著者
高井 遥菜 永井 理沙 椿 淳裕
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101213-48101213, 2013

【はじめに、目的】近年,生体透過性に優れた近赤外光を用いて,脳循環酸素代謝を計測する近赤外線分光法(NIRS)が急速に普及してきた.NIRSが注目を集める大きな要因は,その安全性と拘束性の低さであり,様々な場面に応用されている.一方,NIRSの計測方法に由来する問題点として,NIRS信号は純粋な脳血流量だけでなく,頭皮血流や体循環変動等の要因によって変化するとの報告もあり,計測したヘモグロビン変化と脳神経活動との関連性の解明が不十分であるといった点も指摘されている.特に認知課題中の血圧変動の影響については十分に検証されてはおらず,この影響について明らかにすることでNIRSの信頼性を高める方法の開発に役立つのではと考えた.そこで本研究は認知課題中の血圧変動がNIRS 信号に及ぼす影響について検討することを目的とする.【方法】右利き健常成人男性12 名(年齢21.2 ± 0.4 歳)を対象に,カラーワードストループ課題(CWST)中の酸化ヘモグロビン量(oxy-Hb)を脳酸素モニタ(OMM-3000,島津製作所)を使用し,測定した.プロトコルは,課題前安静20 秒,課題中20 秒,課題後安静20 秒の計60 秒を1 セットとし,これを3 回繰り返した.NIRSによる測定領域は,CWSTで賦活するとされる左前頭前野背外側部と,CWSTの関与が少ないとされる補足運動野とした.プローブ間隔30mmのホルダを使用し,国際10-20 法におけるCzを基準とし,照射プローブ8 本,受容プローブ8 本を頭部に4 × 4 の配列で設置した.また,CWST中には連続血行血圧動態装置(Finometer,Finepress Medical Systems)を使用し,右手の第3 指から脈拍1 拍ごとに収縮期血圧(SBP)を測定した.解析は課題前安静20 秒の平均からの変化量を求め,3 回分を加算平均し,全被験者分を平均した.統計処理はSBPとoxy-Hbとの相関関係の強さを課題前安静,課題中,課題後安静それぞれで,スピアマン順位相関係数検定により求めた.有意水準は5 %とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則って実施した.被験者には実験内容について十分に説明をし,書面にて同意を得た.【結果】認知課題遂行に伴いSBPは最大21.9 ± 8.4 mmHg上昇した.SBPとoxy-Hb間の相関係数は,左前頭前野背外側部で課題前安静r=-0.089(p=0.272),課題中r=0.729(p<0.05),課題後安静r=0.304(p<0.05)と課題中のみに強い正の相関がみられた.補足運動野では,課題前安静r=-0.031 (p=0.705),課題中r=0.362 (p=0.735),課題後安静r=0.302 (p<0.05)であり,いずれにも強い相関は認められなかった.【考察】本実験では認知課題実施に伴い,20mmHg程度のSBP上昇が認められた.これはプレッシャーや緊張状態から交感神経活動が亢進したことによるものと考えられる.しかし,今回の結果では前頭前野背外側部のSBPとoxy-Hbとの間に,課題中においてのみ正の相関が認められた.この原因としてNIRS信号が安静中の血圧変動には影響されず,課題中の大きな血圧変動に影響を受けたこと考えられる.一方で,補足運動野においては相関が認められなかった.血圧がNIRS信号に影響を与えるならば,全チャネルにおいて血圧上昇に同調したoxy-Hbの上昇が観察されることが推測される.しかしCWSTの賦活領域のみに血圧との相関がみられる結果となった.このことは,血圧上昇が交感神経活動亢進のみによらず前頭前野背外側部局所の血流を増加させるために血圧を上げていた可能性を示している.先行研究では,一定強度以上で脳の限局的な活性領域に過剰に酸素が流入するのを防止する調整メカニズムの存在が明らかにされている.これより,一定以下の刺激では血圧上昇を伴って活動組織以外の血流を活動部位へ引きこむ現象が起こり得るのではないかと考えた.これがが裏付けられれば,NIRS計測における血圧上昇が脳活動と無関係のアーチファクトでない可能性も考えられ,今後検証していく必要がある.他の解釈としては,前頭前野背外側部が特に皮膚血流をNIRS信号に反映しやすいような構造であることも考えられる.これまでに前額部のoxy-Hb濃度変化の大部分は,心拍数とは異なる自律制御下にある皮膚血流のタスクに関連した変化が原因であり,前頭極部分でのNIRS計測に大脳皮質の血流変化が反映されにくいことが報告されている.【理学療法学研究としての意義】本研究は,NIRSを用いたより純粋な脳機能計測へ発展させる為の基礎的な研究として位置付けることができ,脳活動に着目した理学療法効果判定の精度向上に繋がるものである.
著者
清水 健司 岡村 寿代
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.23-33, 2010-03-30
被引用文献数
1 4

本研究は,対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデルにおける認知特性の検討を行うことを目的とした。認知特性指標は社会恐怖認知モデル(Clark&Wells,1995)の偏った信念を参考に選定された。調査対象は大学生595名であり,対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデル尺度短縮版(TSNS-S)に加えて,認知特性指標である完全主義尺度・自己肯定感尺度・自己嫌悪感尺度・ネガティブな反すう尺度・不合理な信念尺度・自己関係づけ尺度についての質問紙調査が実施された。その結果,分析1では各類型の特徴的な認知特性が明らかにされ,適応・不適応的側面についての言及がなされた。そして,分析2では2次元モデル全体から見た認知特性の検討を行った。特に森田(1953)が示した対人恐怖に該当すると思われる「誇大-過敏特性両向型」と,DSM診断基準に準じた社会恐怖に該当すると思われる「過敏特性優位型」に焦点を当てながら詳細な比較検討が行われた。
著者
小田 侯朗
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.294-297, 2006-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

わが国の聴覚障害教育における手話の活用とリテラシーの関係について, 近年の聾学校を対象としたコミュニケーション手段の比較研究等を基に概括した.聴覚障害児のリテラシーについては過去から現在に続く聴覚障害教育の主要なテーマであり, また手話や口話といったコミュニケーション手段がリテラシーの伸展に与える効果の比較についても関心がもたれてきた.本論では国立特殊教育総合研究所が行ったコミュニケーション手段とリテラシーの関連についての研究を紹介した.結果的には聴覚障害児のリテラシーに影響を与える要因はさまざまであり, 多様な手段を複合したアプローチが求められる.本論では最近わが国でも話題になってきた聴覚障害児のバイリンガル教育におけるリテラシーへのアプローチについても解説を行った.
著者
村田 裕和
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

萩原恭次郎と岡田龍夫が「印刷術による総合運動」と名づけた詩集『死刑宣告』(1925)について、その生成過程を調査し、それが当時の活版印刷文化の歴史的文脈の中でどのような意味を持っていたのかを考察した。また、シンポジウムを開催して1920年代のプロレタリア芸術の諸相を再検討した。特に、美術・映画・漫画などの視覚芸術を中心に、ジャンルの境界領域において、多様な実験的活動が行われていたことを明らかにした。
著者
岩村 秀
出版者
化学史学会
雑誌
化学史研究 (ISSN:03869512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.131-135, 2014

1 0 0 0 OA 明治唱歌

著者
大和田建樹, 奥好義 編
出版者
中央堂
巻号頁・発行日
vol.第2集, 1892
著者
遠座 知恵
出版者
日本教育史研究会
雑誌
日本教育史研究 (ISSN:02864061)
巻号頁・発行日
no.33, pp.99-103, 2014-08