著者
クズネツォフ S.I. 森永 貴子
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-18, 2008-03-31

It is hardly possible to find the detailed description of history of diplomatic, business, cultural or religious activity of Russian people in the Russian historiography of the Russian- Japanese relations to Hokkaido, though mentions of it in 19th century were more than enough. The trouble is that the authors in their majority only repeat one another. There were also Russian travellers, many writers and publicists, clerics and seamen among them. Later, when diplomatic representatives have got over in Edo, Hokkaido has left on the second plan. At the same time this subject represents the big interest, as at Hokkaido, in Hakodate the relationship between Russia and Japan began to get regular character. There was a first Russian consulate in Japan here and, also, the first Russian church -《mother of Russian churches in Japan》, as priests say. The first deep impressions of Russian about Japan, its inhabitants and realities were also made here. Probably, the environment of Japan’s North was more close and clear to the Russian, than it’s South. The territorial affinity of Hokkaido to the Russian coast gave Russian businessmen the certain hopes for development of bilateral business activities, first of all -trade. However, at that time there were no necessary economic conditions for this purpose yet. If the Catholic church had come to Japan from the South, Russian orthodox mission arrived from the North. Russian priests christened the first Japanese here, the orthodox sermon sounded for the first time in Japan also. Distribution of Orthodoxy to Hokkaido (certainly not such successful as a Catholicism) can be considered as the certain mark at intercultural dialogue between two peoples -Japanese and Russian. Thus, it is possible to tell, that Hakodate’s period -one of the first pages in history of the Russian-Japanese relations, not only insufficiently studied in Russian historiography, but more likely -evidently forgotten.
著者
板橋 拓己
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1_159-1_180, 2019 (Released:2020-06-21)
参考文献数
27

1989 / 90年のドイツ統一プロセスのなかで、ドイツは自らに課されていた 「戦勝四か国の権利と責任」 を解消し、「制約なき完全な主権」 を獲得することを目指した。そしてその際に越えるべき最も高いハードルは、統一ドイツのNATO帰属をソ連に承認させることであった。本稿は、1990年5月から7月にかけて、いかにして西ドイツがソ連から統一ドイツNATO帰属への合意を取り付け、「完全な主権」 を獲得したかを検証する。その際、近年公刊された西独外務省史料を中心的な史料としつつ、従来の研究では等閑視されがちだったゲンシャー外相の寄与にとりわけ注目する。 ゲンシャー外交の貢献は次の3点に纏められる。第一に、CSCEヘルシンキ最終文書の規定を強調し、ドイツの同盟選択権をソ連に認めさせることに貢献した。第二に、1990年6月の 「ターンベリーのメッセージ」 などを通じて、NATOの性格の変容をソ連にアピールした。そして第三に、ソ連、とりわけシェワルナゼ外相との会談を幾度も重ね、信頼の構築に努めた。こうしたゲンシャー外交がなければ、90年7月の独ソ首脳会談における統一ドイツのNATO帰属合意もなかったであろう。
著者
加藤 秀雄
出版者
成城大学
巻号頁・発行日
2021

主査 成城大学教授 小島 孝夫副査 成城大学教授 俵木 悟副査 成城大学教授 新倉 貴仁
著者
寺西 眞 鈴木 信彦 湯本 貴和
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.530, 2005 (Released:2005-03-17)

ホトケノザは、主に他花受粉をおこなう開放花と自家受粉のみをおこなう閉鎖花を同時につける一年草で、種子にエライオソームを付着する典型的なアリ散布植物である。一般的に、自殖種子は親と同じ遺伝子セットを持つため、発芽個体は親と同じ環境での生育に適していると考えられている。一方、他殖種子は親と異なる遺伝子セットを持つため、親の生育環境と異なる新しい環境へ分散・定着するのに適していると考えられる。したがって、自殖種子は親元近くへ散布され、他殖種子は親元から離れた環境へ散布されるのが生存に有利であると考えられている(Near & Far Disperal model)。 そこで、アリによるホトケノザ種子の分散効果を考察・検討するために、野外にアリ飼育区(ホトケノザ6株とトビイロシワアリのコロニー)とアリ排除区(ホトケノザ6株のみ)を設置し、種子運命を追跡した。アリ飼育区および排除区の両区内ともに、ホトケノザは4月上旬に閉鎖花をつけ、4月下旬から5月下旬にかけて開放花をつけた。開放花には人為的に自家受粉・他家受粉を行った。11月中旬、アリ飼育区・排除区の両区内から実生が出現したが、両区の分布様式は異なった。アリ存在区の株のうち4株は12月に開放花をつけたが、アリ排除区のほうは1月になっても開放花をつけなかった。アリ存在区ではアリ排除区よりも1株あたりの高さ・総シュート長などが大きく、種子生産数も多かった。これらの結果から、ホトケノザはアリに種子散布を依存することで次世代株の種子生産数を上昇させ、適応度を上げることができると考えられた。今回の発表ではAFLP法による遺伝解析(他殖由来種子と自殖由来種子の追跡)の結果も合わせ、Near & Far Disperal modelを検証する。
著者
本田 智比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100065, 2017 (Released:2017-05-03)

1. はじめに国名や都市名,自然地域名称などの地名をどのように表記するのかは,地域を研究対象とする地理学においては大変重要な問題である.しかしながら,地名表記の標準化をつかさどる国家機関が存在しないため,地名の表記は統一が図られず,時にはその不統一性から,同一都市を別の都市と誤解するような事態も生まれている.そのようななか,教科書業界において,地名表記に対してどのような取り組みが行われているのか,帝国書院を例に取り上げ,地名表記にどのような課題があるのか考えてみたい.2. 教科書における外国地名の表記に関して戦後の教育業界において,最初に地名表記の統一が図られたのが,1950年代である.文部省に専門の委員会が設けられ,教育的見地から外国地名と国内主要自然地域名称の呼び方と書き方の基準が検討された.委員は,教育関係者だけでなく,外務省,建設省地理調査所,報道関連など各所から集められ,検討の結果は1959年刊行の『地名の呼び方と書き方』という書籍にまとめられた.以降,この基準書は1978年の『地名表記の手引き』,1994年の『新 地名表記の手引き』へと受け継がれ,教科書業界ではこれらの基準書に従い地名を表記することで,地名表記の統一を図ってきた.しかし,新聞社やテレビ局などの報道機関は会社ごとに独自の基準を作成しており,この基準書に準じなかったという点,1994年以降,続編書籍が刊行されていないという点で課題が残っている. このようななか,教科書業界では,特に国名と首都名に関して特段の配慮を行ってきた.1970年代から2007年までは,『世界の国一覧表』という外務省見解をコンパクトにまとめた書籍を統一原典として使用してきた.また,2007年にこの書籍が廃刊となって以降は,教科書会社で組織している教科書協会に,国名と首都名に関する表記を統一する連絡会議が設けられ,地図帳を発刊している東京書籍・二宮書店・帝国書院の三社の地図帳編集部門担当が毎年集まり,見解の統一を図っている. しかし,このように統一できている外国地名は主要地名だけであり,その他の詳細地名の表記は教科書会社で異なっているのが実情である.例えば帝国書院では,前述の『新地名表記の手引き』が1994年に発刊されたことを受け,本書が掲げる現地音表記の精神を地図帳に反映するため,1998年に地名表記の大幅な見直しを行っている.各言語の専門家数十人にご協力をいただきながら,「英語発音や旧宗主国言語の名残があった地名も原則として現地音表記に改める」などといった新しい原則を設け,地名表記を一新した.だが,これらの帝国書院独自の取り組みにも課題はまだ残っている.例えば,現地音をどの少数民族のものまで徹底するか,現地音を日本語の片仮名表記でどこまで正確に再現できるか,などである.地名表記の検討に対しては,情勢の変更も踏まえながら,不断の努力を行うことが必要である.3. 教科書における国内地名の表記に関して 外国地名に比べると地名表記が統一されているように見える国内地名であるが,これにも課題はある.まず,世界の地名と同様に,詳細地名に関する業界での統一基準が無い点である.帝国書院では,行政地名は国土地理協会発刊の『国土行政区画総覧』,自然地域名称は国土地理院発行の『決定地名集(自然地名)』,鉄道名やスタジアム名等はそれぞれを管理する会社の資料を原典とし,地名表記を社内では統一している. 国内地名の表記に関しては,使用漢字の字体のばらつきという課題もある.例えば飛騨市や飛騨山脈の「騨」は,パソコンの標準変換では出すことができない「」という字体を多くの教科書では採用しているが,これを通常の出版物にまで強要するのは難しいと考える.また,2004年に漢字のJISが改正され,168字の漢字の登録字形が変更されたため,該当漢字がパソコンや印刷機のフォント環境によって異なった字体で印刷されるという問題も起きている.地名として登場するものとしては,「葛・葛」や「薩・薩」,「逢・逢」などがその対象である.(「 」内の右側が2004年以前の,左側が2004年以降のJISにコード登録されている字体)4. まとめ このように外国地名,国内地名ともその表記に関しては様々な課題を抱えているのが現状である.それらの課題を個々の会社や団体だけで解決することは不可能であり,また努力を行うほど,他社や他の業界と不統一を起こす結果にもつながりうる.そのため,国家地名委員会が設置され,この委員会のもとで地名表記の標準化が図られることの意義は非常に大きいと考えている.
巻号頁・発行日
1000

書名は書き題簽による。江戸時代の商標など約60枚を集めた貼り込み帖。それぞれ詳細な解説が記される。記述者は近代の人物で本帖の編者と思われるが未詳。なかには、「幾代餅」「神田川」「笹の雪」などの名もみられる。
著者
松岡 憲二 北村 清一郎 金田 正徳 堺 章 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.195-202, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15

解剖実習用遺体において, 〓門, 天柱, 風池, 完骨, 翳風の5経穴に針を深刺し, 以後, 針を抜くことなく表層より解剖をすすめ, 刺入針と後頸部の構造との関連を調べた。〓門, 天柱, 風池の各穴への刺入針は, いずれも後環椎後頭膜や脳硬膜などを貫通し, 最終は延髄に達していた。刺入点より脳硬膜までの深さは頸周囲39.1cmの遺体でそれぞれ50mm, 51mm, 49mmであった。また, 風池穴の深部約40mm付近には椎骨動脈, 完骨穴の部では後頭動脈, 翳風穴の部では外頸動脈や顎動脈が浅層の部を近接走行しており, 刺針の際, 手技や深さに充分な注意を払うことが望まれる。
著者
Masayuki Shimamura Takashi Kumaki Shun Hashimoto Kazuhiko Saeki Shin-ichi Ayabe Atsushi Higashitani Tomoyoshi Akashi Shusei Sato Toshio Aoki
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Soil Microbiology / Taiwan Society of Microbial Ecology / Japanese Society of Plant Microbe Interactions / Japanese Society for Extremophiles
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.ME21094, 2022 (Released:2022-03-12)
参考文献数
50
被引用文献数
9

In legume–rhizobia symbiosis, partner recognition and the initiation of symbiosis processes require the mutual exchange of chemical signals. Chemicals, generally (iso)flavonoids, in the root exudates of the host plant induce the expression of nod genes in rhizobia, and, thus, are called nod gene inducers. The expression of nod genes leads to the production of lipochitooligosaccharides (LCOs) called Nod factors. Natural nod gene inducer(s) in Lotus japonicus–Mesorhizobium symbiosis remain unknown. Therefore, we developed an LCO detection method based on ultra-high-performance liquid chromatography–tandem-quadrupole mass spectrometry (UPLC-TQMS) to identify these inducers and used it herein to screen 40 phenolic compounds and aldonic acids for their ability to induce LCOs in Mesorhizobium japonicum MAFF303099. We identified five phenolic acids with LCO-inducing activities, including p-coumaric, caffeic, and ferulic acids. The induced LCOs caused root hair deformation, and nodule numbers in L. japonicus inoculated with M. japonicum were increased by these phenolic acids. The three phenolic acids listed above induced the expression of the nodA, nodB, and ttsI genes in a strain harboring a multicopy plasmid encoding NodD1, but not that encoding NodD2. The presence of p-coumaric and ferulic acids in the root exudates of L. japonicus was confirmed by UPLC-TQMS, and the induction of ttsI::lacZ in the strain harboring the nodD1 plasmid was detected in the rhizosphere of L. japonicus. Based on these results, we propose that phenolic acids are a novel type of nod gene inducer in L. japonicus–Mesorhizobium symbiosis.
著者
新 出
出版者
青土社
雑誌
現代思想
巻号頁・発行日
vol.46, no.18, pp.39-51, 2018-12
著者
高山 裕行
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.70-75, 1985-12-10 (Released:2017-08-01)

太宰治「走れメロス」は、シラーの"Die Burgschaft"を下敷きとして書かれている。相馬正一氏をはじめ研究者諸氏がとり上げているその訳文は、木村謹治訳又は手塚富雄訳であるが、いずれも主人公は「ダーモン」である。では、太宰はどの翻訳を読んで作品化したのだろうか。それは小栗孝則訳「人質」(『新編シラー詩抄』所収)である。この訳文は主人公が「メロス」であり、本稿では小栗訳「人質」と「走れメロス」との関係を分析した。