著者
藤原 修 井川 隆規
出版者
Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J84-B, no.10, pp.1841-1847, 2001-10-01

静電気放電(ESD:ElectroStatic Discharge)で生ずる過渡的な電磁ノイズはハイテク機器に深刻な電磁障害を引き起こすとされる.この種のESDの主原因の一つに人体の帯電現象が知られており,それゆえに人体電位に深く関与する人体の静電容量がこれまでに測定されてきた.しかしながら,人体容量はグラウンド面と人体姿勢との関係に大きく左右されるので,人体容量を決定づける要因は明確でない.本論文では,表面電荷法でグラウンド面上の立位姿勢にある人体の静電容量を計算した.その際,人体は形状を多面体で構成し,本論文では765,917,1,529面の3種類の多面体モデルを用いた.この結果,容量値は足裏がグラウンド面に近づくほど増大すること,靴底と同じ高さ(10 mm)にある人体容量は120~130 pFであること,十分離れた高さでは60 pF前後であること,などがわかった.この計算知見は人体容量の実測によって確認できた.
著者
隅田 麻由 水本 旭洋 安本 慶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.399-412, 2014-01-15

本論文では,個人の身体条件に適した負担度でのウォーキングを支援するシステムの実現を目指し,スマートフォンで利用可能な機能のみを用いた心拍数推定法を提案する.提案手法では,歩行中の心拍数を推定するために,機械学習を基に,加速度や歩行速度などの歩行データから心拍数を予測する心拍数モデルを構築する.心拍数の突発的な変化に対応するため,モデルの入力として心拍数変化と関連性が高い酸素摂取量に着目する.そして,加速度および位置情報などのスマートフォンで計測可能なデータから酸素摂取量の変化を正確に推定する方法を新規に提案する.また,学習データのない様々なユーザに対して心拍数を推定できるようにするため,過去の運動習慣を基に分類したユーザカテゴリごとに心拍数モデルを構築し,パラメータの最適化,心拍数データの正規化などを適用する.複数の被験者および歩行ルートについて実際に計測したデータに本手法を適用した結果,6.37bpm(拍/分)以内の平均誤差で心拍数の推定ができること,提案する酸素摂取量推定法が平均10bpm以上の誤差の軽減に寄与することなどを確認した.

1 0 0 0 OA IABの活動

著者
萩野純一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.295-297, 2004-03-15

IAB(internet architecture board)はIETF(internet engineering task force)の中にあるインターネット技術のエキスパートの集団である.メンバの人数は12人であり,各人の任期は2年間である.2003年3月に私萩野が選任されたので(若輩者なので大変恐縮しております),「IABの概要について執筆してほしい」との依頼を受けた.ちなみに,IABに選任されたのは日本人(というかアジア人)として2人目である.1人目は皆様ご存知の慶應義塾大学の村井純教授(19
著者
佐藤憲一郎 松井 祥悟
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.45, no.SIG12(PRO23), pp.93-93, 2004-11-15

UNIX等のマルチプロセスOSに実装されているプロセス生成用システムコールのforkを用いて,並列ガーベジコレクション(GC)を実現した.forkによって生成されたGCプロセスがコピーされたヒープ空間上で印付けを行うために,ライトバリアが不要となる.ごみ情報を通知するためにプロセス間通信が必要となるが,一般的な停止-回収型マークスイープGCは容易にこの方法へ変更することができる.パイプおよび共有メモリを用いた本GCをLispインタプリタに実装し,停止-回収型マークスイープGCと比較評価を行った.
著者
近江 啓太 Keita Omi
出版者
麗澤大学経済学会
雑誌
麗澤学際ジャーナル = Reitaku Journal of Interdisciplinary Studies (ISSN:21895333)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.95-99, 2017-03-10

This article reviews, “ Politics and Strategy: Partisan Ambition and American Statecraft” by Peter Trubowitz, published in 2011 from Princeton University Press, introducing to potential readers some theoretical and methodological strengths and weaknesses of the book. For scholars and experts, especially on U. S. foreign policy issues, the book pushes the boundaries of traditional understanding of country’s grand strategy typology and it rekindles structural incentives arguments of both domestic and international politics by reconstructing the conventional knowledge of international relations. For the general public, the book takes readers on a brief excursion into what scientific research is and how social science research is being conducted in exploring politics.
著者
中村 一行 松原 仁
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.126-130, 2017-11-03

近年, 囲碁における強さを追求する研究は多く行われてきた. しかし, 指導碁を目的とした, 教育プログラムに関する研究はあまり多くない. そこで本研究では, 囲碁初心者を対象とした指導方法の分析を行った. 記憶に残る学習方法を調査するため, 初心者を対象とした指導本を対象に, 指導方法及び順序についてのタグとして, 宣言的知識, 手続き的知識という2つに分けて分析を行った. 結果として, 専門用語は出来る限り既知の知識から説明する配慮が必要であること, 繰り返し説明を行うことが良いという分析結果を得た.
著者
小野 厚夫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第42回, no.情報科学一般, pp.43-44, 1991-02-25

今日ほど情報という語が多用されている時代はない。しかしながら、肝心の情報という語がいつごろから、どのような形で使われだしたのか、必ずしも明白でない。そこで、改めて情報という語の由来を調べてみた。情報という語は中国でも使われているが、中国人自身が日本来源の中国語として認めており、漢語ではなくて和語とみなすことができる.また国語辞典に情報が現われるのは明治三十八年以降のことで、情報は明治になってから現われた語ではないかと考えられる。これまでの通説では、文豪である鴎外森林太郎が最初に用いたとする、鴎外造語説が有力であった。しかし、この説についてはすでに疑問とする見方もある。我々は明治期の情報の用例を調べて、兵語に由来することをつきとめ、兵書を重点的に調べた結果、鴎外が文筆活動を始める以前の明治九年に、既に情報という語が使われていることを見いだした。また明治十年代後半には、情報だけでなく、状報も並行して用いられていたことがわかった(1,2)。明治十五年三月二十日の睦達乙第十八号により陸軍省が制定した『野外演習軌典第一版』では、情報という語が多数用いられている。公式文書に情報という語が現れるのはおそらくこれが最初であろう。この野外演習軌典は、明治九年に陸軍少佐酒井忠恕がフランスの実地演習軌典を訳出した『佛國歩兵陣中要務賓地演習軌典』(3)を土台にしており、この訳本ではすでに情報という語が使われている。これ以前に出版されている兵書を調べてみても惰報という語が見あたらないことから。おそらくこの本が情報という語が使われた最初の出版物ではないかと考えられる。当時、陸軍が兵式をフランス式にすることに決めたことにともなって、兵学寮の教授たちがフランス軍の兵書や典範令を多数翻訳し、士官の教育や兵卒の訓練に用いた。一八七五(明治八)年にフランスで新式の歩兵陣中要務が刊行され、酒井がこれを翻訳して明治九年十月に内外兵事新聞局から発行したのが『佛國歩兵陣中要務賓地演習軌典』である。訳者である酒井忠恕は嘉永三年の生まれで、旧名を鳥居八十五郎といい、田安殿家老越前守の養子である。慶応元年に横浜表に創設された仏学伝習所の第一回伝習生徒としてフランス語を学び、の後開成学校の三等教授を経て、明治二年八月に兵部省に出仕し、上等通弁から兵学大助教、同少教授に昇任、明治六年に陸軍少佐になった。六年六月から十二月まで伝令使を勤めている。明治十二年に参謀本部に移り、十月に文庫課長、同十二月に翻訳課長となり文庫課長を兼任した。同十三年二月、同県に同姓名の者がいることを理由に改名を届出て、酒井忠恕から酒井清に改名している。同二十二年に陸軍省に退職を願い出、予備役に編入され、同三十年六月に死亡した.酒井は明治九年に『佛國歩兵陣中要務賓地演習軌典』を出版後、十四年に清名でその改訂版を発刊し、さらに十五年に『佛國歩兵陣中要務寅地演習軌典抄』を訳出している。最後の『實地演習軌典抄』は問答集であるが、この中で、情報に意訳を付けており、これらの添え書きから、情報を「敵情(状9)のようす、または知らせ」という意味で用いていることがわかる。したがって、情報は「情状の報告、または報知』を短縮したものと解釈することができる。野戦では斥候、偵察、間諜などを派遣して地勢や敵情を調べる。その報知を酒井は情報と訳した。その原語についてはまだ原本を確認していないが、つぎに述べる理由からフランス語のrenseignement と考えられる。(1)フランス語を主体として編集されている『五國対照兵語字書』にはinformationが採録されていない。(2)明治十八年に訳出された『佛國陣中軌典』では、情報に『ランセーギュマン」または『ランセギウマン」の添え書きがしてある。(3)一八九五年の『仏国陣中軌典携帯版』の原本ではrenseignementが対応している。(4)後述する『佛和辞典』のenseignementの項に状報が記載されている。
著者
荻野 貴大 高田 哲司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1833-1842, 2017-12-15

Drive-by Download攻撃などWebを通じたマルウェア感染の脅威が問題になっており,その対策が求められている.Webはpull型の情報メディアであるため,マルウェアを流布するためには,Web閲覧者をマルウェア流布のために構築した「仕掛け」に誘導する必要がある.本研究では,このために既存のWebページを改ざんし,「仕掛け」に誘導するページを「誘導ページ」と定義し,その検出を可能にする研究を行った.誘導ページに関するWeb記事を対象に調査を行い,その結果から悪性コンテンツが隠蔽されるという特徴に着目した.この特徴を基に判定ルールを策定し,Webブラウザ上で誘導ページを検出可能にするプロトタイプシステムをFirefoxの拡張機能として実装した.実装したシステムを用いて誤検出率に関する検証を行った結果,False Positiveについては5%を下回る結果を得た.また実際の運用可能性についても検証を行い,実用性についても見込みがあることを示した.
著者
門脇 香子 浅井 健一
雑誌
第56回プログラミング・シンポジウム予稿集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.115-120, 2015-01-09

Agda はマルティンレフの型理論に基づいた定理証明支援器であり,その一方で依存型をもつ関数型プログラミング言語でもある.Agda では依存型 (Dependant Types) を用いることができるのも大きな特徴である.また,定理証明支援器とプログラミング言語両方の特徴をもちあわせていることから,何かを実装しつつ証明するのに適している.そこで本稿では,停止性が保証された型推論器を Agda により構成する.なかでも, Unification の実装では, McBride の手法を採用する.これは型変数の数を巧妙に管理することで構造に従った再帰を使って(つまり停止性が明らかな形で)型の Unification を表現できることを示したものである.本稿では Term の型変数の数に注目しつつ,主に Unification の部分と Application の実装にフォーカスを当てながら実装していく.
著者
蔵本 博史
雑誌
成城国文学
巻号頁・発行日
no.16, pp.47-57, 2000-03
著者
大西 良 辻丸 秀策 池田 博章 Ryo ONISHI Shusaku TSUJIMARU Hiroaki IKEDA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.175-182, 2017-03

本研究の目的は、一般市民を対象に質問紙による調査を実施して、「子どもの貧困」に対するイメージや貧困が子どもの成長に与える影響(問題)等に関する認識の実態を把握することであった。調査の結果、市民の約8割が国民の生活水準の低下(貧困化)を感じ、また4人のうち3人が子どもの貧困問題を身近な問題として捉えていることが分かった。また「貧困」に対するイメージについては、「身近」で「怖いもの」という認識を抱いている者が多く、さらに「貧困」が子どもに与える影響(問題)については、「進路選択・進路実現の問題」、「心理(こころ)の問題」、「衣食住の問題」が上位に挙げられた。子どもがごく普通の生活をするために必要な物や事柄(必需品)では、「病気やケガをした際に病院へいく」、「遠足や修学旅行などの学校行事への参加」、「休日等で家族と一緒に過ごすこと」などがすべての子どもに絶対与えられるべきであるものとして上位にあがった。その一方、教育の機会や教育用品に関しては、経済的な理由で与えられなくても仕方がないという意見も多くみられた。このような結果を踏まえて、考察では、「関係性の貧困」と「機会の貧困」が子どもの成長や将来に負の影響を与えることについて述べ、相対的貧困がもたらす本質的な問題について論じた。
著者
内田 学 平田 博紀 堀井 希依子 Manabu Uchida Hirata Hiroki Horii Kieko
巻号頁・発行日
vol.11, pp.93-106, 2013-03-31

現在、家電量販業界では、熾烈な戦いが繰り広げられている。本稿ではその中でマーケットリーダーのヤマダ電機と人材教育に定評があるヨドバシカメラを採りあげる。ヤマダ電機とヨドバシカメラの戦略はマイケル・E・ポーターの3 つの基本戦略に照らし合せると、現在のところ、それぞれコストリーダーシップ戦略、差別化戦略を採って成功している。本論文では、両社のそれぞれの戦略について詳述し、さらに今後の激変する環境の中で両社が採っている戦略をどのような変化させていくのかを検討する。