著者
古川 泰人
出版者
日本生態学会和文誌編集委員会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.229-236, 2016-03-30

近年、国内外の様々な行政機関や科学技術分野などを中心に、科学が社会から充分な信頼を得ることなどを目的とした「オープンサイエンス」に対する機運が高まっている(Reichman et al. 2011)。しかし、日本の生物多様性情報を含む生態学研究分野においては、地球規模生物多様性情報機構(Global Biodiversity Information Facility: GBIF)などを軸とした情報発信は動き出しつつあるものの(大澤ほか 2014)、オ ープンサイエンス化に関する状況は十分に周知されているとは言いがたく、世界的動向をふまえ、これらへの対応が急増することが見込まれる。そこで本稿では、2015年3 月に開催された日本生態学会第62 回全国大会自由集会「オープンデータと生態学」での情報交換や議論をもとに、本稿執筆時の状況をふまえ、オープンサイエンスに関する課題の抽出と、今後の指針になりうる参考情報について集積と整理を行う。
著者
鈴木 洋仁
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.117-139, 2014-06-30

本論文は、「戦後」において「明治」を見直す動きを、桑原武夫と竹内好の言説を対象に議論している。桑原と竹内が、「もはや戦後ではない」昭和31年 = 1956年を境に行われた「明治の再評価」をめぐる議論の意味を指摘する。「明治の再評価」を最初に唱えた一人・桑原にとっての「元号」は、西暦とは異なる、日本固有の時間の積み重ねだった。それは同時に、昭和20年 = 1945年に始まる「戦後」という時間軸よりも、「昭和」や「明治」という時間の蓄積に親しみを抱く世間の空気でもあった。そして、桑原もまた、「元号」と同様に、世の中の雰囲気を鋭敏に察知するアイコンでもあった。対する竹内は、「昭和」という「元号」を称揚する復古的な動きに嫌悪感をあらわにし、「明治」を否定的に回顧しようとしつつも苦悩する。「明治維新百年祭」を提唱した理由は、その百年の歴史が、自分たちが生きる今の基盤になっていると考えたからこそ、苦悩し、ジャーナリズムでさかんに発言する。このように本研究では、「明治百年」についての複数の言説の中で、日本近代に対峙した代表的な2人の論客が「元号」に依拠して明らかにした歴史意識を対象として、当時の知識人と社会、学問とジャーナリズムの関係性もまた見通している。
著者
Dunleavy Andrew J. Wiesner Karoline Yamamoto Ryoichi Royall C. Patrick
出版者
Nature Publishing Group
雑誌
Nature Communications (ISSN:20411723)
巻号頁・発行日
vol.6, 2015-01-22
被引用文献数
49

ガラスは本当に固体か? -コンピュータシミュレーションと情報理論による予測- 京都大学プレスリリース. 2015-01-22.
著者
羽鳥 徳太郎
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.429-438, 1986-02-07

津波史料をもとに別府湾沿岸を現地調査し,地盤高をふまえて各地の津波の高さ(平均海面上)や浸水域の広がりを検討した.大分市内では,流失した寺院の分布から津波の高さは4~5.5mに推定され,地盤高ぶおよそ4m以内の範囲が浸水域とみなされる.別府湾口の奈多と佐賀関ではそれぞれ7~8mと6~7mの波高に達し,湾外の上浦で4m,臼杵では3~4mと推定される.津波マグニチュードは今村・飯田スケールでm=2と格付けされる.津波・震度分布および周辺のテクトニクスから判断すれば,波源域は別府湾を包み東西方向に50km程度の長さがあったと推定される.また,瓜生島・神場洲の地盤沈降の記録は別府湾が陥没したことを暗示し,高角正断層の地震により津波が発生したと考える.
著者
高橋 翠
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.183-190, 2012-03-10

The evolutional account in studies of human facial attractiveness has contributed to increasing number of research and many discoveries about determinants of our preferences. In this paper, current psychological studies about determinants of facial attractiveness judgment, including both universality and individual differences are reviewed. Future research should be dealt with cognitive and emotional process underlying attractiveness judgments.
著者
Bosteels Bruno
出版者
Institute for Research in Humanities Kyoto University
雑誌
ZINBUN (ISSN:00845515)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.21-39, 2016-03

International Symposium "Provided that this lasts…": Politics, Subject, and Contemporary Philosophy (January 12th, 2015)
著者
西城戸 誠 大國 充彦 久保 ともえ 井上 博登
出版者
産炭地研究会(JAFCOF)
雑誌
JAFCOF釧路研究会リサーチ・ペーパー
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-107, 2015-06-28

本報告書は,2009〜2013 年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)『旧産炭地のネットワーキング型再生のための資料救出とアーカイブ構築』(課題番号・21243032 研究代表者・中澤秀雄),2014 年度~2018 年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)『東アジア産炭地の再定義: 産業収束過程の比較社会学による資源創造』(課題番号・26245059 研究代表者・中澤秀雄)の研究成果の一部
著者
伊藤 理史 三谷 はるよ イトウ タカシ ミタニ ハルヨ Ito Takashi Mitani Haruyo
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.93-107, 2013-03-31

本稿は、「大阪府民の政治・市民参加と選挙に関する社会調査」の調査記録である。調査の目的は、2011 年11 月27日に実施された大阪市長選挙・大阪府知事選挙における有権者の投票行動や政治意識の分析を通して、大阪府民の政治・市民参加の実態を明らかにすることである。調査方法は、大阪府下の20 ~ 79 歳の男女3,000 人を調査対象とした、層化三段無作為抽出法による郵送調査であり、最終的な有効回収数は962 人有効(回収率:32.1%)であった。本稿の構成は、次の通りである。まず第1 節では、調査の経緯について簡潔に記述し、第2 節では、調査の設計に関わる研究費の獲得と郵送調査の利点について記述した。続く第3 節では、調査票と依頼状の作成について、第4 節では、サンプリングと発送について、第5 節では、発送後の電話対応と督促状、データの回収数について、第6 節では、データ入力と職業コーディングについて、実際の作業内容を記述した。最後に第7 節では、データの基礎情報として、得られたデータとマクロデータと比較検討し、データの質について記述した。本稿で得られた結果は、たとえ小規模な研究助成にもとづいた大学院生主体の量的調査でも、ある程度の質と量の伴ったデータを入手できる可能性を示している。