてきたが,近年では,認知症や閉じこもり等,介護予防の一環として高齢者のQOL(生活の質)の向上に期待できるものとして注目を集めている。この動きの中で,従来は病院や介護施設(特別養護老人ホーム,老人保健施設)など限定された場所で行われてきた回想法を,「地域」の活動としてまちづくりの核に位置づける自治体がみられるようになってきている。そこで,本発表では,回想法を取り入れた2つの地域事例(北名古屋市「回想法センター」・恵那市「明智回想法センター・想い出学校」)の紹介を通じて,回想法と今後の地域づくりとの関係性を考える契機としたい。
著者
鈴木 紅葉 小林 勇太 高木 健太郎 早柏 慎太郎 草野 雄二 松林 良太 森 章
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2118, (Released:2022-10-25)
参考文献数
48

森林の再生は、気候変動や生物多様性の損失などの社会課題に対する有効な手段の一つである。北海道知床国立公園内の森林再生地では、本来の潜在植生である針広混交林の再生を目指した森林再生活動が実施されている。ここでは、科学的知見をもとに合意形成し、管理手法を実践しながら改善する適応的管理のアプローチが取り入れられている。本稿では、この森林再生活動の成果を航空機レーザ測量およびドローン写真測量を用いた林冠構造解析によって評価した。具体的には、植栽地における樹冠高と構造的多様性、代表的な森林タイプにおける 2004年から 2020年までの 16年間の森林成長量を算出した。その結果、在来種の植栽地では他の森林タイプよりも顕著な森林成長が見られたものの、構造的多様性の回復は遅いことがわかった。このことから、活動開始から約 40年が経過しても未だ構造的多様性の回復には至っていないことが示唆された。当地での適応的管理に基づく森林再生活動の内容を紹介し、森林再生のあり方を議論することで、他地域における参考情報を提供したい。

1 0 0 0 OA 元散曲の話

著者
植田 渥雄
雑誌
日中言語文化 : 桜美林大学紀要 (ISSN:18820972)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-16, 2005-03-31