著者
大木 紫
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-25, 2018

<p> 男女は身体的,行動的に異なる傾向を示すが,この違いは遺伝子のみでは決定されない。ホルモンなどの生物学的要因は男女の身体的特徴を発現させ,また大脳半球,扁桃体,海馬など,多くの脳部位で男女差を形成する。これに伴い,男女は行動学的にも多くの違いを示す。しかし全体的な優劣というより,能力パターンに差があることを示すようである。更には,社会的,認知的,情動的要因も男女差に影響を与えると考えられている。しかし,脳や行動における男女の差異は平均を見た場合にわかる程度のものであり,個体差によるばらつきを考えると重なる部分も多い。</p>
著者
沖田肇
雑誌
精神科治療学
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1141-1145, 1992
被引用文献数
2
著者
武内 和弘 小澤 由嗣 長谷川 純 津田 哲也 狩野 智一 上田 麻美 豊田 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.165-174, 2012-08-31 (Released:2020-06-07)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本邦初の医療機器承認を取得した「舌圧測定器(TPM-01,JMS 社,広島)」を用いて,舌機能の定量的評価法としての舌圧測定の有用性について検証した.対象は,脳血管障害または神経筋疾患に由来する嚥下障害または構音障害を有する患者(障害群)115名で,それらの障害を有しない患者29 名を対照群とした.調査は,舌圧測定と同時に,基礎疾患名,嚥下障害と構音障害の有無,反復唾液嚥下テスト(RSST),会話明瞭度などについて実施した.舌圧は,前舌による最大押し付け力(最大舌圧)を3 回測定し,その平均値を舌圧値とした.また,舌圧測定の有用性の検証を目的として,舌圧測定値の再現性と,従来の口腔・構音・嚥下機能評価項目との関連について調査した.本器によって測定した舌圧値の信頼性(安定性)は,障害群と対照群の舌圧値の標準偏差(障害群平均2.8 kPa,対照群平均2.2 kPa)が先行研究の結果(平均3.1 kPa)と同等であることから推定した.また,舌圧値と従来の手法による評価法との関連性について,以下の知見を得た.障害群は,対照群よりも有意に低い舌圧値を示した.嚥下障害グレードが中等症(Gr 4~6)および軽症(Gr 7~9)の患者は,正常群(Gr 10)および対照群の患者より舌圧値が有意に低かった.また,準備期および口腔期に嚥下障害を有する患者の舌圧値は,対照群よりも有意に低値であった.RSST 2 回以下の患者の舌圧値は,RSST 3回以上の患者および対照群の舌圧値よりも有意に低かった.以上より,開発したJMS 舌圧測定器を用いて測定した舌圧値は,① 良好な再現性を示し,本器は,② 臨床上問題なく使用できることが明らかとなった.さらに,③ 測定した舌圧値と従来の機能評価との関連性も指摘できた.すなわち,舌圧の測定が,従来の定性的評価を主体とする機能評価に,客観的で定量的な指標を与え,例えば嚥下障害等の評価において,本舌圧測定器が臨床上有用な測定ツールとなることが示唆された.
著者
武川 正吾
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.322-340, 2004-03-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
30
被引用文献数
1 3

本稿では20世紀の第4四半期に顕著となった個人化の現象を福祉国家との関連で観察し, これが福祉国家に対してどのような問題を突きつけているか, 福祉国家はどのような対応をしなければならないかについて考察する.個人化は家族, 職域, 地域において観察することができる.そこでは従来の最小単位が分割され, 個人はそれまで所属していた集団から離脱していく.その結果, 個人は集団からの自立を獲得するが, 他方で集団による保護を失い, 社会的に排除される可能性もある.個人化によって新しく生まれた個人は個人主義的な消費スタイルを身につけている.個人化は既存の福祉国家に対して新しい問題を突きつける.家族の個人化は社会政策の脱ジェンダー化を, 職域の個人化は労働の柔軟化を, 地域の個人化は市民社会化を, 生活スタイルの個人化は消費の柔軟化を要求する.21世紀型の福祉国家が生き延びるためには, これらの新たな課題に応えていかなければならない.
著者
松岡 勝彦 小林 重雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.1-12, 2000-01-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1 1

本研究では、自閉症児者が不得意であるといわれてきた、「他者意図」の理解に関して、行動分析学の立場から、「他者意図」と表現されるものに対応するための適切な刺激設定はどういうものであるかを明確にし(Sidman,1971参照)、どのような環境設定を行えば、これを理解可能になるかを検討することを目的とした。ここでは、他者に対する援助行動という社会的行動の形成の中で、他者の言語行動を「字義通り」に解釈する条件と、環境設定との組み合わせで「言外の意味」を理解する条件とを設定した。訓練では、これらを弁別するためにビデオ弁別訓練が行われた。その結果、対象児は上記の2条件に応じた行動が可能となった。このことから、「心の理論」の欠如(「他者意図」の理解困難)といった抽象的に表現される対象を詳細かつ機能的に分析し、「他者意図」に対応する弁別訓練を行うことにより、他者の「心的状態」の理解を可能とする方略が導き出されるのではないかと考えられた。
著者
山田 一郎 鳥澤健太郎 風間 淳一 黒田 航 村田 真樹 ステインデ・サーガ フランシス ボンド 隅田 飛鳥 橋本 力
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3435-3447, 2011-12-15

質問応答などの自然言語処理アプリケーションが実用レベルに至るには,計算機で扱うことのできる,世界についての膨大な知識を構築する必要がある.本論文では,そのような知識の筆頭といえる,「サッカー選手/長友佑都」などの語句間の上位下位関係を自動獲得する手法を提案する.提案手法は,Wikipediaから獲得した上位下位関係と,Webテキストから獲得した語句間類似度情報を併用することで,網羅的かつ高精度に上位下位関係を獲得する.評価実験では,提案手法の適合率が,複数のベースライン手法の適合率に比べて,スコア上位10,000ペアでは0.155から0.650の差で,スコア上位100,000ペアでは0.190から0.500の差で上回ることを確認した.また,提案手法の獲得結果の中には,広く用いられている語彙統語パターンによる手法では獲得できない上位下位関係が多く含まれていることを確認した.In order to make natural language processing (NLP) applications such as question answering accurate enough for practical use, it is essential to build a large-scale, computer-tractable semantic knowledge base. In this paper, we target hyponymy relation like "football player/Yuto Nagatomo," which is one of the most important semantic relations for NLP. We propose a new method of large scale hyponymy relation acquisition from Web texts that combines a hyponymy relation database constructed from Wikipedia and the distributional similarity between words calculated from Web texts. Experimental results showed that, in terms of precision, our method outperformed nontrivial baseline methods by 0.155 to 0.650 for the top 10,000 pairs and by 0.190 to 0.500 for the top 100,000 pairs. Furthermore, we confirmed that our method could acquire hyponymy relation pairs that widely-used lexico-syntactic pattern based approaches could not.
著者
田中 敏郎
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.433-442, 2015 (Released:2016-04-27)
参考文献数
64
被引用文献数
2 4

インターロイキン6(IL-6)は,多彩な作用を有するサイトカインで,病生物の排除や創傷治癒に役割を果たす.しかし,その過剰なまた持続的な産生は,炎症性疾患の発症や進展に関与することが示され,ヒト化IL-6受容体抗体トシリズマブが開発された.臨床試験での有効性,安全性評価を踏まえ,現在,トシリズマブは慢性炎症性疾患である関節リウマチ,若年性特発性関節炎,キャッスルマン病に対する治療薬として使用されている.また,世界で進められている臨床研究や試験により,IL-6阻害療法は,他の慢性炎症性疾患のみならずサイトカインストームを呈する急性全身性炎症性疾患に対しても有効な治療法となる可能性がある.