著者
岡田 典之
出版者
龍谷大学龍谷紀要編集会
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.1-20, 2013-03

本稿では、十七世紀中頃に著作活動を行った錬金術師トマス・ヴォーンの主要な著作を概観し、錬金術思想が当時依然として有力であったアリストテレス的・スコラ的自然学や、急速に支持されはじめていた機械論的自然学にどのように対峙しうるものであったかを考察する。ヴォーンは、スコラ哲学的・思弁的な自然学に対しては実験・経験の重要性を強調し、また大学という制度内で確立している学問に対しては、自然の教えを対置した。さらにアリストテレス自然学を異教徒の学問であり、キリスト教徒にとっては有害であると断罪し、自らの錬金術を単に金属変成(黄金の獲得)だけを目指した現世的な技から区別し、魂の救済に関わるものとした。ヴォーンはまた、宇宙の構造や自然の究極の要素についても思索し、伝統的な四元素の名称を用いつつも、霊的な原理と物質的な原質が様々な仲介物を通して緊密に結びつく、有機的、生気論的でダイナミックな宇宙論を構想した。それは機械論的自然観と真正面から対抗するものであったと言えるだろう。
著者
上田 徹 UEDA Toru
出版者
筑波大学哲学研究会
雑誌
筑波哲学 (ISSN:09162046)
巻号頁・発行日
no.5, pp.p41-56, 1994-03
著者
大貫 隆
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.205-226, 2010-09-30 (Released:2017-07-14)

グノーシス主義研究において、神話論的思考から哲学的・神秘主義的思考への変容は避けて通ることのできない重要な問題である。ナグ・ハマディ文書第八写本の『ゾーストリアノス』では、この変容が明瞭に起きている。他方、プロティノスが『グノーシス派に対して』で対峙している論敵も同名の書物を持っていた。プロティノスはその中に、魔術文書の「呪文」と同類の発語を見出して批難している。事実、『ゾーストリアノス』を初めとする後期グノーシス文書は魔術文書から多くの「呪文」を受容した。しかし、それは魔術文書の場合のように、神々やさまざまな霊力を強制的に人間の思惑に従わせるためではない。それは地上から至高の究極的存在へ向かって上昇した神秘主義者が、究極的存在に関する認識と自分自身の存在を合一させた瞬間に発する呻き、つまり「異言」(グロッソラリア)である。
著者
吉田 喜久子
出版者
宗教哲学会
雑誌
宗教哲学研究 (ISSN:02897105)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.60-77, 1988

Im neuplatonischen Denken wird alles als Resultat der Entfaltung des Einen, der ersten Hypostase, angesehen. Das Eine, welches in keinem Sinne Differenz und Andersheit enthält, ist für alles Seiende einschließlich der menschlichen Seele sowohl der Ursprung wie auch Ziel, zu dem die Seele über den Geist, d. h. über die in sich durch Differenz relationale Einheit, zurückkehren soll. <br>Die Einheit des Einen wurde innerhalb des Christentums vor allem von den mystischen Strömungen tradiert. Erstmals bei Meister Eckhart ist das neuplatonische Eine mittels der proklischen negatio negationis, doch im von Eckhart veränderten Sinne, zum entscheidenden Element einer christlichen Ontologie geworden. <br>Obgleich das Eine bei Eckhart, das grundsätzlich wohl aus seinen religiös erfahrenen Überzeugungen stammt, nicht nur vom Standpunkt der historischen Einflüsse oder Zusammenhänge zu erklären ist, kann die Notwendigkeit, warum bei Eckhart das neuplatonische Eine sich mit dem christlichen absoluten Sein verbinden muß, schon im neuplatonischen Einen selbst gefunden werden. Wegen dieses Einen konnte Eckhart, anders als Thomas von Aquin, das Sein, welches die ganze Struktur der mittelalterlichen Metaphysik stützt, auf seine Absolutheit hin untersuchen. Doch das Eine ist bei Eckhart nicht nur die Einheit als einziges Wesen der Dreiheit Gottes, weil es sowohl ontologischer als auch soteriologischer Grund für die Beziehung des Menschen zu Gott ist.
著者
工藤 秀明
出版者
千葉大学経済学会
雑誌
経済研究 (ISSN:09127216)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.165-192, 1996-03

In this paper, we analize the second volume of Marx's doctoral dissertation. As important branches of naturphilosophy are ones of atom, time, and heavenly bodies, Marx examines Demokritos' and Epikuros' views on each of these branches in detail. Sympathiz
著者
アダム カール 片岡 暁夫 関根 正美 深澤 浩洋 窪田 奈希左
出版者
Japan Society for the Philosophy of Sport and Physical Education
雑誌
体育・スポーツ哲学研究 (ISSN:09155104)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.53-63, 1994 (Released:2010-04-30)

テーゼ1: スポーツは, 人間の達成行動の考察や観察に適したモデルである.2: 人間の達成と競争の行動は, 先天的欲求に起因し, かなり深く根付いているため, 無理に躾けることはほとんど不可能なのだが, 例えば公正という意味で訓練されるべきである (その際公正な態度への能力が先天的欲求によって与えられる).3: 順位の序列が, 達成の比較に帰せられる場合にのみ, 人間にはそれを合法的なものと認めようとする非常に強い傾向がある. それと反対に, 集団のメンバー全員の平等を要求する同じくらい強い傾向もまた存在する. 例えば, 教育政策上の妥協や達成比較による地位獲得の際の機会均等など. 達成比較の尺度は問題を孕んでいる. さらに難しいのは様々な達成の横の比較である. それに関して, 二つの視点がある. 一つはヒトの種の保存についての意義であり, もう一つは幸福のバランスについての意義である. 文句のつけようのない, しかも達成比較により修正された団体におけるメンバーの序列は, 社会生産物の分配と集団の意思決定に影響を及ぼす.4: かなり細分化された達成行動と達成動機のレベルの高さは, 文明的にも文化的にもレベルの高い集団の達成 (アトキンソン, マクレランド) とひいてはヒトの種の保存に対して, ほぼ必要不可欠な条件である. 幸福のバランスに対する達成行動の影響には, 異論の余地が残されている. 達成原理以外でなされる幸福のバランスの回復は, 通常はもしかすると, というよりはむしろ必然的に幻想に基づく性格を持つ. さらには, 幻想的性格と結び付いて現実を見失うと集団達成と種の保存が危うくなるだろう.確かに現代に横たわる困難な問題は, 自然科学と技術が規範的思惟よりも急速に発展してきたことと, 技術に規範が未だ伴っていないことに起因している. 技術文明の条件のもとでは, あらゆる人に対し人間らしい生活を保証するような, 社会構成, 行動基準, 規範の発展が求められている. 社会学, 教育学, 規範的哲学とそれらを伴う技術が精密科学の方法を受け入れ, さらに発展させるときにのみ, 現代の課題が解決されうるということは, キャセル・バイロンと私にとって明白なことである. これまで克服されてきたものすべてを困難さの点で上回る課題領域では, スポーツをモデルとした人間の達成行動に関する入念な探求が重要な位置を占めるものと私には思われる.
著者
大賀 祐樹
出版者
早稲田大学大学院 社会科学研究科
雑誌
社学研論集 (ISSN:13480790)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.14-28, 2008-03-25

論文
著者
中村 健吾
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年度は、本件とは別に私が研究代表者となり3年間にわたって進めてきた科研費による研究(「EUの多次元的な福祉レジーム改革とシティズンシップの変容に関する研究」、課題番号:16H05730)の最終年度にあたるため、年に2回の研究会を通じて共有された研究分担者たちによるEU加盟各国での福祉レジーム改革に関する調査結果をも参照しながら、「社会的に排除された人びと」の実態とその支援策の展開について知見の整理を進めた。その際、EUによる移民統合政策と共通庇護制度の分析を担当した私自身は、欧州委員会が2000年代に入ってから提唱した定住移民のためのcivic citizenshipという構想の行方、ならびにEU加盟各国において施行されている移民への「市民統合(civic integration)」政策の展開に着目して、2003年に採択されたEUの「家族再結合指令」および「長期居住者指令」が、(EU加盟国の国籍を有する市民のみが享受することのできる)EUシティズンシップとは異なる広義の欧州シティズンシップの形成にとって有する意味を考察した。上記の調査作業を整理するための理論的枠組みとして、フランスの政治哲学者であるJ.ランシエールのいう「政治」と「人権」の独特な概念、ならびにイギリスの政治学者であるE.アイシンが提唱する「遂行的シティズンシップ」の概念を援用し、得られた知見への分析を行なった。以上の研究の成果は、私が2019年9月に公刊した論文「EUは越境する人の権利をどこまで認めているか?」において発表した。また、上記の共同研究の成果をまとめた編著を出版する計画を研究分担者とともに立案した。
著者
五十嵐 一
出版者
理想社
雑誌
理想 (ISSN:03873250)
巻号頁・発行日
no.620, pp.p242-253, 1985-01