著者
青山 雄一 大田 信介 榊 三郎 藤田 豊久
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.283-286, 2014 (Released:2014-07-25)
参考文献数
12

要旨:44 歳の女性,運動中に突然の激しい頭痛が出現し翌日に前医を受診,頭部CT(HCT)にて左後頭葉に限局するクモ膜下出血(SAH)を認め,発症5 日目に当科を紹介受診.頸部痛を伴う頭痛と項部硬直を認めたが,他の神経脱落所見はなかった.HCT と頭部MRI では左後頭葉に限局するSAH を認め,頭部MR angiography(MRA)ではSAH の局在と離れた左右の中大脳動脈(MCA)の末梢部に分節状攣縮を認めた.その他に出血源となる異常はなく,他の臨床検査所見でも原因となる異常は認めなかった.保存的加療にて頭痛は発症1 週間ほどで消失し,新たな神経症状も出現しなかった.発症8日目の血管造影では,頭部MRA 同様に左MCA 部に分節状の攣縮を認め,可逆性脳血管攣縮症候群と診断した.攣縮は発症約1 カ月後のMRA では消失していた.以後の再発を認めていない.
著者
波田野 節子
出版者
朝鮮学会
雑誌
朝鮮学報 = Journal of the Academic Association of Koreanology in Japan (ISSN:05779766)
巻号頁・発行日
vol.238, pp.1-33, 2016-01

一九四〇年七月の日本語小説「心相觸れてこそ」が中断したあと、李光洙は大量の対日協力的な論説、随筆、詩を日本語で発表したが、日本語小説は書かなかった。その彼が一九四三年一〇月、「加川校長」と「蠅」の二つの日本語小説を皮切りに一年間で通算七編の日本語小説を発表する。なぜ李光洙はこの時期に日本語小説を書きはじめたのか。一九四三年春、李光洙は息子の中学進学のために平安南道の江西で暮らし始めた。前年末には日本で大東亜文学者大会が開かれて李光洙も参加し、四月に朝鮮文人報国会が結成され、八月に第二回の大東亜文学者大会が開かれるという時期であったにもかかわらず、李光洙は「私事」のために田舎に引き籠ったのである。ところが、まもなく再発した結核のために、李光洙は京城にもどらざるを得なかった。彼が病床にあるあいだに息子は京城の中学に転校し、江西中学の関係者を失望させた。病勢が回復したあと李光洙が「加川校長」を書いたのは、江西中学の日本人関係者に詫びるためだったと思われる。このなかで李光洙は自らを、木村の転校の原因になる病弱な父親として登場させている。李光洙が戻ってきたころ、京城では学徒兵志願の強制が始まろうとしていて、戦況悪化のなかで知識人虐殺名簿の噂が飛び交っていた。李光洙は同胞の犠牲を減らすために対日協力を決意し、ついに東京で学徒兵志願の勧誘を行なうにいたる。このときに書かれたのが短編「蠅」である。年令制限のせいで勤労奉仕に出られない老人が七千八百九十五匹の蠅を叩き殺すという滑稽ながらも鬼気迫る姿には、この狂気の時代に李光洙が抱いた無念さが投影されている。
著者
田中 将大 幸田 泰則
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.704, 2011

頂芽優勢はIAAが側芽の休眠を誘導することにより生じ、CKはそれを打破する。IAAそのものは側芽の休眠を直接誘導できないことなどから、IAAは根で何らかのシグナル物質を生産させ、それが直接的に側芽の休眠を誘導している可能性が示され、その候補物質としてストリゴラクトンが単離された。我々はバレイショ根の抽出物中に種子発芽や側芽の生長を強く阻害する活性が存在することを見出した。しかし、純化過程での活性本体の挙動はストリゴラクトンとは異なるものであった。そこで、根で生成される側芽休眠誘導物質の単離を試みた。<br>[方法・結果] IAAは側根形成を促進し根量を増加させる。そこでIAA含む液体培地でバレイショ根を大量に単独培養し、抽出材料として用いた。一節を含むバレイショ茎断片を培地に移植すると頂芽優勢が打破され側芽が生長を開始する。この培養系を側芽休眠誘導活性の検定法として用いた。根の抽出物を溶媒分画法により分け、側芽休眠誘導活性を調べた結果、水溶性分画に強い活性が認められた。活性を指標として単離・精製を進めた結果、分子量434の物質が単離された。フラグメントパターンからこの物質は未知のものであると思われた。現在、この物質の頂芽優勢への関与を調べるため、IAAがこの物質の含量に及ぼす影響について検討中である。また構造決定を試みている。
著者
野中 洋一 角 真佐武 佐々木 裕亮 田中 将大 大橋 元一郎
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.597-609, 2017

<p> 囊胞性聴神経鞘腫 (cystic vestibular schwannoma) は, 充実性聴神経鞘腫と比較して臨床像や腫瘍特性が異なり, そのため手術においては特有の難しさが存在するといわれている. それゆえ最大径が40mmを超えるような巨大囊胞性腫瘍の手術においては, 標準的なアプローチのみで切除することが困難な場合もある. Transmastoid approachは側頭骨錐体部を立体的に切削することで, 小脳の圧排なしに小脳橋角部へアクセスすることができる確立されたアプローチではあるものの, 解剖学的な制限のため術野としては決して広くはない. しかし側頭開頭や外側後頭下開頭などと組み合わせることで, 広範囲かつ多方向的な術野展開 (multidirectional approach) が可能となるため, 視認性や操作性の向上につながる. 本稿では巨大囊胞性聴神経鞘腫に対して用いたcombined transmastoid approachの有用性, 手術成績, 合併症などについて概説する.</p>